近年、バイクシーンで圧倒的な人気を集めているのが「アドベンチャー」モデルです。 大柄でタフなスタイリング、オンロードだけでなくオフロードも走破できる高い走行性能。

その冒険心を掻き立てる佇まいに魅力を感じるライダーは多いでしょう。

しかしその一方で、ツーリングライダーの多くは、未舗装路(オフロード)を避けて通るのが一般的ではないでしょうか。

2本のタイヤでバランスを取るバイクの特性上、滑りやすい土の上や砂利道を避けるのは賢明な判断です。たとえ愛車がオフロード走行を想定したモデルであっても、転倒のリスクを考えると、未舗装路への心理的なブレーキがかかるのは当然のこと。

「オフロードを走らないのに、ハイスペックなアドベンチャーに乗るのは宝の持ち腐れかも……」、「市街地やオンロードしか走らないのにアドベンチャーは恥ずかしい?」なんて思っている方がいたら、安心してください。

オフロードを走らなくても、アドベンチャーモデルを選ぶメリットは山ほどあります! 今回は、舗装路メインのライダーにこそ知ってほしい、アドベンチャーバイクの魅力をご紹介します。

アドベンチャーバイクもオンロードを前提に設計されている

まず大前提として、市販されているアドベンチャーバイクのほとんどは、走行時間の大部分を舗装路で過ごすことを想定して設計・開発されています。

道路網が高度に整備された現代において、目的地へ向かうルートのほとんどはアスファルトです。アドベンチャーの母国とも言える欧州のツーリングシーンでも、国をまたぐ広大な移動は高速道路やワインディングが中心。オフロード性能はあくまで「旅の途中で道が途切れても引き返さなくて済む」ための保険に近い要素なのです。

これは他ジャンルに置き換えれば分かりやすいでしょう。 スーパースポーツ(SS)に乗っているからといって、必ずしもサーキットで限界走行をする必要はありません。ダイバーズウォッチを身につけていても、実際に深海に潜る人はごくわずかです。

あくまで「そういったポテンシャルを秘めている」というだけであって、必ずしもそのポテンシャルを使い切る必要はないのです。

アドベンチャーバイクはオンロードツーリングでも超快適!

「アドベンチャー(冒険)」という名前がついていますが、その実態は「究極のロングツアラー」です。長距離を快適に移動するための工夫が、これでもかというほど詰め込まれています。

多くのアドベンチャーが採用する大排気量エンジンは、高速道路での巡航を劇的に楽にします。追い越し加速の際もアクセルを軽く捻るだけでスムーズに加速し、ライダーのストレスを最小限に抑えてくれます。

また、オフロードを走るための「ストロークの長いサスペンション」は、実はオンロードでの乗り心地の良さに直結します。路面の継ぎ目や荒れたアスファルトの衝撃を、高級セダンのようにしなやかに吸収してくれるからです。

そして、近年のハイエンドモデルには、トラクションコントロールやオートクルーズ、さらには路面状況に合わせて減衰力を自動調整する「電子制御サスペンション」まで装備されています。

これらの「悪路での走破性を高めるための装備」は、そのまま「オンロードでの安全性と快適性を高める装備」として機能するのです。

オンロードをメインに据えたアドベンチャーモデルも多数登場

高いオフロード走破性を持つアドベンチャーバイクは、フロント21インチ・リア18インチのブロックタイヤ、ないしセミブロックタイヤが装着されている傾向にあります。

そうでなくても、オフロードでの走破性とオンロードでの軽快さのバランスを取って、フロント19インチ・リア17インチといったサイズが装着されているモデルが多いです。

しかし近年、アドベンチャーのスタイルを維持しつつ、より舗装路での走行性能に振った「クロスオーバー」と呼ばれるモデルが多くみられます。これらは前後17インチのホイールにオンロードタイヤを装着し、ワインディングでの軽快さを重視しているのが特徴です。

例えば、タフな見た目と250ccクラスとしては大きな車格で人気を博しているスズキ「Vストローム250」は、アドベンチャースタイルの見た目ながら、その中身はオンロード重視。

前後17インチタイヤと扱いやすい並列2気筒エンジンで街乗りからロングツーリングまで幅広い用途に対応します。

また、「Vストローム」シリーズの大型モデルでは、オフロード重視のモデルとオンロード主体のモデルで明確にグレードが分けられています。

また、ヤマハ「トレーサー9 GT+」やカワサキ「ヴェルシス1100」といったモデルも、オンロードメインのクロスオーバーモデル。

もちろん、クロスオーバーというだけあって、未舗装路でも他の純粋なロードスポーツモデルに比べれば走破性・快適性ともに高い傾向にありますが、特にオンロードでの快適さや楽しさが向上しています。

たくさん積載できてロングツーリングも安心

アドベンチャーバイクの大きな武器が、圧倒的な積載能力です。 多くのモデルで、専用設計のパニアケースやトップケースが純正オプションとして用意されています。

後付けのシートバッグとは異なり、専用ケースは車体との一体感が高く、高速走行時でも安定感を損ないません。また、ケース自体に鍵がかかるため、旅先でバイクを離れる際もセキュリティ面で安心です。

「旅先で荷物が増えた」、「急な雨でカッパを出したい」といったシーンでも、大容量のケースがあれば余裕を持って対応できます。

大柄な車体は二人乗りの安定感抜群

アドベンチャーモデルは、タンデム(二人乗り)性能が非常に高いことも見逃せません。 広々としたリアシート、乗り心地のいいサスペンション、そして掴みやすい大型のグラブバー。これらは同乗者の疲労を軽減します。

また、車体自体に重量と剛性があるため、二人乗りをしても挙動が乱れにくく、ライダー側も安心して操縦できます。パートナーとの思い出作りを優先したいライダーにとって、アドベンチャーは最高の選択肢の一つと言えるでしょう。

キャンプ場などアウトドアフィールドでの安定感アップ

たとえ未舗装の林道やダートを走らなくても、キャンプ場や駐車場などのアウトドアフィールドで未舗装路を走ることもあるでしょう。

そういった際、オフロード性能の高いアドベンチャーバイクは足場の悪い路面の上でも安心感を高めてくれます。

市街地走行での視界が広くとれる

意外なメリットとして挙げられるのが、「視界の広さ」です。 アドベンチャーバイクは、背筋を伸ばしたアップライトなライディングポジションになります。これにより、ライダーの目線は一般的なバイクよりも高い位置に来ます。

渋滞した市街地や交通量の多い国道では、この「高い視点」が威力を発揮します。数台先の車の動きや信号の変化をいち早くキャッチできるため、危険を未然に回避しやすくなるのです。 前方の状況把握が容易になることは、精神的な余裕にも繋がり、結果として安全運転に大きく寄与します。

オフを走らなくても遠慮しない!好きなバイクを選ぼう!

アドベンチャーバイクに乗るからといって、必ずしも林道を駆け抜けたり、砂漠を横断したりする必要はありません。

オフロードの走破性も魅力ですが、あくまで最大の特長は「長距離の快適なツーリング性能」。

もちろん、長旅を想定しなくたって、市街地を走るだけでも積載性、タンデム性能など、メリットはたくさんあります。

せっかくバイクに乗るなら、遠慮せずに「これだ!」と決めたものを選ぶのが、バイクを長く楽しむコツですよ!

筆者プロフィール

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