バイクのエンジンガードとは?メリットやデメリット、選び方を解説!
公開日:2025.05.19 / 最終更新日:2025.05.19
バイクは二輪で走る乗り物ですが、二輪で走る以上必ず転倒のリスクがあります。
長くバイクに乗っているライダーでも転倒したことない、という方もいれば、何回も立ちゴケや転倒を経験するライダーもいるため、乗り続けていく上で絶対に転倒しないというのは難しいのが現実です。
しかし、そんな万が一の転倒時にバイクへのダメージを最小限に抑え、転倒後も自走して帰れる可能性を高めてくれるのがエンジンガード。
エンジンガードを取り付けるだけで万が一に備えて保険をかけることができ、少しでも不安を軽減してくれるパーツです。
今回はそんなエンジンガードのメリット・デメリットについて解説していきます!
バイクのエンジンガードとは

エンジンガードとは文字通りエンジンの保護を目的として取り付けるパーツです。
立ちゴケ程度ならまだしも、少しでも走っている状態で転倒すると、転倒の衝撃でエンジンカバーが割れてしまったり、シフトペダルやブレーキペダル、ステップが折れてしまい、自走できずにレッカーとなってしまうことも。
「エンジンガードを付けておけば壊れない」と言い切れるわけではありませんが、被害を抑えてくれるのは確かです。
モデルによってはメーカー純正でエンジンガードが取り付けられているものもありますが、基本的にはオーナーの意思で後付けする保護パーツになります。
エンジンガードを装着するメリット

エンジンガードを取り付けることで得られるメリットはパーツの保護だけでなく様々。
ここからは得られるメリットを各項目ごとに解説していきます。
エンジン保護

エンジンガードは文字通りエンジンをガードするためのパーツであり、パイプ製のエンジンガードを取り付けることで、万が一の転倒時に衝撃を受け止めることができます。
現在も新品のエンジンパーツが買える現行車ならまだしも、パーツ生産が終わってしまったバイクで転倒してエンジンカバーが割れてしまった場合、補修は簡単ではありません。
エンジンガード自体の損傷であれば比較的簡単に交換ができるため、エンジン保護の観点では高い信頼性のあるパーツといえます。
引き起こしがしやすくなる

立ちゴケなどで転倒した場合、車体と地面との距離が近いと体や腕さえも入れる隙間がなく、引き起こしが難しくなりますが、エンジンガードがあれば転倒時に車体と地面の隙間ができるため、付けていないバイクと比べて引き起こしがしやすくなります。
地面と隙間の少ない状態で倒れているバイクの引き起こしは想像以上に大変です。
車重の軽いバイクや慣れている方ならまだしも、重量級の大型車両やバイク初心者の方にとっては大きなメリットになると言えるでしょう。
転倒時の車体の傷付きを軽減できる可能性がある

状況にもよりますが、エンジンガード装着車では転倒時に角度がつくため、軽い立ちゴケ程度であればエンジン以外のパーツも保護できる可能性があります。
レバー類などは折れても予備パーツを用意しておくことで比較的簡単に対処できますが、ステップ周りのシフトペダルやブレーキペダルが転倒によって破損した場合は自走することができずにレッカーを呼ぶしか帰る手段がなくなってしまいます。
それらのリスクを予防するうえでもエンジンガードは重要な保護パーツと言うことができます。
足の挟み込みリスクの軽減

転倒時には車体に傷が付くだけでなく、ライダー自身が怪我をしてしまうケースも少なくありません。
稀にあるケースとして考えられるのが、転倒した車体と地面の間に足が挟まってしまい、自力ではバイクの下から移動できなくなってしまうこと。
車体が無事でもライダーが怪我をしてしまうと自走できなくなってしまう可能性が高いため、こういったケースにも予防策を張っておきたいところです。
エンジンガードによって転倒時に車体と地面の間に隙間ができるため、挟み込みによる怪我のリスクを軽減できます。
安心感が生まれる

バイクに乗り始めたばかりの初心者ライダーは運転に不安のある方が多いと思います。
「転んだらどうしよう」というプレッシャーから不安に苛まれてバイクを思う存分楽しめていない初心者の方も一定数いるはず。
エンジンガード装着車なら転倒による故障のリスクを最小限に抑えることができるため「転倒してもエンジンガードがある」という安心感で不安を軽減し、運転にも余裕が生まれるかもしれません。
エンジンガードを装着するデメリット
装着することで様々なメリットがあるエンジンガードですが、少なからずデメリットも存在します。
ここからはエンジンガードを装着したことによって生まれるデメリットを紹介していきます。
見た目を損なう事がある

必ずしも全てのバイクに言えることがではありませんが「エンジンガードはダサい」という声を挙げるライダーもいます。
エンジンガードの種類によっては車体の特徴以上にエンジンガードが目立ってしまい、マシン本来のスタイリングに影響を与えてしまうことも。
あまり目立たせたくない場合は大きさや形状、色に注目してエンジンガードを選ぶようにしましょう。
車両重量が増える

同じバイク用のエンジンガードでもメーカーや製品によって素材や大きさなどが異なりますが、エンジンガードを取り付けることで車両の重量が増えることは確実です。
とはいえ、よほど大型のガードでないと体感して分かる程度の違いにはなりにくいですが、小柄な方や女性の方、取り回しに不安のある方、車重の軽さを重要視している方は、取り付けるメリットと比較して付けるか付けないか判断してみてください。
バンク角が浅くなる

エンジンガードを取り付けることで車体が横に張り出すため、コーナリング時にバンク角(車体を倒す角度)が深すぎるとエンジンガードと地面が接触して擦れてしまう可能性があります。
エンジンガードを装着してすぐの時は、カーブやワインディングで車体を寝かせる際に慣れるまで注意しておきましょう。
ネイキッドバイクならまだしも、元々バンク角が浅いアメリカンバイクなどで大型のエンジンガードを取り付けると擦りやすいため要注意です。
傷を完全に防ぐことはできない

エンジンガードはあくまで転倒時の傷を軽減するものであり、必ずしも傷を防ぐことはできません。
転倒の状況によってはエンジンや車体に傷が付くこともあり、転倒の衝撃によってはフレームにダメージが入る可能性もあります。
そのため付けておけば絶対安心できるパーツではありませんが、被害を抑えることはできるためメリット・デメリットをよく考えた上で選びましょう。
エンジンガードとエンジンスライダーの違い

エンジンガードとは別にエンジンスライダーというパーツも存在します。
エンジンを保護することを目的としたパーツである事に変わりはなく、メーカーによってはエンジンスライダーをエンジンガードという名称で販売することもあります。
しかしこの2つには衝撃を受ける構造に大きな違いがあります。
エンジンガードは衝撃を「受け止める」構造に対し、エンジンスライダーは衝撃を「滑らせて逃がす」という構造となっています。

フルカウルのバイクは車体全体がカウルで覆われているため、パイプのエンジンガードを取り付けるにはカウルの加工が必要になるケースが多く、車種専用品の販売も少なくワンオフで作るにも高額な費用が発生するケースが多いため、エンジンガードではなくエンジンスライダーを装着することが多くなっています。
「エンジンスライダーでも良いじゃん!」と思われがちですが、バイクパーツメーカーのエンジンスライダーの商品ページや取扱説明書には
「転倒時の状況によってはエンジンスライダーを装着することで、非装着時よりもダメージが大きくなる可能性もある」
と記載されているケースもあるため、基本的にはエンジンスライダーよりもエンジンガードのほうが保護性能は高い傾向にあります。

車体の保護性能を取ってエンジンガードを取り付けるか、見た目を取ってエンジンスライダーを取り付けるかはオーナーの判断に委ねられるもの。
もし取り付けるのであれば海外製の安価な汎用品ではなく、有名メーカーの車種専用品を選ぶのがおすすめです。
エンジンスライダーに関する勘違い

「エンジンスライダーはレースで転倒した際に車体をコース外まで滑らせるためのパーツなので、エンジンスライダーを装着して一般道で転倒したら車体が滑って歩行者に直撃するような事故を起こしてしまう可能性があるので危険」ということがSNS等で噂になることがありますが、実はこれは勘違いです。
確かにエンジンスライダーは元々レースでの使用を想定して作られているパーツですが、転倒した際にコース外まで滑らせるためではなく、主に耐久レースなどで転倒した際に車体の損傷を抑えてレースに復帰しやすくする事が目的のパーツです。
実際に世界最高峰のロードレースであるMotoGPではマシンにエンジンスライダーを装着していませんが、転倒時にはコース外まで滑っているケースがほとんど。
コース外まで滑るかどうかは路面の摩擦係数や転倒時の速度も大きく関わっているため、「エンジンスライダーを取り付けることによって滑りやすくなりコース外まで出る」というわけではありません。
比較的知名度の高いバイクレースのレギュレーションでも「転倒時にコース外まで出す目的」としてスライダーの装着を義務付けている事例は無く「スライダーが付いている=滑りやすくなって危険」とは必ずしも言い切れない部分があります。
少なくとも国内では2025年時点で「スライダーを付けることによって転倒時の滑走距離が伸びる」という実証結果も出ておらず、憶測だけでこういった話がされることも。
本当に危険なのは転倒時に滑ってしまうことではなく、滑走距離が極端に長くなるような速度で走行したり、無茶な運転をしてしまうこと。
エンジンスライダーは法律等で規制もされておらず、メーカー純正でエンジンスライダーが装着された状態で販売されているモデルもあるため、公道走行時に取り付けることで車検が通らなくなったり、違反になるパーツではありません。
ただ、非装着時と比較してリスクが発生することも考えられるパーツには変わりないため、装着するかどうかはよく考えて決めるようにしましょう。
エンジンガードとサブフレームの違い

エンジンガードに見た目が似ているパーツとしてサブフレームというパーツがあります。
見た目は似ていますが、エンジンガードは転倒時にエンジンを保護する目的に対し、サブフレームは車体の剛性を高めてコーナリング時やブレーキング時の挙動を安定させる目的があります。
目的が全く異なるパーツのため、サブフレームはエンジンガードほど保護性能があるわけではないので、注意して選びましょう。
エンジンガードとバンパーの違い

バンパーはエンジンだけではなく、車体の保護を目的としたパーツです。
エンジンガードはエンジン周りのみに取り付ける事が多いですが、バンパーはエンジン周りだけでなく車体後方のマフラーなども保護してくれるものもあります。
パイロンや障害物のあるコースのタイムを競うジムカーナでもよく使用されることが多く、教習車や白バイに取り付けられているのもバンパーです。
エンジンガードとは少し違いますが、守ってくれる範囲がより大きいのがバンパー。
ただし車体専用設計のものが多く汎用が効かないため費用が高額で、取り付け時も加工が必要になる場合もあるため、バンパーよりは簡単に取り付けができるエンジンガードとはこの点でも違っています。
エンジンガードの選び方
これまでエンジンガードの様々なメリット・デメリットを紹介してきました。
でも実際に「愛車に取り付けができるエンジンガードを選ぼう!」という時、雰囲気や口コミだけで選ぶと失敗してしまうケースもあります。
ここからはエンジンガードの失敗しにくい選び方を解説していきます!
専用品と汎用品

エンジンガードには特定の車種専用に設計して販売されている専用品と、多数の車種への装着を想定して設計された汎用品の2種類に分けられます。
専用品はその車種での取り付けを想定しているため安心ですが、汎用品は専用品と比較して安価な分取付時に加工が必要だったり、取り付け自体ができないというケースも考えられます。
安いのは汎用品ですが、そもそも転倒時に守ってくれるほどしっかり装着できないと意味がないため、用意されているなら専用品、専用品が無ければバイク用品店やバイク販売店のスタッフさんと相談して、しっかり使えるエンジンガードを選びましょう。
形状

エンジンガードの形状は小さければ目立ちにくいですが、小さくなればなるほど保護性能も低下していきます。
引き起こし時も大きいほうが隙間が大きく起こしやすいため、装着するのであれば目立たなさで選ぶのではなく、保護性能もしっかり視野に入れて選ぶようにしましょう。
色
エンジンガード自体にメッキがかかっていたり、黒く塗装されているガードなど様々ありますが、フレームやエンジンの色と近ければ目立ちにくいため、車体全体のスタイリングに影響しにくい色のエンジンガードがおすすめです。
幅
取り付けた際にどれだけ車体から張り出しているかも大きなポイント。
張り出しが大きければその分保護性能にも期待が持てますが、その反面バンク角が浅くなるというデメリットも。
転倒時に地面との隙間が大きくなる張り出したエンジンガードにすべきか、隙間は小さくなるけど普段あまり目立たないガードにすべきか、よく考えて選ぶようにしましょう。
ドレスアップ

エンジンガードをドレスアップパーツとして考えるという選び方もあります。
特にアメリカン系のバイクは車体が横に出て迫力が増すため、似合うことが多く、実際ドレスアップパーツとして取り付けているオーナーさんも少なくありません。
正しいエンジンガードで愛車を守ろう
エンジンガードは操作に不安がある方や乗りたての初心者の方、未舗装路を走るオフロードバイクやアドベンチャーバイクなどにもおすすめです。
エンジンガードは活躍することが無いのが望ましいですが、取り付けることによって安心材料になるため、転倒する前に取り付けてこそ真価を発揮するパーツです。
バイクを守る事も大切ですが、大前提として事故を起こさない安全運転を徹底することが最も重要です。
取り付けにはパーツ代と取付工賃がかかりますが、万が一転倒してしまって車体に目立つ傷や大きな凹みができてしまった場合の修理費用や、売却して乗り換える際の査定額への影響を考えるとエンジンガードは決して高い買い物ではないと言えるでしょう。
中古車を検討している場合は最初からエンジンガードが付いている中古車を選ぶのも一つの手段です。
取り付けることでこれまでより不安なくバイクを楽しむことができるパーツなので、万が一の転倒に備えて愛車を保護しておきましょう!