街や自然の中を風を切って走るバイクのライディングは気持ちいいですよね。
バイク好きなライダーであれば毎週末ツーリングを計画している人もいるかと思います。

ですが、残念なことに公道を走行していると「あおり運転」の被害に遭うリスクが無いとは言えません。

バイクは開放的で心地よい一方で車のようにボディに守られていないため、あおり運転は極めて危険です。

この記事ではバイクがあおり運転の被害に合う脅威について正しく理解し、万が一遭遇した際の対処法や、被害に遭わないための予防策についても解説します!

そもそも「あおり運転」とは何か? 犯罪行為と罰則を知る

「あおり運転」とは他の車の通行を妨害する目的で、車間距離の不保持や急ブレーキなど危険な行為を繰り返すことを指します。

「妨害運転」として厳罰化されたあおり運転

あおり運転は、2020年6月30日に施行された改正道路交通法により「妨害運転罪」として明確に規定され、罰則が大幅に強化されました。

これは単なるマナー違反ではなく、立派な犯罪行為です。

妨害運転と見なされる行為(交通の危険を生じさせるおそれのある10類型)には、以下のようなものが挙げられます。

・車間距離の不保持(極端に接近する)
・急な進路変更
・不必要な急ブレーキ
・危険な追い越し(無理な幅寄せなど)
・不必要なクラクション
・必要な進路を譲らない行為
・最低速度以下での走行(高速道路など)
・駐停車中に必要な進路を妨害する行為
・適切な方法による合図をしない行為
・その他、著しく交通の危険を生じさせるおそれのある方法による行為

厳罰化された罰則と免許取消し

妨害運転罪の罰則は非常に重く、一回で免許取消しとなります。

違反の種類 罰則 免許の欠格期間(再取得不可期間)
交通の危険を生じさせなかった場合 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 2年
交通の危険を生じさせた場合 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 3年
著しい交通の危険(高速道路等で車を停止させる等)を生じさせた場合 5年以下の懲役または100万円以下の罰金 5年

 

特に、高速道路等で車を停止させるなど著しい交通の危険を生じさせた場合、最大で懲役5年、罰金100万円、欠格期間5年という極めて厳しい罰則が科されます。

バイクがあおり運転に遭うと重大事故に発展する可能性が高い

あおり運転は車同士でも危険ですが、バイクがあおり運転の被害に遭うとその危険度は跳ね上がります。
これは、バイクが車のようなボディに守られていない無防備な状態だからです。

わずかな接触でも即座に転倒、命の危険がある

車の場合、追突や接触があっても車体のへこみや軽度の怪我で済む可能性がありますが、バイクではそれだけでは済みません。
わずかな接触やバランスの崩れが即座に転倒につながる危険性があります。

体が投げ出されることで後続車に接触したり、地面に体を強く打ちつけたりして重大な大怪我を負う可能性がある事はもちろん、最悪の場合命を落とす可能性が非常に高いのです。

車のように防御壁がないバイクは、わずかな外部からの衝撃が即座に命に関わる事態に直結してしまいます。

精神的プレッシャーが運転操作のミスを誘発する

車間距離を詰められたり幅寄せをされたりといったあおり運転を受けると、ライダーは極度の緊張と恐怖を感じます。
この精神的なプレッシャーは、適切な運転操作や判断を妨げます。

パニックになり無理な急ハンドルや急ブレーキをしてしまうと、煽ってくる車との接触がなくとも自ら単独事故を起こしてしまう危険性が高まります。
特に不安定な二輪車であるバイクは、緊張状態での操作ミスはすぐに転倒につながりやすいのです。

車外でのトラブルから身を守れない

さらに、あおり運転をしている車が停車し運転手がバイクのライダーに絡んできた場合、バイクは非常に脆弱です。

車の場合はドアや窓をすべてロックすることで物理的に相手の干渉から身を守ることができます。
一方、バイクはライダーの体は外に完全に露出しているため物理的に身を守る手段がありません。
相手からの暴行や威嚇行為に対して、ほぼ無防備な状態になってしまいます。

このように、バイクは「衝突による防御力のなさ」「操作ミスを誘発しやすい構造」「外部からの脅威に対する無防備さ」といった点から、あおり運転に遭遇した際の危険度が極めて高い乗り物であることを理解しておきましょう。

バイクに乗っている際にあおり運転の被害にあった場合の対処法

では、バイクで煽り運転に遭遇してしまった場合はどのように対処すれば良いのでしょうか?

まず何よりも重要なのは、パニックにならず、冷静に行動することです。
ライダー自身の安全を最優先にし、相手を刺激しないように行動しましょう。

まずは冷静になり、相手を刺激しないこと

煽り運転にあうと恐怖や怒りから冷静さを失いがちですが、まずは冷静になることが大切です。深呼吸で落ち着きを取り戻しましょう。

加えて、相手にしないことも重要です。

ホーンを鳴らしたりアクセルをふかすといった、相手を苛立たせて反応を引き出そうとする行為は絶対にしないでください。状況を悪化させてかえって危険度が増してしまいます。

安全に相手の車両から離れることを最優先にする

あおり運転から身を守る最も効果的な方法は、相手の車から物理的に距離を取ることです。

ですがこの際、安全な運転を徹底することが大事です。

「離れること」に必死になるあまり、無理な速度超過や車線変更などの危険な運転は厳禁です。
あくまで安全な範囲内で、相手が追ってこれない状況を作り出すことを目指しましょう。

そして、「逃げ続ける」より「危険回避」の場所をめざしましょう。
ただ延々と逃げ続けるのではなく、相手があきらめるきっかけとなる場所や助けを求められる場所に向かうのが効果的です。

すぐに助けを求められる安全な場所へ避難する

周囲の状況を見て、すぐに助けを求められる場所へ移動しましょう。

近隣に交番や警察署があればそこへ逃げ込むのが最善です。

また、警察施設がない場合でも、コンビニ、サービスエリア、道の駅、大きな店舗の駐車場などの他の人が大勢いる場所に停車して助けを求めるのも有効です。
人の目があることで、加害者も追及を諦めやすい傾向があります。

そして安全な場所に停車したら、すぐに110番通報しましょう。
状況や場所を詳しく伝え、警察の指示を待ちます。バイクは体を守る術がないため、すぐに周囲に助けを求める行動が重要です。

あおり運転被害に遭わないためにできる対策

あおり運転のきっかけとして、相手への苛立ちや嫌がらせといった感情が少なからず関与している可能性があります。
周囲のドライバーを苛立たせないような運転を心がけることは、あおり運転のリスクを減らすことにつながります。

ドライブレコーダーの装着とステッカーの活用

最も効果的かつ重要な対策は、ドライブレコーダー(ドラレコ)の装着です。

ドラレコは、あおり運転の強力な抑止力になります。
また、万が一被害に遭った際にも、証拠を映像として残すことができます。

現在はバイク用のドラレコも普及しています。
選ぶ際には前後を確実に記録できる2カメラモデルを選ぶと効果的でしょう。

加えて「ドライブレコーダー録画中」といったステッカーを貼ると視覚的な抑止効果が生まれます。
ご自身のバイクに貼り付けできるスペースがあれば、活用すると良いでしょう。

周囲を苛立たせない「正しい運転」を心がける

最後に、あおり運転対策として重要なのが「自身の正しい運転の徹底」です。
不必要な苛立ちを周囲に与えない、基本的な安全運転を徹底しましょう。

走行中は十分な車間距離を保ち、信号待ちなどで停車する際も前の車に接近しすぎないように注意し、車間距離に気を配りましょう。

もちろん急加速、急ブレーキ、急な進路変更などの周囲を驚かせたり運転を妨げたりするような「急」のつく操作を避けるのも基本です。

また、信号待ちなどで不必要にアクセルを回す(空ぶかし)行為は、周囲に騒音や威圧感を与えることになります。
これもあおり運転のきっかけになり得ますので、絶対に避けましょう。

被害に遭うと恐ろしいあおり運転ですが、もしかすると自身の運転があおり運転を誘発してしまう可能性もありますので、公道を走行する際は、周囲の交通車両に気を遣った思いやりのある運転を心がけることが大切です。

危険を避け、安全なライディングを

バイクにとってあおり運転は単なる迷惑行為ではなく、命を脅かす深刻な脅威です。

バイクの露出度の高さからわずかな接触や操作ミスが重大な事故に直結し、その危険性は車と比較して格段に高いことを初心者ライダーは特に肝に銘じておく必要があります。

最も重要なのは「遭遇しないための予防」と「遭遇した際の冷静な対応」です。

予防策として、ドライブレコーダーの装着と「周囲を苛立たせない正しい運転」によるリスク低減を徹底しましょう。

対処法として、あおり運転に遭遇しても決して感情的にならず相手を刺激しないこと。
そして、安全を確保できる警察署や人目の多い場所へ速やかに避難して通報することが、結果としてライダーの身を守ることに繋がります。

常に楽しいツーリングを実現するためにも、これらの知識と対策をしっかりと身につけて安全なライディングを心がけましょう。

筆者プロフィール

webオートバイ×BikeLifeLab

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