傷消しの秘訣は「攻めすぎない」。DIY補修でバイクとの距離を縮めよう
公開日:2026.05.25 / 最終更新日:2026.05.25
走行中に跳ね上げた小石による飛び石傷、キーホルダーやタンクバッグが当たった擦り傷、そして多くのビギナーが経験する「立ちゴケ」によるカウルやクランクケースの傷。
バイクの運転に慣れてツーリングやキャンプなど行動範囲が広がるほど愛車が傷つくリスクは増えますが、致し方ない面もあります。
本記事では「気になるけどショップに出すほどでもない」という傷を自分で修理する際の傷の見分け方から、必要な道具、具体的な補修手順までを体系的に解説します。
DIY修理ができるか否かは傷の深さで判断しよう
バイクに乗り始めて1〜2年ほど経つと、どうしても避けられないのが「細かな傷」です。
見てくれなど気にせず、とにかく走るのが好きだというライダーもいますが、せっかく気に入って乗っている愛車なら、いつもきれいな状態をキープしたいと思うことでしょう。
そんな時に視界に入ると気になってしまうのが車体各部の傷です。
「なんだか気になるなぁ」そう思っているなら、DIY補修に挑戦してみる絶好のタイミングです。
実は、バイクの表面についた傷の中には、適切な道具を用意して正しい手順で作業することで、驚くほど綺麗に消える(あるいは目立たなくなる)ものもあります。
とはいえ、やみくもに磨いたり塗ったりすると、かえって状態を悪化させることもあります。
重要なのは自分のバイクの傷が「自分で直せるレベル」なのかを判断することです。
バイクの塗装部品の傷は、「表面だけの傷」と「塗装を貫通した傷」に大別できます(イラスト参照)

上のイラストで示すとおり、バイクの塗装は一般的に「下地→カラー層→クリア層」の3層構造になっています。
「表面だけの傷」とは
・表面を撫でた時に「爪が引っかからない」程度の薄い擦り傷で
・表面をコンパウンドなど薄く削って均す研磨で
元に戻ることが多いものです。
具体的にはガソリンタンクのニーグリップする際にライディングパンツで擦れた痕や、出先の駐輪場などで駐車中に隣のバイクや自転車などが擦ったような場合です。
これに対して「塗装を貫通した傷」とは
・クリア層とカラー層を削っており
・表面を撫でた時に「爪が引っ掛かる」ぐらい深い傷で
・下地の金属やプラスチック素材が見えている
ようなものを指します。
この場合はコンパウンドで研磨してもカラー層がないため元には戻らず、塗装作業が必要です。
また立ちゴケなどにより、傷に加えてガソリンタンクが凹んでしまったような場合には、塗装だけでなく板金作業も必要になるため、DIY補修の領域を超えるためここでは説明を省略します。
判断が難しいのは、黒や紺など濃色系の塗装に付いた傷の判断です。
濃色系の塗装にもクリア層がありますが、浅い傷だとクリア層だけに白い傷が入る場合があります。
黒や紺のカラーに白い傷が付くのはショックですが、傷がクリア層だけに留まっていれば磨き作業だけで回復する可能性もあります。
その判断の基本は先述したとおり「爪チェック」です。
また、傷に水を掛けたときに傷が見えなくなるなら、それもクリア層のみの浅い傷だと判断できる材料となります。
傷の修理は深追いするとかえって傷口を広げてしまうこともあります。
まずは自分のバイクの傷が「自分で直せるレベル」なのかを判断しましょう。
磨きで終わるか塗装が必要か。作業内容によって準備したいもの
磨けば消える表面だけの傷も塗装が必要な深い傷でも、補修には道具が必要です。
道具選びで妥協すると、仕上がりに差が出るだけでなく、余計な傷を増やす原因になります。
最低限、以下のものを揃えましょう。
洗車道具
傷を消すのに洗車は無用と考えるかもしれませんが、塗装面に汚れやホコリが付着した状態でコンパウンドを掛ければ、かえって「スクラッチ」と呼ばれる細かい傷を付ける原因となります。
そのため、傷補修前の洗車は必須作業です。
必要なアイテム
- カーシャンプー
- スポンジ
- マイクロファイバークロス
研磨関連(表面だけの傷の場合)
傷がクリア層だけに留まっていれば、削れたクリア層を研磨して元のクリア層となだらかにつなげることで、傷が目立たなくなります。
これは崖を削って丘にするようなイメージです。
必要なアイテム
・コンパウンド
「粗目」「細目」「極細目(仕上げ用)」の3種類がセットになったものが便利です。バイク専用品でなくても、車用で代用可能です。
・スポンジまたは研磨用クロス
コンパウンドごとに使い分けるため、複数枚用意してください。古いタオルは繊維が荒く、逆に傷をつけてしまうのでNGです。
コンパウンドで傷消しを行う際は「細目」「極細目」といった名称の製品を使用する。これらは#1000より細かなペーパーの削り跡(ペーパー目)を消すことができる。
塗装面を硬いタオルや綿のTシャツで擦ると傷が付いてしまうこともある。傷消し作業を行う際はなおさら気遣いが必要で、マイクロファイバークロスなど塗装面を傷つけづらい素材を使うよう心がけよう。補修関連(塗装まで達した深い傷の場合)
傷が塗装を削ってしまった場合、塗装には段差ができて削れた部分が谷になるので、新たにカラー層を塗り直す必要があります。
バイクや自動車の塗装は汎用のカラースプレーでは色が合わないので、バイク用品メーカー(デイトナなど)から発売されている純正色対応の塗料を用意します。
必要なアイテム
- タッチアップペン(純正色対応品がベター)
- 脱脂剤(塗装面の油分を洗浄する下地処理用。ワックスオフ、シリコンオフ等の製品名で販売されています)
- マスキングテープ
- 耐水ペーパー(#1500〜#3000)
- コンパウンド
バイク用品メーカーのデイトナのイージーリペア。普通のマジックペンのように使える補修塗料で、各メーカーの純正色に対応した製品を販売している。
極細目耐水ペーパーの一例。これはシート状で専用スポンジに張り付けて使用するタイプのペーパーで、番手は2000番で非常に細かい。仕上げ関連
最後に研磨面や塗装面のコンディションを維持するための仕上げを行います。
必要なアイテム
・ワックスまたはコーティング剤
「表面だけの傷」を消すにはカラー層に到達しないよう削るのが重要
補修に必要なアイテムを準備したら、いよいよ作業開始です。焦らず、一段階ずつ進めるのが成功のコツです。
「表面だけの傷」を消す作業工程は以下の2パターンがあります。
パターン1
- 洗車して汚れを完全に落とす
- 水分を拭き取る
- コンパウンド(細目〜極細目)を少量つける
- 円を描くように軽く磨く
- 拭き取って状態確認
パターン2
- 洗車して汚れを完全に落とす
- 細かい耐水ペーパーで軽くならす
- コンパウンド(細目〜極細)を少量つける
- 円を描くように軽く磨く
- 拭き取って状態確認
パターン1と2の違い
パターン1と2の違いは「耐水ペーパー」の有無です。
耐水ペーパーはサンドペーパーと同様に、対象物の表面を削る研磨材料です。
サンドペーパーは数字(番手)が小さいほどザラザラ(粒度が粗い)で相手を強く削り、大きくなるほど粒度が細かく研削力が小さくなります。
クリア層を磨く際は#1000~#2000クラスの極細目を使用します。
ここで塗装前の下地調整で一般的な#280~#400クラスの粗い番手を使うと、クリア層に深い傷が付いてしまうため厳禁です。
クリア層の傷をコンパウンドで磨いても落ちない場合、コンパウンドより目の粗い研磨道具で擦って様子を確認します。
その際に極細目耐水ペーパーが重宝します。
ただし耐水ペーパーを使い過ぎてクリア層がなくなると、カラー層が削れて塗料の色が落ちてしまうので、ペーパー研磨はくれぐれも慎重に行うよう心がけましょう。
作業例では最初から耐水ペーパーを使用していますが、順序としては「コンパウンドで消える傷はコンパウンドで対応し」「それでも消えない傷は耐水ペーパーで研磨する」という2段階で対応するのが良いでしょう。
乗降時やライディング時にウェアやシューズがガスリンタンクに擦れると、このような傷が付きがちだ。これらがクリア層だけの傷か、カラー層まで達しているかは、耐水ペーパーやコンパウンドで軽く擦ると分かる。
ここでは#2000の耐水ペーパーでニーグリップ部分を擦ってみる。ペーパーをスポンジに張ることで、研磨時の圧力が均等になりムラが出づらいメリットがある。また研磨時にペーパーに水分を与えることで、削れたクリア層がペーパーに絡みづらくなる。
クリア層を研磨して艶消し状態になったら、超微粒子コンパウンドで研磨する。
マイクロファイバークロスによる手磨きでも充分だが、ポリッシャーを使用することで磨きムラが出ず作業時間短縮にも役立つ。
耐水ペーパーと超微粒子コンパウンドによりクリア層の傷が完全に消えて、美しい塗装が復活した。作業前とは印象が全く異なることが分かるだろう。「塗装を貫通した傷」は凹み埋めるように塗料を重ねてならす
傷がカラー層に達している場合、ペイントを使って色を塗らなくてはなりません。
広範囲に渡ってペイントしなくてはならない場合、缶スプレーやスプレーガンが必要になるため本記事では取り上げず、ここではDIYで補修が可能なタッチアップ塗装に絞って説明を行います。
タッチアップ塗装の基本手順
- 脱脂・洗浄(表面だけの傷と同作業)
- タッチアップペイントを傷部分に塗布
- 乾燥(数時間〜1日)
- 表面を軽く研磨して平滑化
- 凹みが埋まらなければ再度タッチアップペイントを塗布
- コンパウンドでぼかす
この作業は、タッチアップペイントは「塗る」のではなく「埋める」意識で塗布することが重要です。
道具選びの項目でも触れましたが、塗装の傷は平地が削れて谷ができたような状態です。
塗料の膜厚はとても薄いため、クリア層とカラー層が削れてできた谷を埋めるには、相当塗り重ねなければなりません。
ここで傷と傷以外の部分を一緒に塗ると、谷と平地に同時にペイントが載るため、谷が埋まる頃には平地部分が塗料で盛り上がってしまいます。
広範囲をペイントする際は、あらかじめ平地部分をサンドペーパーで削ることで谷部分との段差を少なくしておきますが、ピンポイントのタッチアップペイントの場合、作業範囲を絞り込むには平地部分はなるべく触りたくないのが本音です。
そこでおすすめなのが、小さな傷はタッチアップペイントで「埋める」ということです。カラー層が削れた部分に塗料を垂らして、乾燥して凹みが残っているようならまた垂らして、文字通り埋めるのです。
面倒そうに感じるかもしれませんが、地道に塗り重ねることで傷は必ず埋まります。
ただし一度に大量の塗料を塗布すると硬化不良の原因にもなるので、薄く塗って乾燥させる作業を繰り返した方が仕上がりが良くなります。
クリア層、カラー層を削り落として、ガソリンタンクの下地にまで達した深い傷の一例。このような状態ではコンパウンドも耐水ペーパーも役に立たない。
タッチアップペイントの塗装範囲を限定するため、傷ギリギリの範囲をマスキングテープで囲う。
デイトナイージーリペアは先端を塗装部分に押し付けると導体内部の塗料がジワジワと染み出してくる。傷の凹みに溜めるように塗装する際、一度に厚塗りすると表面が硬化しても内部は柔らかいままということもあるので、薄塗りを繰り返すと良い。
塗装と乾燥を繰り返して、傷による谷が埋まったら(凹みが見えなくなったら)#800程度の番手のサンドペーパーで表面を軽く擦る。
マスキングテープを剥がすと、イージーリペア塗布部分は元のクリア層より僅かに高く(厚く)なっているが、傷の部分はまだ凹んでいるように見える。ただ、傷による谷は埋まっているので、周囲のクリア層を研磨してみよう。
#2000の極細目耐水ペーパーで傷と周辺のクリア層を研磨する。力を入れすぎると深い傷がつき、ペーパーを指先で押すと磨きムラが出やすいので、研磨作業用のウレタンブロックに巻いて面で研磨する。
四角く盛り上がったマスキングテープで囲んで塗った部分の中に、傷跡の凹みが一部残っている。この凹みをペイントで埋めるか、凹みの周囲を削るかは状況によって異なるが、四角い部分が元のクリア層より高い(四角の周囲のクリア層が削れていない)ので、引き続き極細目耐水ペーパーで研磨する。
#2000で研ぎ進めると塗装部分が平滑になるとともに、残っていた凹みも目立たなくなった。再塗装部分にはクリア層がないので、研磨した痕が僅かに濃く見える。
クリア層を耐水ペーパーで磨くと白くカサカサになるが、水を掛けると透明感が一瞬回復する。この画像を見るとどこに傷があったのか、タッチアップペイントで傷を埋めたことも分からなくなる。
ペーパーを掛けた部分を超微粒子コンパウンドで磨く。元のクリア層とタッチアップした部分は塗膜の硬さが異なる(タッチアップ補修部分が柔らかい)ため、力を入れすぎると色が落ちる可能性もあるので要注意。
メーカーが新車塗装で使用する塗料と補修用の純正色の色味は若干異なるとはいえ、ちょっと離れればどこに傷があったのか全く分からない。これなら大半のライダーが納得できる仕上がりと言って良いだろう。










