「ダブワン」の復活と歓迎されヒットしたW650は、確実にファンを獲得していって多くの人に愛された。

しかし排気量ゆえに大型二輪免許が必要。

250のエストレヤ、650のW、この二つの間を埋めたのが、W400だ。

※本記事に掲載されるバイクの画像はメーカーオリジナルの状態と異なる場合があります。

KAWASAKI W400

カワサキ、レトロ3兄弟

かつてのW1やW3はもう絶版車社会において殿堂入りの名車として不動の地位を確立している。
ZやCBよりもさらに旧く、英車を模しつつも独自の魅力を発するWは日本車黎明期を象徴するようなバイクだ。

そんなモデルが復活した!と歓迎されたのが1999年登場のW650。
カムはOHCになりしかもその駆動はベベルギア方式と当初のダブワン系とは異なっていたものの、バーチカルツインであることや、やはり英車を意識したような構成には確かに「Wイズム」が備わっていた。

発売と同時に広く受け入れられ、味わい重視のエンスーライダーから、ストリートでオシャレに乗ったりカスタムを楽しみたいライダーまで、そして意外や素直なスポーツ性を持っていたため元気に走る人からも支持された。

そしてカワサキにはこのW650より前からステキなレトロモデルがあった。
250㏄のエストレヤである。

こちらは1992年に発売されているのだからW650よりもだいぶ大先輩。
ロングストロークの空冷シングルで、ここまで書いてきたW650の魅力と同じものを備えていた。

そして同様に同じようなライダーに支えられてきたモデルだ。
よって、W650が登場した時には「エストレヤの大きい版」というイメージもあったものだ。

事実その後、各種ミーティングなどではWとエストレヤが一堂に集うことも珍しくなく、同じ支持層だったのは明らか。

そんな2台の間を埋めてくれたのがW400。
2006年に登場し、普通二輪免許ライダーにもバーチカルツインの世界を提供してくれ、カワサキクラシックシリーズを排気量違いで3機種にしてくれた。

意外やスポーティだったのか?

外観はまるっきり650と同じだったW400。
車体サイズや堂々としたスタイル、各部フィニッシュも一切見劣りすることなく、エンブレムを見なければ650と見分けるのは困難なほど、400㏄としては上質な仕上がりとなっていた。

エンジンも立派なバーチカルツインはそのまま。
排気量はボアをそのままにストロークダウンで400㏄に合わせ込んであった。

ただここには難しさもあっただろう。
W650はロングストロークならではのトルク特性やパワー感が魅力で、これを360°クランクと組み合わせることでかつてのダブワンやかつての英車と同じスムーズなフィーリングを作り出していたわけだが、ストロークダウンした400㏄版は逆にショートストロークエンジンとなっていた。

しかもその数値は72㎜×49㎜と、現在のニンジャ400(70㎜×51.8㎜)よりもショートなのだ。
これによりW650よりも1000rpm高い7500rpmで29馬力というスペックを発揮。

基本的に650と共通の車体を400㏄の排気量で成り立たせるための最適解を模索した結果だろう。
ただ650のズダダダッ!と押し出される感覚に対して、ビューン!と軽快にフケるその性格は、ルックスに反して軽やかでスポーティともいえるものだった。

シート高が低かった!

普通二輪免許ユーザーだけでなく、広く街乗りユーザーや女性ユーザーにも支持されたもう一つの要因は、シート高が765㎜と650の800㎜から35㎜も下げられたことがあるだろう。

これに加えて前後のサスセッティングも見直され、全体的に低重心な乗り味となっているのが特徴だ。

足つきの良さと低重心ならではの安心感、さらにキック始動のアームやセンスタの省略による軽量化も効いて、ルックスは同じなのに650に対して気軽さは確実に高かった。

また新車価格も同年式650の72万300円に対して62万8950円に抑えており、例えばドラッグスター400(69万5100円)など他社400㏄と競合できる価格に抑えられた。

またルックスは650のまま、400㏄クラスの価格に合わせることで新規ユーザーやより若いユーザーをターゲットにしていたこともうかがえる。

W400には独自の魅力はあったものの、どうもW650の陰に隠れてしまったようなイメージがあるのは発売年数の短さだろう。
各種規制のために650も2009年に絶版となったのだが、400もこれと同時に絶版、ということはわずか4年ほどしか販売されなかったということになる。

よって「Wに400なんてあったの?」とその存在すら知らない人がいたとしても不思議ではない。
わざわざ作った400が短命に終わってしまったのは惜しいが、それゆえ絶対数が少なく、現在では新車価格以上の値段で取引されている個体があるのも頷けるわけだ。

試乗を振り返る

シート高が35㎜低くなると、やはり乗り物としては別物感が強い。
比較するとW650が腰高でスポーツバイクに感じるほど、W400は低重心で落ち着き払った乗り味だ。

なるほどこれならエントリーユーザーや小柄なライダーから歓迎され、免許の区分に関係なく今でも指名買いする人がいるのもわかる。

エンジンは360°クランクのショートストローク仕様。
乗って思い出されたのは同じく空冷ツインで360°クランクであるホンダのホーク2である。

360°クランクらしく振動や雑味がなく、等間隔爆発でビューンとフケるその性格は回してこそ楽しいというもの。
別段スポーティさを狙ったモデルではないにもかかわらず、エンジンはついつい積極的に回して楽しんだのが良い記憶だ。

ただ、かつてカワサキの技術者に聞いた話では400㏄ならではのバランスを追求はできたものの、本来の意味で「Wらしい」パンチや味わいは表現しきれなかった、と悔しそうにしていたことも思い出す。

しかし一方で排気量ゆえの振動の少なさやスムーズさは650にはない性格。
650のようなパンチが少ないことを憂う向きもあるが、街乗りするにはむしろトルクが太すぎない方が楽な場面もあるし、同じ400㏄クラスのヤマハSR400のようなシングル勢に比べればツインならではの洗練されたフィーリングは魅力的。
なんといってもセル始動もありがたい。

650と比べてしまってはいけないのだ。
普通にテイスティな400㏄として見て、乗れば、上質で面白いモデルだと今でも思う。

フロント周り

正立フォークに19インチのフロントホイールは650同様の装備。
シングルディスクのブレーキもよく効く。
エンジン

堂々としたバーチカルツインは外観で650と見分けるのは難しい。

排気量ダウンはボアそのままにストローク量を減らして達成。
ストロークを減らしたことでかなりショートストローク型エンジンとなっており、低回転パンチが特徴だった650に対してマイルドでスムーズな性格となっている。

リア周り

18インチホイールにドラムブレーキも650同様だが、サスペンションは専用のセッティングとされる。
650では標準だったセンタースタンドは400では省略された。
2本出しのキャブトンタイプマフラーも650同様のスタイル。
シート

35㎜も下げられたシート高こそW400のアピール点。
シートの低さはそのままハードルの低さになり、新規ライダーや小柄なライダーに歓迎された。

筆者プロフィール

ノア セレン

絶版車雑誌最王手「ミスターバイクBG」編集部員を経たフリーランスジャーナリスト。現在も絶版車に接する機会は多く、現代の目で旧車の魅力を発信する。青春は90~00年代でビッグネイキッドブームど真ん中。そんな懐かしさを満たすバンディット1200を所有する一方で、最近はホンダの名車CB72を入手してご満悦。