原付のツーリングの魅力や注意点について解説!
公開日:2025.05.21 / 最終更新日:2025.05.21
高速道路を利用して一気に遠方まで出かけるロングツーリングには、日常を離れ非日常を味わえる楽しさがあり、ビギナーからベテランまで多くのライダーが実践しています。
その一方で排気量の小さなバイクを使用した下道専門、中でも原付クラスのバイクを利用したツーリングに楽しさを見いだすライダーも少なくありません。
本記事では普段は通勤や通学の移動手段として活躍することの多いる50ccクラスのバイクを中心とした原付ツーリングの魅力や注意点について解説します。
原付ツーリングのデメリット

中型や大型のバイクに比べて一般的に荷物の積載量が少なく、制限速度や二段階右折など道路交通法上の縛りも多い50ccクラスの原付で行うツーリングには、普段の街乗りよりさらに多くのストレスを感じることも多いものです。
特に原付とは別に高速道路に乗れるバイクを所有しているライダーにとって、原付ツーリングにはある種の「覚悟」も必要です。
30km/h制限
中型や大型車、あるいは日常的に自動車の運転も行う中で、道路の左端を走行する50ccバイクに注意を払わなくてはならない場面は少なくありません。
地元ナンバーならまだしも、荷物を積んだ遠く離れた土地のナンバーがついた原付を見かけたら、明らかな違和感を覚えるでしょう。
立場が変わり自らが原付でツーリングする際に、この30km/h制限が大きな足かせとなります。
交通量の少ない郊外の道なら30km/hペースでトコトコ走っても周囲が気にならないでしょうが、走行距離を稼ごうと国道や幹線道路を選ぶと一気にストレスがアップするでしょう。
また制限速度が30km/hに規制されることで、走行距離が伸ばせないデメリットもあります。
中型や大型バイクの一般道路の法定速度は60km/hで、高速道路なら100km/h(新東名高速道路や東北自動車道の一部区間では120kmh)で走行することができます。
一般道の信号や高速道路の渋滞を加味しなければ、原付バイクで同じ距離を走行するための所要時間は2~3倍掛かることになります。
このため、1日あたりの走行時間が中型や大型バイクと同じなら移動距離が少なくなり、同じ距離を移動するなら長時間走行しなくてはならないことを理解してプランを立てることが重要です。
二段階右折が必要
法定最高速度30km/hに加えて、50ccの原付バイクでツーリングする際の大きなデメリットが二段階右折です。
「片側3車線以上の通行帯のある道路の交差点を右折する際は二段階右折を行う」ことが定められており、交差点の中央付近を小回りすると取り締まりの対象となります。
二段階右折を行う際は、左車線を走行しながら交差点手前で右ウインカーを出して直進し、交差点を渡った先でバイクの向きを変更し、進行方向の信号が青になったら発進します。
日頃から走り慣れた道路であれば、交差点ごとに二段階右折が必要か否かを把握している場合も多いでしょうが、ツーリング先で初めて走る道路や交差点では、一瞬で判断することが難しいかもしれません。

原付バイクは原則として第一通行帯(最も左側の車線)を走行しなくてはならないため「2車線の中央寄りを走行していたら交差点の手前で右折車線があって、そこだけ3車線になっていた」ということはないはずです。
だからといって3車線道路なら常に二段階右折かといえばそうとは限らず、中には二段階右折を禁止している場所もあるから厄介です。
その場合は交差点の手前に二段階右折禁止の標識がありますが、原付ツーリングライダーにとって車線の多い交差点は神経を使う場所であることは確かです。
二段階右折に関する詳細は以下の記事で解説していますので、是非確認しておいて下さい。
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パワーがない

水冷4ストロークエンジンを搭載した昨今の原付バイクは、法定最高速度の30km/hで走行し続けるにはパワーも耐久性も充分です。
しかし体重の重いライダーが大きな荷物を背負ってツーリングに出かけて山道に差し掛かれば、エンジンに掛かる負荷は一気に大きくなります。
その結果、中型や大型バイクに比べて常用するエンジン回転数が高くなり、高回転を連続的に使用する際のエンジン振動によりライダーの疲労感が増加します。
車両スペック上のパワーは充分でも、ツーリングのように負荷が大きくなる走行にはそもそも適していないということを理解しておきましょう。
走行できる道が限られる

高速道路や自動車専用道路が走行できないのはもちろん、一般道であっても幹線道路のオーバーパスやアンダーパスの中には原付バイクが走行できない場所もあります。
車線の幅が狭く速度差のある他車の追い越しが難しい、万が一の際の待避場所がないなど理由はいくつかあるようですが、そうした道路にうっかり進入して出口に白バイやパトカーがいれば違反として摘発されます。
これも二段階右折と同様、日頃から使い慣れた道路であれば規制の有無も分かるでしょうが、ツーリングで初めて走行する道路では注意が必要です。
通行禁止道路に関しては、原付だけでなくすべての二輪車の通行が禁止されている道路もあります。
また通行禁止となっていなくても、他の車両が法定速度の60km/hペースで走行しているような幹線道路では、速度差が大きすぎて危険な場合もあります。
だからといって30km/h以上で走行すればスピード違反となるため、そうした道路は避けた方が無難です。
原付ツーリングのメリット

先にデメリットを列挙することで「原付ツーリングは危険なだけで楽しくないのでは?」と感じたライダーもいるかも知れません。
しかし、さまざまな制限のある原付ツーリングには、高速道路を使って一気に距離を稼ぐ中型や大型バイクとは違う魅力もあり、そこに楽しさを見つけだす原付ライダーも少なくありません。
達成感を味わうことができる

法定速度や使える道路の制限など面倒な「足かせ」がある分、原付ツーリングには周到な準備が欠かせません。
特に宿泊を伴うツーリングの場合、中型や大型バイクのように「宿に間に合いそうもないからこの先は高速を使おう」というチートができないので、準備した上でコンスタントに走り続ける忍耐力も必要です。
楽しむためのツーリングで我慢するなどまっぴらゴメン、と思うかも知れませんが、困難を乗り越えた先の達成感を味わえるのが原付ツーリングの醍醐味と言えるでしょう。
気軽に乗ることができる
一般的に排気量や車体が大きくなるほど長距離走行が楽になりますが、低速時の取り回しや押し歩きの負担が増加する傾向にあります。
1000ccオーバーのアドベンチャーモデルなどがその典型例で、宿泊先でセンタースタンドを掛けるのにひと苦労することも珍しくありません。
それに対して50ccの原付バイクは圧倒的に軽くてコンパクトなので、押し歩く際の心理的負担は皆無と言って良いでしょう。
知らない土地の観光地に寄る際も、原付であれば駐輪場探しが容易である点もメリットです。
また、幹線道路を離れることで、グルメツーリングを楽しみたいライダーにとっては地元で愛されている飲食店に出会えるチャンスもあり、これもまた原付を活用する利点と言えるでしょう。
手軽に始められる
バイクの免許はあるが車両を所有していないなら、中型や大型バイクに比べて車体価格の安い原付バイクによりツーリングのハードルは下がるでしょう。
また普通自動二輪や大型自動二輪の免許がなくても、自動車免許があれば原付バイクをレンタルするだけでもツーリングにエントリーできるのです。
もしこれからバイクを購入する場合でも、自動車を所有していて自動車保険のファミリーバイク特約を使用すれば、バイク保険単体より大幅に安い保険料で加入することができます。
燃費が良い

ホンダスーパーカブに代表されるように、排気量が小さい原付バイクは燃費が良いモデルが多いのが特長です。
中型や大型バイクより所要時間が多く掛かるのは仕方がありませんが、ガソリンの消費量が少ない上にそもそも有料道路や高速道路料金が掛からないため移動経費が安く抑えられることも多く、その分ツーリング先の食事をグレードアップできる可能性もあります。
原付ツーリングの注意点
メリットとデメリットを比較した上で原付ツーリングに興味を覚えたら、できるだけ早く実行することをおすすめします。
しかし中型や大型バイクに比べて手軽に出かけられるとはいえ、原付ならではのルート設定やライダーの装備など事前の準備も必要です。
スマホの地図アプリが頼りになるといっても、一度も遠出したことがないのに片道200kmのプランを設定するのは無理があります。
できることから一歩ずつという点では、原付バイクも中型、大型バイクも同様です。
事前準備をしっかりと行う
行き当たりばったりで出発しても何も良いことはありません。
日帰りでも宿泊を伴うツーリングでも、先に挙げたような原付バイクならではの特性や条件をクリアした上で、安全に目的地に向かえるルートを設定しましょう。
スマートフォンのナビゲーションアプリを使用する際は、一般道優先で検索することはいうまでもありませんが、幹線道路に誘導される場合はその近くにある側道や旧道に目を付けておくことも有効です。
いきなり長距離を走らない

近所の買い物程度の距離では何も感じなくても、ツーリングで走行距離が増えるとシートスポンジの柔らかさや硬さ、ハンドルレバーの角度に違和感を覚えることがあります。
連続して走行することで疲労が蓄積して注意力が散漫になれば事故を起こすリスクも高まります。
長距離走行の経験が少ないライダーはいきなり長距離ツーリングに挑まず、1回目は30km、2回目は50km、…と無理のないペースで走行距離を伸ばしていくことをおすすめします。
また、原付ツーリングでは、1日の走行距離は最高でも150kmを一つの目安としておきましょう。
泊まりのツーリングで宿泊先まで200kmを超えるようなら、プラン自体を再検討しましょう。
中型や大型バイクと違って走行時間が増えると疲労が溜まるため、1日の走行時間が6時間前後になるようコースを設定しましょう。
ツーリング時間
法定最高速度30km/hであることを充分に意識して周囲の自動車やバイクに注意するのはもちろんですが、他の車両とかぶらないよう走行時間をずらすのも得策です。
平日であれば朝方や夕方の通勤時間帯は交通量が多いのは当然で、ちょっと広い道路ならバスレーンが設定されているかも知れません。
そこで日帰りツーリングであれば、混雑を避けるため通勤車両が増える前に出発して帰宅渋滞が始まる前に帰路につくよう、走行時間をシフトすることが危険回避やストレスを緩和に役立ちます。
休憩をこまめにとる
車体サイズが小さい原付バイクは路面の凹凸によって車体に振動が伝わりやすく、また中型や大型バイクと比較してサスペンションストロークも少ないため疲れやすいという特性があります。そのため休憩を小まめに取ることが重要です。
またスーパーカブのような空冷モデルは、夏場の連続運転によってエンジンの負担が増加して熱ダレすることもあります。
スロットルを開けた際のパワー感が低下したり、ギヤチェンジ時のショックが大きくなったように感じたら、エンジン冷却のために休憩しましょう。
すり抜けをしない
車体が小さいため狭い道でも走りやすいのが原付バイクの利点です。交差点で信号待ちする際はすり抜けして車列の先頭に出ておきたいという気持ちも理解できないわけではありません。
しかし、走行中に同一車線を併走する車両をすり抜けで追い越す行為は交通違反になる可能性が高く、接触転倒の事故につながる可能性があります。
また二段階右折で第一通行帯を直進する際、交差点内で併走する車両の左側をすり抜けると、左折する車両に巻き込まれるリスクもあります。
すり抜けの危険性については以下の記事で詳しく解説しています。
装備はいつもどおり

コンビニに買い物に出かけるような気軽さでツーリングに出かけられるのが原付ツーリングの魅力です。
しかしコンビニよりずっと遠い場所まで出かけるのであれば、フルフェイスヘルメットとプロテクター入り長袖ジャケット、ライディンググローブやシューズなどプロテクションにも配慮しましょう。たとえ30km/hといえども、装備次第では重大なケガに繋がるリスクがあることを知っておきましょう。
また急な天候の変化に備えて、日帰りツーリングでもレインウェアを持って行くといった準備も必要です。
ライディング時の装備については以下の記事で詳しく解説しています。
走るだけで楽しい。バイクの魅力を再発見できる原付ツーリング

大排気量車に慣れて高速道路で一気に長距離を稼ぐツーリングが当たり前になると、わざわざ下道を原付でトコトコ走るなんて話にならないと感じるライダーもいるでしょう。
しかし高速も使えず30km/hの制限速度に縛られた原付ツーリングには、誰もが免許取り立ての頃に体感した「バイクで走るのは面白い」という純粋な楽しみや喜びがあります。
1990年代、ヤマハが原付スクーターの初代ビーノを発売した際のキャッチフレーズが「うちから5kmの大冒険」でした。
ビーノは女性を意識したレトロスタイルのスクーターだったので、いつもの日常から5km離れるだけで冒険になることをイメージしたのでしょうが、原付バイクには自転車より行動範囲が広がるワクワクやドキドキが根源的に詰まっていると思います。
原付バイクの主な役割が通勤や通学など日常の移動手段であることは、これまでもこれからも変わらないでしょう。
しかし原付バイクにも中型や大型バイクと同様、日常から非日常に私たちを連れ出してくれるポテンシャルがあります。
そんな可能性を探るためにも、原付バイクに触れてみることをおすすめします。







