ライダーやバイク利用者のマナーがSNSで叩かれていることがあります。なぜでしょうか? 法令違反、危険な運転、迷惑行為、その理由は様々ですが、マナー違反と認識される他者の視点や心がけについても考えてみます。

1.どんな行為によるどんな心理が原因でマナー違反となるのか?


なぜバイクが叩かれているのでしょうか? 「バイク マナー」と検索すると、上位に出てくるのは「すり抜け」というワードです。すり抜け走行は明らかな法令違反(ルール違反)ですが、マナー違反と捉えられているのはなぜでしょうか? 「すり抜け=法令違反」で思考を停止してしまうと、マナーという言葉の奥にある大衆心理に触れることができません。ここはあえて、すり抜けという事例を通して、その背景や心理についても考えてみたいと思います。

法令違反の「すり抜け」走行とは?

路肩や路側帯を走ったり、クルマとクルマの間を縫うように走るすり抜けは、もちろん法令違反(道路交通法での通行区分違反・追い越し違反等)ですが、取締りを行う警察も全てのすり抜けを容赦なく検挙しているわけではありません。しかし、最前列に出て停止線を越えたり、追い越しのためのはみ出し禁止を意味する黄線をまたいだ時はかなりの確率で捕まるようです。

「すり抜け」走行がマナー違反とされる心理とは?

<一般道路>

渋滞時には、上写真のように路肩や路側帯を走るバイクをよく見かけますが、これは通行区分違反です。路肩や路側帯は自転車などの軽車両や歩行者のための通行帯ですが、「自転車が原則車道を走るようになった」ことと同様、ライダーやバイク利用者にはあまり認知されていないようで、「バイクのための車線だと思っていた」という声もよく聞きます。

また、駐車車両が多い場合も、第1走行車線と第2走行車線の間をすり抜けていくバイクを目にします。本来は、駐車車両を避けるべく車線変更をするたびに合図と確認が必要ですが、駐車車両と走行車両の間を真っ直ぐすり抜けていくバイクが多く見られます。

ただし、こうした運転はクルマにも見られることで、駐車車両とぶつからない程度のわずかな距離を開けつつ合図も出さずに車線を変更するのをよく見かけます。周りのクルマも慣れたもので、駐車車両の反対側に寄り、クルマが通れるようにスペースを開けています。

このような運転が行われることに対して、ライダーとドライバーの間では、ある種の相互理解がなされているようにも思えます。法令違反ですからマナー違反というよりはルール違反なのですが、現実的には混合交通における許容の範囲と考えることもできます。

しかし、道路事情などはおかまいなしに、クルマとクルマの間をものすごい速度ですり抜けていくバイクも見られます。特に、都心の通勤時には多くの幹線道路で見られる光景です。こうした走り方をしてしまうと、予測していない(予測の立たない)ドライバーはびっくりし恐怖さえ感じることでしょう。実際問題、ミラー同士が接触したり何かの拍子で追突したりという事故につながる可能性も高く、同じライダーとしてもとても許容できる運転ではありません。

<高速道路>

高速道路でのすり抜けと言えば渋滞時です。真夏の炎天下や真冬の極寒時、豪雨や防風のなかではライダーと車体の双方にとって過酷です。真夏は熱中症、真冬は体温低下、豪雨や強風時には転倒の恐れもあり、車体にとっても長時間の低速走行によるオーバーヒートなどのトラブルに見舞われる恐れがあります。

しかしクルマのドライバーにはそんな事情などわかりません。ただ単に「早く目的地に着きたい、帰りたい」といったライダーの自己中心的な姿にしか見えていないでしょう。

高速道路でもすり抜けは法令違反ですが、上記のような危険な状況がある以上、現状のままでよいということはありません。二輪車業界団体は、激しい渋滞時などの非常時においては高速道路での路肩走行を許可してもらえるよう法規制の緩和を求めています。

2.ライダーも利用環境の改善に向けて声をあげよう!


マナー違反にもいろいろありますが、すり抜けに関してはそもそも法令違反をしているのですから、マナーもモラルもありません。例えば、「原付一種の30km/h制限はかえって危ない、怖い」という声をよく聞きますが、法律がおかしい、現在の交通事情に合っていないと考えるのならば「こうこうこういう理由だから、おかしい!」と声を上げなければいけません。それをせずにグレーゾーンの取り締まりのなかでやりたい放題にやっていると、結局は「ライダー・バイク利用者はマナーが悪い」と言われてしまいます。

すり抜けなどの法令違反は一部のライダーがやっていることです。しかし世間一般の人からは、無法者のライダーも法令順守のライダーも一緒くたに見られてしまいます。これでは、「利用環境を良くしていこう」という声も聞いてはもらえず、肩身の狭い二輪車利用環境がますますひどいものになってしまいます。自分たちの地位向上のために、他者からどう見られているのかを常に考えたいものです。

3.SNSでよく見られるバイクのマナー違反とは?


さて、すり抜け以外にも、バイクが嫌われる要因はいろいろとあります。SNSでよく見られる内容はこうしたものです。

◎街中やワインディングで飛ばす、転倒・事故を起こす
◎違法・改造マフラーを装着する、マフラーの排気音がうるさい
◎アイドリング時や発進時に、アクセルを吹かす
◎夜から深夜にかけて集まり、騒いだりゴミを捨てる
◎街中やSA、道の駅などで、停めてはいけない場所にバイクを停める

こうした行為はSNSであっという間に拡散、批判され、観光道路が二輪車通行禁止になったり、岸壁や公園といった公共の場所が立ち入り禁止になったり、今までバイクが停められた場所に停められなくなったりしています。

なお、マフラーの件はすり抜けとは逆で、「法令を守っているのにマナー違反となる」事例です。バイクに乗らない方からすれば、自主規制値が79dbでも94dbでも「うるさい」ことに変わりはありません。住宅街や夜間・早朝といった時間帯ではアクセルを控えめにし、アイドリングはなるべく短く済ませるなどの心遣いが必要です。エンジン回転数が上がるとどうしても音が大きくなるので、ギヤを1速上げて、エンジン回転数を下げてしまうのも手です。

なお、消音バッフルを抜いたり直管仕様にしたりマフラーを改造することは法令違反であり論外ですが、規制をクリアしていない違法な輸入マフラーに関しては、インターネット上で購入できなくなるようJMCA(全国二輪車用品連合会)などの団体が対策を急いでいます。

4.マナー向上のために活動する団体も大勢いる


先にも述べましたが、法令違反や一般の方に目を背けられるような行為は一部のライダー、バイク利用者によるものです。それでも総じてひとくくりにされ、「バイク乗りはマナーが悪い」と言われてしまっているのが現状です。こうした状況を危惧し、改善するために活動している二輪車業界団体や企業、有志の方々もたくさんいるのでご紹介しましょう。

グッドマナー「ジャパンライダーズ」(日本二輪車普及安全協会)

「安全とマナー」の心がけに関するライダーの生の声を募集しSNS等で共有、広めていく活動を実施。大阪・東京モーターサイクルショーなど各種イベントにも出展し、ジャパンライダーズ宣言への参加協力を仰ぎ、グッドマナーの輪を広げています。

伊豆スカ事故ゼロ小隊 (カズ中西さん他)

モータージャーナリストのカズ中西さんらで構成される非営利団体。全国的に有名な観光有料道路「伊豆スカイライン」など静岡県大仁警察署管轄地域において、二輪車事故防止の啓発および交通安全の啓蒙活動を行う大仁地区二輪車安全運転推進クラブです。

ヤエーステッカー (全国の有志による非営利活動)

かつてのピースサインである「ヤエー」は、若年層を中心に、旅の無事、安全運転を願うサインとして浸透しつつあります。そのシンボルでもある「ヤエーステッカー」は全国各地の配布員が設置・補充・配布会を開催するなど精力的に活動し賛同者も増えています。

Honda 安全運転普及本部

1970年、交通事故の急増などを受けてHonda創業者本田宗一郎氏によって発足された社内組織。運転技術の向上や指導者の育成、安全運転教育に重きを置き、幼児から高齢者まで交通安全に関する取り組みを幅広く行い、その活動は海外にまで広がっています。

いかがでしたか。なぜ?何が?「マナーが悪い」と言われるのか、視点を転換してみるとドライバーなど他者の心理がわかると思います。ライダーやバイク利用者も社会の一員であることを忘れずに、他者のことを考えた運転を心掛けたいですね。

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■筆者プロフィール

田中 淳磨
46歳・男性・北海道札幌市出身
二輪専門誌編集長、二輪大手販売店、官公庁系コンサルティング事務所等に勤務ののち二輪業界で活動するコンサルタント。二輪車の利用環境改善や市場創造、若年層向け施策が専門で寄稿誌も多数。