バイクの免許にはいくつかの種類があり、免許によって運転できる最大の排気量が変わってきます。
中でも排気量制限の無い大型自動二輪免許は、ライダー誰もが一度は憧れる免許ではないでしょうか?

250ccクラスや400ccクラスで慣れてから大型クラスへステップアップするのが一般的な流れですが、最近ではいきなり大型自動二輪免許の教習をスタートする方も増えてきました。

今回はそんな大型自動二輪免許は最初からいきなり取れるものなのか、いつ取るのがベストなのか、詳しく解説していきます。

いきなり大型自動二輪免許は取得できる?

早速本題ですが、いきなり大型自動二輪免許を取得することは可能です。
ですがいくつかの条件があり、誰もが必ず取得できるとは限りません。

入校条件が設定されている場合がある

バイク教習を行っている多くの教習所では、大型自動二輪免許の入校条件に「普通自動二輪免許を取得済の方」と設定しているところが多く、場所によっては普通自動二輪免許を取得後2年〜3年経過した方のみという条件付の場合も。

いきなり大型自動二輪免許の教習を受けることができる教習所が一部存在することは確かですが、決して多くは多くないため事前に近隣の通いやすい教習所に入校条件を確認しておくのが安心です。

バイクの教習は難易度が高い

バイクの教習は車の教習よりも難易度が高いと言われる事が多く、特に大型自動二輪の教習は普通自動二輪免許の教習よりも難易度が高い傾向になります。
教習内容的にも、普通自動二輪でやった内容の応用編が多いため、普通自動二輪を十分に乗りこなせていないとスムーズには行きません。

そのため、入校できたとしても無事卒業して免許取得までできるとは限らず、技術が足りず教習をやり直すことになるパターンも考えられます。
挫折して大型バイクを諦めてしまう可能性も考えられるので、ベストなのは250ccクラスや400ccクラスの普通自動二輪を乗りこなせるようになってから大型にチャレンジするのがおすすめです。

バイクの教習が難しい理由

バイクに乗りたい!という気持ちはあっても、まだバイクに乗ったことがなく、これからバイクの免許を取得しようとしている方は、バイク教習の難しさがうまくイメージできないという方も多いことでしょう。

そもそもバイク教習はクルマの教習と何が違ってどういった部分が難しいのか、初心者向けに解説していきます。

バイクは不安定な乗り物

クルマは4輪なので何もしなくても常にバランスが取れて倒れる事はありませんが、バイクは2輪なのでライダーが跨ってバランスを取らなければ簡単に倒れてしまいます。

タイヤの設置面積も少なく、路面状況の影響を受けやすいため、慣れていないと濡れた路面やちょっとした段差、砂によって転倒する事も考えられます。
特に初心者のときにこそ、バイクならではの難しさを強く感じるはず。

車の運転ができても、バイクの運転に活かせるのは交通ルールくらいで、乗り方も違えば周囲の状況判断の重要さもレベルが違うため、クルマとは全く違う乗り物として乗り方を教習で学ぶ必要があります。

バイクは体全体を使って運転する

バイクを運転する際、シートに座るのではなく、跨って中心にあるタンクを足で挟み込むように乗る「ニーグリップ」が重要です。

両手両足で違う操作をするのも難しいポイント。
右手→スロットル操作・フロントブレーキ
左手→クラッチ
右足→リアブレーキ
左足→シフト操作

曲がる際もハンドルを切って曲がるのではなく、曲がりたい方向に視線を移してバイクを倒して曲がる必要があるため、ある程度のバランス感覚や運動神経が求められます。

慣れてしまえばできるものですが、車と違ってやることが多いため難易度は高い傾向にあります。

繊細なスロットル操作が求められる

右手で操作するアクセル、通称スロットルはミリ単位での精密な動きが必要です。
特に排気量が大きければ大きいほど低いギアでシビアになりやすく、キャブレター車の場合は開けすぎるとエンストしてしまうことも。

教習車はキャブレターではなくインジェクションのところが多いため、そこまでシビアではありませんが、将来古いバイクにも乗りたいと思っている方は操作に気をつけて練習してみてください。

課題走行

バイクの教習ではスラロームや一本橋、大型教習では波状路などバイクならではの課題走行があります。
この課題走行で苦戦することが多く、バイク操作の慣れが必要な部分です。

自動車教習と同様にS字やクランクに加え、以下の課題走行が教習に含まれます。

スラローム

規定時間内に左右に並べられたパイロンの間を縫うようにS字走行する課題。
バイクを左右に切り返す技術や、スロットル(アクセル)操作による車体コントロールが重要です。

一本橋

幅30cm 長さ15m 高さ5cmの台の上を規定時間以上かけて渡り切る課題。
低速になればなるほどバイクが不安定な状態となり、極低速域で車体のバランスを取って保持するコントロール性が求められます。

急制動

決められた速度まで加速し、決められた位置で素早く安全に最大限のブレーキ操作を行い、停止エリア内で停車する課題。
ブレーキが甘すぎると停止エリア内をオーバーしてしまい、ブレーキをきつくかけすぎるとフロントタイヤがロックして転倒してしまいます。
クルマは急ブレーキをかけても転ぶことはありませんが、バイクの場合は転ぶ可能性があるためクルマの急制動と比較して段違いに難易度が高い課題です。

波状路

大型自動二輪教習にしかない、連続したでこぼこのある路面を走行する課題。
立ち乗り姿勢で運転し、速度が遅すぎても早すぎてもバランスを崩してしまうため、これまでやってきた基礎的なコントロールが重要です。

こう見るとバイクの教習、運転が難しいと感じるかもしれませんが、教習を受けてしっかり理解すれば誰でも乗ることができます。

ですが、普通自動二輪よりも大型二輪のほうが難易度が高く、普通自動二輪を十分に乗りこなせないと簡単には行かない内容が大型二輪教習には含まれています。

追加教習が多いと費用面や時間面で損するケースもあるため、よく考えてから申し込みをしましょう。

普通自動二輪免許と大型自動二輪免許の違い

ここからは普通自動二輪の教習と大型自動二輪の教習の違いや、なぜ大型のほうが難易度が高いのかについて解説していきます。

免許取得年齢

普通自動二輪免許は16歳から取得可能ですが、大型二輪免許は18歳以上から取得可能のため、しっかりバイクに乗れていても16歳の方は18歳になるまで大型二輪免許は取得できません。

乗ることができるバイク

大型二輪免許は排気量の制限なく全てのバイクを運転することができます。
普通自動二輪免許は400ccまで、小型限定普通自動二輪免許は125ccまでのバイクを運転することができます。

免許 排気量
小型自動二輪免許 125ccまで
普通自動二輪免許 400ccまで
大型自動二輪免許 制限なし

教習車

使用する教習車は教習所によって異なります。
普通自動二輪では教習車仕様のCB400SF、新しければ教習車仕様のNX400になります。
大型自動二輪は教習車仕様のNC750Lを採用している教習所が多いのが現状です。

排気量は400ccと750ccで約二倍の差があり、最大トルクもNC750Lが約57 N・m 、CB400SFは約39N・mと大きく差が開いています。

また車重もNC750Lが約218kg~228kg、CB400SFは190kg~200kg(NX400は196kg)と若干の差ではありますが、車重も車体の大きさも違っています。

大型自動二輪の教習車を扱うほうが難しく、普通自動二輪を乗りこなせないと扱うのは難しい傾向にあります。

課題走行の規定時間の違い

普通自動二輪と大型自動二輪の教習それぞれで、同じ教習内容もあります。
しかし、スラロームでは普通自動二輪よりも短いタイムで、一本橋ではより長いタイムが規定時間とされるため、高いレベルでのコントロールが必要です。

車体ももっと大きく、もっと排気量が大きいバイクになるため、普通自動二輪よりも課題走行の難易度は高くなります。

いきなり大型自動二輪免許をとるメリット

普通自動二輪免許を取得してそのままの流れで大型自動二輪免許の教習を始める方は一定数いますが、一体どんなメリットがあるんでしょうか?

全てのバイクに乗ることができる

大型自動二輪免許最大のメリットは排気量制限がなく、この世の全てのバイクに乗ることができるようになること。

普通自動二輪免許は400cc以下までのため、どうしても選択肢が狭まってしまいますが、最初からどうしてもこのバイクに乗りたい!と決まっていて、それが大型バイクという方には大きなメリットとなります。

ステップアップより手間を抑えることができる

教習所の入校手続きや、免許交付関連の手続きを一度に済ませることができるため、分けていくよりも手間を抑えることができます。

平日限定のことが多いので、会社員の方は有給を取るなどして免許交付に行くため、それが一度で終わるならメリットとして大きいかもしれません。

いきなり大型自動二輪免許をとるデメリット

次にいきなり大型自動二輪免許を取得するデメリットはどういったところなんでしょうか?

教習で挫折する可能性がある

バイクの運転はスピードを出して走るよりも、スピードを抑えてゆっくり走るほうが実は難易度が高い傾向にあります。
理由はパワーがあるものをコントロールして自分の手で制御するのが難しいから。

そのため普通自動二輪免許よりも教習が難しいため、途中で挫折してしまう可能性が高いかもしれません。

免許の取得に時間がかかる

普通自動二輪と大型自動二輪それぞれの免許取得までの時間を比較すると、技能教習時間は大型自動二輪のほうが普通自動二輪よりも多くなるため、その分免許取得も遅くなってしまいます。

近年ではレンタルバイクサービスも普及しているため、1日でも早くツーリングに行きたいという方にはデメリットになるでしょう。

いきなり大型自動二輪免許をとるのがおすすめなのはどんな人?

乗りたいバイクが決まっていて、それが大型クラスの方

ハーレーに乗りたい、など明確に最初に自分が乗りたいバイクが大型バイクの方にはいきなり大型自動二輪免許をとるのがおすすめです。
一般的にはまずは普通自動二輪で400cc以下のバイクに乗って慣れたら大型をステップアップしますが、どうしてもこれしか乗りたくない!と明確に決まっているなら、大型自動二輪免許を取って大型から乗り始めるのも一つの手段だ言えるでしょう。

バイク初心者は何の免許をとるのがおすすめ?

「どうしても大型バイクに乗りたい!」という強い意志がある場合を除き、バイク初心者であればまずは250ccや400ccのバイクに乗って技術を磨いてから大型へステップアップする道がおすすめです。

筆者のステップアップを進める本当の理由

筆者自身も普通自動二輪免許から大型自動二輪免許へのステップアップを経験しましたが、普通二輪の免許を取ってバイクに乗り、「もう十分に乗りこなせている」と感じていたスキルも、教習で大型バイクの圧倒的なパワーを前にしたとき、実はまだ未熟なものだったと痛感しました。

バイクは、技術を磨くほどに新たな発見がある乗り物。
その奥深さと、一歩ずつ成長していく過程にある操る楽しさをぜひ大切にしてほしいと思います。

直線が走れたとしても、大型バイクで難しいのはそこではなく日常使い的な一面です。

Uターンや取り回し、渋滞の中など、400ccで簡単にできていても、大型ではそう簡単にはいきません。

そのコントロールを覚えるのは大型バイクからではなく、400cc以下から始めたほうが上達スピードは格段に早く、かつ安全だと筆者は思います。

なんとか教習を終えて大型自動二輪免許を取っても、「いざ乗ってみると大型は乗りこなせなくて怖い」などの理由で結局400cc以下に乗るなら、いきなり大型自動二輪免許を取る意味が薄れます。

自分の体格や技量にあったバイクに乗ることが安心・安全なバイクライフを送る上で重要なことなので、地道にステップアップしていくのがおすすめです。

いきなり大型バイク免許はよく考えよう

筆者も普通自動二輪免許を取得してバイクに乗り始めたため分かりますが、普通自動二輪ライダーにとって、大型バイクは憧れの存在です。
しかし、「大型に乗っているから運転がうまい」というわけではありません。
むしろコントロールしなくてはいけないレベルが高いため、普通自動二輪に乗ったほうがうまく走れる大型ライダーは実際多いかもしれません。

もう一つの理由として、いきなり大型を取ってしまうと、もう二度とバイクの運転を教習所で習うチャンスが無くなってしまうこと。
普通自動二輪を公道で乗ると、教習所では教わらないコツがあり、それを習得したうえで大型の教習を受けるとより深く、レベルの高い教習を受けることができます。
バイクの乗り方を人に教わるという行為はバイクライフにおいて数少ない貴重な経験です。

ですが、憧れが止まらなくなってどうしてもこれに乗りたい!と思い立ってしまう気持ちも分かります。
そのため、これからバイクの免許取得を考えている方はメリット・デメリットをしっかり理解したうえで、どの免許を取るべきかしっかり考えてから申し込むようにしましょう。

筆者プロフィール

Bike Life Lab supported by バイク王

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