バイクにはエンジンが発電した電気を一時的に蓄えておくためのバッテリーが搭載されています。
エンジンをかける前にキーを回して光る灯火類や、エンジンを始動するためのセルモーターなどもバッテリーからの電気で機能しています。

そのため、バッテリーに必要な量の電気が蓄えられていないとエンジンの始動ができない場合も。
今回はそんなバッテリー上がりとは何か、上がってしまった場合にできる対処法をご紹介します!

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バイクのバッテリー上がりとは

バッテリー上がりとは、バッテリーが蓄えている電圧に対して使用する電力が上回ってしまい、結果的にバッテリーの電圧が少なく、バッテリーの電気を使うことができない状態のことを指します。

「上がり」と言いますが物理的に何かが上下しているわけではなく、バッテリーが使えない状態のことです。

なぜ「上がり」という呼ばれるのかは諸説ありますが、昔は仕事を終わる時のことを「仕事から上がる」「仕事を切り上げる」と言い、上がるは終わると同意味で使われていたため、「バッテリーが上がった」=「バッテリーが仕事しなくなった」という意味で使われているという説もあります。

他にも池の水が無くなって「池が干上がる」という意味からも、バッテリーに上がるが使われるようになったという説もあります。

バッテリー上がりの予兆

バッテリーが上がってしまうとバイク自体が使えなくなってしまう状況ですが、これには予兆があります。
1つでも当てはまった方は愛車のバッテリー上がりが心配されます。

電圧が12.5V以下

一般的なバイクには12Vのバッテリーが搭載されています。
バッテリーに接続し、今このバッテリーは何Vの電圧があるのかをモニターしてくれるのが電圧計です。

上がってしまったバッテリーはこの電圧が12.5V以下になっており、電圧が足りない状態です。

テスターを持っていればバッテリーの端子に接続することでモニターすることができますが、日常的にチェックしておきたい方はキー連動の電圧計を取り付けてメーター周りに付けておくと乗るたびにバッテリーの電圧を数値化してチェックできるため、突然バッテリーが上がる心配が軽減されます。

セルの勢いが弱くなる

キーを回してセルボタンを押すと「キュルキュル…」とセルモーターが回転してエンジンが始動しますが、このセルモーターを回している電力はバッテリーに蓄電されている電力で回しています。

そのため、セルモーターを回したときに「いつもよりセルモーターの元気が無いな?」と感じたり「いつもより音が低い」「始動はできたけどいつもより長くセルが回っていた」などはバッテリー上がりの予兆かもしれません。
一度テスターや電圧計を使ってバッテリーの電圧を測ってみてください。

灯火類が暗い

エンジンをかけずにキーを回した状態でヘッドライトやウインカー、ブレーキランプがいつもより暗いと感じた場合はバッテリーが弱っていて、そのうちバッテリーが上がってしまう可能性があります。

エンジンが始動しないとヘッドライトが点灯しないバイクも多いですが、ウインカーやブレーキランプなどは機能するはずです。

エンジンを始動すると多少光量が上がるくらいはありますが、エンジンを始動していないと明らかに暗いと感じた場合はバッテリー上がりに要注意です。

ホーンの音が小さい

ホーン(クラクション)もバッテリーの電力を使用して機能しているパーツです。
エンジンをかけていない状態でホーンボタンを押すと音が小さかったり、アイドリング状態でホーンの音が小さいけどエンジンの回転を上げたら正常に鳴る、という場合もバッテリー上がりが心配されます。

アイドリングが不安定

これは一概にバッテリー上がりが原因とは言えませんが、アイドリングが安定しないというのもバッテリー上がり予兆として知られています。

信号待ちの途中で突然エンストしてしまったり、アイドリングがいつもより低い回転になっている場合、原因はバッテリーが弱っていて電圧が足りていないことにあるかもしれません。

ただし、キャブ車は燃調の問題やプラグ、エアクリーナーなどが原因になっている場合もあるので、疑わしく感じたら一度テスターや電圧計で数値化してチェックしてみてください。

バッテリー上がりの原因

ではなぜバッテリーが上がってしまうのか、ここからは原因と対策を紹介していきます。

バッテリーの寿命

一般的にバッテリーの寿命は2〜3年と言われています。
使用環境や頻度などによって前後するため一概には言えませんが、長期間同じバッテリーを使用している場合はバッテリーの寿命が近づいている可能性も考えられます。

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電装品の過剰使用

一般的にバイクのバッテリーはエンジンやコンピューターを正しく機能させるための電力とオプション品の使用なども視野に入れて多少余裕を持った電圧に設定されていますが、バイクから電源を取る電装品をオーナーが後付けした場合は過剰に電力が使用され、バッテリーが酷使されて劣化が進み、そのうち上がるということがあります。

USB充電くらいならまだしも、グリップヒーターや光量の高いフォグランプなど複数の電装品をバイクから電源を取って使用されている場合は要注意。
特にメーカーの純正オプション品以外の電装アイテムを大量に使用されている場合はバッテリーが上がりやすくなります。

灯火類の消し忘れ

地味に多いのがヘッドライトやウインカー、スクーターで言えばシート下収納スペースの中にあるライトなど、灯火類を消し忘れてそのままカバーを掛けて気づかず、次の乗ろうとしたときにはバッテリーが上がっているということ。

この点しっかりチェックしておけば防ぐことができますが、旧車には灯火類のみ点灯させる「パーキング」というキー位置があり、これに入れたまま放置してしまってバッテリーが上がってしまうという場合もあります。

慣れ親しんだ愛車でも家について早く一息つきたい、という焦りからやってしまうことがあるので、バイクを停める際にはよくチェックしておきましょう。

自然放電

これもよくあるパターンですが、長期間乗らずに放置したことによってバッテリーが蓄えていた電力を自然と放電し、いざ乗ろうと思ったときにはキーを回してもバッテリーが上がっていて始動できないということ。

新品バッテリーの場合はそこまで神経質にならなくても大丈夫ですが、基本一週間放置したらもうバッテリーの電圧は標準より低くなっていると思ったほうがいいでしょう。

バッテリーは放電を繰り返すと傷んでしまい、一週間だったのが5日、3日と蓄電できる期間が短くなっていくことも。
こまめに乗って充電させるか、しばらく乗らない場合はバッテリーを取り外しておきましょう。

バッテリーの充電不足

バッテリーに充電されている電気はエンジンの回転によって発電されたものですが、実は発電した電気と充電する電気は少し種類が違っています。
あくまで一般的なバイクでの話ですが、エンジンが発電しているのは直流、バッテリーに充電できるのは交流のため、間にレギュレーターという変換器が入って、電気を変換しています。

このレギュレーターが壊れるとバッテリーと、発電しているジェネレーターに問題がなくても充電されず充電不足になる場合があります。
この場合はレギュレーターを交換して正しく変換できるように修理しなければ最悪突然バッテリーが上がってしまったり、走っている最中に止まってしまったりすることもあるので要注意です。

配線の劣化

これは主に旧車や絶版車に当てはまることが多いですが、ハーネス配線の一部などが劣化してショートしていたり、途中で接触不良を起こしていたりすると十分に充電されず、バッテリーが上がってしまうことがあります。

普通に使っていて何回も不自然なバッテリー上がりを繰り返す場合は一度プロによる細かいチェックが必要です。

端子の緩みや接触不良

バッテリーを着脱する回数が多い方や、自身で整備される方に多いのがバッテリーを接続する際の端子の緩みや接触不良を起こしていること。
バッテリーを装着したら緩みがないか、キーを回して動かしても変化がないかなど、整備の最終チェックを入念にすることで防ぐことができます。

バッテリーの故障

バッテリーは内部に液体が入っており、この液体と内部の素材を化学反応を起こして蓄電することができます。
事故や転倒などによって内部のバッテリー液が漏れてしまって十分な量が無かったり、内部の素材が衝撃によって破損してしまうとバッテリーとしての機能が果たせなくなり、バッテリー上がりという以前に故障します。

バッテリー自体に損傷が考えられるほどの事故や転倒をしてしまった場合は、こちらもよくチェックしておきましょう。

バッテリー上がりの対処法

家でバッテリー上がりを経験するならまだしも、最も怖いのは出先でのバッテリー上がり。
もし突然バッテリーが上がってしまったらどうするべきなのか、パターン別に解説していきます。

キックスタート

エンジン右側にキックペダルが付いている場合は、セルではなくキックでのエンジンスタートが可能です。
セルとキックが併用されている車種はそう多くありませんが、もしキックペダルがある場合はキックスタートも試してみてください。

一度キックでエンジンがかかれば少しずつ充電される場合もあります。

押しがけ

主にキャブレター車に言えることですが、セルモーターが回らなくても下り坂や誰かに押してもらいながらギアを繋いでエンジンをかける押しがけができます。

ただし、インジェクション(FI)車の場合は押しがけできないことが多いので、一度バッテリーが十分な状態で押しがけできるかどうか試しておくと、いざという時安心かもしれません。

ジャンプスタート

車のバッテリーが上がってしまった場合に使われるのがジャンプスタート。
ブースターケーブルで別のバイクや車のバッテリーと接続することでセルモーターを回してエンジンを始動させるというものです。
他にも数回分のジャンプスタートが可能な容量のあるバッテリーを搭載したジャンプスターターなどもあるので、バッテリーが心配で荷物に余裕がある場合は持っておくと自分が助かることも、人を助けることもできるかもしれません。

バッテリーの充電

基本的にバッテリーが上がってしまった場合、専用のバッテリー充電器で充電して復活させるのが最もメジャーだと思います。
出先の場合バイク屋さんで充電することになると思いますが、バッテリー上がりだけが原因の場合は一番確実な方法です。

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バッテリーの交換

どうやっても充電されず、出先でバッテリーの寿命を迎えてしまった場合はバッテリーを交換するしかありません。
近隣のバイク販売店やバイク用品店などでバッテリー交換をお願いするか、充電済みバッテリーを買って交換しましょう。

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レッカー移動

最悪の場合、レッカーを呼んで自宅や近所のバイク屋さんまで運んでもらうパターンも。
しかし一番最悪なのは直ったと思って走り出してしばらくしたらまた充電されなくなり、再び立ち往生してしまうこと。
これが一般道ならまだしも、高速で起こったと思うとゾッとします。

不安な場合はレッカーをお願いしたほうが結果的に安かったという場合もあるので、必要だと思った場合は迷わずレッカーを呼びましょう。
任意保険の種類によってはレッカーが特約で付いている場合もあるのでよく確認しておきましょう。

バッテリー上がりの予防策

ここまで様々なバッテリー上がりの原因と対策を紹介してきましたが、一番良いのはバッテリー上がりを予防して十分な電力の充電ができなくなったらどこかで止まる前に交換しておくこと。
すぐにできるバッテリー上がりの予防策をご紹介します。

定期的にバイクに乗る

これが最も簡単でライダーなら誰もがやりやすい予防策といっても過言ではないでしょう。
最低週に1回30分は走るなどルールを決めておくと突然のバッテリーあがりを防ぐことに期待が持てます。

バッテリーはまず最初にエンジン始動に電力を使い、その後は充電されながら灯火類やプラグの点火に電力を使います。
そのため定期的に乗って充電しておくことでバッテリー上がりを予防し、電圧を極端に低下させないことでバッテリーの寿命を伸ばすことにも繋がる場合があります。

バッテリーを取り外す

雪が降るため冬季は乗らないという地域の方や、複数台所有していて乗らない期間があるという方はバッテリーを車体から取り外しておくと安心です。

車体に繋がっているだけでも少しずつ放電しており、端子を外して車体から取り外せば繋がっているよりも放電される量が少なくなります。
取り外して専用の充電器で充電しておくとより安心です。

電装系パーツを正しく使用する

シガーソケットやUSB充電、グリップヒーターに電熱ウェアの電源など、過剰に電動パーツを付けすぎないというのも予防策です。
特にシガーソケットなどはUSBポートと比べて使用電力が大きいため、極力使用電力の少ない電装品に変えておくというのも有効です。

早めのバッテリー充電・交換

日々の使用でバッテリーが弱ってきたと感じたら早めに充電、もしくは新しいものに交換しておくと安心です。
そのためにも電圧計があれば乗るたびに細かくチェックできるので、不安な方は取り付けておきましょう。

しっかり対策してバッテリー上がりを防ごう

どこまでも走れると感じたバイクでも、ガソリンと電気がなければバイクではなくかっこいい形の鉄の塊になってしまいます。
それくらいバッテリーはバイクにとって重要な部品なので、しっかりメンテナンスしておきましょう。

バッテリー交換はメンテナンス初心者でも比較的チャレンジしやすい作業ですが、手順を間違えると感電したり、最悪の場合ショートして別のパーツまで壊れてしまう可能性も考えられます。
メンテナンスに自信がない方はバイク販売店やバイク用品店に依頼するのが安心です。

正しいメンテナンス方法でバッテリーを維持していくことで、突然のトラブルを防ぐことができるかもしれないので、しっかりバッテリー上がりの予防をしておきましょう!

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筆者プロフィール

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