12月に入り、朝晩の冷え込みがいよいよ本格化してきました。吐く息も白くなり、多くのライダーにとっては厳しい季節の到来です。 「外はもう寒い! 家の中で過ごそう」 そう思う一方で、「いや、やっぱりバイクで走りたい!」という想いを持つライダーも少なくないでしょう。

実は、冬は空気が澄んで景色が最も美しく見える季節でもあり、場所と時間帯さえ選べばバイクでのツーリングも十分に楽しめます。 今回は、寒くても活発にバイクライフを楽しみたいライダーに向けて、冬でも比較的暖かく、かつ安心して走れる東京近郊のツーリングスポットを10選にまとめて紹介します。

ただし、冬ツーリングはライダーにとっての危険が多く潜んでいます。記事の後半では、思わぬ転倒やトラブルを防ぐための「冬ツーリングの注意ポイント」も解説します。しっかり準備をして、冬のツーリングに出かけましょう!

【東京】レインボー・ゲートブリッジを渡る都内ショートツーリング

 

東京レインボーブリッジ(出典:photo AC)

遠出をする時間がなくても、都心で海沿いの開放感を味わいたいなら「東京ベイエリア」が最適です。

芝浦エリアからレインボーブリッジ(一般道)を渡り、お台場を経由して東京ゲートブリッジ、そして若洲海浜公園へと至るルートは、都会のビル群と東京湾の潮風を同時に感じられる快走路。

東京ゲートブリッジ(出典:photo AC)

冬の晴れた日には空気が澄み渡り、若洲海浜公園から見上げるゲートブリッジの向こうに、雪化粧した富士山が望めることもあります。

気をつけたいのが、橋の「排気量規制」と「強風」です。

レインボーブリッジは50cc以下の原付、東京ゲートブリッジは125cc以下の原付二種および原付が通行不可です。また、冬の橋上は風が強く、継ぎ目の鉄板部分は滑りやすいため、慎重な操作を心がけましょう。

【ルートMAP】

【千葉】温暖な袖ヶ浦からR127を快走する内房コース

袖ヶ浦海浜公園のヤシの木並木(出典:photo AC)

冬の関東ライダーにとって、「房総半島」は外せないツーリングスポットです。中でも東京湾アクアラインを降りてすぐの袖ヶ浦から南下する内房エリアは、アクセスも良く温暖な気候が魅力です。

袖ヶ浦海浜公園、通称「千葉フォルニア」のヤシの木並木から始まり、海沿いの国道127号を南へ流すルートは、西日を受ける午後の時間帯なら比較的暖かく走行できます。

燈籠坂大師の切通し(出典:photo AC)

富津市にある「燈籠坂大師(とうろうざかだいし)の切通しトンネル」など、迫力ある景観スポットも点在。内房の海越しに眺める富士山も、このルートならではのハイライトです。

【ルートMAP】

【千葉】1月から菜の花が咲く「房総フラワーライン」を行く南房総ツーリング

房総フラワーライン(出典:photo AC)

さらに南へ足を延ばせるなら、房総半島の最南端エリアも冬場には魅力的なツーリングスポット。館山市から南房総市にかけては、黒潮の影響で冬でも霜が降りないほど暖かく、「常春(とこはる)」と呼ばれています。

館山の伊戸から白浜の野島崎まで続く海岸線道路「房総フラワーライン」は、その名の通り沿道を彩る花々が魅力。驚くことに1月上旬から菜の花が咲き始め、一足早い春の訪れを感じられます。

房総半島最南端の「野島崎灯台」周辺や、近隣の漁港では「なめろう」や「さんが焼き」などの地魚料理が名物。冬の味覚を堪能するグルメツーリングにも適しています。

【ルートMAP】

【千葉】「東洋のドーバー」から太平洋を望むジオスポットツーリング

屛風ヶ浦(出典:photo AC)

千葉県の東側、太平洋に面したエリアも冬の快走路です。穏やかな内房とは対照的に、こちらは荒々しい太平洋の絶景が広がります。

九十九里浜の東端にある「飯岡刑部岬(いいおかぎょうぶみさき)」から、広域農道などを経由して「銚子ドーバーライン(県道286号)」へ向かうルートは、イギリスのドーバー海峡を彷彿とさせる断崖絶壁の上を、見晴らしのいい長い直線が続きます。

約10kmにわたって続く海食崖「屛風ヶ浦(びょうぶがうら)」は、地球のダイナミズムを感じられるジオスポット。犬吠埼灯台なども含め、壮大な自然の景色を味わいたいライダーにおすすめです。

【ルートMAP】

【神奈川】三浦半島を一周する定番日帰りツーリング

野比海岸(出典:photo AC)

都心から1時間強でアクセスできる三浦半島は、ショートツーリングの定番です。

横浜横須賀道路を抜け、観音崎から浦賀、そして半島の先端にある城ヶ島を目指す時計回りのルートは、海沿いの爽快感と適度なワインディングが楽しめます。

城ケ島(出典:photo AC)

城ヶ島大橋を渡れば、旅情たっぷりの漁港の町へ。このエリアの代名詞といえば、冬から春にかけて旬を迎える「三崎のマグロ」です。また、城ケ島はジオスポットや朝日、夕日のビュースポットとしても人気です。

また、横須賀市街方面には「三笠公園」や「どぶ板通り」などの観光地があり、走り、グルメ、観光のバランスが良いのが三浦半島の魅力です。

【ルートMAP】

 

【神奈川】観光要素と海岸線を満喫する湘南ツーリング

国道134号線と江の島(出典:photo AC)

「海沿いを走りたい!」と思ったとき、真っ先に候補に挙がるのが湘南の国道134号でしょう。逗子、鎌倉、江の島、茅ヶ崎と続くこのルートは、まさに王道のシーサイドクルージングコースです。

冬の湘南は空気が乾燥しているため、晴れた日には江の島越しに雪をかぶった富士山がくっきりと見えるかもしれません。沿道には寺社仏閣やカフェも多く、観光や休憩スポットに事欠かないのも魅力的です。

注意したいポイントは、 休日を中心とした国道134号の慢性的な混雑。冬場とはいえ、日中は渋滞を考慮する必要があります。日が落ちると急激に寒くなるため、夕方の渋滞前に主要エリアを抜けるツーリング計画がおすすめです。

【ルートMAP】

【神奈川】西湘バイパスで快走クルージング

西湘バイパス小田原出口(出典:phptp AC)

湘南エリアの渋滞を避け、ひたすら走りに集中したいなら「西湘(せいしょう)バイパス」が有力な選択肢です。西湘バイパスは、大磯から小田原まで相模湾の海岸線ギリギリを走る自動車専用道路で、信号もなく、まるで海の上を滑空しているかのような爽快感が味わえます。

終点付近の小田原エリアは、漁港グルメの宝庫。アジフライや海鮮丼は、ツーリングの目的にぴったりの名物です。

そして、ここからターンパイクや箱根新道を使って箱根の山へ登りたくなりますが、冬場は路面凍結のリスクが非常に高くなります。小田原で食事を楽しみ、明るいうちに標高の低いエリアで引き返すのが、安全に冬ツーリングを楽しむコツですよ。

【ルートMAP】

【静岡】熱海ビーチラインを抜けて温泉を楽しむ熱海・真鶴ルート

 

熱海ビーチライン(出典:photo AC)

神奈川県を越えて静岡県へ入るなら、熱海・真鶴エリアがおすすめです。小田原から国道135号を南下し、原生林が残る「真鶴半島」へ。比較的風の影響を受けにくい穏やかなルートです。

その後は有料道路「熱海ビーチライン」へ。波しぶきがかかるほど海面に近いこの道は、山越えの必要がなく凍結の心配がほとんどありません。

そして、熱海といえばやはり温泉。日帰り入浴ができる施設も多く、冷えた体を温めるには最高のロケーションです。湯冷めには十分注意して、冬の温泉ツーリングを楽しんでみてはいかがでしょうか。

【ルートMAP】

【静岡】熱海からちょっと足を延ばした伊東の海岸線ツーリング

道の駅伊東マリンタウン(出典:photo AC)

熱海よりさらに南、伊東エリアまで足を延ばせば、よりツーリングらしい距離感になります。

国道135号は伊豆半島の東海岸を走る大動脈であり、交通量が多いため路面温度が比較的安定しています。半島内陸の山間部が凍結していても、海沿いの135号なら走行可能なケースが多いです。

「道の駅 伊東マリンタウン」や、断崖絶壁の景勝地「城ヶ崎海岸」など、立ち寄りスポットも豊富。冬の伊豆は都心よりも気温が高く感じられることが多く、しっかりとした装備があれば快適なクルージングが期待できます。

【ルートMAP】

【茨城】実は積雪がほとんどない北関東シーサイドルート

大洗海岸(出典:photo AC)

最後に紹介するのは、北関東の海沿いルート、茨城県の大洗(おおあらい)です。東からだいぶ北に位置するため「寒そう」というイメージがあるかもしれませんが、沿岸部は雪がほとんど降らず、冬の晴天の日が多いエリア。北関東自動車道を使えばアクセスも良好です。

磯前神社 神磯の鳥居(出典:photo AC)

太平洋の岩礁に立つ「神磯の鳥居」で有名な「大洗磯前(いそさき)神社」や、隣接するひたちなか市の「那珂湊(なかみなと)おさかな市場」が定番スポット。

冬の茨城といえば「あんこう」が旬です。市場や近隣の食事処では、あんこう鍋や新鮮な海の幸が楽しめるでしょう。

【ルートMAP】

覚えておくべき冬ツーリングの注意ポイント

いかがだったでしょうか? 上記でご紹介した通り、東京近郊には冬場でも楽しめるツーリングスポット、ルートが豊富にあります。

しかし、冬のツーリングには、夏とは異なる危険が潜んでいます。

ツーリングに出かける際は、以下のポイントを必ず頭に入れておきましょう。

路面温度の低下とタイヤのグリップ

冬はタイヤのゴムが硬化し、路面温度も低いため、グリップ力が著しく低下します。車体を倒しすぎず、急ブレーキ・急加速を避けた「優しい運転」を心がけましょう。

橋のつなぎ目の鉄板やマンホールが滑りやすいのはもちろんですが、日陰と日向でも路面温度は大きく変わります。日の高いうちでも、日陰を通る際は注意が必要です。

また、市街地は大丈夫でも、峠道や日陰、トンネル出入り口は凍結している可能性があります。冬は「なるべくバイクで山には近づかない」ことが賢明です。

寒暖差の罠

冬のツーリングでは、日中は暖かくインナーがいらないような気温になっても、朝晩は氷点下近くまで冷え込むことがあります。朝晩の寒さに備え、防寒具を忘れずに準備しましょう。

恐怖の「ブラックアイスバーン」

出典:photo AC

濡れているように見えて実は凍っている状態を「ブラックアイスバーン」と呼びます。橋の上や日陰のアスファルトで発生しやすいため、怪しい箇所では速度を落としましょう。

特に、暗くなってくるとブラックアイスバーンは見分けづらくなります。この点も踏まえて、なるべく明るいうちに帰宅するということを心がけることが大切です。

日没時間を考慮したスケジュール

出典:photo AC

空気の澄んだ冬は夕暮れの景色も綺麗に見えます。しかし冬は16時過ぎには暗くなり、気温が急降下します。「日が昇ってから出発し、日が沈む前には帰宅する(あるいは高速に乗る)」くらいの余裕を持ったスケジュールが安全ですよ。

安全に注意して冬のバイクライフを楽しもう!

澄んだ空と遠くまで見渡せる絶景、冷えた体に染み渡る温かい食事、そして温泉。これらは冬にしか味わえない特別な体験です。

「寒さをしのぐ装備」と「無理のないルート選び」さえしっかり行えば、バイクシーズンは一年中続きます。今回紹介したエリアを参考に、安全第一で冬のバイクライフを楽しんでください!

筆者プロフィール

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