18000RPMからレッド! それだけでとんでもない話であり、当時のCBR250RR(MC22)は狂気の沙汰だと思ったもの。

ところが2018年にはCBR250RRの名前が復活。

なんだパラツインか、と思うなかれ。驚異の38馬力を発揮し、ちゃんと速いんだ!
これはこれでライバルを置き去りにする狂気じみた本気度を見せてくれたのだった。

旧・CBR250RR (MC22)

CBRの250と聞いて、完全に4気筒の方を指して「ニダボ」なんて言うのは、たぶん現在40歳ぐらいの人ではないだろうか。
50歳が見えてきた筆者世代では「ニダボ」なる言葉はなかったため、たぶんこの言葉はMC22型CBR250RRがそれこそ絶版車的価値を見出されるようになってからつけられた愛称のように思う。

そのCBR250RR、ルーツは1986年登場のCBR250FOURだ。
カムギアトレインのツインカム、17000RPMからのレッドゾーン、アルミフレーム。
自社も作っていた2ストロークのスポーツバイクを「4ストのホンダ」が迎え撃つようにデビューした。
翌年にはさっそくモデルチェンジしてフルカバードのカウルを纏い、スイングアームもアルミ化、リアにディスクブレーキを採用するとともに、レッドゾーンは18000RPMからと高回転化した。

それがRRへと進化し400版と共にデビューしたのは1990年のこと。CBR900RRよりも2年も早く「RR」の称号を得たのだった。

エンジン・フレーム共に新設計とされたが、基本的には前の型から引き継いだエンジンより目を引くのが独自の曲線を描いてそのエンジンを抱え込む「LCGフレーム」だ。
低重心化とマスの集中に本気で取り組んだ結果、重量物をなるべくエンジンに近づけ、重心位置から離れたものはなるべく軽量に、という思想があった。
シート高がわずか725㎜というのも、ライダーの重心をなるべくバイクの重心に近づけようという考え。これにより高い一体感を楽しめる。

CBR250RRは2ストでスポーツの最先端を行っていたNSR250Rにも勝てることを目指して作り込まれており、実際にレースをすれば瞬発力の高いNSRに競り勝つことは難しいものの、1周のラップタイムでは決して引けを取らないという話もあったほど。
高い実力は走り重視のライダーを虜にし、そして低重心の親しみやすさや足つきの良さで女性ライダー含め大いに人気を集めた。
94年のモデルチェンジでは新馬力規制により40馬力へと抑えられ、その後はモデルチェンジせずにモデルライフを終えた。

新・CBR250RR (MC51)

最近のCBR(250㏄)は2011年の水冷シングルCBR(MC41)から復活したといえる。
シングルでCBR? という一部マニアの心配はよそに、価格設定が優しかったこともあってスタンダードな機種として大変よく売れ、さらにはレースシーンも盛り上げてくれた。

しかしこのブームの火付け役はパラツインのニンジャ250。そしてヤマハのYZF-R25もやはりパラツインで、馬力も人気もあった。
ますます盛り上がる250㏄フルカウルの世界に対してホンダがついに本気を出したのが2017年。CBR250RR(MC51)の復活だ。

ライバルの上を行く38馬力エンジンも車体も完全に新設計。スタリングもシャープで灯火類もフルLEDで先鋭的だった。
250ccクラス初のライドバイワイヤを備え、ライディングモードも搭載。
倒立フォークやラジアルタイヤの採用もクラスを超えた装備であり、そして(ABSの有無やカラーリングによって)75万6000~82万8360円という高価格にもかかわらず大注目されこれまた大変によく売れた。

2020年にはさらにパワーアップを果たして41馬力に。そして2023年にはさらに1馬力上乗せえして42馬力に。MC22のCBR250RRがそうであったように、サーキットシーンでその高い実力を追求する人もいれば、公道で楽しむ人も多いという、本気度高いスタンダードスポーツバイク。
まさにホンダの「RR」の名に恥じない存在として今も広く親しまれている。

違うこと、同じこと

CBR250RRという同じ車名を持っていながら、エンジン形式もフレーム素材も、何も同じものなんてないじゃないかと思いそうなものだ。

ただ「RR」として最高のものを追求するという姿勢、そして妥協のない先進的なスポーツ性はもちろんのこと、それだけでなく万人が公道で存分に楽しめる仕上げとしている点などはかつての「ニダボ」と同じだろう。
さらに言えば同じCBR-RRシリーズの600や1000とも共通するコンセプトに思える。

妥協のないスポーツ性といえば、サーキットにおいては現在のCBR250RRはかつての4気筒のCBR250RRを凌駕するタイムを見せてくれることも多い。
もちろん、かつてのMC22でレースをする人が少なくなっている今、現在のCBR250RRの方が突き詰めている人も多いではあろうが、それにしても2気筒で4気筒に勝ててしまうのか、というところに素直に感心する。
かつてMC22が2ストのNSRをライバル視していたように、今のCBR250RRもどこかで同じ名前を持つMC22を意識しているような気がしてならない。

乗ればベツモノ

さて、今回のコンセプトが「対決」ではなく「比較」であるのは、新旧CBR250RRを取り上げて「どっちがいいのか」というのはナンセンスだからだ。
どちらも素晴らしい乗り物であって、どちらかを上げたり下げたりするものではない。なんといってもCBRのRRなのである。

その上で4気筒のMC22から話そう。
何よりも特徴的なのは超高回転エンジンだ。
18000RPMからレッドゾーン、普通に街乗りしていたって8000RPMとかが常用域なのだ。
普段からそんなに回りまくっていたら疲れてしまいそうだが、それが意外や苦にならないのが不思議だ。

8000から10000RPMも回っていても、そんなにフリクション感もなければ強いエンブレやぎくしゃく感もなく、気兼ねなくそんな高回転域を維持できるのである。

スポーツという意味で高回転域を使うと、これはもう、他にはない爽快感があった。
当時筆者は実際に1992年型のMC22を公道で乗っていて、さらにレースに参戦したりもしたが、高回転域を維持して緻密なカムギアトレインの音と元気な45馬力を満喫するのは本当に気持ちが良かった。
そして当時は他社も似たようなエンジン形式のモデルがあったものの、ホンダはその緻密さや扱いやすさで一歩抜きんでていたと思う。

ただ、現在はカワサキのZX-25Rがあるため、250㏄の4気筒という特異性は失われてしまったかもしれない。
現代の技術で作られているZX-25Rは、それはそれは緻密で扱いやすくしかもパワフル。250㏄4気筒をアップデートしてしまった感覚もある。

一方で車体はかなり年代と個性を感じるものだ。
初めて乗ったならば極端に低いシートや小柄な車体に驚くとともに、速く走らせようと思ったら違和感もあるだろう。
ただ、では速く走れないのかといえば決してそんなことはなく、今のバイクとは「違う」というだけだ。路面がやたらに近いためすぐに膝が擦れるし、重心が低いが故の安心感もある。
スポーツライディングがより身近に感じられる設定と言えるがそれでいて実力も高いのだから、そもそもスポーツバイクのトレンドとは何なのだろうと考えてしまう。

対する2気筒、MC51は格段にモダンだ。エンジンは4気筒でもなくカムギアトレインでもない、一般的な180°クランクパラツインのため、他と違う特徴や特筆すべき個性はないものの、とても緻密でライダーの意志通りの反応を見せるさまなどはかつてのMC22と共通するホンダらしさ、あるいはRRらしさを確かに持っている。

ただパワーが40馬力を超えてきた今でも、常用域で特別「速い」とはあまり感じないだろう。
極スムーズで、街乗りでもトルクフルで扱いやすいのは間違いない。ただ高揚感や「頑張ってるぜ感」のようなものはMC22に譲るといわざるを得ない。
180°クランクのパラツインが他にもあまりに多いため、その形式に慣れてしまっているというのがあるかもしれない。

しかし、そのイメージを置いておいて改めて高回転域を維持するような走りに徹すれば、なるほど確かに速いと感じられる。
パワーバンドの伸びはしっかりと存在し、その領域では車体がさらに軽量に感じられる。
レースシーンでMC51を使っている人からは、同じMC51でも最新モデルの方が明らかに高性能と言われているため、見た目はあまり大きく変化していなくとも、「RR」ブランドとして確かな性能向上を続けているというのも嬉しい。

そして車体はMC22とは比較にならないほど「今のもの」である。
シート高は790㎜まで高められ、これによってライダーはバイクの上に乗っかって、股の間でバイクを振り回す感覚や、高い重心位置から積極的にバイクを寝かし込んでいくような感覚が強い。
これはMC22の、車体と一体となって走る感覚とは大きく違い、世代間のスポーツバイクの思想の違いを強く印象付けられる。
ただどちらがイイかとは言えないのが面白いところだろう。
MC22の低重心の感覚は今のバイクには見られないが、それはそれで魅力があったのだ。

エンジンより車体

MC22とMC51を同じCBR-RRだと捉えると、どうしても4気筒か2気筒か、パワーはどうなのか、という話になりがちに思うが、先述したように一番の違いは車体構成や重心位置に対する考え方の違いであり、それにより生み出される全く違う運動性である。

実際に試乗して比較するとなると、エンジンの特性よりそちらのほうが強く印象付けられることだろう。

MC22はバイクと一体となって頑張っている感覚があり、どこかスポコン的なイメージもあるのに対し、MC51は高性能な機械をいかに上手に扱うかというライダーの本気度を問われるような感覚…とでもいおうか。…あくまで個人的な印象だが。

ただどちらもRRであることはゆるぎない事実であり、いずれも走り込めばホンダの本気を見せてくれるという充実感がある。比較はできても、やはり対決はできない新旧CBR250RRなのだ。

ネイキッド版に期待?

蛇足かもしれないが、CBR250RRのエンジンはJADEやホーネットというネイキッドにも転用され、そちらでも人気となった。
最高回転数は抑えられていたものの、常用域重視のネイキッドマシンにもこのCBRエンジンは良くマッチし、スタイリッシュかつ実用的なスタイルにスポーツバイクのスパイスを与えてくれた。

MC51エンジンもまた、形式こそパラツインながらMC22同様にストリート向けに常用域重視のチューニングをすれば新たな魅力を発してくれそうな気がしてならない。

シングルのCB250Rが絶版となってしまい、そして1000と750でホーネットブランドが復活した今、250ccホーネットの復活を勝手に期待しておこうと思う。

筆者プロフィール

ノア セレン

絶版車雑誌最王手「ミスターバイクBG」編集部員を経たフリーランスジャーナリスト。現在も絶版車に接する機会は多く、現代の目で旧車の魅力を発信する。青春は90~00年代でビッグネイキッドブームど真ん中。そんな懐かしさを満たすバンディット1200を所有する一方で、最近はホンダの名車CB72を入手してご満悦。