バイクに転倒はつきもの!? なんて言われるとギョッとしてしまいます。それでも、立ちごけも含めればライダーの多くが一度は経験するであろう転倒。今回はその原因から防止策までアイテムなども紹介しながら考えます。

1.どうして転倒するのか? 主な事例とその原因

バイクはスタンドがなければ自立できない乗り物ですから、ちょっとしたことで倒れやすいのは確かです。もちろん走行中に何らかの原因で転倒することもあります。筆者の主観になりますが、まずは主な事例とその原因(要因)について挙げておきます。

また、ここには含めませんが、低回転時にエンジンが止まりやすい、クラッチの切れが悪いといったレバーの調整不良、ブレーキのパッドがほぼ無いといった整備不良を原因とした「バイクの機械的なトラブル」が転倒につながることもあります。

●主な転倒の事例とその原因

1. 立ちごけ(停止・低速時の転倒)

停車中にバイクがパタンと倒れることをいいますが、バイクを取り回している時の転倒や極低速時(Uターン時など)の転倒も含めて言うこともあります。また、下記以外にも雨で濡れた路面や砂がまかれた路面のように、停車時についた足がすべって転ぶということもあります。底のゴムがすり減った靴には要注意です。

原因1-① またがった時の足つきが悪く、傾いたバイクを支えられなかった
原因1-② 取り回し中にバイクが傾いた時に、その重さに耐えられなかった
原因1-③ 極低速時にエンストあるいはバランスを崩して支える暇もなく倒れた

2. 走行中の転倒

バイクで走行中、何らかの原因によりタイヤがすべって(路面とのグリップを失って)転ぶスリップダウンがほとんどですが、他車との接触など事故による転倒、事故を避けようとしての転倒など多岐に渡ります。

原因2-① 急ブレーキ等によるタイヤのロック、からのスリップダウン
原因2-② 水や砂が浮いた路面など摩擦が低い状態でグリップを失いスリップダウン
原因2-③ 危険を避けようと急ハンドルを切ってのスリップダウン
原因2-④ 他車や構造物と接触した衝撃で、または接触しそうになり避けようとして転倒(事故)

2.転倒しないための対策とは?


なぜ転倒してしまうのか? を考えれば、転倒を防ぐための対策も考えられます。原因1と原因2から考えれば、以下のようになります。なお、重ねて言いますが、車体の整備不良による転倒は論外ですので、走行前点検「ネン・オ・シャ・チ・エ・ブ・ク・トウ・バ・シメ」などでしっかり確認しておきましょう。

●転倒を防ぐための対策

1. 立ちごけ(停止・低速時の転倒)
〇自分の技量と体格にあったバイクを選ぶ
これは理想的ですが最適解だとは思いません。趣味としてのバイクに乗るのであれば、自分がどうしても乗りたい車種に乗るべきだと考えるからです。

〇練習する
取り回しやUターンを含めた極低速運転の練習をして愛車の扱いに慣れましょう。安全運転講習やライディングスクールに参加することもとても効果的です。

〇車体を扱いやすくカスタムする
・足つきを良くする
足裏までしっかり路面につけば、グラついた車体を保持しやすくなります。シートをあんこ抜き(中のスポンジを減らす)する、フロントフォークを突き出す、リヤサスペンションにリンクをかませる、サスペンションを軟らかくするなど様々な手法があります。

・ハンドルを近づける
ハンドル位置を調整する、ハンドルそのものを交換するなどしてグリップを体に近づけて扱いやすくします。一般的にセパレートハンドルよりバーハンドルのほうがハンドル位置が高くグリップが体に近づき、Uターンもしやすくなります。

・車体各部を調整する
クラッチレバーの握りを軽くしたりレバーの位置を調整できるタイプに交換したりして半クラッチを使いやすくする、エンストしにくくするためアイドリング回転数をわずかに上げるなど車体各部を調整、必要とあれば操作性を高めるという目的でパーツを交換します。

バイクが動いている時にエンストしてしまうと転倒の可能性が高まります。走行前にエンジンを暖機しておくとエンストしにくいのでオススメです。

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2. 走行中の転倒
〇急のつく動作をしない
教習所で急制動の練習をするのは、公道走行ではそうした場面に出くわすことが少なからずあるからです。ブレーキはレバーをガッと握ってしまう(ペダルを踏んでしまう)と一瞬でタイヤがロックして、スリップダウンしてしまいます。

〇路面の状態を考えた運転をする
雨天の濡れた路面ではバイクをなるべく寝かさず走ることを意識します(それでもバイクはわずかに寝ている状態で曲がります)。アクセル操作も穏やかにしスムーズな操作を心がけます。特に、横断歩道や中央線などの白線や黄線、路面標示といったペイント部、マンホールや道路の継ぎ目(ジョイント部)などはタイヤが滑りやすいので要注意です。

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〇危険を予測した運転をする
自分自身が持つ探知(予測)能力の限界を越えない速度で走ることが基本です。ツーリング中でも街乗りでもサーキットでも速度を上げていくと周囲はどんどん見えなくなり、予測に必要な情報も見落としてしまいます。これは危険な状態です。ですから、複数人で走っている時にメンバーが飛ばし始めても、決してついていってはいけません。集合地点や休憩地点を決めておいて自分のペースで走りを楽しみましょう。

また、対向車線から大きなダンプが続いてやってくるような道では、前方に砂利や砂が落ちているかもしれない、気持ちのいい広域農道ではどこかに泥の塊が落ちているかもしれないといった予測の効く運転を心と体に覚え込ませましょう。

〇飛ばしたり無茶な運転はしない
他車や構造物と接触しても、それを避けようとしても転倒につながります。結局は、事故です。飛ばさない、すり抜けなど無茶な運転をしない。公道を走っていると、イライラすることも多いのですが、常に冷静になって、やりすごすようにしましょう。

3.転倒しにくくするための、バイクの機構について
車種にもよりますが、転倒しにくくするための様々な機構があります。タイヤのロックを防ぐ「ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)」、前後のブレーキ配分を調整し理想的なブレーキングに近づける「CBS(コンバインド・ブレーキ・システム)」といった装備は、ブレーキ操作に由来する転倒の可能性を減らすことができます。
□参考:Hondaの先進ブレーキ紹介

また、クラッチミート時の回転数低下を抑えて発進時のエンストを防ぐスズキの「ローRPMアシスト(下写真は新型KATANAのもの)」はとても優れた機構として知られ、渋滞時やUターン時にも効果的です。低回転をうまく扱えない方にはエンストからの転倒という恐怖をやわらげてくれることでしょう。
さらに、シフトダウン時のリヤタイヤのホッピングを防いでくれる「スリッパ―クラッチ(バックトルクリミッター)」機構もとても有効です。ワインディングやサーキットなどスポーツ走行時にとても安心です。

3.万が一の転倒に備えておく


どんなに安全運転をしているつもりでも、予測を越えることが起こったり、自分が思っている以上に疲れてしまっていたり、集中力が一瞬切れたようなときに、転倒は起こります。
そこで、予め転倒に備えておくことをお勧めします。

●転倒への備え

1.安全性の高いウェアを身につける
転倒時に体を守るため、プロテクター付きのウェアを着用しましょう。または、プロテクターを装着したうえでウェアを着ましょう。近年は、クルマや構造物との衝突に備え、胸部プロテクターの装着が推奨されています。

スリップダウンして、運よく他車や構造物と衝突せずに済んだとしても自分の体には大きなダメージが残ります。特に、転倒時に反射的に路面を支えてしまう手を守るためのグローブ(手の平部)、ひじ部、ひざ部のプロテクターはしっかりとしたものをお勧めします。

参考記事

2.車体のダメージを軽減するアイテム

立ちごけひとつでも、車体は大きなダメージを受けます。特にマフラーのある側に倒した場合は、3点セットと呼ばれる「マフラー、ハンドルバーエンド(+バックミラー)、ステップ」は少なくともダメージを受けます。バイクのデザインによっては、また路面の形状などによっては、ガソリンタンクがへこんだり、ヘッドライト回りにダメージを受けることもあります。

こうしたダメージを少しでも軽減するために、ハンドルガードやレバーガード、エンジンガードなどのガード類を装着することも効果的です。

3.任意保険への加入
強制加入の自賠責保険は事故を起こしたときの相手(被害者)のケガに対して賠償するだけの保険です。相手の車の修理費用はもちろんのこと、単独転倒により壊してしまったガードレールなどモノに対する損害、さらには自分自身の体と自分のバイクを補償するためには任意保険への加入が必要です。

特に、転倒時の車両の補償に関しては、任意保険の中でもオプション(特約)扱いである「車両保険」への加入が必要です。また、単独転倒は補償されない、パーツ・アクセサリー代は出ないなど保険会社によって内容がまちまちです。車両保険は比較的高額(月額3,000~9,000円等)ですし、保険を使う時の免責も数万円になることもあります。よく調べてから契約することをお勧めします。

いかがでしたか。転倒しないにこしたことはありませんが、普段から転ばないための知識や運転に感心を持つこと。また、万が一のことを考えて保険に至るまで準備しておきたいものですね。

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■筆者プロフィール

田中 淳磨
46歳・男性・北海道札幌市出身
二輪専門誌編集長、二輪大手販売店、官公庁系コンサルティング事務所等に勤務ののち二輪業界で活動するコンサルタント。二輪車の利用環境改善や市場創造、若年層向け施策が専門で寄稿誌も多数。