バイクはキレイなほうがイイ! それだけではありません。
洗車には様々な役割があって、バイクの好調を維持するための整備・メンテナンスの第一歩でもあります。
通勤・通学にバイクを使う人、ロングツーリングによく出かける人ほど、こまめな洗車をオススメします。

難しく考えずにまずはやってみる。バイクライフの第一歩として、洗車をするのに必要な道具とその使い方、手順や注意点について説明します。

バイクを洗車するメリット・デメリット

洗車をこまめにしていると愛車の不調にいち早く気づけるようになります。
磨きすぎには気を付けたいですが、大きなデメリットはありませんよ。

バイクを洗車するメリット

洗車は愛車の整備・メンテナンスの第一歩です。
ボディに覆われているクルマと違って、バイクはエンジンや足回りの点検がしやすい乗り物ですが、洗車の時にはこうした部位を確認できるといったメリットがあります。

ブラシやスポンジを当てながら細部を見たり触ったりすることで、ボルトのゆるみやサビ、傷に気が付くことができるんです。

バイクを洗車するデメリット

バイクの洗車自体にデメリットはありません。ただし、洗車と一緒に行うことが多い「磨き」の作業については気を付ける必要があります。
特に、真鍮ブラシなどで金属部の汚れを落とす際には、塗装やステッカーなどに傷をつけないように注意が必要です。

バイク洗車の注意点

洗車の際にも注意すべきことがあります。バイクの電装系を気づかうこと、傷をつけないようにすること、そして自分自身もケガをしないようにしましょう。

磨き傷をつけないように

ブラシの柄(え)や針金部などで塗装などに傷がつく恐れがあります。ブラッシングや磨きは細部で行うものです。慎重かつ丁寧に行いましょう。塗装部では、クリアーを吹いていないネオンマットカラー部が特に弱いです。

また、ウインドシールドやメーターの透明プラスチック(素材はアクリルまたはポリカーボネイト)は柔らかいタオルでも傷がつく恐れがあるので、マイクロファイバークロスなどの拭き傷がつきにくい素材を使いましょう。

部位ごとに道具を使い分ける

バイクの洗車部位を大きくわけると「ボディ・外装」と「エンジン・足回り」の2つになります。この2つの部位では汚れの原因や汚れ方が違います。
ブラシやスポンジを使い分けないと、ホイールを洗っている時に拾った砂粒でガソリンタンクに傷がついたなんてことになってしまいます。

手を切らないように

洗車でもケガをする恐れがあります。特にエンジン回りや足回りの細かなパーツを洗う時に注意が必要です。ホースバンドの先端やラジエターのフィン部、ブレーキキャリパーのパッドクリップなどの金属パーツに注意しましょう。洗車時には軍手をはめることもオススメです。

水をかける時の基本

水をかける時は向きがあります。基本的には「上から下へ、前から後ろへ」です。
下から上に水をかけるとタンク下やシート下の電装系に水分が浸入してリーク(漏電)し、電装系トラブルの原因になる恐れがあるからです。
後ろから前にかけるときはマフラーの中に水を入れないように注意しましょう。

冬場の洗車で注意すべきこと

冬季の朝方はマイナス気温になることも多いです。
前日の洗車の水で駐車場所が凍っていたり、ホースの中の残り水が凍っていることもあるので、早朝は注意しましょう。

高圧洗車機を使う場合

有料のコイン洗車場などに設置してある高圧洗車機を使う場合は、水圧の高さに注意が必要です。
バイクはむきだしの部品が多いため、強い水圧で水をかけると、電装系へのリークの恐れがあります。
なるべくバイクから離れて、ガーッとかけるのは足回りだけにして、ボディにはふわっと当てるくらいにしてください。

バイク洗車に必要な道具

バイクを洗うときに必要な道具を紹介します。
スポンジやブラシは消耗品です。100円ショップのものでも大丈夫ですよ。

スポンジ


洗車の基本となる道具です。台所用は傷がつきやすいので洗車用を選んでください。
クルマと違ってバイクの場合は手の平より少し大きいくらい(クルマ用より小さ目)のものが使いやすいサイズです。
厚さは3~5cmくらいのものが使いやすいく、それより薄すぎると泡の保持力が弱くなってしまいます。

ブラシ


スポンジだけでも車両全体を洗うことができますが、エンジン部や足回りに使ってしまうと、パーツの尖った部分でスポンジがボロボロになる可能性があります。エンジンより下に位置する部位では、ブラシに切り替えて洗いましょう。

特にエンジン下部やホイールを洗う時は重宝します。ブラシの毛についてはナイロン製で少しやわらかめ(指で押すと簡単に曲がるくらい)のものがベストです。

シャンプー


バイク専用のシャンプーを使うのがベストです。中性でもいいのですが、オイル汚れなどは酸性なので、弱アルカリ性の洗剤が効果的です。
バイク用は泡切れがよく、さらに防錆剤を加えたものもあるなど高機能なものが多いです。

台所洗剤は中性が多く、中性の洗剤自体は車体に害があるわけではないのですが、オレンジ成分の入ったものを継続的に使用するとゴムパーツ等を劣化させる恐れがあるので注意してください。

マイクロファイバークロス


車体の水を拭き取るならマイクロファイバークロスが安心です。
瞬間的な吸水性がとても高く、柔らかくて車体を傷つけにくいのが特徴です。
車体全体の水分を拭き取るなら30×40cmくらいのものが3~4枚くらいあると、拭き取りを一気に終わらせることができます。

パーツクリーナー


スイングアームやホイールに付着したチェーンオイルやグリスといった汚れはシャンプーでは落ちないこともあります。
真っ黒に汚れている場合は、洗車の最初にパーツクリーナーやチェーンクリーナーを使って頑固な汚れを落としてしまいます。

パーツクリーナーはプラスチック部やゴム部を傷めないものを選びましょう。効き目の強いものはパーツの素材も傷めやすいのです。

バケツとシャワーヘッド


バケツは必需品です。バケツの中でシャンプーの原液と水をしっかり混ぜて、スポンジ上で泡立たせるためです。バケツの中の水が茶色くなってきたら、一度捨てて、また作り直します。

シャワーヘッドは、自宅で洗車する場合にぜひほしい道具です。
ビニールホースだけの状態よりもシャワーヘッドをつけたほうが効率的に汚れや泡を洗い流すことができます。
ロック機構のあるものがおすすめです。

バイク洗車の手順

バイク洗車は上から下へ水をかけ、上から下へスポンジで洗っていくことが基本です。
拭き上げるときも上から下、とにかく洗車の基本は「上から下へ」です。

バイクの洗車の基本的な手順は以下となりますが、スイングアームやブレーキキャリパーなど足回りの汚れがひどい場合は、パーツクリーナーやチェーンクリーナーを使って、一番最初に洗ってしまいます。
そうしないと、頑固なオイルやグリスのせいで、スポンジやブラシ、手を汚してしまうからです。

浸水防止のテーピング


メインキーの鍵穴やマフラーエンドなど水を入れたくないところをテーピングします。
ガムテープだと糊が残ってしまうので、貼ってはがせて塗装も傷つけない養生テープがおすすめです。

車体全体に水をかける

上から下へ、前から後ろへ、車体全体を濡らして汚れを浮かせます。汚れを飛ばそうと水圧を上げる必要はありません。
むしろリークなど電動系トラブルの原因になるので注意してください。

スポンジで泡を作る


バケツの半分くらいに水を入れ、シャンプーの原液と混ぜてしっかり希釈します。
シャンプー水をスポンジに含ませて揉むことで、スポンジの上でしっかり泡立たせます。

たまに、スポンジに直接シャンプーを垂らしてから水を含ませる人がいますが、原液がバイクに残りやすく、車体を傷めるなど逆効果となるので注意してください。

車体を洗う順番と洗い方


車体を上から下に洗います。ウインドシールドがある場合は、傷がつきやすい素材なので、まずはそこから。次に、カウル、ガソリンタンク、シートという順番です。


エンジンや足回り(フロントフォークやサスペンションなど)は、スポンジだと引っ掛かるところが多く、スポンジの表面が傷みやすいので、ブラシが最適です。


エンジンのフィンやキャリパーのくぼみなどは、さらに小さなブラシで洗います。

水で泡を流す


上から下、前から後ろの方向で水をかけます。
エンジンやシートの周辺では水圧を上げないように。リークなど電装系トラブルの原因になる恐れがあります。

拭き上げ

マイクロファイバークロスなどで、まずはウインドシールドを。次に、上から下へと拭き上げていきます。足回りは最後に行います。

拭き残しがあると水道水の中のカルキ成分が白く残ってしまいます。
拭き上げひとつで仕上げが変わって見えますので、一番重要な工程です。

水が使えない場合の「水なしバイク洗車」

水が使えなくても洗車はできます。水無し洗車用のフォーム(スプレー)タイプやウェスタイプのクリーナーを使います。気温が高い時の洗車法も紹介します

バイク置き場には水道がなく水が使えない、軽く部分的に洗浄したいといった場合は、水を使わずに汚れを落とせるケミカル用品を使いましょう。

シュアラスター「ゼロフィニッシュ」のようなケミカル用品はスプレーして拭き上げるだけで汚れを落とし、さらに艶出しやコーティングまでしてくれるので便利です。

夏や炎天下でのバイク洗車のコツ

真夏など気温の高い日は、スポンジで洗っている最中に、泡がすぐに蒸発していきます。車体の溝などに泡汚れが残ってしまうので、洗車の工程を部位ごとに数回に分け、「下から上」に洗車していきます。

①ホイールやタイヤ、ブレーキキャリパーなどを洗ったら水で流す
②エンジン回りとサスペンション、フレームを洗ったら水で流す
③外装(タンク、シート、ハンドル回り)を洗ったら水で流す
④最後に車体全体をもう一度水で流す

つまり、部位ごとに「泡が乾く前に水で流してしまう」やり方です。

バイクの洗車は楽しく習慣に

洗車を100%でやろうと思うと大変です。70%くらいの軽い気持ちでバイクを洗いましょう。
「今日は外装だけ」でもいいんです。その時に必ずバイクの細部が目に入ります。
そこで「あっ、ABS樹脂が劣化し始めてる!」とか気づけます。

毎月、最後の日曜日は軽く洗車する。そんな決まり事もいいと思います。そうすることで、毎月バイクの目視点検ができます。

気負わず楽しく洗車習慣を作ってみましょう!

筆者プロフィール

田中淳磨

二輪専門誌編集長、二輪大手販売店、官公庁系コンサルティング事務所等に勤務ののち二輪業界で活動するコンサルタント。二輪車の利用環境改善や市場創造、若年層向け施策が専門で寄稿誌も多数。