軽い！普段着！進化する胸部プロテクターで安全ライド

バイクに乗るのなら万が一の転倒や事故に備えておくべきです。特に、頭部に次ぐ損傷主部位である胸・腹部を守るには胸部プロテクターの装着が欠かせません。そこで今回は、その考え方と製品例について紹介します。

ヘルメットと同じくらい大切な胸部プロテクターの装着

写真は、警視庁主催イベントで行われたスケアードストレイト（交通事故の再現）での１シーンです。バイクがクルマにぶつかった瞬間、ライダーは前方に放り出されます。その際に胸部や腹部がクルマのルーフ（屋根）やピラーに激突し、鎖骨や肋骨などの骨折につながります。この胸や腹部への大きな衝撃が死に至る原因となります。
警視庁の事故実態データによると、2010年から2014年の５年間でバイク乗車中の事故死者における損傷主部位は頭部が５割、胸・腹部が約４割とあります。つまり、義務化されているヘルメットだけでは事故の衝撃から命を守れないのです。ヘルメットと同じように走行中に胸部プロテクターを装着しておくことはとても大切なことだとわかります。

ＪＭＣＡが「胸部プロテクター推奨制度」をスタート！

胸部プロテクターの紹介に移る前に、ぜひとも知ってほしいことがあります。2016年８月に始まったＪＭＣＡ（一般社団法人全国二輪車用品連合会）による胸部プロテクター推奨制度です。これはＪＭＣＡ会員（バイク用品メーカーなど）が製造・販売する胸部プロテクターの中でヨーロッパ規格（欧州CE規格：prEN1621-3）をクリアしたものに限り上記ステッカーを貼ることで普及と装着向上の推進を図ろうというものです。
★１つのものはヨーロッパ規格レベル１に相当し、★２つのものはヨーロッパ規格レベル２に相当することを示しており、★が多いほど衝撃吸収力に優れることになります。バイク用品販売店などで目にすることと思いますので、プロテクター選びの際にはぜひ参考にしてください。

軽量・コンパクトなハードタイプで安全性を高めよう！

「胸部プロテクターは重くてゴツいから」と敬遠していた方も多いと思いますが、アールエスタイチが開発した「テクセル　チェストプロテクター」はヨーロッパ規格レベル２をクリアした製品としては世界最軽量となっています。水よりも比重の軽いポリプロピレン樹脂をハニカム構造で特殊成形することで高い衝撃吸収性能を発揮しながら厚さは17mm、重量はわずか200gに抑えています。既存の胸部プロテクターと比べてみると、これはもう革命的な製品と呼べるでしょう。

「テクセル　チェストプロテクター」はフィッティングベルトを使うことで体にダイレクトに装着できるので、ジャケットのメーカーやプロテクターの装着方式を気にする必要はありません。ツーリング、スポーツ走行会、安全運転講習会のほか日常的な通勤・通学や営業・配達業務などでバイクを使う方にもお勧めです。

また、「テクセル　チェストプロテクター」には女性専用設計モデルもラインナップされています。胸部や腹部など女性のボディラインにフィットするように成形されており、既存のハードプロテクターを敬遠していた女性ライダーにも支持されています。軽くて薄いのでタイトなライディングジャケットを着ている場合でもスリムなシルエットが維持できることでしょう

●問合せ先：株式会社アールエスタイチ
電話：072-874-3268

通学やバイト通勤などで気軽に着られるプロテクターシャツ！

成形プラスチックによるハードプロテクターが主流となっている胸部プロテクターにおいて、それとは流れの異なる提案を行うメーカーがデイトナです。「プロテクターアパレルシリーズ」として展開されるのは、一見普通のおしゃれなシャツやジャケット。しかし胸部や肩・肘・背中にはプロテクターが装着でき、安全性を高めることができます。

中でも今回紹介したいのは、ソフトタイプの胸部プロテクター（別売り）を装着できるワークシャツとデニムシャツです。どちらも前身頃の裏側に左右分割式のソフトプロテクターを収容できるポケットがあります。ソフトプロテクターは厚さ10mmと薄型ですが、瞬間硬化素材を使用し衝撃吸収性に優れています。

まずご紹介するのは、ゆったり目なシルエットでちょっとした街乗りや遊びの際にも気軽に羽織れるヘンリービギンズ「NHB1503 ワークシャツ」です。少し厚手の生地を使うことでアウタージャケットのように着ることもできます。ワークウェアによく使われるヒッコリーのシンプルな柄はどんなパンツにも合いそうです。

お次は、ヘンリービギンズ「NHB1502　デニムシャツ」です。アメカジの定番アイテムであるデニムシャツにもソフトタイプの胸部プロテクターが装着できます。８オンスという適度な厚さを持ったデニム生地を使い、スナップボタンには飾りをあしらうほか袖と襟元の裏地には柄生地を施すなど、シンプルな中に遊び心を感じさせる造りとなっています。

●問合せ先：株式会社デイトナ
電話：0120-60-4955（月～金9～18時　※指定休業日、祝祭日を除く）

いかがでしたか。アールエスタイチの「テクセル　チェストプロテクター」のような軽くて強いハードプロテクターは今後もますます開発が進むと思われます。一方で、デイトナの「プロテクターアパレルシリーズ」のように、とにかく気軽に着用できるようにソフトプロテクターとカジュアルファッションの融合を目指すメーカーも増えるのではないでしょうか。

転倒や事故がいつ起こるのかは誰にもわかりません。ヘルメットと同じくらい重要な胸部プロテクターですから、難しいことを考えずにまずはお店で試着してみてください。装着感は意外と気にならないものですよ。

筆者プロフィール

田中淳磨

二輪専門誌編集長、二輪大手販売店、官公庁系コンサルティング事務所等に勤務ののち二輪業界で活動するコンサルタント。二輪車の利用環境改善や市場創造、若年層向け施策が専門で寄稿誌も多数。