車の運転はオートマチックが主流ですが、運転すること自体の楽しみを重視するバイクでは今でも自分でシフトを変速するマニュアルトランスミッションが主流です。

しかし、クラッチ操作や適切なタイミングでのシフト操作は教習所で教わるだけでなく、公道に出てしばらくしないと慣れた操作ができないという現状もあります。

それをサポートしてくれるのがホンダのEクラッチです。
今回はEクラッチとは何なのか、どういうサポートをしてくれるのかを初心者でもわかるように詳しく解説していきます。

Eクラッチとは?

Eクラッチはライダーのクラッチ操作による負担をサポートし、運転に余裕を持たせてくれるシステム。
2026年6月現在、Eクラッチが搭載されている車種は以下の表のとおりです。

排気量 車種名
250ccクラス レブル250
250ccクラス CL250
400ccクラス CBR400R
400ccクラス NX400
大型クラス CB650R
大型クラス CBR650R
大型クラス CB750 HORNET
大型クラス XL750 TRANSALP

Eクラッチ搭載車では自分でコントロールしたい時を除いて、左手のクラッチレバーを操作する必要はありません。
発進時の半クラッチ操作、シフトチェンジ時のクラッチレバー操作、停車時にクラッチレバーを握る動作はすべてEクラッチが自動で制御するため、ライダー自身が操作する必要はない便利なシステムとなっています。

それだけ聞くとスクーターのようなATと思うかもしれませんが、ATと違うのはあくまでクラッチ操作が自動化されるだけで、MT独自のシフト操作は必要だということ。
なのでAT限定免許ではEクラッチを運転することはできません。

ライダーが負担に感じるクラッチ操作のみを自動化できるシステムがEクラッチです。

Eクラッチの魅力

Eクラッチの魅力は様々ありますが、主にクラッチ操作、シフト操作を頻繁に求められる街乗りでこそ活きるシステムだと言えるでしょう。

信号が青に変わって発進する際、クラッチレバーには触れずにニュートラルから1速に落とし、スロットルを開けていくと自然と発進していきます。

1速から2速へのシフトチェンジ時もクラッチ操作は必要なく、左足元のシフトペダルを操作するだけでシフト変更ができます。

通常のMT車ではシフト操作時はクラッチレバーを握ってスロットルを戻し、シフトペダルを操作して、クラッチレバーを離すという流れになりますが、Eクラッチの場合はクラッチレバーもスロットルの戻しもなしでシフトペダル操作のみでシフト変更ができます。

停車時もブレーキ操作のみで停車でき、毎回ニュートラルに入れる必要はありません。
エンジンブレーキを使うために速度に応じてシフトを下げていくのがベストですが、停車してからシフトを1速へ戻しても問題ありません。

初心者にとってクラッチレバー操作のハードルは高いので、初心者の時にエンストしたり、うまくシフト操作ができなかった経験がある方もいるのではないでしょうか?

特に街乗りではこの一連の操作が信号ごとに求められるため、短時間走るだけでも通常のMT車とEクラッチでは疲れ方が大きく変わってきます。

Eクラッチはただ便利な一面があるだけでなく、クラッチ操作を自動化することでライダーのタスクが減り、より運転に集中できることで安全にも繋がるという魅力があるシステムです。

通常のMT操作も可能

Eクラッチ最大の魅力と言ってもいいのが、毎回クラッチ操作が自動化されるだけではなく、クラッチレバーをライダー自身が握って操作すると一時的に自動制御が無効となり、一般的なMT車と同じ操作が可能です。

半クラッチのタイミングを自分で制御したいUターン時や、サーキットで高回転を使った発進をしたいときなどはクラッチレバーを握るだけで制御が無効となり、自身の操作が反映されます。

同じ1台のバイクでクラッチを自動化したEクラッチモードと、通常のMT車と同様の操作を楽しむMTモードが使い分けできるというのがEクラッチ最大のメリットだと言えるでしょう。

Eクラッチの違い

Eクラッチは現在普通自動二輪クラスと大型自動二輪クラスそれぞれに搭載車がラインナップされていますが、レブル250とCL250のEクラッチのみ他のEクラッチの制御とは少し違っています。

レブル250とCL250はスピードメーターの下にEクラッチの制御を意味する「Aマーク」が表示されます。
クラッチレバーを握るとAマークの点灯が消え、Eクラッチの制御がOFFになっていることを示します。

クラッチレバーを離して数秒後に自動制御が再開されるため、Eクラッチをオフにするならクラッチレバーを握るしかありません。

400〜大型クラスのEクラッチは同じEクラッチでも制御の方法が少し違っていて、クラッチレバーを握ると制御が一時的にオフになるのは共通ですが、メーター上でEクラッチの設定を変更することができます。

制御をシステム上で完全にON/OFFの切り替えができたり、シフト操作時の繋がりがソフトかミディアムかハードか選択することができます。
シフトアップ、シフトダウンをそれぞれ設定できるので、シフトアップはハードに、シフトダウンはソフトに、という設定も可能です。

レブル250とCL250のEクラッチにはこの設定がないため、レバー操作でのみON/OFFの切り替えができますが、400〜大型クラスのEクラッチとは少し違っています。

DCTとの違い

豆知識として、ホンダにはデュアルクラッチトランスミッション、通称DCTと呼ばれるシステムも存在しています。
こちらは完全にATでクラッチレバーがそもそも装着されていません。

シフト操作は自動か上下のボタンで選択することができ、発進、停車時にもスロットル操作とブレーキ操作のみで走ることができます。

クラッチ操作もシフト操作も自動で行えるため、AT限定免許でも運転が可能なDCTですが、Eクラッチはシフト操作が必要で、クラッチ操作もコントロールできてしまうため、ATというよりは補助付きのMTという立ち位置です。

Eクラッチに向いているライダーは?

実際Eクラッチに向いているライダーは多いですが、どういうライダーにとって便利なのか各項目ごとに解説していきます。

クラッチ操作が苦手な方

教習所を卒業して公道でバイク本来の走る楽しみを感じる前に、運転操作に自信がなく、運転するだけで精一杯になってしまう方にとってEクラッチは救世主のようなシステムです。

Eクラッチを活用することでバイク本来の楽しみ方が見えてくる段階までショートカットできます。

正しいクラッチ操作を体で学びたい方

Eクラッチによるクラッチ操作はバイクに何十年も乗ったプロが操作するよりも繊細で上手で、毎回変わらない制御で行う機械には人間はかなわないでしょう。

どれくらいスロットルを開けたときにクラッチを繋ぎきるのが正解なのか、体でタイミングを覚えたいという方にもEクラッチはピッタリなシステムだと言えるでしょう。

街中を走る機会が多い方

Eクラッチはストップアンドゴーの多い街中を走る際に便利なシステムです。
通勤や通学で街中を頻繁に走る方はEクラッチにするだけで街乗りの快適さが大きく変わるはずです。

頻繁にシフトチェンジする方

シフトチェンジ時のEクラッチによる制御は間に半クラッチ操作を挟むことで滑らかに次のシフトへ繋ぐことができます。

通常のMT車ならスピードが低速のままシフトを上げるとギクシャクしてしまうところを最低限合わせてくれるので、頻繁にシフトを変えて走りたい方に向いています。

快適なロングツーリングを楽しみたい方

Eクラッチは街中だけでなく、高速などで長時間バイクで走る際にも便利なシステムです。
高速に乗ってからは基本的に上のギアで巡航することが多いですが、勢いよく加速したいときや、エンジンブレーキを使いたい場合はEクラッチによる自動制御のメリットを発揮できます。

巡航中にクラッチ操作なしで自由にシフトを変えていけるので、ロングツーリング時も快適に走ることができます。

Eクラッチに向いていないライダーは?

次に、Eクラッチが楽しめない、向いていない方について解説していきます。

クラッチ、シフト操作を自分で行いたい方

毎回のクラッチ、シフト操作は面倒に感じる方もいますが、一定数「面倒だから楽しいんだ」というライダーもいます。
自動制御の場合、手動のように「今回はうまくできた」などの楽しみは薄いため、バイクにそういう部分を求めている方にはEクラッチは向いていないと言えるでしょう。

一刻も早くクラッチ操作を自分でできるようになりたい方

これはEクラッチ唯一のデメリットと言っても過言ではない部分。
初心者が1台目からEクラッチに乗ってしまうと、自動制御に頼ってしまうことでその後通常のMT車に乗るハードルが高くなってしまいます。

まずは楽にバイクの魅力を感じたいという考えではなく、一刻も早くバイクの運転だけでなくバイクのMT操作のコツを掴みたいという方は通常のMT車のほうが適していると言えます。

古いバイクの操作が楽しいと思う方

将来的に旧車に乗りたいという願望があったり、旧車ならではの操作をしたいと思っている方はEクラッチではなく通常のMT車で経験を積むのがおすすめです。
Eクラッチは便利ですが、そういった古いバイクで感じる味わいやクラシックな雰囲気は一切ないため、そういった方がバイクに求めているものがEクラッチにはありません。

Eクラッチでバイクの深い魅力を探ろう

Eクラッチは向き不向きあるシステムですが、初心者ベテラン問わず、適しているライダーは多いと言えるでしょう。

長時間乗っていると疲労感につながりやすく、時には面倒に感じる事もあるクラッチ操作をEクラッチで制御してもらうことで、運転が楽になるだけでなく、運転に余裕が生まれて、景色を楽しんだり、ワインディングのような場所でバイクを左右に切り返すのを楽しんだりすることができるでしょう。
通常のMT車でそれを見つけるまでにはかなりの時間と経験が必要です。

「Eクラッチのおかげでバイクの運転がもっと楽しくなった」という声も多いので、特に初心者の方はバイク購入の際にEクラッチも選択肢に入れて検討してみてください。

筆者プロフィール

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