朝にいざバイクに乗ろうとしてセルボタンを押し込んでもセルモーターが回らない「バッテリー上がり」に陥ったことがある方も少なくないかもしれません。

特に冬のバッテリー上がりは、ライダーにとって身近で、かつ非常に厄介なトラブルの一つです。
それだけで一日の予定が台無しになってしまうような事態ですからね。

今回は、冬にバッテリーが弱くなるメカニズムと、その事態を防ぐための具体的な対策を解説します。

冬にバッテリーが上がりやすいのはなぜ?

バイクのバッテリーは自然放電や時計や防犯機器を動かす微弱な電気放出「暗電流」により、長期間乗らずに放置すれば、冬でなくてもバッテリー上がりを起こしやすくなります。

しかし、結論から言うと、冬にバッテリーが上がりやすくなるのは紛れもない事実です。

では、なぜ冬はバッテリーが上がりやすいのでしょうか?

その主な理由は、大きく分けて2つあります。

冬はバッテリーも“寒がり”?

「バッテリーはエンジンを動かすことで充電される」というのは皆さんご存じかもしれません。
ではバッテリーの中では何が起きているのでしょうか?

バッテリー内部では、「希硫酸」という液体と鉛の極板が化学反応を起こすことで、電気を蓄えたり供給したりしています。この化学反応こそが、エンジン始動や灯火類を支えるパワーの源です。

しかし、この化学反応には「温度が下がると活性が鈍くなる」という性質があります。

実は、カタログに載っている「Ah(アンペアアワー)」で示される容量は、25℃前後の暖かい環境を前提とした数値。
これが10℃を下回ると性能が落ち始め、氷点下近くになるとバッテリーが発揮できる実質的な容量は本来の70%〜80%程度まで目減りしてしまいます。

すると、「バッテリーに蓄えられる容量」と、「バッテリーから取り出せる容量」が減ってしまうのです。

そのため、冬季のバッテリーは、内部の電気そのものが消えてなくなったわけではなく、寒さで分子の動きが鈍くなり、最後まで使い切る前に反応が止まってしまう。
たとえるなら、バケツの中に水(電気)はあっても、底の方が凍りついて取り出せないような状態
になっているのです。

これが、冬にバッテリーが上がりやすいとされる一つ目の理由です。

エンジンオイルが「硬くなる」

二つ目の要因は、意外にもエンジン内部にあります。

それは「エンジンオイル」。

外気温の低下は、エンジン内部のオイルも冷やしてしまいます。
冷えたオイルは粘度が増してドロドロになり、始動時にピストンを動かす際の大きな抵抗となります。

ただでさえ寒さで「出し入れできる電気の量」が減っているバッテリーにとって、この「重たくなったエンジン」を回すのは、夏場に比べて何倍もの力が必要な重労働。

「バッテリーのパワーダウン」と「エンジンの負荷増大」のダブルパンチが、冬の始動を困難にしてしまっているのです。

ちなみに、オイルには「粘度」というオイルの硬さを示す数値があり、冬場は低粘度のオイルを使用することもバッテリー上がりを防ぐ予防になります。

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実は「すっからかん」ではない?

冬のバッテリー上がりでよくあるのが、「電圧はそこそこあるのに、エンジンを掛ける力が足りない」という状態です。

  • 電圧(V): 電気を押し出す「意気込み(圧力)」
  • 電流(A): 実際にセルを回すパワーの「実数(流量)」

冬は、テスターで測ると12.5V前後の電圧(意気込み)があっても、いざエンジンをかけようとすると、電解液の温度低下による電気抵抗のせい(電気が通りにくくなるせい)で必要な電流(実行力)がガクッと落ちてしまいます。

「雪かきをやる気はあるけど、寒さで身体がうごかない時」のような状態ですね。

そのため、少し温めてあげると反応が戻り、「朝はダメだったのに昼間ならかかった」といった現象が起こったりもします。

気持ちよく出かけるための冬季バッテリー対策

せっかくの休日を台無しにしないために、日常でできる冬のバッテリー上がりの対策を紹介します。

定期的に「長めの距離」を走る

バッテリーにとって最大の敵は放置です。5分程度のチョイ乗りでは、始動で使った電力を回復しきれません。
週に一度は30分〜1時間程度走行して、しっかり充電してあげましょう。

長期間乗らないなら「端子を外す」

上記でも触れた通り、バイクは乗っていない間にも時計やコンピューターのバックアップ、イモビライザーの稼働などで電気が消費されます。

この「暗電流」を防ぐため、数週間以上乗らない場合はマイナス端子を外しておくとバッテリー容量の低下を軽減できます。

ただし、車種によっては長期間バッテリーを外すことでエラー表示が出てしまう場合もあるため、外す前にきちんと愛車の取扱説明書を確認しましょう。
また、暗電流は防ぐことができても、バッテリー自体の自然放電は防ぐことができないため、こちらも注意が必要です。

CAUTION!!

バッテリーの端子を外す際、付ける際は「外すときはマイナスから、付けるときはプラスから」が鉄則! プラス端子を先に外す、もしくは外さずに作業をするとショート事故につながる恐れもあるため、この順番はきちんと覚えておきましょう。

保管場所の工夫

バイクカバーを二重にする、ガレージに保管するなど、なるべく外気の影響を抑えるだけでバッテリーの温度低下を和らげることができます。

現代テクノロジーで冬のバッテリーの不安を解消!

厄介な冬のバッテリー上がりですが、現代のテクノロジーを頼るのも、賢いバイクライフの送り方です。

市販されているアイテムの中には、バッテリー上がりを予防したり、上がった状態からエンジンを始動させるなど、冬のバッテリー上がりに対策できるものが数多くあります。

アイテム名 メリット 注意点
トリクル充電器 つなぎっぱなしで常に満充電をキープ。 コンセントが必要。
ジャンプスターター モバイルバッテリー型。出先での始動に。 本体自体の充電が必要。

リチウムイオンバッテリーは冬に強い?

近年、バイクに標準採用されることも増えた「リチウムイオンバッテリー」。

自己放電が極めて少ないため、数ヶ月放置しても電圧を維持しやすいのは大きなメリットですが、「冷え」に関しては鉛バッテリー以上に繊細な面もあります。

氷点下では、始動前に数分間ライトを点灯させて内部を温める「儀式(ウェイクアップ)」が必要になることもあります。
特性を理解して付き合うのが正解ですよ。

これだけ覚えて冬のバイクライフを快適に!

冬のバッテリー上がりは、決して避けられない運命ではありません。

①バッテリーは寒さで実効容量が2〜3割減る。
②オイルが硬くなり、始動に大きなパワーが必要になる。
③定期的な走行や充電器で「電気の貯金」を維持する。

これらを意識するだけで、冬の朝に訪れる突然のバッテリー上がりは回避できます。

もちろん、バッテリーも経年劣化する消耗品であるため、もし3年以上の長期間同じバッテリーを使っているなら、新品に交換するのも立派なリスク管理です。

万全の準備をして、冬にしか味わえないツーリングを楽しんでくださいね。

筆者プロフィール

webオートバイ×BikeLifeLab

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