バイクのエンジンには色々な種類があり、エンジンの性格に大きな影響を与える要素の一つが気筒数です。
気筒数が変化することで特性やフィーリングがどのように変化するかを説明していくことにしましょう。

気筒数が増えるとスムーズになるのはなぜ?


HONDA CB1000R 4気筒

同じ排気量で気筒数が増えると1気筒あたりの排気量が小さくなり、燃焼によって生まれる力も小さくなります。
また、気筒数が増えるのに比例して爆発する回数も増えます。

単気筒の場合はクランク2回転で大きな燃焼が1回だけ行われるのに対し、4気筒であれば小さな燃焼が4回行われることになります。


HONDA CB1100EX 4気筒

1回あたりの燃焼が小さくなることに加え、燃焼と燃焼の間隔が短くなることでシングルのような振動や鼓動感は減り、スムーズに回るようになるわけです。

ストロークの違いがフィーリングとトルクに影響する


もう一つ重要な要素がストローク。
シリンダーの中でピストンが上下する距離です。
同じ排気量でも単気筒の場合はストロークが大きくなります。

ストロークが大きくなると、クランクシャフトの中心からクランクピンまでが長くなりますから、テコの原理と同じでクランクを回す力が大きくなります。
シングルの場合は燃焼によって発生する力が大きく、しかもストロークが大きいので低回転からでも力強く加速するマシンが多い傾向になります。
そしてこれが単気筒独特の歯切れのよい排気音や加速感を生み出すのです。

気筒数が少ないと軽くできるのか?


HONDA GB350S 単気筒

気筒数が増えれば当然部品の点数が増えます。
そうなると重量は増加する傾向になります。
スポーツバイクのエンジンなどでは軽くするために様々な技術が使われ、材質も吟味されますが、軽さに関しては部品点数が少ない単気筒の方が有利なことは間違いありません。

また、部品点数が少ないので価格も安く抑えることができ、整備もしやすい傾向にあります。
単気筒はエンジンの幅もスリムに出来るので、コーナーリングに必要なバンク角を確保してもエンジンの搭載位置を下げることが可能です。


YAMAHA SR400 単気筒

その反面、ストロークが大きいのでエンジンの上下寸法が大きくなりがち。
車体の味付けによっても異なってきますが、エンジンの搭載位置はハンドリングや安定性に大きな影響を与えるので、単気筒と多気筒ではハンドリングも変わってくることになります。

多気筒エンジンは高回転・高出力化に有利


BMW S1000RR 4気筒

一般的にパワーを出すためには回転数を上げる必要があります。
この場合は多気筒エンジンが有利になります。

最大の理由はバルブやピストンなど往復運動する部品が小さいこと。
バルブやピストンの重量が小さければ慣性質量が小さくなり、無理なく回転を上げることができるようになるからです。

もう一つの理由がピストンスピード。
往復運動するピストンのスピードはあまり速くすることができません。
スポーツバイクでも平均すると20m/sを少し超える程度。

つまり現在のエンジンでは1秒間に20mを超えたくらいがピストンスピードの限界になります。
単気筒はストロークが長くなってしまうので、同じ回転数でも多気筒エンジンに比べるとピストンスピードが速くなってしまいます。
だからレブリミットを低めの設定になってしまうのです。

最新マシンに2気筒が多い理由はなぜ?


YAMAHA YZF-R25 2気筒

2気筒エンジンは、単気筒と4気筒の中間的な性格を持っています。
低回転では4気筒より力強く、高回転ではシングルよりも軽く回ります。

中型クラスの250ccのスポーツバイクでは、ストリートで必要な低速トルクを十分に確保し高回転でもパワーを出そうとした結果、現行モデルでは2気筒のレイアウトが多くなっています。


KTM 1290 SUPER DUKE R 2単気筒

大排気量マシンでは多気筒のエンジンでも十分なトルクがありますが、4気筒、6気筒に比べて2気筒エンジンが軽量である事や、幅の狭さから生まれるエンジンレイアウトの自由さ、中速域でのトルク、重量やコストなど様々な点を総合的に考慮して2気筒が選ばれていることが多いようです。

2気筒は4気筒に比べて爆発間隔が広くなるので、加速時にリアタイヤを食いつかせるトラクション性能を引き上げことも可能だと言われています。

パワーのある大排気量車では、絶対的なパワーだけを追求するのではなく、パワーをいかに効率よく路面に伝えるかも重要になってくるということも、2気筒というレイアウトが多い理由の一つです。

2気筒のエンジンは爆発間隔を変えることでエンジンのフィーリングや排気音、トラクション性能を変えたマシンも増えてきました。

ちなみにビックバイクに単気筒が見当たらないのは、気筒あたりの排気量が大きくなりすぎると燃焼や吸排気が追いつかなくなってくるため。
燃費や排ガス規制などで効率の良いエンジンを目指した結果、無理のない排気量に落ち着いているのです。

気筒数による違いはお分かりいただけたでしょうか?
今回はザックリとした傾向だけ説明していますが、エンジンには同じ気筒数でも色々なレイアウトが存在して、それぞれに特徴があり、またボアストロークを含む味付けによってフィーリングやパワー特性は大きく変わります。
だからエンジンは面白いのです。

筆者プロフィール

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