バイク乗りにとって、ヘルメットは自らの命を託す最も重要な装備です。
しかし、直接頭部に密着させて使うものであるため、見た目以上に過酷な環境に晒されています。

走行中の汗や皮脂、整髪料、さらには排気ガスや砂埃などが重なり合い、気づかないうちに内装やシェルには汚れが蓄積しています。

本格的なツーリングシーズンが幕を開ける前のこの時期に愛用のヘルメットを自宅でじっくりとメンテナンスし、最高のコンディションで春を迎えましょう!

ヘルメットは自宅で洗濯できる?

バイクに乗り始めた方の多くが疑問に思う「ヘルメットは家で洗えるのか」という点ですが、結論から言えば自宅での洗濯は十分に可能です。

ただし、ヘルメットは単なる帽子ではなく複数の素材が組み合わさった精密な安全装備。
適切な手順と注意点を守らなければ、本来の衝撃吸収性能を損なったり、パーツを劣化させたりするリスクがあります。

特に内部のクッション材や接着剤は化学薬品や熱に敏感であるため、正しい知識を持って作業に臨むことが大切です。

自宅でできるヘルメットクリーニング手順

ヘルメットをリフレッシュさせる工程は大きく分けて分解、洗浄、乾燥、そして清掃の4つに分類されます。
それぞれのステップを丁寧に行うことが、仕上がりの良さと安全性の維持につながります。

今回用意したもの

  • ・洗濯用中性洗剤
  • ・桶
  • ・綿棒
  • ・ペーパーウエス
  • ・マイクロファイバーウエス
  • ・タオル
  • ・ヘルメットクリーナー
  • ・シールドクリーナー

ヘルメットを分解する

まずは、メンテナンスを始めるための準備としてパーツの分解を行います。
傷がつきやすく視界を左右するシールドをはじめ、チークパッドやセンターパッド、あごひものカバーといった取り外し可能な内装パーツをすべて慎重に外していきます。

チークパッドの衝撃吸収ライナー(発泡スチロール部分)のカバーが外せる場合は外しておきましょう。

最近のヘルメットはメンテナンス性を考慮して多くのパーツが着脱可能になっていますが、無理な力を加えるとプラスチックのツメを破損させる恐れがあります。

取り外しの手順に不安がある場合は、説明書を確認しながら、あるいはあらかじめスマートフォンのカメラで構造を記録しておくと最後に組み立てる際に“知恵の輪”にならずに済みますよ。

内装を洗う

取り外した内装パーツの洗浄には、30度から40度程度のぬるま湯と衣類用の中性洗剤を使用するのが効果的です。内装汚れの主成分である皮脂は油分を含んでいるため、冷水よりも人肌程度の温度の方が分解されやすく、洗剤の洗浄力を最大限に引き出すことができます。

一方で、アルカリ性や酸性の強い洗剤は素材を傷める可能性があるため、必ず中性洗剤を選び、優しく押し洗いするように心がけてください。

また、柔軟剤の使用も可能ですが、繊維が油膜コーティングされることで内装生地の吸汗速乾性能が落ちてしまう場合があります。
使用する場合は、吸水性を損なわない「スポーツウェア用」の柔軟剤を選ぶのがおすすめですよ。

洗濯機の使用についても、パーツが取り外せるものであれば可能です。

ですが、強力な回転や撹拌は、内装の複雑な立体構造を崩したり、中のスポンジを偏らせたりする原因となります。
使用する場合は、必ず洗濯ネットに入れた上で「手洗いコース」などの弱水流を選択するようにしましょう。

また、ヘルメット本体側の衝撃吸収ライナーについても、ドブ漬けのような丸洗いは避けるべきです。これは内部に水が入り込むと乾燥が極めて困難になり、見えない場所でのカビの発生や金属パーツの腐食を招く恐れがあるからです。

洗浄が終わったら、洗剤成分が残らないよう入念にすすぎを行います。
洗濯機での脱水は、弱いモードでの短時間なら可能ですが、厚手の乾いたタオルでパーツを挟み込み、上から優しく押さえて水分を吸い取る方法が最も安全です。

乾燥

乾燥は必ず直射日光を避けた「陰干し」で行うのが大原則です。
早く乾かしたいからといって、ドライヤーの熱風を当てたり、衣類乾燥機に入れたりすることは絶対に避けましょう。

ヘルメットの核心部である衝撃吸収ライナー(発泡スチロール)は熱に弱く、高温にさらされると変質・収縮してしまい、万が一衝撃を受けた際の保護性能が失われてしまいます。

効率よく進めるには市販されているヘルメット専用の乾燥機を活用したり、サーキュレーターや扇風機の風を直接当てたりする方法が有効です。
内装は厚みがあるため、表面が乾いているように見えても内部に湿気が残っていることがあります。

生乾きによるニオイの発生は、せっかくの努力を台無しにする最大の敵。
一晩から二晩かけてしっかりと乾燥させることが肝心です。

シェルと内側の清掃

内装を乾かしている間に、帽体であるシェルの手入れを進めましょう。

特に、肌に直に接触し汚れが付着しやすい「あごひも」は、洗面器などに垂らしたり、洗剤入りのぬるま湯を含ませた布で丁寧に拭くなどして、入念に部分洗浄しておきましょう。
この時、洗剤が残ってしまうと、それが汚れの原因になってしまうため、しっかり拭き取るのが重要です。

基本的な汚れは、水で濡らして固く絞った柔らかい布で拭き取るだけで十分に落ちます。
こびりついた虫の死骸などは、濡れタオルを数分間置いてふやかしておくと、傷をつけずに除去できます。

また、表面がキレイになっても「エアダクト(通気口)」が埃や虫で詰まっていると機能しません。
綿棒やエアダスターを利用して掃除してあげましょう。

より美しい光沢を求めるなら、市販のヘルメットクリーナーを使用するのも良いでしょう。
作業の際はドーナツ型の「ヘルメットピロー」を台座に使うとヘルメットが安定し、シェルの頭頂部に傷がつくのを防ぐことができますよ。

取り外しができないヘルメット内部のライナー部分は薄めた中性洗剤を含ませた布で丁寧に拭き、その後に水拭きで洗剤成分を完全に除去します。
目に見えない部分ですが、ここを清掃することで全体の清潔感が格段に向上します。

シールドの清掃

視界を守るシールドは、最もデリケートな扱いが求められます。
砂埃などが付着した状態でいきなり拭いてしまうと、傷がついてしまいます。
まずは流水で汚れを洗い流し、指の腹を使って中性洗剤で優しく撫でるように洗うのが正解です。
特に、光を反射させるミラーシールドはコーティングが剥がれやすいため注意が必要です。

また、内側に装着するピンロックシート(曇り止めシート)は非常に柔らかい素材でできているため、不用意に擦らずメーカーの指示に従った慎重な手入れを心がけましょう。

乾燥後組み立て

すべてのパーツが完全に乾きシェルやシールドがピカピカになったら、いよいよ元の形に組み上げていきます。
パーツが正しく装着されていないと、走行中の脱落や異音の原因、さらには安全性の低下を招きます。
各パーツが確実にはまっているかを確認しながら作業を進めましょう。

この時、シールドの可動部やベース部分にごく少量のシリコンオイルを塗布しておくと、スムーズな開閉動作が長持ちします。

洗濯前に買い替えの検討も

最後に、洗う前に一度、ヘルメットの使用年数を確認しましょう。

ヘルメットには耐用年数があり、主要メーカーが販売するSG規格のヘルメットはおおむね「購入後3年」を基準として交換が推奨されています。

耐用年数を過ぎたヘルメットは見た目ではわからない劣化による防御性能の低下など、万が一衝撃を受けた際に十分に命を守る能力を発揮できない可能性があります。

これは以前使用していたヘルメットの内装に貼られていたラベル。製造年月日が記載されています。「使用日開始日」「購入日」とはことなりますが、買い替えの目安になります

「せっかくきれいにしたのに……」という事態にならないために、クリーニングを実行する前にヘルメットの製造年月日、使用年数を確認しましょう。

ヘルメットの内側に貼られたラベルなどに、製造年月日が記載されていますよ。

ヘルメットをリフレッシュして、春に気持ちよく走り出そう!

ヘルメットのクリーニングは、単に汚れを落とすだけの作業ではありません。
各パーツを手に取って清掃することで、ひび割れや劣化といった異常にいち早く気づくことができる、大切な安全点検の時間でもあります。

こうしたメンテナンスは、基本さえ守れば自宅でも十分に可能です。
清潔になったヘルメットを被れば、いつものツーリングが一層爽快なものになるはずです。

冬の間に装備のメンテナンスを済ませ、気持ちよく春のツーリングシーズンを迎えましょう!

筆者プロフィール

webオートバイ×BikeLifeLab

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