いま、オートマバイクが人気です。原付スクーターやスーパーカブ、さらには大型電動バイクまで、オートマ限定免許で乗れるバイクはたくさんラインナップされています。目くるめくオートマバイクの世界をご紹介!

1. いま、オートマバイクが注目されるワケとは?


近年、オートマバイクが注目されているのにはワケがありますが、まずはオートマ限定免許の創設から振り返ってみましょう。2005年、バイクのAT(オートマ)限定免許が創設されました。これにより、MT(マニュアル)免許よりも教習時限が短縮されたり取得費用が安くなるなど、バイクの免許が取りやすくなりました。ただし、当時の中~大型のオートマバイクと言えばほとんどスクータータイプのみで、AT限定大型二輪には排気量の上限(650ccまで)もありました。

●ホンダ X-ADV ※DCT搭載車

続いて、2019年12月、道交法の一部改正により、AT限定大型二輪免許の排気量上限がなくなり、電動バイクの車両区分も明確化されました。それまでは、普通二輪免許で大型バイク並のハイパワーな電動バイクにも乗れていましたが、定格出力20kW超の電動バイクに乗る場合は大型二輪免許が必要になりました。ただし、定格出力20kW超の電動バイクでも車両区分はこれまでと同じ「軽二輪」のため、車検は必要のない状態が続いています。

また、さらに大きな出来事として、2018年7月の道交法改正でのAT小型限定普通二輪免許の取得要件緩和がありました。クルマの免許(普通免許)を持っている人なら、AT小型限定免許を週末の2日間で取れるようになり、125ccスクーター(原付二種・ピンク色ナンバー)の販売増につながっています。

バイクAT限定免許の区分(道路交通法)

免許種類 原付 小型限定 普通二輪 大型二輪
AT限定 なし あり あり あり
排気量 ~50cc 51~125cc 126~400cc 401cc以上
取得可能年齢 16歳以上 18歳以上
2人乗り 不可

電動バイクの免許種類と車両区分

免許種類(道交法) 原付 小型限定 普通二輪 大型二輪
車両区分(道路運送車両法) 原付一種 原付二種 軽二輪 ※車検がない
モーターの定格出力 0.6kW以下 0.6kW超1.0kW以下 1.0kW超 20kW超

2. こんなにいっぱい! オートマ限定免許で乗れるバイク


さて、免許制度や車両区分が整った過程を紹介しましたが、いまやオートマバイクにもいろいろなタイプがあります。ここまで増えた理由は、クラッチ機構を備えたモーターサイクルタイプでも自動変速(オートマ化)できるモデルが増えたからです。主なオートマバイクの分類は以下の4つです。

1. 無段変速機採用車

原付一種から大型自動二輪まで、昔ながらの、いわゆるスクータータイプがメインです。1速、2速という有段変速機構がありません。スロットルを開けたぶんだけ加速します。構造的にMT車に比べると、エンジンブレーキはあまり効きません。

●ヤマハ TMAX ※大型スクーター

2. 自動遠心クラッチ採用車

ホンダのスーパーカブなど変速時にクラッチ操作が必要のないタイプです。有段変速機を搭載していますが、その変速時にクラッチレバー等による伝達・解除の操作が必要ありません。基本的には、シフトペダルのみの操作で1速、2速と変速します。構造上、低速走行時の変速ではガツンという衝撃を感じやすいので、多少の慣れは必要です。変速時にスロットルを一瞬戻すのが、スムーズに変速させるコツです。

●ホンダ CT125 ハンターカブ

3. 電子制御シフト採用車

ホンダのDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)、ヤマハのYCC-S(ヤマハ電子制御シフト)といった電子制御シフト採用車。有段変速機を搭載していますが、クラッチレバーがなく、クラッチ操作の必要がないマニュアルシフトタイプとなります。スクーターと同じようにスロットルを開けただけ加速、シフトアップし、減速に合わせて自動でシフトダウンするオートマモードと、自らが手元のレバー等によりシフトアップ・ダウンのタイミングを操作できるマニュアルモードを搭載しています。

ちなみに、昨今増えているクイックシフター搭載モデル(クラッチレバーを握らずに変速可能)はAT限定免許では運転できないので、注意してください。

●ヤマハ FJR1300AS ※クラッチレバーのないYCC-S搭載車

4. 電動バイク

モーターの大小、出力の大小、回生ブレーキの有無、さらにはライディングモード等の調整機構の有無など車種によって細かな違いはありますが、有段変速機はありません。なので、大型電動バイク(軽二輪クラス)でもスロットル操作は原付スクーターと同じです。ただし、トルクは比較にならないほど強烈なので、発進時には特に注意が必要です。

電動バイクのラインナップも豊富で、原付クラスから軽二輪クラス(大型電動バイク)までラインナップされています。現在、国内メーカーで一般向けに販売されている電動バイクはヤマハ「E-Vino」のみですが、海外メーカーも含めれば、かなりの機種が販売されています。

●ゼロモーターサイクルズ SR/F ※軽二輪だが大型自動二輪免許が必要

●ヤマハ E-Vino ※原付一種の電動バイク

特に、バイク界のテスラと呼ばれているゼロモーターサイクルズ(アメリカ)のバイクには軽二輪クラスが多く、ハイパワーモーターによる加速はスーパースポーツバイクに引けを取りません。国内ではXEAMブランドにより取り扱われているので、試乗会やレンタルバイクなどでぜひ体験してみてください。強烈なトルクやパワーだけでなく、乗りやすさにも驚かれると思います。

ちなみに、国内では、まだまだ充電環境が追い付いていませんが、カーボンニュートラル達成に向けて、今後は急速に拡充していくと思われます。

なお、充電設備のある場所を探すには、充電スポットが登録されたスマホアプリが便利ですが、立体駐車場の一画を使ったスペースなどの場合、そもそもバイクが駐車場に入場できないこともありますので注意しましょう。なるべく平地の充電スポットを探して、現地に行く前に予め電話で確認しておくことがポイントです。

3. オートマバイクのメリットとデメリットとは?

モーターサイクルタイプでオートマバイクを増やしているのは、ホンダのDCT搭載車両です。2010年、VFR1200Fで二輪車に初めて採用されたDCTは、その後、さまざまなカテゴリーの大型バイクに採用されています。2020年にはRebel1100にも採用されたことで、いわゆるアメリカンモデルにもオートマバイクが誕生しました。

スクーター同様に、スロットル操作だけで走れてしまうDCTは、疲労軽減への効果が大きく、高齢のライダーからも支持されています。以下は個人的な感想ですが、主なメリットとデメリットをまとめてみました。

※ディティール写真は全てホンダ「NC750X Dual Clutch Transmission(税込99万円)」のもの

メリット

①とにかく疲れにくい

ロングツーリングなど長時間運転時の体への負担が軽減されます。クラッチレバーを握ったりシフトペダルを操作する必要がないので、左手や左足の疲れやシビレから解放されます。

②運転にゆとりができる

走行中はスロットルの操作に集中しているので、周囲をよく見たり、考えたりすることに余裕ができます。認知・判断・操作といった運転中に求められる動作がラクになり、ライン取りやエンジン回転数の把握などにもゆとりが持てます。

③エンストしないから安心

スクーター同様にDCTにはエンストがありません。なので、半クラッチを求められるような坂道発進といった場合でも不安なく行えます。信号停止時などでも、いちいちニュートラルに入れる必要もありません。速度や回転数が落ちていくと勝手にシフトダウンされ、停止時には必ず1速に落とされます。

④マニュアル操作で走りを楽しめる

DCTではマニュアルモードも選択できるので、プログラムまかせではなく、意図的なシフトチェンジも可能です。左グリップ部の「+(シフトアップ)」「-(シフトダウン)」スイッチにより、素早いシフトアップやシフトダウン、特定のギヤを高回転まで引っ張るといったエンジンコントロールもでき、思い通りの走りが楽しめます。


デメリット

①いろいろと慣れが必要

DCTはその独特な機構により、乗り味がかなり特殊です。シフトアップもシフトダウンも自動で行われますが、変速時にはカコンという軽いショックがあります。速度や回転数に応じて変速されますが、意図しないタイミングで行なわれることもあるので、慣れが必要です。なお、オートマモード時にも「+」「-」レバーにより意図的にシフトチェンジできますが、作動条件の範囲内となります。

また、走行中はエンジンの腰下で、ゴロンゴロンという軽い振動を感じます。回転数を上げていけば打ち消されていきますが、3,000回転以下で巡航しているような速度域では、常に感じながら走ることになります。

また、エンジンブレーキの効き方も独特で、スクーターとも違うものです。最新モデルであれば、エンジンブレーキの効き具合も電子制御で調整できます(写真インパネのEB部)が、初期設定ではあまり効かないため空走距離が長くなりがちです。前走車との車間距離は長めに取っておきましょう。


マニュアルモード(下写真)にすれば、ほぼ意図的に変速できますが、速度や回転数が低下すれば自動でシフトダウンされます。初期設定を頭で理解しておくことや体感で慣れていくことが必要です。

②半クラッチができない

DCT搭載車両にはクラッチレバーがないため、Uターン時も半クラッチに頼ることができません。DCT搭載車両で最も神経を使うのはUターン時ですが、速度調整はスロットルとリヤブレーキのみで行う必要があります。

筆者も肝を冷やしたことがありますが、それは、Uターン中に勝手にシフトアップされることがあるからです。その瞬間にカコンと衝撃を受けるのと同時に、一瞬、トルクが抜けたように感じ、グラッと立ちゴケしそうになることがありました。対策としては、1速から2速に勝手にシフトアップされることを防ぐため、Uターン時には、予めマニュアルモードを選択しておきましょう。

いかがでしたか。オートマ限定免許でも乗れるバイクはいっぱいあり、今後もラインナップは増えていくでしょう。逆に、マニュアル車両にこだわりたいけどラクをしたいという方には、クイックシフター搭載車両をお勧めします。こちらの技術も進歩が早く、かなり出来のよいものとなっていますよ。

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■筆者プロフィール

田中淳磨
46歳・男性・北海道札幌市出身
二輪専門誌編集長、二輪大手販売店、官公庁系コンサルティング事務所等に勤務ののち二輪業界で活動するコンサルタント。二輪車の利用環境改善や市場創造、若年層向け施策が専門で寄稿誌も多数。