カムギアトレーンとはどんな機構?特徴や採用バイクを初心者向けに紹介
公開日:2026.10.07 / 最終更新日:2026.10.07
現在主流となっているバイクのエンジンは、水冷4ストロークエンジンとなっています。
パワーだけでなく環境性能など様々な技術が投入されていますが、今の形のエンジンが生まれるまでには様々なメーカーの努力がありました。
今回はその中でも独自の音がする、高回転まで淀みなく綺麗に回ることで定評のある、ホンダのカムギアトレーンについて。
普通のエンジンとは違ってどういう技術なのか、カムギアトレーンが採用された車種など初心者の方がわかりやすいように詳しく解説していきます。
カムギアトレーンとは?

カムギアトレーンを説明する前提として、まずは4ストロークエンジンのことについて簡単に仕組みを解説していきます。
4ストロークエンジンは、回転するクランクシャフトにコンロッドを介してシリンダー内を上下するピストンが取り付けられています。
このピストンが1つなら単気筒、2つなら2気筒、4つなら4気筒のエンジンです。

そしてこのピストンの上、エンジンの一番上面に取り付けられているのがシリンダーヘッドです。
シリンダーヘッドには吸気用のバルブ、排気用のエキゾーストバルブがそれぞれ1つ以上取り付けられており、回転するクランクシャフトとバルブを動かすカムシャフトがカムチェーンでリンクされています。
これによってバルブが開閉することにより、ピストンが上下する燃焼室内で吸気・圧縮・燃焼・排気という工程を繰り返しているわけです。

少し難しい話が続きましたがカムギアトレーンとは、先ほど説明したクランクシャフトとカムシャフトを繋いでいるのがカムチェーンではなく、クランクシャフトからカムシャフトまで歯車で駆動する仕組みのこと。
通常はチェーンやベルトですが、ギアの駆動だけで回転を伝えているため、非常に高性能かつ緻密なセッティングがされているエンジンなんです。
カムギアトレーンが採用された理由
RC160カムギアトレーンが生まれたのは1959年まで遡ります。
浅間火山レースでデビューウインを飾ったRC160は、カムギアトレーンの原点となったバイクです。
それから25年間、レースの世界でカムギアトレーン技術を熟成させ、1984年に発売されたのがVF1000R。
市販車として世界で初めてカムギアトレーンを採用した水冷V型4気筒エンジンを搭載しています。
その2年後となる1986年には250ccクラスの市販車で初めてカムギアトレーンを採用したCBR250 FOUR(MC14)を発売。
その後2002年のVTR1000 SP-2までカムギアトレーンは続きました。
VTR1000 SP-2カムギアトレーンの最大のメリットは、超高回転域でも正確なバルブタイミングを実現できること。
チェーン駆動の場合、張り具合や伸びによってたわみが発生し、15,000rpmを超える超高回転域ではズレが発生することがあります。
このズレによってバルブとピストンヘッドが接触したり、パーツが破損してエンジンが故障してしまうため、これをどの回転域でも正確なタイミングでバルブを駆動させるためにギアを使ったのがカムギアトレーンです。
CBR250RR(MC22)チェーンではないため張り調整が必要なく、長期にわたって高い信頼性があります。
1990年に発売されたCBR250RR(MC22)は19,000rpmがレッドゾーンとなっており、カムギアトレーンならではの超高回転型のエンジンとして知られています。
通常はチェーンのところをギアで駆動させているため、独特のギアが噛み合う高周波のようなサウンドは、カムギアトレーンエンジンならではの音として多くのライダーに愛されています。
カムギアトレーンはなぜ終わった?

カムギアトレーンは高出力を狙うエンジンとしては当時画期的な技術でした。
しかし現代のホンダ車ではカムギアトレーンエンジンはありません。
カムギアトレーンが現代まで続かなかった理由として挙げられるのが、製造コストの高さ。
緻密な加工精度が求められ、部品点数、重量も多少増えることから現代のバイクでは見ない技術となっています。

また現代のエンジンは、回転数によってバルブタイミングを変える可変バルブが採用されているバイクも少なくありません。
カムチェーン自体の性能が昔に比べて大幅に向上したことにより、カムギアトレーンを使う必要がなくなりました。

現代は、90年代のようにバイクに高出力を求める時代ではなく、燃費や静音性が重視されるというのも大きな理由。
カムギアトレーンはバイク黄金期が生み出した高性能技術として後世に語り継がれています。
カムギアトレーンを採用した市販車
ここからはカムギアトレーンを採用したバイクで現代でも中古車として購入できるおすすめ車種を紹介していきます。
250ccクラスのCBRシリーズ
CBR250 FOUR(MC14)250ccクラスのカムギアトレーン採用車は人気が高く、旧車と呼ばれる古い年代の個体でもまだ現役で動いている車両は多々あります。
MC14型の正式名称はCBR250FOURで、250ccクラスの市販車で初めてカムギアトレーンを採用したバイクです。
他の250ccクラスのCBRに比べて手頃な価格で購入することができ、カムギアトレーンサウンドを楽しめるバイクです。
CBR250R(MC17)CBR250R(MC17)はCBR250 FOUR(MC14)の進化版で、ハリケーンというペットネームが追加されました。
タコメーターは2万回転まで刻まれており、カムギアトレーンサウンドが楽しめる超高回転型エンジンとなっています。
CBR250Rは年間販売台数2万台を記録し、発売当時大ヒットしました。
CBR250RR(MC22)250ccクラスのカムギアトレーンエンジンを採用したCBRシリーズの中で最も人気なのがCBR250RR。
4スト版NSRとも呼ばれるフルカウルスポーツで、峠小僧たちはこぞってCBR250RRに乗っていました。
この時採用されたファイヤーブレードカラーは現代でも復刻され、伝説的な存在となっています。(元ネタはCBR900RR)
現代でも人気があり購入することはできますが、ホンダ旧車ならではの苦労は必要なので、旧車に慣れた方ならおすすめできます。
JADE
JADECBR250RR系がベースのエンジンを搭載した4気筒ネイキッドマシン。
突き抜けるように超高回転まで回るエンジンフィーリングとカムギアトレーンサウンドは多くのライダーを虜にしました。
近年ヤンチャ系カスタムの方たちからも人気があり、徐々に値上がりしていますが、カムギアトレーンのCBR系よりは手に入れやすく、乗るなら今が最後のチャンスかもしれません。
HORNET250
HORNET250こちらもCBR250RR系がベースのエンジンを搭載したHORNET250。
JADE同様に4気筒ネイキッドのスタイルですが、HORNET250はよりスポーティーな作りとなっていて、リアタイヤは大型モデルと同じ太さのものを装着しています。
またカムギアトレーンのサウンドがわかりやすいのもHORNET250の特徴だと思います。
カムギアトレーンの250cc4気筒を楽しめる最後の世代のバイクなので、既に価格は高騰気味ですが、まだ乗れる範囲の価格で取引されることも多いので、手頃なモデルを探してみてください。
CBR400RR
CBR400RR(NC23)CBR400RRは当時のレーサーレプリカブームを代表するモデルで、水冷直列4気筒エンジンでカムギアトレーンを採用しています。
アルミマフラーやアルミホイールを標準装備しており、当時のスポーツフルカウルがいかにアツい時代だったかがわかります。
後のNC29よりも価格は安い傾向にあり、400ccクラスの直4カムギアトレーンに乗りたいならおすすめできるモデルです。
CBR400RR(NC29)CBR400RRの最終形態となるNC29型は、今でも400ccレプリカの名車として高い人気を持つバイクです。
マフラーを避けてバンク角を増やすため、スイングアームの片側が跳ね上がった形状になっているガルアームを採用しており、CBR250RRと同じくらい伝説的な存在となっています。
高回転ではカムギアトレーンサウンドを聴くことができ、この時代のホンダ車らしいサウンドを楽しめます。
VFR400R
VFR400R(NC24)水冷V4エンジンとカムギアトレーンが組み合わさったのがVFR400R。
片持ちスイングアーム、プロアームを市販車で初めて採用したのもこのバイクです。
V4独特の鼓動感とカムギアトレーンのギアノイズを同時に楽しむことができ、現代のバイクにはない当時の高性能を強く感じられるのもこのバイクの特徴です。
VFR400R(NC30)VFR400Rとしては最終形となるNC30型。
V4カムギアトレーンとプロアームは引き継がれ、現在でも高い人気があります。
生粋のレーサーレプリカだけあって、路面に吸い付くようなV4独特なハンドリングも面白いポイント。
次に紹介するRVFよりも、クラシックV4の中ではまだ価格は落ち着いている方なので、タイミングによっては乗り出しやすい個体が出てくるかもしれません。
RVF400
RVF400(NC35)VFR400Rの後継として登場したのがRVF400。
ホンダのV4カムギアトレーン400ccクラスとしては最終形となり、現在でも幅広い層から高い人気があります。
2ストならNSR、直4ならCBR、V4ならRVFといった形で伝説的なバイクとして愛され続けています。
レーサーレプリカは見た目は大きく見えますが、実際に跨ってみるとかなりコンパクトでRVF400も例外ではありません。
VFRシリーズから足回りも大幅に進化しており、今でもサーキットで十分通用するスペックを持っているため、NC30型よりもプレミア価格で取引されています。
VFR750F
VFR750F(RC24)VFR750Fの初代モデルとして登場したこのモデルは、水冷V4エンジンにカムギアトレーンが組み合わされています。
VFRが出る前のVFシリーズで言われていたV4の問題点を払拭し、カムギアトレーン採用により耐久性も向上させています。
VFR750F(RC36)VFR750FとしてはRC24の後継モデルとなるRC36ですが、このあとに紹介するRC30型がレースの世界で勝つために作られたモデルとなっているため、RC36はスポーツからツーリングマシンへと方向転換されたモデルです。
もちろんV4エンジンとカムギアトレーンは引き継がれ、片持ちのプロアームはこのモデルから750クラスに採用されました。
タマ数が少ないため希少車ではありますが、VFRの流線型デザインが完成しきる前の独特な魅力を感じさせるモデルです。
VFR750R
VFR750R(RC30)VFR750FからVFR750Rに変わったRC30型は、他の市販車とは違って世界スーパーバイク選手権に参戦するためのホモロゲーションモデルです。
ホモロゲーションモデルとは市販車がベースのレースに参戦するために、メーカーが台数限定で販売したモデルで、RC30はHRCが本気で作った市販車となっています。
V4を語るうえでは絶対に外せない存在で、カムギアトレーンはもちろん、チタンコンロッドを採用するなどただの市販車では見ない豪華な装備が組み込まれていました。
現在では1000万円以上する個体もあり、簡単には乗れない激レアV4モデルです。
RVF750
RVF750(RC45)RC30の後継モデルとなるRVF750も世界スーパーバイク選手権に参戦するためのホモロゲーションモデル。
究極のレーシングV4と呼ばれていて、世界最高峰レベルのV4にもカムギアトレーンが組み合わされています。
この型からPGM-FIが採用されているのも特徴的なポイント。
HRCワークス直系のマシンを公道で乗れるというのは他には代えられないものがあります。
実際、レースの世界で改造範囲が限られるスーパーバイク世界選手権でチャンピオンを獲得するなど、輝かしい戦績を収めています。
現在ではRC30以上に希少なため、簡単には乗れない伝説的なモデルとなっています。
VFR800Fi
VFR800Fi(RC46)VFR750Fの後継モデルとなるVFR800Fiは、VFRシリーズとしては最後のカムギアトレーン採用車であり、後期モデルとなる2002年以降のVFR800Fiはカムギアトレーンではなくなり、VTECが搭載されました。
VFR750Fと同様にツーリング性能を重視したマシンとなっており、V4らしい滑らかなフィーリングが特徴です。
白バイとして採用されたことでも知られており、現代でもツアラーとして人気のモデルです。
中古価格も一般的な大型バイクと同等の値段で買えるため、最後のカムギアトレーンを楽しみたいならおすすめのモデルです。
VTR1000 SP-1 / SP-2
VTR1000 SP-1カムギアトレーンはV4か直4に採用されるものだとされていた時、突如カムギアトレーンのV型2気筒エンジンを搭載して登場したのがVTR1000 SP-1。
こちらもスーパーバイク世界選手権のためのホモロゲモデルとなっており、カムギアトレーンが採用されています。
しかし以前からあったVTR1000Fはカムギアトレーンではなく、レースに勝つためのVTR1000 SP-1 / SP-2のみがカムギアトレーンを採用しており、いかにカムギアトレーンがレースの世界で信頼されていた技術だったかがわかります。
VTR1000 SP-2スーパーバイク世界選手権ではチャンピオンを獲得。
SP-2ではさらに熟成を重ね、Honda最後の本格レーサーレプリカVツインとしてレースファンを感動させていました。
カムギアトレーンに関するよくある質問
ここからはカムギアトレーンのバイクでよくある質問に対して回答していきます。
Q.カムチェーンより速い?
A.必ずしも速いというわけではありません。
カムギアトレーンは、カムチェーンで生まれる高回転時の微妙なズレを抑えるものであり、超高回転域でもエンジン本来の力を安定して発揮させるためのもの。
カムギアトレーンだから速い、というわけではなく、カムギアトレーンによって速いエンジンの力を引き出せるというのが正しい解釈です。
Q.ギアノイズは故障ではない?
A.明らかな異音がしない限り、故障ではありません。
カムギアトレーンのギアノイズは、回転に合わせて「ヒューーン」「ミューーン」といった歯車が噛み合って回転したときに発生する音であり、通常時でこの音がします。
ただし、「ガチャガチャ」「ゴリゴリ」といった明らかな異音がしている場合は故障の可能性があるため、バイク販売店か専門店での診断をおすすめします。
最悪の場合バルブタイミングが大きくズレて、ピストンヘッドとバルブが当たってエンジン丸ごと壊れる可能性もあります。
Q.メンテナンスはどれくらい必要?
A.カムチェーンのエンジンよりも部品交換、調整は少ないでしょう。
カムチェーン車はチェーン自体が伸びたり、摩耗して交換したり、オートテンショナーを交換する場合がありますが、カムギアトレーンの場合はギアで駆動しているため、伸びなどは発生しません。
むしろカムチェーンよりもメンテナンス頻度は少ない傾向にあります。
定期的なオイル交換やバルブクリアランスの調整など、基本的なメンテナンスをしていればカムギアトレーンは高い耐久性を発揮します。
Q.カムギアトレーン化することはできる?
A.一般的にはできません。しかしカスタムした事例はあります。
カムギアトレーンはエンジンのヘッド、シリンダー、ケースまでギアが入る専用設計となっているため、基本的には後からカムギアトレーン化することはできません。
しかし、一部ショップで、純正はカムチェーンのCBX1000をカムギアトレーン化するカスタムは存在します。
専門知識と特殊な加工が必要なため、プロショップによる加工が前提ですが、技術的に絶対に不可能というわけではありません。
カムギアトレーンの耐久性は信頼できる
カムギアトレーンのエンジンは現代では見なくなりました。
ですがまだ似たような技術が応用されていたり、完全に終わったテクノロジーというわけではありません。
80年代〜90年代のカムギアトレーン車が出す音やフィーリングは旧車でしか味わえないため、乗ってみたい気持ちがあるなら早めの購入をおすすめします。
しっかりとしたメンテナンスができていれば、約40年ほど前に発売されたスポーツエンジンが現在でもしっかり走って高回転まで回るので、カムギアトレーンの耐久性、信頼性はしっかりしていると思います。
気になった方はぜひカムギアトレーンサウンドを楽しんでみてください!






