エンジン車のバイクを走らせるために必ず必要になってくるガソリン。
実は、そんなガソリンに消費期限があるのはご存知でしょうか?

長期放置されたガソリンは劣化し、ガソリンスタンドで入れる新しいガソリンとは違うものに変わってしまうんです。

今回はそんなガソリンの劣化について詳しく解説していきます!

ガソリンが腐るとは?

大前提としてガソリンは有機化合物のため、肉や魚などの生もののように腐るということはありません。
しかし、長期放置などで劣化して腐ったような状態になってしまうため「腐る」という表現が使用されることがあります。

一般的に言われる「ガソリンが腐る」とはどういうことが起きてるんでしょうか?

ガソリンは化学変化による酸化で腐る

ガソリンが酸素に触れて酸化が進むと化学組成が変化し、色・匂い・粘度が変化します。
この変化は一度腐った実物を見れば明らかにわかるもので、入れたての新しいガソリンとは全く違った状態です。

そのため、温度や湿度によって腐るのではなく、「酸化が進むことによって化学的に変化した状態」というのが腐ったガソリンの正体です。

ガソリンの消費期限は?どれくらいで腐る?

ガソリンがどの程度の期間で腐ってしまうかは保管状況やタンク内の状態によって異なるため一概には言えません。

ガソリンを製造・販売しているENEOSもガソリンの品質保持期限(保証期間)を設けておらず、気温の変化が少ない冷暗所の保管であれば6ヶ月程度のは問題ないが早めの使用(入れ替え)を推奨すると記しています。
(引用元:ENEOS Q.燃料油(ガソリン/灯油/軽油/A重油)が劣化しない保管限度はどのくらいですか?)

明確な消費期限が設けられていないのは保管状況によって光・保管温度・水分・空気との接触などによる影響が異なるため。
消費期限の6ヶ月程度はあくまでも目安であり、早めの使用や入れ替えが推奨されています。

そのため、保管状況によっては6ヶ月よりも早く腐ってしまう場合も大いに考えられます。
実際に腐っているかどうかはタンクキャップを開け、タンク内のガソリンの状態で判断するのが確実です。

腐ったガソリンの特徴

匂い

ガソリンが腐ると強烈な匂いを発します。
これが腐っているかいないかの一番の基準になるでしょう。
ガソリンの成分が変化するため、通常のガソリンとは違った強い匂いを発するようになります。
ガソリンスタンドでガソリンを入れるときに臭ってくるものとは全く違い、甘いような強烈な匂いのため、明らかに違う事が分かると思います。
一度匂ったことがあれば、タンクキャップを開けずともガソリンが腐ったバイクに近づくだけで感じるはずです。

ガソリンは腐ると透明感のある薄いオレンジ系の色から、褐色や黒っぽい濁った色に変色します。

性質が変化している

保管状況にもよりますが、通常サラサラで水のような質感のガソリンが劣化することで、ドロドロやベタベタになってガム状に変化する場合もあります。

写真は長期放置されたバイクのキャブレター内部。
元がガソリンだったとは思えないほど粘着性のあるガム状に変化していました。

ガソリンが腐るとどうなる?

燃料系の詰まりに発展する可能性がある

ガソリンがタンク内で長期放置されると、時間の経過によりガソリンの揮発成分が消失し、揮発しにくい粘度の高い成分が残留します。

劣化してドロドロになった物質や、タンク内に発生したサビが燃料ラインを詰まらせてしまうこともあります。
そうなるとガソリンが供給されないのはもちろん、詰まりにより予期せぬトラブルに繋がってしまいます。

金属部分の腐食につながる可能性がある

酸化が進んだガソリンは腐食性が強く、タンク内部の金属を痛めてサビの発生などに繋がる場合もあります。
一度サビが発生すると徐々に広がっていってしまうため、かなり厄介な存在です。

エンジンの不調に繋がる可能性がある

劣化したガソリンは本来の燃焼特性を失っているためエンジン内部で燃えきらず、内部を汚してしまう場合があります。
一時的にエンジンがかかっても、次にタンクから供給されるガソリンは腐っている可能性もあるため、しっかりタンク内部のガソリンの状態を確認するようにしましょう。

オーバーホールが必要になる可能性がある

劣化したガソリンにより詰まってしまった場合は、キャブレターやインジェクターのオーバーホールが必要になる場合があります。
タンク内のガソリンをしっかり管理するのはもちろんですが、長期保管する場合はキャブレター内部のガソリンを抜いておくほうが安心です。

ガソリンの劣化を防ぐためには?

定期的な運転と給油

最も簡単に行える対策は定期的にバイクに乗ってガソリンをしっかり消費し、新しいガソリンを給油すること。
タンク内のガソリンを定期的に入れ替え、劣化しないように管理しましょう。

酸化防止剤の使用

雪が降るなどの理由により冬季の間バイクに乗れない等の場合、前もって酸化防止剤を使用すると良いでしょう。
万能ではないため、酸化防止剤を入れれば酸化を完全に防げるというわけではありませんが、酸化速度を抑えて劣化を遅らせることはできます。

劣化したガソリンに後から酸化防止剤を入れてもすでに酸化しているため効果はないので、新鮮なガソリンの状態で酸化防止剤を入れるように注意しましょう。

満タンに近い状態にしておく

タンク内をガソリン満タンに満たしておくことで内部の空気量が減るため、タンク内のガソリン残量が少ない状態と比較して酸化速度を遅らせることが期待できます。
タンク内を錆びさせない対策にもなるので、ワンシーズンの長期保管等であれば満タンにて酸化防止剤も使用するのがおすすめです。

キャブレター内のガソリンを抜く

キャブレター車の場合はタンク内だけではなく、キャブレター内のガソリンも考慮する必要があります。
長期保管の際はキャブレターのドレンからフロート室内部のガソリンを抜いておくようにしましょう。

久しぶりにバイクに乗る場合の注意点

そのままエンジンをかけない

使用期限の6ヶ月というのはあくまでも目安であり、5ヶ月だから大丈夫という判断はできません。
劣化は徐々に進んでいて保管状況によってはより早く劣化が進んでいることも考えられます。

劣化したガソリンを使用するとエンジントラブルに繋がる可能性も大いにあり、後々多額の修理費用が発生するケースもあります。
久しぶりにエンジンをかける場合は最初にガソリンの状態を確認するようにしましょう。

劣化したガソリンを処分する

保管期間や放置期間が長かった場合や、ガソリンの劣化が確認できた場合は、劣化したガソリンを処分しましょう。

ガソリンは危険物のため一般ゴミとしての処分はできません。
ガソリンスタンドに相談して抜き取ってもらい、新しいガソリンを給油するのがおすすめ。
押し歩きで持っていける範囲にガソリンスタンドが無い場合はJAFや任意保険のレッカーを呼んで移動させたほうが、劣化したガソリンでエンジン始動するよりも安く済むかもしれません。

バイク全体の点検・整備を行う

ガソリンを腐らせてしまった場合、再び乗り出すためには整備が必要になります。
タンク内の腐ったガソリンを抜いて済むケースもありますが、タンク内部が錆びてしまっていた場合は錆取りや最悪の場合タンク交換、キャブレターやインジェクターのオーバーホールが必要になる場合も。

劣化したガソリンを使用してエンジンを始動した場合はエンジン内部のバルブやピストンの洗浄や交換が必要となるケースも考えられます。

劣化したガソリンを使用してダメージを受けた部分を直す以外にも、乗っていない期間が長ければ長いほどエンジンオイルやクーラント、ブレーキフルードなどの劣化も考えられるため、バイク全体の点検整備が必要となり、多額の修理費用が発生する場合も。

長期放置車をそのまま乗り出すことは不可能に等しく、ある程度の整備費用は覚悟しておくのが賢明です。

手を加えて愛着のあるバイクに乗り続けるのも楽しみの一つですが、放置させてしまうということは何かしらの理由もあるのかもしれません。

もしも今持っているバイクに再び乗り出すための整備が面倒で億劫になっている場合、この機会に手放しや乗り換えを考えるのも良いかもしれません。

バイク王は無料出張査定を行っており、長期放置車の取扱実績も豊富。
バイクの買取だけではなく販売も行っているので、愛車の売却と次の車両の購入の両方の話をすることもできます。
乗り換えのキャンペーンも提供しているので、前々から気になっていたバイクにお得に乗り換えができるチャンスになるかもしれません。

多額の修理費用を払って今後長く乗るかわからないバイクを直す前に、まずはお試し無料査定で愛車の取扱状況を確認してから判断するのがオススメです。

腐ったガソリンには要注意

ガソリンが腐ることについて様々解説してきましたが、基本的にはタンク内のガソリンを腐らせてしまうとそのまま乗り出すことは不可能です。
なにかしら整備や交換が必要になるため、間違っても腐っていることを確認したうえでエンジンの始動を試みるのはやめておきましょう。

しっかりバイクに乗ってガソリンを消費し、入れ替え続けるのが一番ですが、難しい場合は手放すことや乗り換えも同時に検討してみてください。

ガソリンを腐らせるほど放置できないほど面白いバイクに出会えるチャンスかもしれません。

筆者プロフィール

Bike Life Lab supported by バイク王

~バイクがあれば もっと楽しい~
すべてのライダーに贈るバイクコンテンツサイト「Bike Life Lab」では、お役立ちコラムからおすすめバイクロード、Bike Life Lab研究員によるお楽しみコンテンツまで幅広く掲載中。