様々な価値観が混在した、ポストレプリカの90~00年代。

もっとも大きなうねりはネイキッドブームだったが、特に都市部ではトラッカーやスクーター、そしてこの「アメリカン」が若者から支持を集めていた。

絶版車的価値も見出されつつある今、あのブームを振り返る。

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バイクブームの本質に迫る | Bike Life Lab|バイク王

昔からあった「アメリカン」

アメリカンブームと呼ばれるのは、主に1990年代の中盤に起きたムーブメントだろう。

96年に登場したドラッグスターの存在がそのブームを確実なものにして、各社ともに個性的なVツインクルーザーを400ccクラスにこぞって投入。
トラッカーブームやストリートファッションと連動し、またカスタムシーンも大いに盛り上がったというのがそのブームの正体だ。

XS650スペシャル

ただいわゆる「アメリカンタイプ」のバイクはずっと前から存在していた。
本当に遡るならばかつてカワサキのZシリーズにはLTDというアップハンドル&ラクチンポジションのバージョンがあったし、ホンダにも「カスタム」、ヤマハは「スペシャル」と、いわゆるクルーザースタイルのモデルを展開していた。

ただこれはここで言う「アメリカンブーム」とはまた違い、エンジン形式も4気筒が多く日本独自のクルーザースタイルだったといえよう。
エリミネーターなどもこの仲間かもしれない。

ビラーゴ400

時代をたどっていき、日本独自のクルーザーが「アメリカン」となったのは、80年代後半のカワサキEN400、ヤマハビラーゴ、ホンダスティードの登場あたりからだろうか。

Vツインエンジンではなかったものの確実にチョッパーを意識していたEN、そしてそれぞれ空冷と水冷のVツインエンジンを搭載したビラーゴとスティード。
ここが日本の「アメリカン」文化のスタートだと考えると、95年ごろの本格的なブーム開花に向けてかなりの助走があったことがうかがえる。

オッサンの乗り物からオシャレバイクへ

ビラーゴやスティードがデビューした当時は、どうにもオジサンくささが抜けなかった印象がある。
世の中はまだレーサーレプリカで湧いていて、やっとネイキッドなるジャンルが出始めたころ。
クルーザータイプのバイクはのんびり走るオジサンのものだったのだろう。

スティード400VLS

ところが時代がうつろいネイキッドが市民権を得ると、速さ以外にも様々な価値観が広がっていく。
そんな中ではTWやFTRに代表されるトラッカー系もあったし、スクーター系もあった。
いずれも当初は若者が興味を持つような「イケてる」バイクではなかったはずなのに、若者が飛びつきそこにカスタム文化が結びついたことで花開いていったのだ。

アメリカンブームもしかりで、普通二輪免許枠で乗れる堂々とした乗り物として若者がカスタムをし始めたのがきっかけだろう。
そこにショップが同調し新たな提案をしたことで最初はひっそりと、そして徐々に大きなブームへと繋がっていったのはトラッカーやスクーターと同様の現象だ。

一度こうして火が付けばメーカーも黙ってはいられない。
FTRが223で復活し、マジェスティがCでオシャレになったように、アメリカンブームもまた各社が「オジサンっぽくない」オシャレなモデルを展開しさらなるムーブメントとなっていったのだった。

各社各様のVツイン

先述したようにクルーザータイプのモデルは昔からあったわけだが、ビラーゴ、スティード、そしてバルカンも95年にはVツイン化し94年のスズキイントルーダーもVツインで登場したこともあって、このアメリカンブームなるものは「400ccのVツイン」というレシピで固まっていった。

ただ同じVツインでもそれぞれが個性的だった。
スティードは52°Vながら位相クランク(600は同軸でしかも4速だったが、600ccのためここでは省いておこう)で90°Vの爆発間隔という凝った作り。
ビラーゴは空冷で70°のVバンク。
燃料タンクをシート下に配置し、小ぶりなダミータンクを採用したのが特徴で、大きな空冷フィンがことさら目立っていた。

バルカン400

バルカンはパラツインで既にフォロワーがいたが95年に早くもVツイン化したところを見ると、アメリカンブームの到来を予見していたのかもしれない。
Vツインのバルカンは55°Vという挟角で、そのサウンドが「ハーレーに近い」と好むユーザーやショップもいた。

イントルーダー400クラシック

さらに挟角45°Vのイントルーダーはフロントに21インチ大径ホイールを採用するなど個性をアピール。
動き始めていたブームに対してそれぞれのメーカーが独自の提案をしてきていたわけだ。

そもそもブームというものはメーカーが乗っかってきてくれなければ実現しないだろう。
レプリカブームもネイキッドブームも、各社が切磋琢磨したからこそあれだけ盛り上がったのだ。

VMAX1200

逆にエリミネーターやVMAXが提案したあの世界はホンダのX4が追従したが、スズキが追従しなかったこと、そしてホンダもさらなる機種投入をしなかったことが「ブーム」へと繋がらなかった要因に思う。

王者「ドラスタ」の誕生

ドラッグスター400

確実なブームが形成されつつあった96年、ヤマハはビラーゴエンジンをベースとし、ロー&ロングな車体に搭載した「ドラッグスター」を発売。
スペックシート的にはビラーゴから発展した部分は少ないが、実はメッキシリンダーや鍛造ピストンを採用するなど大幅なブラッシュアップ。
他社を突き放す圧倒的人気を得て一気に「アメリカンブーム」を大きくしてくれた。

Vツインは挟角である方がハーレーらしくカッコいいという認識があった一方で、ドラッグスターはむしろ70°という広角Vを活かした重心の低さ、車体の長さをアピールした。
堂々とした乗り味と低重心からくる安心感、ハンドリングの素直さもまた多くのファンを獲得した要因だろう。
シート高はわずか660mm、ライダーの体格を選ばず、またビラーゴ時代から引き継ぐシャフトドライブもメンテナンスフリーでストリートバイカーにとってはありがたい設定だった。

ドラッグスター400クラシック

90年代も後半になるとヤマハはドラッグスタークラシック、ホンダはシャドウ、そしてカワサキはバルカンドリフターなどディープフェンダー仕様がラインナップされ、チョッパーとは違った重厚なアメリカンスタイルが提案されブームは続いていった。

250ccクラスはマグナ一人勝ち

アメリカンブームとは主に400ccクラスを指すはずだ。
ドラッグスターには1100もあったし、スティードには600、シャドウには750、バルカンには800、イントルーダーには800などそれぞれ大排気量版はあったものの、それらは少なくとも国内においてはブームとは言えなかった。

Vツインマグナ

一方で250ccクラスは静かにこのブームに追従していた。
大ヒットとなったのはVツインマグナ。

ビラーゴ250やドラッグスター250、エリミネーターV、ちょっとマイナーどころではマローダーなどもあったが、ヒットしたのはやはりVツインマグナであり一人勝ちと言っていい。

マローダー250

月刊オートバイ誌のバイクオブザイヤーでは、95年にこのVツインマグナが入っているが、400クラスではネイキッドが強く400ccアメリカンは一度もバイクオブザイヤーにはなっていない。

こう見ると、アメリカンブームは確かに存在はしたし特に都市部では多くの400アメリカンが走ってはいたが、ブームとしてはネイキッドのそれよりも小規模だったのかもしれない。
 

現代版アメリカン

レブル250

2000年代後半までドラッグスターやシャドウは小変更やバリエーションモデル展開で存在し続けたが、ブームは沈静化していた。
大型自動二輪免許が教習所で取得できるようになったことや、それに伴いハーレーが戦略的な価格で機種展開をしたことも影響しただろう。
また環境規制の強化により空冷車はもちろん、水冷でも設計が古いエンジンは継続が難しくなってきたという都合もあった。

ただやはり堂々としたスタイルと安心の低シート高というのはいつの時代でもニーズがあるようで、今もまたレブルというクルーザーモデルが大変によく売れている。
さらには400ccクラスでもエリミネーター400が快進撃を続けている。

これらモデルはVツインでもないし、スタイリング的にもアメリカのモデルを強く意識しているわけではない。
またクロームパーツなど煌びやかなスタイリングをしていたかつての「アメリカンブーム」車両とも違う。
ただ低シート高で、気軽に乗れて、堂々としていて、意外と実用的でもあるこういったモデルには、やはり普遍的なファンがいるということであり、むしろスタンダードなジャンルとして定着した感もある。

エリミネーター400

付け加えると最近勢いを見せている中国のQJモーターはSRV400というクルーザーモデルを展開。
こちらはVツインで、かつてのスズキデスペラードのように倒立フォークを奢るなどパフォーマンスクルーザーをアピール。
これがなかなか良い出来なのが面白い。

250ccクラスではレブルの一人勝ち。
400ccクラスではエリミネーターの一人勝ち。
他社も参入すればさらにこのカテゴリーは広がりを見せるだろうに…と当時のブームを知る筆者は思いをはせている。

おまけ

アメリカンブームが過ぎ去って久しいが、一部の400ネイキッドが絶版車として高値で取引されているのと同様に、今ではドラッグスターなどでも綺麗な車体は当時の新車価格以上で取引されることも珍しくなくなった。

さらにマニアックなところではバーチカルシングルのサベージなども熱烈なファンが絶えず、特に650cc版の方は絶版車的プレミアがついていることが多い。

サベージ650

こういったプレミアがつくということは、やはりあの頃に憧れた、あるいはあのムーブメントが青春と重なっているというユーザーがいる証。
「アメリカンブーム」というものは現在アラフィフのライダーたちの心に、確かに残った現象だったのだ。

筆者プロフィール

ノア セレン

絶版車雑誌最王手「ミスターバイクBG」編集部員を経たフリーランスジャーナリスト。現在も絶版車に接する機会は多く、現代の目で旧車の魅力を発信する。青春は90~00年代でビッグネイキッドブームど真ん中。そんな懐かしさを満たすバンディット1200を所有する一方で、最近はホンダの名車CB72を入手してご満悦。