80年代から90年代は個性的な原付スポーツバイクが多数発売されて若いライダー達を夢中にさせました。
今回はその中の一台、ホンダNS-1について紹介します。

エンジンのルーツは80年代のスーパーゼロハンMBX50?

NS-1のエンジンは、7.2馬力の水冷2ストロークエンジンを搭載しています。
このエンジン、元々は82年に発売されたMBX50がベースになっています。

当時のメーカーの自主規制のリミットである7.2psを発揮しながらも整流板付き4葉リードバルブを採用し、太い中速トルクで乗りやすいエンジン特性が自慢でした。

同じエンジンはNSRやNS50Fにも使用


ホンダはこのエンジンを転用(細部は異なります)して12インチの通称Nチビ、NSR50やスポーツバイクNS50Fなどをリリースして人気になります。


NSRに関して言えば、50と同じ車体に80ccのエンジンを搭載したNSR80も登場。
小さな車体にハイパワーエンジンを搭載したので、非常に高い動力性能を発揮するミニとして一躍有名になりました。


このエンジンは50ccと取り付け寸法が同じで、エンジンそのものを積み替えることはできましたが、クランクやピストン、シリンダーなどに互換性はありませんでした。

ハイパワーエンジンとメットインを融合させたNS-1


そして91年に登場したのがNS-1です。
このバイクの特徴は250ccかと思うような車体サイズと燃料タンクにあたる部分を収納スペースとしていたことです。
容量は24リットル。フルフェイスのヘルメットが余裕で入れられるほど。

もちろん原付スポーツバイクとしてこの装備は初めて。
原付は通勤、通学などで使用する人が多かったので、この収納スペースはとても歓迎されたのです。

実は80年代、原付はムチャクチャに売れていました。
最高速100km/hに迫る最高速を発揮するスポーツバイクが揃い、しかも現在と違って二段階右折もなく、ヘルメットの着用義務もなかったからです。

とても身近で使い勝手のよい乗り物だったのですが、事故の多発でヘルメットの着用が義務化され、売上が大きく落ち込みました。
NS-1がメットイン構造を採用したのは、そんな時代背景も関係しているのです。

車体とサスの性能も一級品だったNS-1

収納スペースのことが有名なNS-1ですが、その実態は原付のスポーツバイクです。
剛性の高いツインチューブを採用して車体重量は92kg。

フロントフォークも当時としては最も太いφ31mm。
前後油圧ディスクで6本スポークのキャストホイールに幅広のチューブレスタイヤの組み合わせ。
デザインも当時大人気だったNSR250を意識したものでした。

後にRVFのようなデュアルライトを装備したモデルも登場します。
つまりNS-1というバイクは、ホンダが原付のスポーツバイクの魅力を最大限に引き出そうと考え、性能と大きさ、利便性のすべてを原付に詰め込んだ結果生まれたバイクだったのです。

ホンダがオートバイのエンジンをすべて4ストローク化かると決定したことによりNS-1は90年代で姿を消すことになります。

ホンダの2ストロークスーパー原付は、79年に発売されたMB-5からクラス最速でありながら快適性も両立させるという考えで作られていました。

NS-1はそんなホンダ2ストローク原付の最後を締めくくるのにふさわしいマシンだということができるでしょう。

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