サーキット走行を楽しみたいなら、必要になるのがつなぎです。つなぎは高価な革製品なので必ず試着してから買うべきです。そこで今回は、用品メーカーとバイク用品販売店につなぎ選びのポイントを伺いました。

1.「吊るし(既製品のつなぎ)」の購入ポイント


今回は、ラジオパーソナリティでお馴染みのステップ堀田さんとナップス三鷹東八店にお邪魔して、アパレル担当の角田朱美さんに、つなぎ選びのポイントを伺いました。

●まずは、吊るし(既製品)の購入から
用品店に並んでいるのは既製品のつなぎです。サイズが予め決められており、俗に「吊るし」と呼ばれています。吊るしの一部を改修したイージーオーダーのもの、最初からライダーの各部寸法に合わせてつくるフルオーダーのものもありますが、とても高価です。これからサーキット走行を始めようという方は、まずは吊るしのつなぎを購入しましょう。


●十数万円台のもので十分
吊るしのつなぎは、9~30万円くらいが相場ですが、ビギナーならば十数万円台のもので十分です。まずは、用途に合わせて、作りやデザイン、サイズ感(フィット具合)などを選んでいきます。ツーリングなどストリートでも着るような場合は、少し余裕のあるサイズで動きやすいものが適しており、サーキット走行がメインであれば、ライディングフォームを取った時にジャストサイズのものを選びます。

◎ナップス三鷹東八店/角田さん「スーツ(つなぎ本体)+ブーツ+グローブで15~20万円位のご予算を組んで来られる方が多いですね。車体色に合わせる方が多いですが、カラーは白が人気です」

●近年のつなぎの特徴
近年は、背中のコブのようなプロテクターやベンチレーション機能、伸縮するストレッチ材やシャーリングパーツの使用が当たり前になり、安全性や快適性が高められ、動きやすいものが増えています。また、立体性を持たせるために、各部にマチを設けるようになっています。

●つなぎの安全性
ステップ堀田さんが着ているつなぎはアールエスタイチの「NXL305 GP-WRX R305 RACING SUIT(税抜158,000円)」で、30万円前後のオーダー対応品と同程度の安全性を持っており、走行風を取り入れるベンテッドレザー、運動性を高めるストレッチパネルもふんだんに使われていて、各部のプロテクターも本格的です。レディースサイズも含め、横幅の広めなワイドタイプなど15種類の豊富なサイズ設定で、少々お腹が出てきたかなという方でも安心です。

なお、安全性という点での最近のトレンドは、レースシーンで進みつつあるエアバッグへの装着対応があります。

◎アールエスタイチ/藤井さん「当社では、エアバッグ内蔵スーツの商品化を早くから実現していましたが、最近ではalpinestars(アルパインスターズ)社のセンサー式エアバッグベストに対応するレザースーツ(下の写真は、NXL306 GP-WRX R306 RACING SUIT(TECH-AIR® RACE エアバッグシステム装着可能モデル)税抜168,000円)も販売しています。エアバッグに対する要望は今後も高まりそうです」


アールエスタイチの安全性へのこだわり
①革の堅牢性/引き裂きにくい強度を確保
②糸と縫製/強度のある糸を使用するだけでなく、接触頻度が高い、または保護の重要度が高いところは摩擦で糸が切れても開いてしまわないように2重以上の重ね縫いを実施
③スライダーパーツ/Taichi Impact Protection Sliderと呼ばれるスライダーを肩・肘・袖・膝に配置し、路面との摩擦抵抗を軽減
④内蔵のプロテクター/CE規格に適合する保護能力の高いものを使用

2.試着時の注意点とサイズ修正・カスタムについて


●試着時には、プロテクターも装着する
サイズは身長を基準に選びますが、脚の付け根から膝、膝から足首までのバランスがそれぞれ異なるため膝の位置がズレやすいので注意しましょう。また、試着時には、胸部プロテクターや脊髄プロテクターなども装着し、なるべく走行時の状態を再現します。その状態で腕を回したり屈伸したりと各部の動きが問題ないことを確認してください。

◎アールエスタイチ/藤井さん「胸部プロテクターの装着は様々なレースで義務化されており、来年からはCE規格にパスしていないとMFJ公認レースの車検にパスできなくなりました。当社でもCE規格に適合した胸部プロテクターを2021年1月に発売予定です(https://www.rs-taichi.com/news/3555/)」

●ライディングフォームを取る
また、ライディングフォームを取ってみて、各部に違和感や無理がないかも確認したいところです。ナップス三鷹東八店にはこんな器具も置かれていて、ズレやすい膝の位置も確認できます。バーハンドルにもセパレートハンドルにも対応できるので、フィッティングの精度を高められます。


●つなぎの中に着るものは?
つなぎの中に着るインナースーツも購入しておきましょう。以前はメッシュのワンピースタイプが主流でしたが、近年はトレンドが変わりつつあるようです。

◎ナップス三鷹東八店/角田さん「吸汗速乾性のあるインナーシャツとインナーパンツの組み合わせがお勧めです。サーキットでつなぎの上半身を脱いだ時でもカッコいいですからね。冬場は防風素材のインナーを着用します」

●吊るしでもサイズ修正ができる
既製品をベースに、腕の長さや胴回りなど部分的なサイズ修正も可能です。ナップス等のバイク用品販売店やつなぎの製造メーカーに相談してみてください。ナップスの場合は、胴回りの拡張で2~3万円ということなので、昔着ていたつなぎが着られなくなったという場合も、いきなり買い替える必要はないかもしれません。まずはご相談を。

また、海外メーカーのつなぎだと日本人の体型を考慮していないので、ひざの位置が合わない(日本人は膝から上が長いので、つなぎの膝の位置が自分の膝より上に来てしまう)といったことがあります。その場合も、あきらめずにサイズ修正をしてもらうと良いでしょう。

●カラーのカスタムオーダーやワッペンの縫い付けも可能
◎アールエスタイチ/藤井さん「当社では、WEBサイトでのカスタムオーダーも可能です。塗り絵を楽しむ感覚でカラーイメージを試したり、文字を入れてみたり(レタリング)、ワッペンの位置を決めたり、エアーベンチレーションの位置や加工を選んだりといった具合です。さらに、既製品のサイズ修正やフルサイズオーダーを選択することもできます。かなり細かく設定できるのが特徴です」

□URL:http://colororder.rs-taichi.co.jp/index.html

ワッペン等の装飾に関しては、ナップス等のバイク用品販売店で実物を見ながら合わせてみることもできます。

●試着時にはブーツとグローブも装着する
つなぎのサイズ合わせと同時に試着すべきなのがグローブとブーツです。つなぎの裾や袖との相性があるためで、ライディングフォームをとりやすいかどうかも確認しておく必要があります。


〇グローブ選びのポイント
価格帯は1~5万円。掌の生地がしっかりしていることだけでなく、重ねて縫製されているかどうかが安全性につながります。重ね縫いは路面との摩擦を受けやすい小指にもされていることが理想です。アールエスタイチ「NXT055 GP-EVO.R レーシンググローブ(税抜27,000円)」は、革の重ね縫いだけではなく樹脂製スライダーもつけてあるので、小指の保護能力が高いのが特徴です。


〇ブーツ選びのポイント
価格帯は2~5万円。グローブと同じように、プロテクターなど保護能力の高いものが高価格帯です。くるぶしに樹脂系プロテクターがないものは、エントリーまたはツーリングジャンルにカテゴライズされていますが、姿勢のきついミニバイクレースなどでは重用する方もいるそうです。

最近ではmotoGPの影響もあってalpinestarsブランドの人気が高いようです。写真は、alpinestars「SMX プラス v2ブーツ(税抜42,800円)」でハイスペックなレーシングモデルです。

3.つなぎの修理やメンテナンスについて

最後に、購入後のつなぎの修理やメンテナンスについてナップス三鷹東八店の角田さんに伺ってみました。つなぎを着た後は汗をかいていることが多いので、その後のケアは特に重要です。

◎ナップス三鷹東八店/角田さん「修理に関しては、メーカー様へのご依頼でもナップスにご相談いただいてもOKです。メンテナンスについては、ブラシで埃を払い、たまにミンクオイルを塗布してください。ただし、塗りすぎには注意です。また、走行により汗をかいた後は風通しの良いところで日陰干しをして下さい。ドライヤー等で乾燥させるのはNGです。汚れが気になる場合はクリーニングも承っております。」

■取材店舗「ナップス三鷹東八店」
住所:東京都三鷹市野崎1-19-12
営業時間:平日/10:30~20:00、土・日・祝日/10:00~20:00
※11月2日~2月末まで、平日は午前11時からの営業
定休日:年中無休(年末年始・臨時休業日を除く)
PIT 収容台数:10台
電話:0422-40-6171

いかがでしたか。つなぎは高価なウェアですので、ナップスなど、つなぎに強いバイク用品販売店に出向いて、現物をしっかり試着してから購入することが大事ですね。

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■筆者プロフィール

田中淳磨
46歳・男性・北海道札幌市出身
二輪専門誌編集長、二輪大手販売店、官公庁系コンサルティング事務所等に勤務ののち二輪業界で活動するコンサルタント。二輪車の利用環境改善や市場創造、若年層向け施策が専門で寄稿誌も多数。