バイクを購入し、ツーリングで山に行こうと考える人は多いことでしょう。
素晴らしい景色や峠道がある山はバイクを楽しむのに絶好のスポットです。

けれど注意しておきたいのが天気。
山の天気は変わりやすく、気をつけていないとつらい思いをすることになりかねません。

そこで今回は、なぜ山の天気は変わりやすいのか、どんな点に気をつけないといけないのかを初心者ライダーに向けて解説します。

山の天気は変わりやすい

山の天気が変わりやすい大きな理由は、風が山にぶつかると、斜面に沿って上昇したり、谷に集まったりするからです。

さらに、標高が高くなるにつれて気温が下がるため、空気中の水蒸気が雲へ変わりやすくなります。

そのため平地に比べて天気が急に変わりやすいのです。

山では空気が上昇して雲ができやすい

写真は鹿島槍ヶ岳。
この山にバイクが走れる道はありませんが、山の天気をイメージしやすいので使用しています。

写真左から風が吹いていたとすると、山の斜面に沿って空気が上昇することが分かると思います。
空気は上昇すると温度が下がります。

空気の温度が下がると、水蒸気が細かな水滴や氷の粒になり、それが集まって雲になります。
平地では青空なのに山の上のほうだけ雲に覆われていることがあるのは、このような理由からです。

標高が高くなるほど気温が下がる

山へ向かうツーリングでもうひとつ覚えておきたいのが、標高と気温の関係です。

一般的な目安として、気温は標高が100m高くなるごとに約0.6℃低くなります。
たとえば平地の標高がほぼ0mで気温30℃だった場合、標高1,000mでは単純計算で約24℃、標高2,000mでは約18℃になります。

ただし、これは空気の状態によって変わります。
乾いた空気が上昇するときは100mにつき1℃くらいの割合で温度が下がることもあります。

山の天気トラブル

山を走るときにいくつか注意しておいたほうが良いことがあります。
前述したように山の天気は急に変わるので、これらに対して準備と心構えをしておくことが重要です。

雨

山で天気が急変し、雨に降られるのはよくあること。
天気が変わって雨になるだけでなく、標高が高くなると途中から雨雲に入って雨になる場合もあります。

標高が原因で雨になっている場合は、引き返すと雨雲から抜け出られる可能性もあります。

寒さ

山に行くのであれば、寒さのことは強く意識しておく必要があります。
天気が崩れなくても、山を登って気温が下がるのが普通だからです。

「多少涼しくなるくらいだろう」などと軽く考えるべきではありません。
朝夕の冷え込みは日中よりも数段厳しくなりますし、曇りで太陽が出ていないときや風の強いときも同様です。

これらの要素が重なると体感温度は驚くほど低くなってしまうのです。

さらに雨に降られて身体を濡らしてしまうと、条件によっては低体温症などのおそれさえ出てきます。

霧や雲

山道では雨だけでなく、霧にも注意が必要です。
標高が上がって雲の高さと道路の高さが近づくと、道路そのものが雲の中に入ったような状態になることがあります。

それまで数百m先まで見えていたのに、カーブをひとつ曲がっただけで視界が数十m程度まで落ちることも珍しくありませんし、自分の足元がよく見えないくらいの酷い濃霧もあります。

霧の中では先が見えにくくなるだけでなく、前走車や対向車、路上の落下物などの発見も遅れます。
視界が悪化したら十分に減速し、前車との間隔を広めに取ります。

走り続けることに不安を感じる場合には、安全に停車できる場所まで移動して天候の回復を待つ判断も必要です。

強風

山では、強い風にも注意が必要です。

そもそも地表付近の風は、地面と空気とのわずかな摩擦で少し弱くなっています。
高度が上がると地表の影響を受けなくなるので、風の勢いが増すのです。

さらに山の斜面に当たった風が尾根の上を通り過ぎるときは、水道のホースの先端を潰したような状態になって勢いが増大し、バイクでは走れなくなるくらいの状態になることもあります。

関東近辺では西伊豆スカイラインの風が有名。
冬季は西からの強い季節風が吹くことに加え、尾根に沿って走るので横から強い風が吹き付けることがあります。

天気が急変するときに現れやすいサイン

山の天気は変わりやすいとはいえ、天候が崩れる前には周囲に変化が現れる場合があります。

空の色、雲の形、風、気温、雷鳴などに気を配ることで、危険が近づいていることに気づける可能性があります。

黒っぽい雲が増える

進行方向の山や山頂付近に、黒く厚い雲が増えてきたら注意が必要です。
夏場、白い雲が短時間のうちにもくもくと上へ伸び、やがて雲の底が暗くなってきた場合には、悪天候につながる積乱雲が発達している可能性があります。

峠道へ入る直前で雲が急速に発達している場合は、山へ入る前に一度立ち止まって最新の雨雲の動きを確認するほうが安全です。

急に風が強くなったり冷たくなる

それまで蒸し暑く穏やかだったのに、突然ひんやりした風が吹き始めたり、短時間で風が強くなったりした場合も、発達した積乱雲が近づいているサインのひとつです。

積乱雲の下では強い下降気流が発生し、その空気が地表付近へ吹き出すからです。

積乱雲は強い風や雨を伴うことが多いので、短時間で天気が急変する可能性があります。

雷鳴が聞こえたら要注意

雷の音が聞こえた時点で、周辺には雷を発生させる積乱雲があります。
山では見通しが悪く、尾根の向こう側にある雷雲が見えないこともあります。

そのため「雲は見えないからまだ大丈夫」と考えるのは危険です。
雷鳴が聞こえたり稲光が見えたりしたら、できるだけ早く安全な場所へ移動しましょう。

山に行くときの準備

山を走るのであれば準備が大切です。
「晴れているから大丈夫だろう」ではなく、「山の天候は変わる」と考えておくべきです。

出発前の天気を確認する

山へ行くときは、自宅周辺だけでなく、ルート上の複数地点の天気予報をチェックしておくと良いでしょう。
山の付近にある町の天気予報しか見られない場合は、標高の違いから気温を予測することができます。

ただし、麓が晴れていても山の天気が崩れている可能性があることはお忘れなく。

有料のスカイラインなどではホームページに天候がリアルタイムで表示されていたり、ライブカメラで様子を見られるようになっていることもあります。

レインウェアを用意しておく

山方面のツーリングでは、天気予報が晴れだとしてもレインウェアを持っていくべきです。

バイクで身体を濡らすのは禁物。
服が濡れると走行中に気化熱で体温を奪われることになります。

ただでさえ山で気温が低いのに、輪をかけて寒く感じます。

さらに服を濡らすと山を降りてからも大変です。
ツーリングでは山を降りてからも長時間走るケースが多いからです。

自宅や宿に到着するまで、延々と寒い思いをすることになります。

レインウェアは雨天時だけでなく、寒いときに防寒着として使うこともできるので、山に行くときやツーリングでは常に持ち歩き、取り出しやすい所に積むようにしましょう。

夏でも防寒対策を考える

真夏のツーリングでは、防寒という言葉がピンとこないかもしれません。

しかし前述のように、気温は標高100mにつき約0.6℃下がるのがひとつの目安です。
平地が30℃でも標高1,500mなら単純計算では約21℃。
さらに曇りや雨、強風が加われば、体感的にはかなり涼しく感じます。

そのため、薄手のインナーやウインドブレーカーなど、簡単に重ね着できるものを用意しておくと便利です。
標高の高い山では「9月頃のツーリングで冬用のジャケットが必要だった」という話も聞きます。

取り外し式の防寒用インナーがあるジャケットなら、インナーは持っていくと良いでしょう。
暑ければ着なければ良いだけのこと。

寒いときに防寒装備がないのは本当につらいものです。
そしてツーリングでは、その状況で走り続けなければならないということを忘れないようにしてください。

天候が悪化したら走らない

山道で天候が急激に悪化した場合には、引き返すことも重要な選択肢です。
強い雨、雷、濃霧、強風などが重なれば、難易度が大きく上がります。

楽しくないだけでなく、危険な目に遭うことになるかもしれません。
明らかに山の天気が悪いと分かったなら、目的地やルートを変更したほうが良いでしょう。

雨が止んだあとも路面状況に注意

雨が止み、青空が見えてきても油断は禁物です。

写真は奈良県の十津川村周辺の山道。
雨はあがっていますが、大量の水が流れ出して道路が川のような状態になっている区間がありました。

山道では日陰が多く、路面が乾くまで時間がかかる場所が少なくありません。
強い雨の後は、斜面から砂や泥、小石が道路へ流れ出していることもあります。

山の天気を知って安全にツーリングを楽しもう

今回は山の天気について解説しましたが、高速道路や国道でも標高の高い場所では同様の注意が必要だということは忘れないようにしてください。

山の景色やワインディングは、バイクツーリングの大きな魅力です。
天候が変わりやすくても十分な準備と心構えができていれば、怖がる必要はなく、逆に非日常を楽しむことができることでしょう。

天気と上手につき合いながら、安全に山のツーリングを楽しんでみてください。

筆者プロフィール

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