冬の峠道や高速道路を走った後、バイクの足回りが白く粉を吹いたようになっているのを見たことはありませんか?

その正体は、凍結防止剤や融雪剤に含まれる塩化化合物。「塩カル」といえば、聞き覚えのある人も多いでしょう。

凍結防止剤、融雪剤は冬場の凍結を防いだり、雪の除去を手伝ってくれる頼もしい味方ですが、時に路面を滑りやすくしたりと、2つのタイヤで走るライダーにとっては危険な罠でもあります。

こうした“塩カル”が撒かれた路面は、スピードを抑え慎重な運転でやり過ごすのが一番ですが、通過したからといって安心してはいけません。

ライダーが無事に帰宅しても、実はバイクに危機が迫っているかも……?

走行後の愛車を襲う“塩カル”によるサビ

放っておくと愛車がサビる⁉ 融雪剤に潜む第2のトラップ!

ツーリング後のバイクに迫る危機、それは「サビ」です!

融雪剤や凍結防止剤は、路面が滑りやすくなるだけでなく、タイヤで巻き上がり車体に付着するとバイクをサビさせるという第2の罠が隠れています。

では、どうして凍結防止剤や融雪剤でバイクが錆びてしまうのでしょうか?

融雪剤の主成分「塩化化合物」によるサビのメカニズム!

バイクのパーツの多くはアルミニウムやスチールなど金属で構成されています。

サビは金属の酸化現象であり、長期間放置すれば空気中の水分や酸素と結びつき、非常に緩やかに進行します。水に濡れると錆びやすくなるのは、水が金属と酸素の間で電子やイオンが移動するための『橋渡し』となり、化学反応を促進させてしまうからです。

ですが、純粋な水は電気抵抗が高く、結合するのに必要な分子中の電子やイオンの移動がしづらいため、錆が発生するスピードは緩やかなものです。

しかし、そこに「融雪剤」が加わると一変して話が変わってきます。

融雪剤に使用される物質の主成分は主に「塩化カルシウム」や「塩化ナトリウム」、「塩化マグネシウム」です。

このうち重要なのが“塩化”の部分で、塩分が電離してイオンを大量発生させることで、水の電気伝導率が劇的に上昇します。水に溶け出すと強力な電気伝導性をもつ「電解液」へと変化するのです。

これが金属表面に付着すると、電子の移動を加速させ、通常よりも何十倍、何百倍ものスピードで酸化、つまり錆びを進行させてしまうのです。

そして、サビが発生しづらいと言われているアルミニウムやステンレスも油断してはいけません。

確かに、アルミニウムや鉄とクロムの合金であるステンレスは、表面が「酸化被膜」と呼ばれる保護膜で覆われているため、水や酸素と反応しづらくサビにくいという特徴があります。

ですが、塩分が溶け出した「電解液」は強い攻撃性をもっていて、その酸化被膜を破壊してしまいます。

なので、サビに強いアルミやステンレス製のパーツでも、融雪剤の付着には気を付けなければなりません。ちなみに、アルミのサビは表面にできる「白い粉」のようなものです。

ちなみに、スチールの酸化被膜は、それそのものが防御性能のない「酸化鉄(赤サビ)」であるだけでなく、水分を通しやすいため内部の腐食をさらに進行させてしまうという厄介者。特に注意が必要です。

「明日洗えばいいや」という油断が、翌朝にはチェーンやボルトの頭にサビでできた「赤い花」を咲かせる結果となってしまうため、ツーリング後に車体に付着した凍結防止剤や融雪剤には注意が必要です。

豆知識:融雪剤の種類と特性

一口に融雪剤・凍結防止剤と言っても、使われる化学物質によって愛車へのダメージや路面への影響が異なります。

種類 メリット(路面への影響) デメリット(バイクへの影響)
塩化カルシウム 氷点下30°程度まで効果を発揮。吸湿・発熱性が高い。 最も一般的で、腐食性が非常に強い。乾燥してもベタつきやすく、落ちにくい。
塩化ナトリウム いわゆる「塩」。安価で大量散布に向いている。 海沿いの塩害と同じ理屈で猛烈に錆びる。ゴム製品への攻撃性もあるので注意。
塩化マグネシウム 比較的低温でも効き、環境への負荷がやや低い。 他の塩化物と同様、金属の腐食スピードは速い。
酢酸マグネシウム 金属腐食性がほとんどない。 環境や構造物に優しい。 バイクの腐食の心配はない。一方で非常に高価なため、空港の滑走路や特殊な橋梁など、限定的な場所でしか使われない。

私たちがツーリングで遭遇するのは、そのほとんどが「塩化カルシウム」や「塩化ナトリウム」です。つまり、「常に海水の霧の中を走っている」のと同等のリスクがあると考えなければなりません。

サビの魔物を退治する!冬の洗車・重点ポイント

ということで、冬の融雪剤が撒かれた道を通ったツーリングの後には、丁寧に洗車をすることが推奨されます。

寒い中の洗車は苦行ですが、ポイントを絞れば効率よくダメージを防げますよ。

「冷水」で物理的に流し切る

実はお湯を使うと汚れ(塩分)の溶解度を高めて落としやすくする半面、塩化物の化学反応を促進させてしまうという側面があります。一気に洗い流すことができる場合は有効ですが、中途半端に温めて汚れが残ってしまうとサビの原因となってしまいます。

まずはたっぷりの水(高圧洗浄機があるなら下回りを入念に)を使って、固着した結晶を物理的に弾き飛ばすのが先決です。

フロントフォークとブレーキ周りは重点的に!

フロントフォークのインナーチューブに点錆びが出ると、シールを傷つけオイル漏れの原因になります。

また、ブレーキキャリパーのピストン周りに塩分が残ると、引きずりを起こすため、この2箇所は「洗車シート」などではなく、水で洗い流しましょう。

洗車後はチェーンの「追い給油」

洗車後は水分を拭き取った後、すぐにチェーンルブを塗布しましょう。冬は乾燥しているため、油分が切れた瞬間に錆びが回り始めます。

融雪剤が撒かれた道路は注意して走行しよう

最後に、メンテナンス以前に重要なのが「走行中のリスク」です。

融雪剤が大量に撒かれた路面は、一見乾いているように見えても、実は非常に滑りやすい状態にあります。特に塩化カルシウムは水分を吸収して常に湿った状態を作り出すため、夏場のドライ路面のようなグリップは期待できません。

さらに、融雪剤が撒かれているということは、その場所が「凍結の危険がある=気温が極めて低い」証拠です。

スピードを落とす: 巻き上げる融雪剤の量を減らし、愛車への付着を最小限にする。
車間距離を取る: 前走車が跳ね上げる「塩の混じった泥水」を被らない。

冬の道には、目に見えない「錆びの魔物」と「転倒の罠」が共存しています。

寒くても丁寧な洗車で愛車をサビから守ろう!

冬のツーリングは、帰宅してバイクをガレージに入れるまでが遠足ではありません。

「冷えた体を風呂で温める前に、まずは愛車の塩を流す」。

このひと手間が、あなたの愛車を10年先まで輝かせるか、ボロボロにするかの分かれ道になります。

自身の休息も大切ですが、ツーリングを共にした愛車をしっかり洗車して錆から守ってあげましょう!

筆者プロフィール

webオートバイ×BikeLifeLab

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