勝手に指標

  • 秘境感
    ★★★★☆
  • 天空感
    ★★☆☆☆
  • 潮風感
    ★★★★☆
  • 爽快感
    ★★★★☆
  • 根性感
    ★★★☆☆
  • 開放感
    ★★★★☆

古代生物を絶滅させた厄災
地球最凶火山の痕跡を辿る

破局噴火。それは大量のマグマが一気に噴出し気候環境は地球規模で激変、大量絶滅の原因となる破滅的な火山活動だ。
しかし、近年では1815年にインドネシアのタンボラ山で起きたVEI-7クラス(火山爆発指数)が最も直近であり、滅多には起こらない。
だが、発生すれば人類存亡の危機となる災害なのだ。

実は、この破局噴火の痕跡が紀伊半島南部にある。
推定噴火時期は1万4000年前、人類が地球に誕生した頃の事だ。

噴火口は南北約41㎞、東西約23㎞に及び、火山爆発指数は地球最大のVEI-8クラス。壊滅的な破局噴火と推定されている。

現在、活動は完全に停止。痕跡は浸食にて曖昧となっているものの、注意深く観察すれば原型は留めている。
また、巨岩・奇岩等の火山地形からその規模を偲ぶ事も可能。そして熊野カルデラ外縁部に湧出する多くの温泉が、マグマの熱い過去を物語っているのだ。
南紀は火山が無いにも関わらず、温泉地が多い原因がこれだ。
1万4000年前に起きた破局噴火時のマグマは未だ灼熱しており、その熱で地下水が温泉となっているのである。


熊野カルデラ外縁部には多くの温泉が湧出する。1万4000年前の破局噴火時のマグマは地下で未だ灼熱。その熱が温泉の熱源となっているのだ。温泉旅にもお勧めの地域だ。

地球創成期の南紀沿岸は、熊野カルデラが荒ぶる凄まじい地であったに違ない。しかし、現在は熊野灘の風景が美しい、国内屈指の絶景ツーリングロードとなっている。
冬の寒さが厳しい昨今ながら、南紀の空気は実に穏やか。気温は低めながらどこか温もりすら感じ、冬のバイク旅には格好の地域の一つだろう。

南紀旅の定番ルートは、紀伊半島の海岸沿いをトレースする国道42号。近畿・中京圏のライダーにとっては、あまりにも有名なコースだ。
しかし、熊野カルデラ外縁部を巡るルートは、海沿いのみならず内陸部にも足を延ばす。

太平洋と共に海沿いを走る国道42号は南紀定番のハイライトロード。交通量はあるものの快走区間が多く、絶景ロードとして絶対に外せない。紀伊半島旅のメインとなるルートだ。

このルートは地元ライダー以外にはあまりメジャーなルートではないが、実はダイナミックな風景と自然豊かな穴場的ツーリングロードなのだ。
メインルートは主に古座川をトレース。2車線快走路は海岸付近のみで、山岳部は1~1.5車線の酷険道だ。
しかし、秘境感は抜群。気温が低い時期は凍結リスクがあるが、一味違う幽玄の南紀を堪能できる。
海道風景が定番の南紀で幽玄の山中を堪能するという、ある意味不思議なルートだが、これは太古の超巨大火山外縁を巡る雄大な紀行。

興味深いのは同じ地質のポイントを巡りつつもその風景が全く違う事だ。
海岸沿いは海の浸食作用にて荒々しくダイナミックな岩礁が続くが、内陸部での巨大な岩塊は雄大かつ威厳のある威容を放つ。
浸食作用の違いによる外観の違いなのだが、同じ地質岩脈でも全く異なる風景を醸す事に驚く。


鬼宿へ至る海岸道路は南紀屈指の穴場秘境地。路面は悪く狭路ながら隔絶感抜群の海岸絶景が楽しめる。岩礁を掘り抜いた隧道が連続。一味違う南紀風景を楽しめる。夜間通行止め。

古座川流域は清流と山村・田園風景が美しい、言わば日本の原風景的景観だ。
南紀では比較的マイナーなツーリングエリアながら、その多彩な風景と秘境感溢れる道路様相は、旅気分を醸造するには格好のポイントだろう。


古座川沿いの国道371号は古座川沿いの山間ルート。快走区間もあるが、山岳部では酷道部も多く、走行可能な旧道路盤も多く残る。熊野カルデラ外縁に沿っている事も興味深い。

棚田百選に選定されている小坂の棚田は、抜群の展望ながら観光客皆無の穴場絶景地だ。熊野那智大社の直近、この周辺こそ熊野カルデラ火山が1400万年前に起こした破局噴火の火口部なのである。

目前の絶景の成因は太古のカタストロフィー。この混沌を偲びつつ走る旅。こんな哲学的な旅も悪くないだろう。

マップ

  • 33.540514, 135.764856
  • 11
  • 17
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大きい地図はこちら

  • in-out
  • ビューポイント
  • スポット(レストラン、道の駅、温泉、etc.)

ロードデータ

交通量

国道42号の交通量は比較的多いが、それ以外は交通量皆無。海岸沿い国道ルートも交通量の割に快走区間が多く、快適なツーリングを楽しめる。山間部は狭路が多く要注意だ。

路面

海岸直近ルートは素晴らしい良道ながら、それ以外の山間部は概ね1~1.5車線の酷道区間が多い。路盤は荒れており段差も点在。走行には細心の注意が必要だ。

筆者プロフィール

英俊神田

内外出版社発行、隔月刊ツーリング雑誌“MOTOツーリング”誌のコンセプター兼編集長。“旅人による旅人の為の雑誌”を基本コンセプトに、全国のDEEPな旅ネタを更に深く掘り下げて取材・掲載している。個人的なバイク趣向はオフロード。季節を問わず、主にキャンプを基軸とした旅が中心。冬季北海道ツーリングの常連でもある。バイクと共に温泉もこよなく愛しており、温泉ソムリエの資格を持つ秘湯巡礼ライダーでもある。