月刊『オートバイ』のベテランテストライダーがバイク王絶版車館の「RZ350」をレンタル試乗!【プレミアムレンタルバイクツーリング:RZ350編】
公開日:2025.11.19 / 最終更新日:2025.11.19
「NSR250R」や「Z1」といった絶版名車に試乗できるバイク王のサービス「プレミアムレンタルバイク」。今回は100年の歴史を持つ二輪専門誌・月刊『オートバイ』で長年テストライダーを務める太田安治氏が、「RZ350」に試乗。「RZ」が一世風靡した当時を知るベテランライダーのツーリング試乗レポートをお届けします!
ヤマハ「RZ350」ってどんなバイク?

「RZ350」は、ヤマハが1981年に発売した、2ストロークエンジンを搭載した中型ロードスポーツバイク。
最大の特徴は、当時の同クラスでは考えられないほどの強力な加速力と、軽量な車体が生み出す鋭いハンドリング。特に、350ccの排気量ながら、当時の4ストローク750ccクラスにも匹敵すると言われた圧倒的なパワーウェイトレシオから、「ナナハンキラー」とも呼ばれました。
1980年に登場した兄弟モデル「RZ250」とならび、日本のバイク史におけるエポックメイキングな存在として、現在でも多くのファンに愛されています。
40年前のバイクとは思えない良コンディション!

「絶版車は扱いが面倒なんだよなあ」と呟きながらも、つい口元が緩んでしまう……。電子制御満載のオートバイとはまるで違う絶版車は、どこか生き物のような愛おしさがあり、ライダーとの関係が密だ。
だが、セルのひと押しでエンジンが始動し、即座に走り出せる現在のバイクとは違って手が掛かるのは事実。
例えばこの81年型RZ350で走り出すには、ガソリンタンク下のコックを開く→キャブレター横のスターターレバーを引く→エンジン右側のキックアームを開く→ステップを畳む→スロットル開度に留意しながらキックペダルを踏み降ろす→エンジン始動→キックペダルとステップを元の位置に戻す→エンジンの暖まりに合わせてチョークレバーを戻す、アイドリングが安定したら走り出す、という流れになる。
寒い時期は暖気運転の時間も長くなるから、走り出すまでに5分程度は必要だ。
このように走り出す以前にも操作技術を求めてくるのが絶版車だが、乗った経験がなければ単に面倒なのか、愛おしく感じるのかは想像できない。だから絶版車をレンタルできるサービスは実に貴重で有意義な存在だ。

「RZ」と聞けば、80年の市販開始と同時に爆発的な人気となったRZ250を想起する人が多いだろう。RZ250はメーカーが想定した販売台数の3倍も売れ、納車まで半年待ち、という当時では考えられない事態を招いた。ただし当時は大型二輪免許の取得が難しかったことと、250cc未満の車両は車検制度の対象外、という日本独自の事情もある。
そのためスポーツモデルの主要輸出先であるヨーロッパ向けとしては、RZ250と同時に開発されていた排気量347ccのRD350LC(LCは水冷の意味)が投入された。軽量な車体にピックアップの鋭い2ストエンジンの組み合わせによる圧倒的な運動性能を武器とし、「ビッグバイクキラー」や「ポケットロケット」と呼ばれて海外でも大ヒット。その国内仕様が81年発売のRZ350だ。
その速さは誰もが絶賛したが、先に書いた車検制度の関係で日本国内ではRZ250ほどの人気は得られなかった。さらに350のエンジンを250に載せ替える違法改造が少なくなかったことも、生き残っているRZ350の少なさに影響している。

試乗したRZ350は想像をはるかに超える良好なコンディション。よく見ると消耗部品の多くが新品に交換されていて、見た目のヤレた感じもない。40数年前のオートバイとは信じられないほどだ。
暖機運転中にRZのマフラーから吐き出される2ストの白煙に包まれていると、40年以上前にタイムスリップした感覚になる。RZが登場した当初はオートバイ雑誌のテストで0~400m加速タイムや最高速アタックのライダーを担当したし、何人かの仲間がRZユーザーだったから、自分のオートバイ(CBX400FやVF400F)と交換して乗る機会も多かった。そのときに感じた白煙、音、匂い、RZの特徴でもあるオーソゴナルエンジンマウント特有のアイドリング時にブルブル震える振動が視覚、聴覚、嗅覚、触覚を刺激して40数年前の記憶を蘇らせるのだ。
試乗日は気温が34℃で湿度も高かったため、キャブレーション(空燃比)セッティングが全体に濃い目と感じたが、RZ250より排気量が大きくトルクが太いのでゼロ発進時にスロットル開度と半クラッチに気を遣う必要はなく、渋滞路も苦にならないし、高速道路の100km/hクルージングでも余裕たっぷりで、ごく普通にツーリングできる。

とはいえ、このエンジンの魅力は6000回転から 9000回転。この回転域ではパワー炸裂! の吹け上がりで、 1速でラフにスロットルを開けるればフロントタイヤが浮き上がり、3速までの加速は豪快そのもの。
車体はRZ250と基本的に共通だが、350はフロントブレーキがWディスクになっている。ドライ路面での絶対的な制動力だけではなく、雨天時の制動力低下が少なく、コントロール性もよく、250より扱いやすい。
ソフトな設定の前後サスペンションと肉厚のシートで、乗り心地と足着き性がいいことも経験の少ないライダーには安心だろう。

ABS、トラコン、パワーモードといった電子制御系は一切入っていないだけに、どう走るかはライダーの操作次第。「誰でもどこでも楽しく安全に」乗れることを目指して進化してきた最新モデルのような気楽さはないが、引き換えに自らの操作でオートバイの性能を発揮させる面白さとエキサイティングさがある。
これを手軽に体験できる『プレミアムレンタルバイク』というシステムを構築したバイク王筑波絶版車館には素直に感謝する。 さらに、僕と同じように以前に乗っていたベテランにとっては昔を懐かしむ貴重な手段。つかの間のタイムトリップを存分に楽しんではいかがだろうか?
文:太田安治(月刊『オートバイ』テストライダー)
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