ヨーロッパなどで昔から非常に人気が高いカテゴリーがスポーツツアラーです。
その理由はツアラーとしての性能を高いレベルで満足しているだけでなく、走り自体も楽しむことができるから。
荷物の積載性に優れていて長時間の高速巡航も快適にこなし、出先で出てきたワインディングも満喫できてしまうという欲張りな人に最適なバイクなのです。
そんなスポーツツアラの魅力を詳しく説明していくことにしましょう。

スポーツツアラーとはどんなバイク?

スポーツツアラーとは、文字通りスポーツバイクとツアラーの性格をあわせ持ったバイクのことです。
エンジンは高回転パワーだけでなく、低中速も重視して乗りやすい性格になっているマシンがほとんど。
ハンドリングにも高い安定性が与えられているので落ち着いて走ることができます。
高速走行時やコーナーリングで安心感があるので、ベテランライダーたちからも高く評価されるバイクが数多くラインナップされています。

スポーツツアラーはツーリングに特化したバイク


スポーツツアラーはツーリングに特化したバイクです。
カウル(フェアリング)やウィンドスクリーンを装備し防風性能を高め、広いシートや大きな燃料タンクが装着されているバイクが多いので、長時間走行しても疲労が少なくなっています。
大型クラスのスポーツツアラーではクイックシフターやクルーズコントロール等の装備を採用し、高速道路での巡行が非常に楽にできます。

スポーツツアラーとスーパースポーツの違い


スーバースポーツは速さを徹底的に追求したバイクなので快適性や荷物の積載性はほとんど考えられていません。
それに対してスポーツツアラーの場合、ツーリングのための性能と装備が充実。
さらに速く走ることよりもワインディングを楽しく走れることが重視されています。
スーパースポーツよりも車体の安定感が高く乗りやすいので、スポーツツアラーの方がコーナーを楽しく走ることができるというライダーが多いのです。

スポーツツアラーとアドベンチャーの違い


荷物が搭載できて快適な移動ができるという点でアトベンチャーバイクはスポーツツアラーと似ています。
ただしアドベンチャーはオフも走れる自由さがあるというのが大きな違い。
スポーツツアラーはオンロードだけを想定して設計されているので、コーナーリングを楽しむという点においてはアドベンチャーモデルより気持ちよく走ることができることでしょう。

スポーツツアラーの人気車種


スポーツツアラーは世界各国で人気の高いカテゴリーなので数多くのマシンがラインナップされています。
今回はそんな中から国産に絞り、更にスポーツツアラー的な性格を持ったマシンなども含めて紹介することにします。

カワサキ Ninja250 (EX250L型)

Ninja250は2023年現在もカワサキから発売されているスポーツバイクです。
スポーツツアラーとしてカテゴライズされているわけではありませんが、実は2013年〜2017年モデルのEX250L型はスポーツ性能とツーリング性能のバランスがちょうどよいモデルとなっています。

現行モデルのNinja250と比較すると馬力等のスポーツ性能は劣るものの、燃料タンクは17Lと大容量。
この容量はなんとカワサキの250ccアドベンチャーバイクVersys-X 250 TOURERと同サイズ。
現行の250ccスポーツバイクは14L程度の燃料タンクを採用することが多く、燃料3Lは走行距離にすると50km以上の差につながることも。
ツーリング先によっては中々ガソリンスタンドが見つからずガス欠の不安がある事もありますが、大きなタンクであればロングツーリングでも安心感が強くなることは確実です。

また、セパレートハンドルになっていますが、HONDA CBR250RRなどのスポーツバイクと比較するとハンドル位置が高くポジションも楽になっています。

人気車種で中古車市場にもノーマル車からカスタム車まで多くの台数が出回っており、年式によって様々なカラーリングが発売されているため選択肢も豊富です。

また、EX250L型は型落ちモデルとなるため現行モデルと比較すると中古車両本体価格が落ち着いている傾向にあるのもポイント。
バイク初心者の方はABS搭載モデルや2015年モデル以降のアシスト&スリッパークラッチ搭載モデルを選ぶと安心でしょう。

ホンダ CB400SB

普通自動二輪免許取得時の教習車としても有名なネイキッドバイクCB400SFをベースにカウルを装着し防風性能を高めたモデルがCB400SBです。
バイクとしての完成度が高く、パワー、乗りやすさ、快適性、コーナーリング性能などが高い次元でバランスしています。
4気筒エンジンはホンダお得意のVTECを採用。
回転が上がってくると2バルブから4バルブに変わり、気持ち良い加速感を楽しむことができます。

カワサキ Ninja650

乗りやすさと速さに優れたミドルクラススポーツとしてヨーロッパを中心に人気だったEr-6をベースに発展したのがニンジャ650です。
649ccの水冷並列2気筒DOHC4バルブエンジンは低回転から力強いトルクを発生するので街乗りでもとても扱いやすいバイクです。

ホンダ VFR800F

VFR800FはV型4気筒エンジンを搭載するスポーツツアラー。
X字デザインのLEDヘッドライトを採用したシャープなデザインが特徴です。
ミドルクラスにカテゴライズされており、リッターバイクに比べると扱いやすいサイズ感になっています。
また、ホンダ得意の可変システムVTECを搭載し、低回転から高回転までよどみないパワーを発揮するとともに、スポーツツアラーとしての装備も充実しているのもこのマシンの特徴。
シートアジャスト機構を搭載しており、シート高を809mmと789mmの2種類から選択可能。
更にグリップヒーターや充電ソケット、ETC2.0などツーリングに役立つ装備を標準装備しています。
クイックシフターもオプションで設定可能なので、中古車購入時にはクイックシフターの有無も確認すると良いでしょう。

スズキ GSX-S1000F

スーパースポーツの性能を持ちながら、乗りやすい特性とリラックスしたポジションにしたバイクがGSX-S1000Fです。
スズキのスーパースポーツバイクでフラッグシップモデルとなるGSX-R1000のエンジンをストリート向けにセッティングしているのでポテンシャルはとても高く、スポーツツアラーの中でもスーパースポーツ寄りのモデルと言えます。

アグレッシブなデザインのフェアリングは防風性も高く、ツーリングでの疲れを低減。
他メーカーの同排気量スポーツツアラーと比較して新車の希望小売価格が低いので、中古車の車両本体価格も落ち着いているケースが多いというのもこのバイクのポイントです。

スズキ GSX-S1000GT

GSX-S1000Fの後継モデルとして登場したグランドツアラーがGSX-S1000GT。
本格派スポーツツアラーに相応しい装備を与えられています。
エンジンはGSX-S1000S同様にGSX-R1000をベースとして低速からのトルクを向上させています。
アプリを入れることでスマホと車両を接続するSUZUKI mySPINやスズキインテリジェントライドシステム(S.I.R.S.)を採用。
SDMS(スズキ・ドライブモード・セレクター)によりドライブモードを3タイプから選択することができます。
クルーズコントロール、アップ・ダウンに対応したクイックシフターも採用。
ETC2.0車載器も標準搭載されています。

ヤマハ FZ1 FAZER GT

ヤマハスーパースポーツバイクのフラッグシップモデルであるYZF-R1をルーツに持つモデルです。
高い動力性能を持ちながら、扱いやすさと優れたハンドリングにより、どんなライダーでも乗りやすいバイクになっています。
更にフルカウルとロングスクリーンを装備するなど快適性と実用性を考えられたスポーツツアラーです。

カワサキ Ninja1000 SX

Ninja1000SXは高い動力性能と快適性でとても人気が高いモデルです。
高回転域のパワーとストリートでの扱いやすさをバランスさせたエンジンには定評があります。
特徴は電子装備が充実しているところ。
スーパースポーツ譲りのIMU(慣性測定装置)によってトラクションコントロールやABSの完成度を高めています。
さらに高精度なABSシステムであるKIBSを採用したことで快適性や安全性を向上。
スマートフォン連携も可能で、クルーズコントロールも装備されています。

カワサキ NinjaH2SX

Ninja H2SX最大の特徴はスーパーチャージドエンジンを搭載していること。
低中速を重視したセッティングになっていますが、それでもスポーツツアラーとしては最強の動力性能を誇ります。
更に凄いのは最新の安全装備。
2022年モデルから、ボッシュ製のARAS(アドバンスト・ライダー・アシスタンス・システム)を搭載し、ミリ波レーダーで周囲の状況を検知するのです。
ARASには下記の3つの機能があります。

ACC(アダプティブクルーズコントロール)

前走車との車間距離を検知し、車間距離が短くなると必要に応じてブレーキをかけ、距離が開くと設定した速度まで加速します。

FCW(フォワードコリジョンワーニング)

自動ブレーキではありませんが、衝突の危険を検知してライダーに知らせてくれるシステムです。

BSD(ブラインドスポットディティクション)

後方のレーダーが後続車との角度や距離を検知し、死角から接近してくる後続車がある場合に警告を発してくれます。

夜間のコーナーリング中、バンク角に応じて前方を照らしてくれるコーナリングライトやクイックシフター、グリップヒーターも標準装備するなど、現在最も進んだスポーツツアラーと言えるでしょう。

ホンダ CBR1100XX

1990年代に国内メーカーが300km/hオーバーを目指して開発を行っていた時代、ホンダが作り上げたのがCBR1100XXです。
最高速、コーナーリング性能、快適性のすべてにおいて最高の性能を追求。
高空を高速で飛行することから撃墜が不可能と言われたアメリカ空軍の偵察機ロッキードSR71から名前を取り、スーパーブラッグバードというペットネームがつけられました。
前期型はキャブレターで後期型はインジェクション。
エンジンは2軸バランサーを装備していて振動も少なくなっています。
90年代に生まれたバイクですが前後が連動したコンバインドブレーキによって安定したブレーキングが可能。
広いシートは座り心地も良く快適なツーリングを楽しむことができます。

ホンダ NT1100

NTはニューツアラー(New Tour)の略。
その名の通り新しいツアラーの可能性を追求して生まれました。
エンジンとフレームはアドベンチャーバイクのCRF1100Lアフリカツインがベース。
オンロードでのスポーツ走行を考えた足回りに変更されています。
ホンダ独自のDCT(デュアルクラッチトランスミッション)やクルーズコントロールを標準装備。
ETC車載器も搭載されています。
ワインディングも楽しく走ることができるバイクです。

スズキ HAYABUSA

1999年に登場した先代のGSX1300Rハヤブサは最高速度312km/hを記録し、当時のギネスブックに世界最高速の市販バイクとして記録されました。
一時は排出ガス規制で姿を消しましたが2021年に名前をHAYABUSAに変えて復活。
アルティメット・スポーツ(究極のスポーツバイク)というコンセプトはそのままに電子装備が追加されました。
電子制御システムS.I.R.S.(スズキインテリジェントライドシステム)によって出力コントロールやトラクションコントロール、エンジンブレーキを5つのパターンから選択できるSDMS-aを制御。
シフトアップ、ダウンの両方に対応する双方向クイックシフトやクルーズコントロールが採用されています。

ヤマハ FJR1300A

世界最高水準の欧州縦断ツアラーを目指して開発されたのがFJR1300Aです。
ヨーロッパのライダー達に高く評価されているのは力強くシルキーな4気筒エンジンやコーナーリング性能に加え、快適性やタンデム走行での安定性などのすべての点で高い完成度を誇っているから。
電子制御スロットルYCC-TやLEDヘッドライト、高さを調整可能な電動スクリーンを採用。
上位モデルのFJR1300ASは電動調整サスペンションとヤマハ独自の変速システムYCC-S(クラッチレバーなし)やLEDのコーナーリングライトを装備しています。
2001年に誕生してから改良を加えられ続けてきましたが、2021年に国内モデルの生産終了が発表されました。
しかしロングセラーモデルなので中古車であれば購入することが可能です。

ホンダ CB1300SB

乗りやすくて高性能なネイキッドとして高い人気を誇っていたCB1300SFにカウルを装着したのがCB1300SBです。
低中速から力強いトルクを発生するエンジンによって余裕のある走りが可能です。
燃料タンクは21Lで長距離のツーリングでも安心。
上級グレードのSPにはオーリンズ製サスペンションやブレンボ製フロントブレーキキャリパーが佐採用されています。

カワサキ ZX-14R

驚異的な加速力を発揮するパワーを持ちながらに軽快なコーナーリングもできるというメガスポーツツアラーがZX-14Rです。
見た目は過激ですがとても扱いやすく、乗りやすいバイク。
1441ccエンジンは、実用域から極めて太いトルクを発生します。
日本では2019年モデルがファイナルとなりましたが、北米では継続販売されているので中古車、逆輸入車などで探すことが可能です。

中古スポーツツアラーの選び方


スポーツツアラーは長距離ツーリングの快適性を高めたモデルのため、走行距離の伸びた中古車が市場に流通することがあります。
走行距離が伸びている分、走行距離の浅い車両と比較して車両本体価格が落ち着いているケースも考えられますが、距離が伸びているということはそれだけ消耗品関係の劣化が進み購入後のメンテナンス頻度が高まる可能性があるということを踏まえておいたほうが良いでしょう。
そういった車両を中古バイク販売店で購入する際は、納車整備時にどのような内容の整備を行うか確認することも重要です。


ただ、スポーツバイクと比較すると高回転まで回して走ったりすることは少なく、乱暴な扱われ方をされるケースも比較的少ない印象のあるジャンルです。
元々信頼性の高いエンジンを搭載しているバイクが多いので、他のモデルほど走行距離にこだわる必要はないかもしれません。

外装


スポーツツアラーの多くは、カウル(フェアリング)に覆われているため転倒してしまうとカウルに傷が付き、場合によっては割れたり欠けたりすることもあります。
そのため購入時には外装の状態をよく確認することが重要です。

もしも外装の交換が必要な場合、純正のパーツはとても高価であることは念頭に置いておくべきでしょう。

オプションパーツ


トップケースやパニアケース等の積載性を高めるオプションパーツは通常購入すると高額な商品です。
予め装備されている中古車を選ぶと、後から取り付けるよりもお得になることことが多いです。

車種によってはクイックシフターなどがオプションとなっている事もあるため、オプションパーツの内容も確認すると良いでしょう。
同じバイクでも年式やモデルによっても装備が違うことがあるので、欲しいバイクを見つけたらそれぞれの年式と装備などに関しても確認することをオススメします。

スポーツツアラーはトータルバランスに優れた満足感が高いバイク


バイクに求められる性能のすべてを高いレベルでバランスさせているのがスポーツツアラーです。
しかも各メーカー力を入れて開発していることから所有する喜びを感じられるようなマシンが多いのです。
もしもここから先バイク選びで迷っているのであれば、スポーツツアラーを気にしてみると良いかもしれません。

筆者プロフィール

Bike Life Lab supported by バイク王

~バイクがあれば もっと楽しい~
すべてのライダーに贈るバイクコンテンツサイト「Bike Life Lab」では、お役立ちコラムからおすすめバイクロード、Bike Life Lab研究員によるお楽しみコンテンツまで幅広く掲載中。