バイク用エンジンの冷却方式は空冷と水冷に大きく分けることができます。

スズキでは油冷というシステムも使われています。
それぞれにどんな特徴があるのでしょうか?

シンプルで軽量な構造と造形美が特徴の空冷

空冷エンジンは文字通り空気を使って冷却します。
発熱の多いシリンダーには冷却フィンが刻まれていて空気にあたる面積を増やしています。

冷却水やポンプを必要としないので軽くすることができ、フィンの造形美に魅せられるライダーも少なくありません。
冷却水がないのでメンテナンスも簡単です。

その反面、空気が当たらない部分は冷えにくく、冷却が安定しないというデメリットがあります。

また、ウォータージャケットがないのでメカノイズが外に漏れやすく、シリンダーフィンが振動して音が出てしまうこともあります。
騒音に関しては不利なメカニズムです。

空冷4気筒の迫力あるフィーリングはどうして生まれるのか?

「空冷4気筒エンジンならではの迫力あるエンジンフィーリング」などと言われることがありますが、実を言うと冷却方式はほとんど関係ありません。

昔の空冷4気筒が荒々しいフィーリングだったのは、4気筒の爆発が微妙に揃っていなかったことによって生まれる鼓動感とばらついた排気音によるものです。

GSX1100は迫力あるフィーリングで有名でしたが、ファイナルエディションはトランジスタ点火になったことで4気筒の爆発が整い、荒々しさがずいぶん消えていました。

一部のライダーは、点火方式を前期型のポイントにして、当初のフィーリングを追求していたほどです。

また、CB1100は21世紀の空冷4気筒ですが、敢えてカムのプロフィールを気筒間で変えて意識的に昔のバイクらしいフィーリングを作り出しています。

静かで安定した冷却ができるのは水冷エンジン

水冷はシリンダーやヘッドなどに冷却水を循環させて冷却する方式です。

冷やしたい部分にウォータージャケットを作れば良いのでエンジン全体を均一に冷却することができるだけでなく、温度によって通路を開閉するサーモスタットや、温度が高くなった場合に作動する冷却ファンを設置することで安定した冷却が可能になりました。
外に漏れるメカノイズも減少しました。

水冷化で高性能を可能にしたはRZ250

水冷化されたことで大きな話題になったのがヤマハのRZ250でした。

2ストロークエンジンは、シリンダーにポートと呼ばれる通路がたくさん開いているので、シリンダーが均一に膨張せず、歪んだ部分がピストンと強くあたって焼き付いたりすることもあります。

ハイパワーを追求した2ストロークでは水冷化が必須だったのです。

空冷では難しかったレイアウトも水冷化で可能になりました。
シリンダーに風が当たらなくてもラジエターと冷却水で冷やすことが出来るので、エンジンをカウルで覆ったりすることも比較的簡単です。

また、並列エンジンの場合、シリンダーとシリンダーの間に空気を通す通路を作らなくて済むのでエンジンの幅をコンパクトにすることもできます。

空冷ではどうしても後ろのシリンダーの冷却が難しくなってしまう横置きのV型エンジンでも均一に冷やすことが出来ます。

冷却水やウォーターポンプ、ラジエターといった部品が必要になり、当初は空冷に比べて重くなると言われましたが、技術の進化で水冷化による重量のデメリットはほとんどなくなりました。

バイクの場合、エンジンがむき出しなので、水冷が登場した当初は冷却フィンがなくなったことで、無機質な感じがすると言って敬遠するライダーもいました。

しかしこれも冷却フィンなどを追加してデザイン面を見直し、ラジエターを目立たなくすることで、空冷エンジンと同等の美しさを作り出しています。

空冷と水冷の良さを両立させようとした油冷

空冷を進化させたのがスズキの油冷です。
最初に採用されたのは85年に登場したGSX-R750でした。

軽さを追求して空冷にしたいけれど冷却性能も向上させたいという考えから、エンジンオイルの吐出量を大きく増やして、熱的に厳しい部分に吹きかけ、オイルによってエンジンを内部から積極的に冷却するシステムを採用しました。

近年登場したスズキのジクサーSF250も油冷を採用していますが、冷却の方法は初期の油冷とまったく異なります。

冷却システム自体は水冷に似ていますが、冷却液でなく潤滑に使用するエンジンオイルをエンジン周囲に設けられた通路に流して冷却するという考え方です。

水冷ほどの冷却効率はありませんが、ジクサーの場合は最高出力を求めているわけではないので、この方式でも十分。
空冷よりも安定して冷却することが出来て、車体も軽くすることが出来ました。

新旧2つの油冷は方式こそ異なるものの、オイルを利用するという点と空冷よりも冷却効率を上げ、軽く仕上げるという考え方に関しては共通しています。

なぜ最新マシンは水冷ばかりになったのか?

80年代前半まで、バイクのエンジンは空冷が主流でした。
それが現在ではほとんどのバイクが水冷です。

80年代中期から水冷エンジンが増えたのは、パワーアップに安定した冷却が必須だった為ですが、最近ではもう一つ別に大きな理由があります。
それは排ガス規制です。

年々厳しくなっていく排ガス規制に対応するには空燃比や燃焼状態を細かく調整し、排気ガス中の有害成分を再燃焼させたり、触媒を通して還元させる必要があります。

排気ガスの温度はある程度高くなければ触媒の効果が発揮できないのですが、空冷はエンジンの温度を適正にしたまま、排気ガスだけ高温にすることはできません。

排気ガスの温度が安定しないと緻密な制御ができなくなってしまいます。
ロングセラーだった空冷バイクが、色々な排ガス対策を追加していきながらも最後は消えていってしまったのは、こういった理由によります。

色々ある冷却方式で、どれがベストなのか?

水冷と空冷、そして油冷のどれが良いのか迷う人もいるかもしれません。
どの冷却方式でも良いマシンはありますから、冷却方式で決める意味はあまりないのですが、確かなことが一つあります。

これから排ガス規制はますます厳しくなります。
そうすると空冷マシンが新しく登場してくることは難しくなっていくことでしょう。

台数が増えることはありませんから、もしも空冷で乗ってみたいマシンがあるのなら、早いうちに手に入れてしまった方が良いかもしれません。

空冷に乗ってから水冷に乗れば、バイクがどのように進化していったかも感じることが出来るかもしれません。
是非色々なバイクに乗ってみて、その違いを自分で体感してみてください。

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