カワサキ「W800」は、カワサキの歴史を語る上で欠かせない「W」シリーズの最新モデルであり、そのルーツは1960年代にまで遡る、まさに“ヘリテイジモデル”と呼ぶにふさわしい一台。

この記事では、「W1」を原点としたWシリーズの系譜や、現行モデル「W800」の魅力を解説します。

もし、「W800」の購入を検討されている方は、ぜひ最後までご覧ください。

「W1」からはじまったWシリーズの系譜

W1

Wシリーズの原点は、1966年に誕生したカワサキ初の大型二輪車「650-W1」にあります。当時、日本の道路事情や技術力では破格の650ccという排気量を誇り、主に北米市場をターゲットに開発されました。

その特徴は、英国車を思わせるクラシカルなスタイルと、美しい空冷バーチカルツイン(並列2気筒)エンジンでした。

右足シフトの英国式操作を採用していたW1は、その後、左足シフトのドイツ式へと変更されるなど、時代のニーズに合わせて進化を遂げます。1973年には「650RS W3」へと進化し、一時その歴史に幕を下ろします。

しかし、「W」の血統は途絶えることなく、1999年に現代に蘇ったのが「W650」です。このモデルはW1のスタイルを色濃く継承しつつも、SOHC4バルブの新設計エンジンを搭載。ベベルギア駆動のカムシャフトなど、メカニズムにもこだわりが光りました。

W400/2006年モデル

2006年には派生モデルとして「W400」も登場し、Wシリーズは多くのファンに支持されます。

そして2011年、「W650」の排気量を773ccにアップし、燃料供給をフューエルインジェクション化した「W800」が満を持して登場します。

W800/2011年モデル

排ガス規制の厳格化に対応しつつも、Wシリーズ伝統の空冷バーチカルツインとキャブトンマフラーの組み合わせを堅持し、その「美の継承」と「鼓動感」を追求しました。

この「W800」は発売初年度から高い人気を博し、カワサキのクラシックモデルとしての地位を確立します。

2016年には一時生産終了となりますが、ファンの強い要望に応える形で、2019年に「W800 STREET」と「W800 CAFE」の2モデルとして復活。

さらに、2020年にはフロント19インチホイールを採用した従来の「W800」も再登場しました。

W800/2020年モデル

LEDヘッドライト、アシスト&スリッパークラッチ、リアディスクブレーキ化(ABS装備)など、現代的な装備が加わり、見た目はクラシカルながら中身は最新鋭の「ネオクラシック」として進化しました。

2021年には、W800をベースに、カワサキの前身である「メグロ」ブランドを冠した「MEGURO K3」が発売され、Wシリーズの歴史がさらに深まりました。

このように、1966年に原点である「650-W1」が登場して半世紀以上が経過した今でも、Wシリーズは進化の歩みを止めることなく、多くのファンに支持されているのです。

「W800」の人気の理由や魅力は?

ライダーを魅了する高級感と造形美

「W800」が人気を集める理由に、その質感の高さや造形の美しさがあります。

丸いヘッドライトにティアドロップのタンクを採用するトラディショナル、言い換えればオーソドックスとも言えるスタイリングですが、「W800」はその全てに洗練された美しさが宿っていて、唯一無二の美しさ、上質感を体現しています。

エンジンの造り込みをはじめ、美しく塗装されたタンクやサイドカバー、各部に施されたクロームメッキの煌めきが、まるで工芸品のような高級感を演出し、「W800」特有の世界観を生み出しています。

走って楽しむバイクですが、「W800」は離れた場所から眺めているだけでもオーナーの所有欲を満たしてくれるでしょう。

ベベルギアを採用したバーチカルツインエンジンの鼓動

そして「W800」最大の魅力であり、ライダーを惹きつける要素は、心臓部である空冷773ccバーチカルツインエンジンにあります。

360度クランクが生み出す独特のパルス感と、ベベルギアを採用するカムシャフト駆動のメカニカルノイズ、そしてキャブトンマフラーから奏でられる乾いた排気音は、五感を刺激し、ライダーに深い満足感を与えます。

エンジンの造形美にもこだわりが詰まっていて、冷却フィンの形状やベベルギアカバーなど、細部にわたってクラシカルな雰囲気を醸し出しています。

また、現代の厳しい排出ガス規制をクリアしながらも、この空冷エンジンを維持し続けている点には、カワサキのWシリーズに対する「執念」ともいえる情熱が感じられます。

現代バイクらしい扱い易さ

見た目はクラシカルな「W800」ですが、中身は令和の最新バイク。取り回しや利便性、快適性は現代バイクのそれです。

アップハンドルによる操作性が良く快適なライディングポジションをはじめ、シート高790mmと高くありません。

ツーリングに便利なETC車載器を標準装備し、クラッチ操作の負担を軽減するアシスト&スリッパ―クラッチも採用。もちろん前後のディスクブレーキにはABSを搭載し安全性も十分です。

この他、メンテナンス等に便利なセンタースタンドを標準装備するなど、街乗りからツーリングまで幅広く対応できる実用性も兼ね備えています。

時代を経ても変わらない特有の世界観

そして、やはり原点である「650-W1」の誕生から半世紀以上経過した現代まで大きく変わることなく受け継がれてきたスタイリング・世界観が、「W800」が人気を集める大きな理由。

絶対的な速さを求めない、バイク原初の走る悦びやエンジンの鼓動感、美しい造形美など、当時の「W1」を知り懐かしむライダーも、現在「W1」もしくは「W800」に憧れるライダーも同じ価値観で楽しむことができる。

そんなWシリーズ独特の世界観が多くのファンを集め、「Wシリーズ」は長い歴史を紡ぐこととなったのでしょう。

「W800」は大型ビギナーやリターンライダー、女性でも乗りやすい?

穏やかなエンジン特性と足つき性で初心者や女性ライダーでも乗りやすい!

「W800」の空冷バーチカルツインエンジンは、低回転から豊かなトルクを発生させます。これにより、アクセルを大きく開けなくてもスムーズに加速し、街中や幹線道路での運転が非常に楽です。

過剰なパワーがなく、急加速で慌てる心配が少ないため、不慣れな大型バイクでも安心してコントロールできます。

アップライトなハンドルと、ゆったりとしたシートにより、無理のない自然な乗車姿勢をとることができます。前傾姿勢がきつくないため、長時間の乗車でも疲れにくく、ツーリングにも最適。

車体は重厚感がありますが、重心が比較的低く、ハンドリングも素直で癖がありません。低速でのUターンや取り回しも、同排気量のスポーツバイクと比較して容易な傾向にあります。

また、シート高が比較的低く設定されていて、小柄な方や女性ライダーでも足つきが良い部類でしょう。

信号待ちや停車時にしっかりと足が設置することで、立ちゴケのリスクを減らし、安心感に繋がります。

「W800」で注意したいポイント

穏やかなエンジン特性と良好な足つき性で大型バイクの中でも扱い易い部類に入る「W800」ですが、注意したいのは車重。

約220kg前後と、それなりの車重はあるため、押し歩きや取り回しは慣れが必要な場合があります。

重心が低いとはいえ、不意の立ちゴケには注意が必要です。

また、空冷バーチカルツインエンジン特有の鼓動感は、「W800」の大きな魅力でもありますが、一方で発生する振動は人によって長時間走行で手に痺れを感じたり、不快感を伴う可能性も否定できません。

「W800」の年式やバリエーションモデルによる違いは?

「EJ800A(2011~2016)」と「EJ800B(2019~2021)」の違いは?

2011年から2016年にかけて販売されたEJ800A型については、その販売期間中に性能や諸元に関する大きな仕様変更はありませんでした。

ですが、2019年から復活したEJ800B型では大幅なアップデートが加えられています。

まず、現代の安全基準や走行性能に合わせて見直され、フレームは完全リニューアル。従来型ではドラム式だったリアブレーキがディスクブレーキに変更され、ABSを標準装備しています。

エンジンに関してはボアストロークや圧縮比などに変更はありませんが、最高出力が4PS向上し、最大トルクの発生回転数が引き上げられました。

また、アシスト&スリッパ―クラッチを搭載したことで、クラッチ操作が軽くなり、シフトダウン時のバックトルクが軽減されました。

そして、ヘッドライトを含む灯火類にLEDを採用しているのも大きな変化のひとつです。

「EJ800B(2019~2021)」と「EJ800E(2022~2025)」では大きな変更はない

EJ800B型が復活した際には大幅な変更が加えられましたが、2022年モデルから型式変更されたEJ800Eでは、排ガス規制への適用を除き目立った変更はありません。

中古バイクを選ぶ際には、気に入ったカラーリングや個体の状態で選んでも大きな差はないでしょう。

「ストリート」「カフェ」のバリエーションモデルはどんなバイク?

2019年にWシリーズが復活した際、先んじて投入されたモデルが「 W800 ストリート」と「W800 カフェ」です。

このモデルは遅れて登場する「W800」と共通のエンジンとフレームをベースとしながら、それぞれ異なるコンセプトとスタイルを持っています。

W800ストリート/2019

「W800 ストリート」は、伝統的なWシリーズのクラシカルなスタイルを強調し、「ストリート」の名前が示す通り、街乗りからツーリングまで、幅広いシーンで気軽に楽しめるオールラウンダーとなっています。

高めに設定されたアップライトなハンドルバーと低いシート高が特徴で、リラックスした乗車姿勢と良好な足つき性を実現しています。

シンプルなネイキッドスタイルで、Wシリーズ本来の美しいエンジンと車体の造形が際立っています。

W800 カフェ/2019

一方、W800 カフェは、1960年代にイギリスで生まれた「カフェレーサー」スタイルを現代に蘇らせたモデルです。スポーティでアグレッシブな雰囲気を持ち、より走りを楽しむ要素が強調されています。

専用の小型フロントカウルと低く構えたローポジションハンドルバーが特徴で、前傾姿勢となりスポーティなライディングポジションを実現しています。

シングルシート風にデザインされたシートもレーシーな雰囲気を強調しています。

どちらのモデルも、W800シリーズ共通の空冷773ccバーチカルツインエンジンによる心地よい鼓動感と、現代の規制に対応した高い走行性能・安全装備(ABS、LEDヘッドライトなど)を備えています。

ゆったりとWの雰囲気を楽しむ王道スタイルなら「W800ストリート」、スポーティにWの走りを楽しむカフェレーサースタイルなら「W800カフェ」をチョイスするのがおすすめです。

バイク王で「W800」を中古購入するメリットは?

「W800」は2011年発売のEJ800A型を含めると10年以上販売されたバイクなので、中古市場の在庫も多く、自身の納得する状態やカラーリングのバイクを探すのは大変です。

しかし、バイク王は豊富在庫量を誇り、全国の店舗やオンラインでたくさんの車両の情報をチェックすることができるため、希望の年式やカラー、走行距離のモデルを見つけることができます。

そして、充実した保証制度もバイク王で購入する大きなメリット。

バイク王の認定中古車であれば最長7年の長期保証が付帯し、購入後の万が一のトラブルにも安心です。
また、納車後100日間の返品補償もあるため、購入後の不安を軽減できます。

徹底した納車整備も魅力で、国家資格を持つ整備士が62項目にわたる点検・整備を行い、交換基準に達した消耗品も追加費用なしで行われるため、安心して乗り出すことができます。

さらに、遠方在庫の確認やオンラインでの購入時には、最寄り店舗、自宅への送料が無料(126cc以上)となるため、遠方の車両を諦めなくていい点もポイントです。

歴史ある「W800」で自分らしいバイクライフを走り出そう!

カワサキ W800は、半世紀以上にわたる「W」の歴史と伝統を受け継ぎながら、現代の技術と安全性を融合させた、唯一無二の存在として、今もなお多くのライダーを魅了し続けています。

「速さ」に捉われないバイクの在り方を提案する「W800」なら、きっと自分らしいバイクの楽しみ方が見つけられるはずです。

バイク王ではそんな「W800」の中古車を多く取り扱っているので、購入を検討している方は、ぜひお近くの店舗へお問い合わせ、もしくはバイク王ホームページの在庫情報をご覧ください。

筆者プロフィール

webオートバイ×BikeLifeLab

webオートバイは現存する日本の二輪雑誌の中で最も古い歴史を持つ月刊「オートバイ」の公式ウェブサイトとして、2010年よりバイクに関する幅広い最新情報を日々更新しています。
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