半世紀前に誕生し、現在も絶大な人気を誇るのがカワサキのZ1です。
世界中のライダーを熱狂の渦に巻き込んだ名車は、どのように生まれ、どんなマシンなのでしょうか?

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Z1はカワサキの北米進出の目玉だった

60年代、日本のバイクメーカーは世界へ挑戦していきます。
ホンダ、ヤマハ、スズキはロードレース世界選手権でチャンピオン争いを繰り広げました。

カワサキは国内のモトクロスで活躍してはいたものの、ロードレースへの本格参入はしませんでした。
その代わりに60年代中期から最大のマーケットである北米を意識したビックバイクの開発に力を注いたのです。

カワサキが初めて海外輸出をしたマシンは66年に登場したW1で、当時の国産車としては最も大きな650ccバーチカルツインエンジンを搭載した意欲作でした。

69年には2ストローク3気筒エンジンを搭載し、過激な走りを実現した500SSマッハⅢを投入し、北米を中心に大ヒットとなります。

しかしカワサキの本命はこの後に控えていました。
ニューヨークステーキというプロジェクト名を与えられた4気筒750ccマシンの開発を進めていたのです。

HONDA CB750Fourの登場がZ1人気の要因になった!?

満を持したマシンだったのですが、1968年のモーターショーで、ホンダが一足先にCB750Fourを発表したことから、プロジェクトは大きな変更を余儀なくされます。

実はホンダも北米市場を強く意識していました。
先行したホンダと同じ排気量ではインパクトに欠けるということで、CBを超える為の変更が加えられることになったのです。

こうして1972年、Z1が登場します。
排気量は900ccとされ、バルブ駆動はDOHCを採用。当時としては画期的なはいメカニズムでした。
圧倒的な高性能を実現しただけでなく、4気筒エンジンのスムーズなフィーリング、乗り心地、大きさを感じさせないハンドリングなど、すべての点でそれまでのバイクを大きく超えていたのです。

Z1発売当時のモデルのスペック

全長 2200mm
全幅 865mm
全高 1170mm
ホイールベース 1490mm
シート高 813mm
乾燥重量 230kg
エンジン 空冷4ストロークDOHC2バルブ
排気量 903cc
最高出力 82馬力/8,500rpm
最大トルク 7.5kgf・m/7000rpm
タンク容量 18L

 

「先に登場したCB750Fourを超えるバイクにしなければならない」
そんな命題が与えられたことでZ1の完成度が高まったと言うことができるでしょう。

Z1は発表されるや否や世界的な大ヒットになります。
国内では販売されず、日本のファンをヤキモキさせましたが翌73年には排気量を750にした750RS、通称Z2(ゼッツー)が登場し、これもまた人気マシンとなるのです。

CBとZに少し遅れはしますが、スズキも初めての4ストロークマシンGS750を発表し、並列4気筒は日本のバイクメーカーが最も得意とするカテゴリーに成長していくことになるのです。

Zはその後改良を加えられ、78年にはカフェレーサースタイルのZ1-Rが誕生します。滑らかな曲線でデザインされたZ1とは異なり、直線を基調としたこのマシンは、ビキニカウルやアルミキャストホイール、4in1マフラーなど当時としては斬新なスタイルで話題になりました。

80年代になると各メーカーのハイパワー化競争に拍車がかかり、続々と水冷マシンが登場しますが、KAWASAKIのZは80年代中期まで改良を加えられた生産され続けました。

Zのエンジンは頑丈でハイパワーに耐えることが出来た為、世界各国のチューナー達からも高い支持を受けます。
パワーアップされたZは国内外のレースでも大活躍します。

更にはZのエンジンをオリジナルフレームに搭載したスペシャルマシンも登場するなどしてZの神話が作られていくことになったのです。

Z1を筆頭としてZシリーズの人気は今でも高いままです。
堂々としたスタイルや空冷4気筒の力強いフィーリング、チューニングした場合の面白さなど理由は色々あるのですが、正しく整備されたZが旧車とは思えないほどストリートで乗りやすく、扱いやすいマシンであることを魅力だとする人もいます。

大きなマシンであることを感じさせない軽快で素直なハンドリングは、50年も前に作られたマシンだとは思えないくらいの完成度で最新マシンとは違った味わいがあります。

維持していくのもこの時代のモデルとしては容易です。
リプロパーツが多数開発されていることに加え、Zを得意とするショップも全国にあるので、初めての旧車として購入しても敷居は他のモデルほど高くはありません。
仮に中古車を手に入れたとしても名車Z1の本当の魅力を存分に堪能することができることでしょう。

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