日本人ライダーである小椋藍選手の最高峰クラス初優勝で、いま日本のモータースポーツファンの間で盛り上がりを見せている「MotoGP」。

そんなMotoGPですが、来年となる2027年から、ルール(レギュレーション)が大きく更新されるのをご存知でしょうか?

最も大きなトピックは、エンジンの排気量が現在の1000ccから850ccへと縮小されること。
それに伴い、マシンの空力パーツ(エアロダイナミクス)などにも新たな制限が設けられ、大きな転換期を迎えます。

「排気量が下がるってことは遅くなるの?」「なぜわざわざルールを変えるの?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。
そこで今回は、最近MotoGPに興味を持ったという方に向けて、最高峰クラスの歴史と、これまでのルール変更によってマシンがどのように進化してきたのかを分かりやすく解説します!

そもそもMotoGPって? 「2スト500cc」からの切り替わり

© Honda Motor Co. Ltd.

そもそも「MotoGP」とは、モーターサイクルによるロードレースの世界選手権(FIMロードレース世界選手権)における最高峰クラスの名称です。
市販車ベースのレースとは異なり、各メーカーが持てる最高の技術を注ぎ込んで作った「レース専用のプロトタイプマシン」で競われます。
いわば“バイク界のF1”とも言える存在です。

実は、最初からMotoGPという名称だったわけではありません。
2001年までは「WGP(ワールドグランプリ)」と呼ばれ、最高峰は「500ccクラス」でした。
当時のマシンは「2ストロークエンジン」を搭載しており、じゃじゃ馬のようなとてつもないパワーと軽量な車体が特徴で、ライダーには神業のようなコントロール技術が求められました。

しかし、市販バイクの主流が環境に優しい4ストロークエンジンへと移行していく時代の流れを受け、レースの世界も転換期を迎えます。

2002年、名称が現在の「MotoGP」へと改められ、新たに「4ストローク990cc」のマシンが参戦できるようになりました。
最初の数年間は2ストと4ストが混走する異例の時代でしたが、圧倒的なポテンシャルを見せつけた4ストロークマシンの普及により、近代MotoGPの礎が築き上げられました。

排気量の変遷に見るマシンの進化

© 2026 Red Bull Content Pool

MotoGPマシンの歴史は、いわば「スピードとの戦い」と「安全性の確保」の歴史でもあります。

第1期:990cc時代(2002年~2006年)

4ストローク化により最高時速が330km/hを超え、モンスターマシン化が加速。
あまりのスピードに「速すぎてサーキットの安全基準を超えてしまう」という声が上がり始めました。

第2期:800cc時代(2007年~2011年)

安全性を高め、最高速を抑える目的で排気量が800ccに縮小されました。
しかし、排気量が減って車体が軽くなったことで、逆にコーナリングスピード(カーブを曲がる速さ)が上がり、ライダーへの身体的負担が増すという予想外の事態が起きました。

第3期:1000cc時代(2012年~現在)

コスト削減や、より迫力あるレースを取り戻すため、排気量は1000ccへと再び拡大。
現在に至るまでこの1000ccのレギュレーションが続いています。

勢力図を変えた共通化と空力・デバイス

© KTM Images/Polarity Photo

1000cc時代の中で、大きな変化だったのが「ルールの共通化」です。

かつてはエンジンを制御する頭脳であるコンピューター(ECU)は各チームが独自に開発し、タイヤも自由に選択していました。
しかし、資金力のある一部のメーカーが有利になりすぎるのを防ぐため、2009年に「ワンメイクタイヤ(全車が同じメーカーのタイヤを使う)」が、2016年に「共通ECU」が導入されました。
これによりMotoGPの勢力図は大きく変化することになります。

そして、近年のMotoGPを語る上で絶対に欠かせないのが「空力(エアロダイナミクス)」と「デバイス」の進化です。

現在のマシンのカウルには、F1カーのような「ウイングレット」が多数ついています。
これは走行中の風の力でマシンを地面に押し付け、加速時に前輪が浮き上がるのを防ぐためのものです。

ライダーの操作によって車高を下げ、加速時の前輪の浮き上がりを抑える「ライドハイトデバイス」まで登場しました。
これらにより、今のMotoGPマシンはかつてないほどの安定感と圧倒的なスピードを手に入れています。

さまざまなメーカーの参戦と撤退

こうした激しい開発競争のなか、多くのメーカーがしのぎを削ってきました。
日本のホンダ、ヤマハは長年絶対的な王者として君臨し、スズキやカワサキも世界中のファンを熱狂させる走りを見せました(カワサキは2009年、スズキは2022年をもって惜しまれつつ撤退しています)。

現在では、圧倒的な強さを誇るイタリアのドゥカティをはじめ、アプリリア(イタリア)、KTM(オーストリア)といった欧州メーカーが台頭しており、日本メーカーによる巻き返しと新たな覇権争いにも大きな注目が集まっています。

来年2027年、再び排気量縮小へ。変化の先にある新たなドラマ

© 2026 MotoGP Sports Entertainment Group

そして来たる2027年。
MotoGPは排気量を850ccへと縮小し、新時代を迎えます。

最高速を抑えて安全性を向上させるのはもちろんですが、大きくなりすぎたウイングレットなどの空力パーツにも厳しい制限がかけられ、車高調整デバイスも禁止される予定です。
また、地球環境に配慮し、100%非化石由来のサステナブル燃料の使用が義務付けられます。

空力やデバイスに頼れなくなる分、マシンを操るライダー自身の「腕」が試される場面が再び増えることでしょう。
スリップストリーム(前車の後ろに入って空気抵抗を減らす技術)も効きやすくなると言われており、今まで以上にアグレッシブな追い抜きが見られるはずです。

MotoGPはこれまでもルールの変更を繰り返しながら、その時代ごとの名勝負やドラマを生み出してきました。
今の1000ccと最新デバイスが織りなす究極のモンスターマシンの走りを楽しめるのはあと少し。
そして2027年からは、小椋藍選手ら次世代のライダーたちが、新たな850ccマシンで全く新しいドラマを魅せてくれるに違いありません。

進化し続けるMotoGPから今後も目が離せません!

文:河村 大志

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