本格的な冬を迎えました。ツーリングを楽しむにあたり防寒対策以外にも知っておきたいこと、注意点などをご紹介します。特に今回は、転倒や事故の原因にもなりかねない路面凍結について掘り下げたいと思います。

冬の景色の美しさと知っておきたい走行時間帯

ウインターツーリングの素晴らしい点として、空気が澄んでいるため遠くの景色がよく見えるということがあげられます。特に山頂やタワーなどの展望台からは夏には見られないような絶景が見られるということで観光客にも人気です。富士山や星、夜景といった風景写真を撮るのにも最適な季節です。ただし、バイクで行くなら相当の準備と知識が必要です。なぜなら、そのような場所では路面凍結や降雪のリスクが高いからです。
特に早朝や日没後は凍結のリスクが高まります。最も気温が下がる時間帯である早朝はともかく、北西の風がひっきりなしにあたるような路面では夜の8時くらいからでも凍結を始めることがあり日没後の夜間走行は全く気が抜けません。10度以下の寒さの中、外にいるだけでも肩に力が入ってしまうような冬場は、さらに疲れを増してしまう夜間走行は避け、午前9時から午後3時くらいの6時間程度をコアタイムと考え、早めに帰路につくのが理想です。

ウインターツーリングでのルート選択のポイント

ウインターツーリングでは路面凍結のリスクを回避する上でルート選択がとても重要です。主なものに以下のポイントがあります。

①基本的には山間部よりも海沿いが安全
標高が比較的低いということ、沿岸部では降雪、積雪になりにくいということで山の中のルートよりは海岸沿いのほうが安心です。ただし、海風が吹きつけるような橋の上やトンネルの前後では凍結の可能性が高まります。風の強い朝や潮風のあたるような場所は路面凍結に十分注意してください。
②地図を見ると凍結ポイントが予測できる市販のツーリングマップや紙地図、ネット上のマップなど、どんな地図でもよいのですが、北を上(ノースアップ)にした状態で見てください。冬は日照時間が短いのでなるべく東~東南~南側を向いた道路、さらに目の前に大きな山など日光を遮るものがない開けたルートが比較的安全なルートになります。逆に一日中日陰になっているような北側の道路では、日中も凍結が残っていたり残雪の可能性があります。

地図によってはルート上の等高線を見ることもできます。線の間隔が離れていればゆるやかな地形、狭ければ急斜面や崖であることがわかります。特に渓谷など川沿いに延びている断崖上の道は川の水蒸気と風によって凍結しやすく走行時に注意が必要です。
上の地図は、国土地理院のサイトから書き出した3Dマップを加工したものです。東京方面・小田原から東伊豆・中伊豆に向かうには主に3つのルートがありますが、熱海ビーチラインなどの海沿いの道が最も安心です。尾根沿いに延びるマツダターンパイク箱根は尾根筋に何ヶ所かしばらく日陰になるところがあります。こういったところは雨天や降雪後、しばらくは凍結の危険があります。また山の斜面から水が流れているようなところも危険です。
さらにその北に延びる国道1号線の有料バイパスである箱根新道は終日ほぼ日陰となり凍結の危険が高まります。ただし有料道路はこういった場合、すぐに全線通行止めになることが多く、箱根新道の場合は交通量が多いので利用上は比較的安心できる道と言えます。

■国土地理院 電子国土基本図(地図情報)※地図ページで3D書き出しが可能

URL:http://www.gsi.go.jp/kibanjoho/mapinfo_what.html

③クルマの通行量の多い道を選ぶ
基本的な考え方として、早朝や夜間といったリスクの高い時間帯は少しでも交通量の多い道を選ぶべきです。こういった道は凍結防止剤(塩化ナトリウム)や融雪剤(塩化カルシウム)なども頻繁にまかれています。なお、有料観光道路のような道でも安心はできません。「全線通行可能」と表示されていても凍結はピンポイントで発生します。車の通りが少ない時間帯は要注意です。

④あらかじめ地元の方に聞いておく
路面凍結というのはピンポイントで、毎回同じ場所に発生することが多く、その道を使う地元の方はたいてい発生時期や発生条件について知っています。出発前には観光協会や宿のご主人などにルート上の凍結について聞いておくと安心です。

凍結路面に遭遇した場合の対処

凍結にもアイスバーンやミラーバーン、ブラックバーンなど成り立ちや状態に違いがありますが、スタッドレスタイヤやチェーンが使えるクルマとは違い、バイクの場合はどれに乗っても即転倒となる可能性が高く、バンク中ならほぼなすすべがありません。直進中に凍結路面を発見した場合は、凍結区間に突っ込む前に即座になるべく減速し車体を傾けずにまっすぐ滑ってやりすごすほかありません。
上の写真は、六甲山での路面凍結ですが、奥に見えている日が当たっている区間は全く問題なかったものの、山の斜面がつくる日陰部分は路面のほぼ全てが凍結していました。この区間では多くのクルマが横滑りしたり、バイクが転倒したりしていました。また、右の写真のように水がたまりやすい道路の端やへこんだ箇所もスポット的に凍結するので注意が必要です。

いかがでしょうか。ウインターツーリングはとても楽しいものですが、ルート選択や走行時間帯など出発前から凍結路面に遭遇しないような準備をお勧めします。

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筆者プロフィール

田中淳磨

二輪専門誌編集長、二輪大手販売店、官公庁系コンサルティング事務所等に勤務ののち二輪業界で活動するコンサルタント。二輪車の利用環境改善や市場創造、若年層向け施策が専門で寄稿誌も多数。