YAMAHA BRONCO -スキのなさが逆効果だったか?ヤマハの力作は今、注目を集めている-
公開日:2026.09.15 / 最終更新日:2026.09.15
90年代中盤、少し旧いオフ車などを改造して楽しむストリートバイクブームが起きる。
ヤマハはすでにカスタムベースとして大人気となっていたTWに続く提案として、ブロンコを提案。
それは97年とライバルに先行しての早い動きだった。
※本記事に掲載されるバイクの画像はメーカーオリジナルの状態と異なる場合があります。

YAMAHA BRONCO
ブームを察知する
ストリートバイクブームは、90年代中盤に向けてちょっと旧いオフ車を自分色にカスタムするところから始まっただろう。
ネイキッドブームやビッグスクーターブームと同時発生的ではあったのだが、XT200やTW200、FTR250、あるいは筆者も乗っていたが空冷のDT125などストリートで走るチョイ旧オフ車はオシャレでいてこだわりもあるように見えて憧れたものである。
またTWもFTRもいわゆる「オフ車」ではなく、トラッカー的要素があったのがまた良かったのだろう、それぞれ個性的なスタイルを謳歌していた。
こういったムーブメントに敏感なのがヤマハだ。
すでに87年にデビューしていたTWがこういったカスタムベースとして人気となっていたため、96年にはオフ車テイストを薄めてストリート的なカラーリングへとモデルチェンジ。
そして早くも97年、かつてのDT-1をイメージしたこのブロンコをデビューさせたのだ。
ライバルとも言えるホンダFTR(223)とスズキグラストラッカーの登場は2000年、カワサキの250TRは2002年ということを思えば、早い段階でこのブームに対応したのがわかる。
信頼のセローを超えるバランス
ブロンコがセローを超えると書いてはセローファンに怒られそうだが、少なくともストリートにおいてはセロー以上の適性を持っていたことは事実だ。
ミッションの1速と2速をセローよりもロングに設定したというのは、極低速域でトライアル的な動きも想定されたセローに対して、ストリートユースを主眼としたブロンコにとっては当然の変更と言える。
これに加え、シートに幅があったのも快適性という意味でとても良かった。
肉厚とは言えなかったもののフラットで幅があったため、尻の快適性はかなり向上していたし、タンデム部までフラットだったこともありタンデムライダーの乗り降りも容易。
アクセスのしやすさ、気軽さ、そしてストリートにおける実用性という意味でもセローを上回って見せた。
もう一つ良きバランスを生んでいたのはフロント19インチのホイールだ。
セローの21インチはオフ車としては定番だが、ストリートにおいては19インチの小回り性能やインチダウンによってもたらされる足つきの良さが利点。
またホイール小径化のおかげかブレーキもよく効いて、完全にセローベースであるのに見事にストリートスクランブラーとして生まれ変わっていたのだった。
力は入っていたのだが
かわいいタンクやクラシカルなウインカー、ゼッケンプレート状のサイドカバー、メッキのダウンフェンダーなど専用設計部品がとても多かったブロンコ。
コストをかけて作られていたのは一目瞭然で、ゆえに価格も相応に高価だった。
同年式のセローが37万9000円に対してブロンコは39万9000円と大差ないが、ところがカスタムベースとして大人気となっていたTW200は10万円もの差がある29万9000円だったことを思えば、ブロンコはストリートユーザーにとってはお高い選択肢だったことだろう。
また、TWは良い意味で野暮ったさがあり「カスタムし甲斐」があったのに対して、ブロンコは完成度が高くカスタムの余地が少なかったというのも、そういったストリートユーザーに刺さらなかった一因と考えられる。
ただでさえ力の入ったモデルだったブロンコ。
加えて10色もの中から選べるカラーオーダープランを用意するなど発展性も用意されたが、残念ながら一度もモデルチェンジすることなく絶版に。
決して死角のない魅力的なモデルだったはずだが、逆にそのスキの無さがストリートバイクブームの時代に合っていなかったのかもしれない。
試乗を振り返る
試乗というか、ブロンコは所有したこともあるためその魅力は良く知っているつもりだ。
フロントが19インチになっていることによりハンドル幅も抑えられ、全体的にセローよりもだいぶコンパクトなイメージだ。
1速2速はセローよりもロングとされているが、実際に乗っているとそれがとてもナチュラルで気になることはない。
自然にストリートに溶け込み、サイズ感含めてセローをよくここまで日常ユースに合わせ込んだな、と感心する。
ハンドリングもセロー以上に好印象だ。
セローはあくまで21インチのオフロード車なのに対し、フロント19インチとしただけでなく重量のあるスチールリムにしたことも効いているのだろう、小回りが利いて手の内感があるのに、その中にもしっとりと落ち着いた安心感があってワインディングだって得意なのだ。
またリアは18インチのままとしたことでタイヤの選択肢はオフもオンも豊富。
なおリアブレーキは同世代のセローがすでにディスク化していたのに対してドラム仕様となっていたが、これまた不満に思うことはなかった。
ではオフロード性能は犠牲になっているのかと言えば、林道ツーリングなどは十分にこなす実力も備える。
筆者はブロンコ所有時にエンデューロレースに参戦したこともあったが、特別良い結果を残せたわけではないものの楽しく周回することはできた。
少なくともリアにはグリップ力の高いオフロードタイヤを履けるし、クランクケースを守るアンダーガードが純正装着されていたのも嬉しかった。
洗車したり磨いたりする楽しさがあったのもブロンコの特徴。
先述したメッキリムもそうだが、ヘッドライトやウインカー、リアフェンダーなど磨き甲斐のあるパーツが多く所有欲が高い。
TWに対してだいぶ高価だ、と書いたが、こういった部分を考えると価格差なりの高級車であることも実感する。
乗っていた間のトラブルと言えば、ブロンコに限ったことではなくセローにも共通する持病ではあるが、しばらく乗らないと始動が困難というものがある。
キャブ内のガソリンが変質するのか、「あれ?かからない!」とセルを回し続けてバッテリーをあげてしまう、というのはブロンコだけでなくセローにも共通するクセだ。
こうなった場合はキャブのフロート室内のガソリンを抜いてあげて、フレッシュなガソリンを送り込んであげればたいてい解決した。
これさえ理解すれば、帰宅2キロ前ぐらいに燃料コックをオフにして、停車した時にはすでにフロート室を空にしておくというワザが有効だった。
このコツをつかめば始動困難となることはまずなく、そしてこの始動性の問題以外でブロンコライフにおけるトラブルは皆無だった。
様々な使い方を楽しませてくれたブロンコ。
最後は前後にキャラメルタイヤを履いてスクランブラースタイルを満喫していた。
何をきっかけに手放したのかは定かではないが、今でも「また欲しいな」と思う、等身大でオシャレなバイクである。
絶版車としての価値とトリッカーの存在
ここにきてブロンコは絶版車として一部から熱視線を浴びている。
きれいな車体なら新車時価格を大きく上回る価格帯で取引されることも。
わずか1代で絶版となってしまった希少性と、細部まで作り込まれた高級仕上げなどがそのステータスにつながったのだろう。
90年代のストリートブーム時には「完成されすぎていた」その姿も、今となってはフルノーマルで爽やかに乗ってあげたい。
なお、ブロンコを手放したことを後悔している筆者が今乗っているのはトリッカーである。
そして今思えば、トリッカーとブロンコは共通項も少なくない。
ブロンコのようなクラシックテイストでこそないが、ストリートを主眼としたオシャレな存在であること。
フロント19インチ(トリッカーについてはリアも16インチと小径)によりコンパクトな車体でライダーを選ばないこと。
意外やオフロード性能も確保されていること。
そして絶版後に(ブロンコほどプレミア化していないが)一定のステータスを得ていることなどである。
無理なく付き合い続けられるオシャレなバイクはいつの時代も受け入れられるのではないだろうか。

最大の特徴はフロントがベースモデルであるセローの21インチから19インチへと小径になっていることだろう。
この変更はそもそもブロンコはDT-1をイメージしたということもあるだろう。
DT-1は初の本格オフ車などと言われたものの、当時はオフ車と言ってもスクランブラーテイストでフロントは19インチが定番。
ブロンコも19インチとすることでスタイリング的に当時のバランスを実現している。
なおリムはセローのアルミからスチールメッキに。
磨けば輝くだけでなく、タイヤ交換時などに傷がつきにくいという利点もあった。
フォークはセローのリーディングアクスルから、通常のフォーク底部にアクスルがつくスタイルに。
オンロードでのナチュラルなハンドリングはこんなところからも来ているだろう。
スチールのダウンフェンダーも美しい。


メッキの丸ライト、メッキウインカーなどクラシカルなスタイルと磨き甲斐のあるエクステリアも魅力。
スピードメーターはかわいいアナログで、盤面はツートンとするなど細部までオシャレだった。
右側にコーションランプ類が四角く並ぶのは当時のヤマハの定番だ。

同年式セローのタンク容量は10Lに増やされていたが、ブロンコはちょっと少なめの8.3L。
タンクには+2万円でカラーオーダープランが用意され、全10色から選ぶことができた。
どれも個性的な色だったのだが、スタンダードのシルバーかイエロー以外見ることはまずない。
なおオプション設定だったとは思うがメッキタンクも用意されており、こちらは今でもたまに見ることがある。
むしろカラーオーダープランのカラーの方がレアだろう。

セローの225エンジンをベースに1速2速をストリートに合わせてロング化している。
純正でアンダーガードがついていたのはDT-1のオフ車イメージのためか、それともオフロード走行をあきらめていないというアピールか。
始動性困難への対処法は本文中の記載をご参考に。

左右のゼッケン風サイドカバーもまたブロンコの特徴。
エンデューロレースに出たときには特徴的なフォントでゼッケンを貼り付けて楽しんだ。
ストリートではこのキャンバスにステッカーを多く貼って楽しんだりもできた。

フラットで幅もあるため快適性はセロー以上。
筆者所有のブロンコには純正のキャリアを付けていたため、タンデムシート部と合わせて積載性も大変良かった。
なおタンデム性能もセローより格段に高い。

クラシカルなスタイルではあるが、ベースがセローのためツインではなくモノショックを採用。
リアホイールはフロント同様に鉄リムとなっていたが、サイズは18インチのままだったためオフロード向けのタイヤも選び放題だ。
ブレーキはドラムだが過不足はなく、車体のビジュアル的にむしろドラムの方が合っているだろう。

メッキフェンダーや大福型のテールランプなどクラシカルな雰囲気抜群。














