鼓動感が気持ちいいフルカウルスポーツDUCATI 900MHRはマン島TT優勝を記念した歴史的なバイク
公開日:2026.05.16 / 最終更新日:2026.05.16
レーサーレプリカは80年代に流行ったバイクスタイルですが、実はそれより前から発売されていた大型クラスのレーサーレプリカがあります。
DUCATI 900MHRは1978年のマン島TTレース優勝を記念して1979年に発売されたバイクです。
見た目はレプリカ元のレーシングマシンにかなり近く、当時の細かいこだわりが見て取れるモデルとなっています。
今回は実際に1982年式の900MHRを所有する著者が、DUCATI 900MHRについて詳しく解説していきます。
MHR=Mike Hailwood Replica

1978年のマン島TTレースではイギリスのSMC(スポーツモーターサイクルズ)が優勝し、ライダーはマイク・ヘイルウッドというレーサーでした。
当時無敵艦隊として恐れられていたホンダ勢を抑えての優勝は貴重なもので、DUCATIはこれを記念して1979年に量産市販車として900MHRを発売しました。
MHはレーサーのマイク・ヘイルウッドの頭文字、Rはレプリカという意味で、つなげてMHRという名前になっています。
空冷Lツインを搭載したクラシックスポーツ

900MHRに搭載されているエンジンはベベルギアと呼ばれるギアを介してカムシャフトを駆動させる方式。
空冷ベベルといったらこの時代のDUCATIのエンジンのことを指す事が多いです。
ベベルギアはカムシャフトの駆動方式で、デスモドロミック機構はバルブを強制開閉する機構を指し、これは現代のDUCATIにも受け継がれているものです。
900MHRの空冷Lツインエンジンはカフェレーサーの王様と言われる同社の900SSと同系統のもの。
82年までのモデルはキック始動オンリーで、83年以降のモデルからセルモーターが搭載されました。
Lツインエンジンというレイアウトは現代のDUCATIでも受け継がれていますが、MHRのLツインはそれぞれの気筒に独立してキャブレターが装着されており、現代のLツインとはまったく違ったフィーリングです。

キャブレターは純正で直キャブファンネル仕様。
デロルト製のPHM40が装着されており、もちろんリンクなんてものはありません。
アイドリングでさえそれぞれのキャブレターを調整する必要があります。
2気筒用が付いているというよりは、単気筒用が2つ付いているというイメージです。
DUCATI MHRの魅力
2026年時点で初期型の発売から47年経過している旧車の900MHRですが、今なお人気を集める理由は様々あります。
唯一無二のスタイリング

カフェレーサースタイルのバイクは現代でも新車が発売されていますが、クラシカルなフルカウルスポーツの新車は発売されておらず、このスタイリングのバイクに乗りたいなら自然と当時のバイクを選ぶことになります。
旧車の中では900MHRはそこそこ情報があって、専門ショップなどもあるため、比較的乗りやすいクラシックバイクだと思います。
このカウリングの造形美は900MHR唯一無二のもの。
スパルタンな旧車ではありますが、他に似たようなスタイルで現実的に乗れるバイクというのはなかなかありません。
ベベルエンジンならではの鼓動感

Lツインというエンジンレイアウトは現代でも受け継がれていますが、ベベルギアのデスモドロミックはこの時代ならではのもの。
現代のLツインエンジンとはまったく違ったフィーリングです。
特にアイドリングから低回転あたりが違っていて、一発ごとの鼓動感を強く感じることができます。
高回転まで回していくと現代のLツインにも通じるようなサウンドになってきますが、900MHRならではの迫力のある味わいは現代のマシンにはありません。

当時としてはスポーツエンジンでしたが、現代で言えばスポーツでは通用しないため、クラシックの味を楽しむ要素のほうが強いと言えるでしょう。
実際に乗ってみると、これでマン島TTレースを優勝したマイク・ヘイルウッドはすごいな…と身に沁みます。
そのため、フルカウルスポーツの形でクラシックDUCATIの味わいを楽しめるのが900MHRの魅力となっています。
スパルタンだからこその価値

900MHRは国産旧車とも考え方が違っていて、とにかくスパルタンなマシンです。
82年まではキック始動オンリーであり、当然失敗するとケッチンを食らうことがあります。
ハーレーのケッチンには逃げ方がありますが、ベベルのケッチンは逃げ方がないため、食らっても大丈夫なように蹴るしかありません。

おまけに純正はセンタースタンドオンリーで、サイドスタンドはありません。
社外のサイドスタンドを取り付けることはできても、キック始動する際はセンタースタンドをかける必要があります。
キック始動やセンタースタンド、キツイ前傾ポジションなどスパルタンすぎる部分が様々あるMHRですが、だからこそ「これ乗ってるんだ!」という自身の所有欲や、他のライダーからの反応は普通の旧車以上のものがあります。
キツイけど、そのキツさも含めてかっこいい、というのが900MHRというバイクです。
年式ごとの違い
900MHRは年式ごとに様々な違いがあります。
ここではメジャーなわかりやすい違いを解説していきます。
フレーム

初期型となる1979年式から1982年式まではナローフレームと呼ばれる横幅の狭いフレームが使用されています。
1983年以降の900MHRはセルモーターが搭載されたことにより、強度の高いワイドフレームへと変更されました。
セルモーターの有無でフレームが違うということも重要です。
カウリング

初期型の1979年式のフロントカウルはアッパーからサイドまで1ピース構造となっており、非常にレーサーに近い作りです。
それ以降の1983年まではアッパーとサイドが分割する2ピース構造を採用。

最終型となる1984年式も2ピース構造ですが、カウルの形が変更され、よりスリムで流線的な形となっています。
その後、排気量拡大版のMHR MILLEへと続いていきます。
900MHRがおすすめのライダーとは?

スパルタンなかっこよさ、男らしさが詰まった900MHRですが、誰もが乗りやすいと感じるバイクではありません。
所有するオーナーとして900MHRをおすすめできるライダーは、以下の項目をクリアできる方だと思います。
パーツを自分、またはお店で探せる方

900MHRはまだ優しいほうではありますが、パーツを探すのが大変なバイクです。
細かい部品が手に入らなかったりするので、その場合は海外も含めてパーツを探すことになります。
しかし、900MHRは新車発売当時全体の約7割が日本で販売されていたため、意外と国内にパーツが眠っている場合も。
もちろん海外にもありますが、自分のMHRの年式に適合するパーツを探すのはそれなりの苦労があります。
大変な場合は信頼できるショップにお願いするようにしましょう。
バイク王でも修理・販売実績があります。
「めんどくさい」を楽しめる方

900MHRの手間のかかり方は通常のキャブ車レベルではありません。
センタースタンドをかけるにもコツが必要であり、キック始動にもコツがあります。
言ってしまえば面倒なことが多いバイクですが、この面倒さはMHRならではのものであり、楽しみの一つです。
普通のライダーなら嫌だと思ってしまうようなことでも、このバイクのためならと楽しんでできる方ならおすすめできます。
性能よりも味重視の方

当時としてはフルカウルスポーツバイクだったMHRですが、現代のスポーツバイクはスペックが上がりすぎて比較になりません。
MHRはいわばクラシックフルカウルマシンです。
スポーツ面で勝負してもまったく歯が立たないため、クラシックマシンとしての味わいを重視したい方におすすめです。
この時代にしかない味は速さ以上の魅力があります。
900MHRの派生モデル
MHR MILLE

1985年から86年まで発売されたMHR MILLEは排気量を900ccから1000ccへ拡大させたモデル。
見た目は900MHRの1984年モデルとほぼ同じで、サイドカウルに「Mike Hailwood Replica Mille」と書かれているかどうかがわかりやすい違いになります。
こちらはセルモーター付きでコレクターの間ではかなり人気のモデル。
状態によっては900MHRよりも高額になることも少なくありませんが、現実的に乗るならMILLEのほうがおすすめです。
MH900e

900MHRの元ネタとなったNCR 900 TT1をモチーフに2000年にインターネットで2000台限定販売されたモデルです。
発売開始から30分で完売したと言われており、現代でも高い人気があります。
空冷Lツインエンジンを搭載していますが、MHRとは違っていて2000年当時の新しいもの。
当時のDUCATIデザイナーだったピエール・テルブランチ氏が手掛けたもので、900MHRとはまた異なる美しさや迫力を感じることができます。
走る芸術品とも言われる900MHR
バイクは走ってなんぼの乗り物ですが、900MHRのような旧車は少し扱いが違って、走るだけでなく見て楽しむという要素もあります。
ほかにないバイクだからこそ価値が高く、クルマで言えばクラシックフェラーリを所有するのに近い部分があるかもしれません。
しかし、走らせたときのフィーリングは絶品。
こんなに気持ちよく乗れるエンジンはなかなかありません。
伝説的な旧車なので、扱えるお店は少ないですが、バイク王では900MHRの修理・販売も実績があり、モータージャーナリストの宮城光さんもバイク王で1984年式の900MHRを購入されました。
憧れのバイクに乗るのは後回しになりがちですが、乗ったら旧車バイクライフが充実することは間違いない1台なので、気になった方はぜひ一度程度の良いMHRを探してみてください。









