40~50代の中高年、最近ではお仕事を引退されて60代で戻ってくる方もおられますが、こうしたいわゆる“リターンライダー”の皆さんが増えています。
昔に比べて乗りやすく扱いやすくなっている今のバイクですが価格は決して安くありませんし、コロナ禍の影響で納期遅延や中古車高騰の影響を受けているモデルもあります。

いまの自分の体と心にあったバイクを選び、ご家族にも理解を頂いて楽しいバイクライフを送るために必要なモノ・コトについて説明します。

リターンライダーとは

リターンライダーとは若いころにバイクに乗っていた方が何らかの理由で一度バイクを降りて、ブランクをはさんで久しぶりにバイクに乗り始めたライダーのことです。

バイクを降りたりしばらく乗らなくなる理由は様々です。
就職、転職、転勤といった仕事の事情。結婚、出産、育児といった家族の事情。さらにはケガや病気など身体的な理由でバイクを降りる方もいます。

なお、現在のライダー人口は第2次ベビーブーム(1971~1974年)前後に生まれ、80年代バイクブームを経験した50代が最も多くなっています。
2021年度新車購入者の平均年齢は54.2歳で、ひさしぶりに0.5歳下がったものの、大局的に見れば平均年齢は上がる傾向にあります。

※一般社団法人日本自動車工業会「2021年度二輪車市場動向調査 報告書」(2022年3月)より引用

リターンライダーの声

「大人のバイクレッスン」に参加した逢坂さん

ヤマハライディングアカデミー(YRA)「大人のバイクレッスン」に参加した逢坂さん。
もらい事故でバイクが全損になってしまいバイクを降りてからのブランクは15年ほど。
現在バイクは所有していないが時折レンタルバイクを借りて乗られるそう。

逢坂さん:「レッスンを受けるのは初めてでしたが、不安のあったUターンと半クラッチで上達が実感できました。バイクを保管する駐車場が確保できたらバイクを買って箱根とか山道にツーリングに行きたいですね」

リターンライダーが注意するポイント

リターンするにあたって注意しておきたいポイントを説明します。
数が多い気もしますが、若いころと違って気にしなければいけないことが多いのも事実です。

バイク事故に注意

ライダー人口にとって50代は母数が最も大きい世代ということもありますが、二輪車保有台数が最も多い東京都における二輪車乗車中の交通死亡事故を年代別に見ると、50歳代が突出して多いことがわかります。過去5年の平均と比べると20~30歳代は減少しましたが、50~60歳代は倍増してしまっています。

東京都内二輪車乗車中の交通死亡事故 年齢層別
※警視庁サイト「二輪車の交通死亡事故統計(2022年中)」(2022年3月23日更新)より引用

コロナ禍では、密を避ける移動手段としてバイクが注目され、通勤手段を公共交通からバイクに切り替えたり、特別給付金をきっかけにバイクの免許を取る、免許をステップアップするという方も増えました。
そうした中で久しぶりにバイクを購入してリターンライダーとなる人も大勢いました。

特にリターンライダーと呼ばれる方々には、若いころに経験したライディングの記憶と現在の自身の判断力や体力、テクニックなどが釣り合わずに転倒したり交通事故に遭われる方もいます。
視力や反応速度、バランス感覚など肉体的な老いに合わせた認知・判断・操作が求められています。

ブランクを取り戻すというよりは、今の自分にあったライディングについて安全運転をベースに整え直す必要があると言えるでしょう。
スポーツライディングなどは、さらにその先にあるものです。

家族の理解を得る

リターンライダーとして再びバイクに乗ることには、若いころとはまた違ったハードルが感じられることでしょう。
バイクに乗ることのリスクも含めてしっかりご家族に説明し、安全運転と法律を守ることがご家族の理解を得るための第一歩と言えるでしょう。

家族の理解を得なければ、バイクに乗ることを許してもらえない家庭は多いと思います。
反対を押し切って無理やりリターンするのはお勧めできません。
金銭面や安全面、そして社会的責任を負うひとりの大人として、しっかり対策や計画を説明した上で同意を頂きましょう。

バイク事故のリスク

前述したようにリターンライダーも多く含まれる50歳代は事故の多い世代です。
コミューターによる通勤では125ccスクーターでの出会い頭・右直事故、ファンバイクによるツーリングなどの趣味領域では中・大型バイクでの単独転倒が多くなっています。

バイク事故のリスクを体感する


普段クルマを運転している方でもバイクならではの危険について再確認する必要があります。
特に出会い頭事故、交差点での右直事故はバイク死亡事故で最も多いパターンです。

これらを防ぐためには、ロードサイドからの飛び出しや見通しの悪い交差点での予測・減速運転、交差点進入時にすり抜けをしない、前走車との車間距離を開けるといった具体的な対策を行う必要があります。
こうした対策を学び直す、路上の危険を安全に体験しておくためにもライディングスクールを受講することは有効です。

バイク事故時のリスクを軽減する


自分がどんなに注意していても相手に突っ込まれては避けようもありません。
自分の体へのダメージを軽減するためにはヘルメット、胸部プロテクターなどの各部プロテクター、ライディングウェア、グローブ、ブーツといった安全装備をしっかり身に付けましょう。

近年はエアバッグジャケット・ベストも普及してきました。
少々値段は張りますが万が一に備えて装備しておけば、ご家族も安心されるでしょう。
安全装備は日進月歩です。雑誌やWEBから最新の情報を取り入れることを心がけましょう。

バイク事故後のリスクを軽減する

それでも事故に遭ってしまったら保険の出番です。
自賠責保険は自分自身には使えませんから、必ず任意保険(バイク保険・オートバイ保険とも)に加入しておきましょう。
相手方への補償となる対人・対物賠償保険、自分・搭乗者への補償となる人身傷害保険などの補償に加えて事故相手との交渉を進めてもらえる弁護士費用特約や車両トラブルに備えたロードサービスについても契約しておくことをお勧めします。

自身が働けなくなってしまったりしたら家族の生活にも影響を及ぼしてしまいますから、医療・生命保険などにも別建てで加入しておくと安心です。

金銭面での負担

自分のお小遣いだけでまかなえるのが理想ですが、実際にはバイク購入時に数十万円以上のローンを組まれる方も多いと思います。
自宅のローンなど他のローンがある状態で、さらにバイクのローンを組むことに反対されるご家族もおられると思います。
バイクに乗ること、バイクを買うことについて理解してもらうためにも以下の点は自身の努力として伝えておきたいものです。

月々の負担を大きくしない

ローンの月額をなるべく抑えることで家計への気遣いをすべきでしょう。
支払い年月を長くすることを嫌う方も多いですが、バイクに乗らない家族からすれば不測の事態に備えやすくなります。

盗難保険にも加入しておく


せっかく買ったバイクが盗まれてしまったら家族に何と言えばいいのでしょう。
再び購入することに理解を得るのは大変なことだと思います。そのためにも盗難保険に加入しておくと安心でしょう。

車両保険に入れればベスト

立ちゴケや走行中の単独転倒により高額な修理が必要になることもあります。
全損、分損に対応できる車両保険は高額なイメージですが、月額5000円程度で加入できるものもあります。
また、立ちゴケについては期間限定が多いものの、購入時に加入しておけばバイクの扱いに不慣れな時期をカバーすることができます。

筋力と体力をつける

バイクの取り回しにはコツや慣れも必要ですが、何よりも最低限の筋力が必要です。
身体能力のいかんに関わらず、腹筋運動や腕立て伏せなど普段からちょっとした筋トレをしておくとバイクライフの様々な不安をやわらげることができますよ。
大型バイクに乗るのなら倒れた車体を1人で引き起こせるくらいの筋力があれば安心です。

そのためにも、同時に知識も備えておきましょう。
大型バイクは200~250kg程度ですが、引き起こし時にはタイヤ(支点)が動かないようにギヤを入れ、フロントブレーキにゴムバンドをはめる(フロントブレーキをかけた状態で固定)といったノウハウを知っていれば、必要最低限の力で引き起こすことができます。
万が一に備えて必要な用品類を携帯しておくことも大切です。

ちなみに、セパレートハンドルを採用したスーパースポーツなど前傾姿勢の強いバイクに乗るのであれば、腹筋(できれば背筋も)だけは鍛えておきましょう。
上半身を支えておかないと手や腕に負担がかかって疲れたり、ハンドルに体重が乗ってしまってうまく曲がれなくなり、スーパースポーツの楽しさが半減してしまうからです。

リターンライダーのバイクは中型バイクと大型バイクのどちらが良い?


リターンする時に迷うことのひとつに、中型バイクに乗るか大型バイクに乗るかということがあると思います。
昔に比べると今の大型バイクは軽くコンパクトに作られていて、電子制御技術により乗りやすく扱いやすくなっています。
長距離ツーリングに出かけたいのであれば排気量が大きい方がラクに安心して走れるでしょう。

中型バイクにもメリットはあります。400ccは昔の250ccクラス並みの軽さとコンパクトさです。
取り回しもラクになっていて旋回フィーリングもとても軽快です。
週末はツーリングでワインディングへ、平日は通勤や買い物にも使いたいといった方には400cc以下がオススメです。

リターンライダーの中には大型バイクでリターンしたものの、取り回しや体力的な問題などもあって250ccに乗り換える方も少なくありません。
事実、二輪車市場では軽二輪クラス(250ccクラスなど)が好調を維持しています。

まず、250ccや400ccのバイクに乗って扱いに慣れ、感覚がしっかり戻ってきてから大型バイクに乗り換えるのも手ですよ。

リターンライダーのバイク選びのポイント


リターンライダーがバイク選びをする際に注目すべきポイントは以下です。

取り回しができる重さ

ハンドルを切った時や車体を押し引きした時に、自身の感覚として無理な重さではないということは重要です。
バイクは大型バイクの重たいものだと350kgにもなります。
後進機能を持つものもありますが、取り回しの時に「これはダメだ」と思ったら、まだ自分には早いのだと見切りをつけることも大切です。
特に、アメリカン・クルーザータイプを購入する時は取り回しができそうか否かを必ず体感してから購入しましょう。

ライディングポジション


個人差の大きなところでもありますが、腰や頸椎(首)に負担をかけないアップライトなライディングポジションのバイクがオススメです。
ネイキッド、ツアラー、アドベンチャー、オフロード、クルーザーなどが上半身が比較的真っ直ぐ(実際は少し猫背が理想)になりやすく走行時に疲れにくいタイプになります。

ハンドルポジション

ハンドルポジションもライディングポジションや疲労に大きく影響します。
特にセパレートハンドルを採用したバイクは前傾姿勢になりやすいため、腰や首、手・腕への負担が大きくなります。
その場合はハンドルのタレ角を0度に近いもの(結果的にグリップ位置が体に近くなります)に交換したり、セパレートハンドルからバーハンドルに交換してしまうのも手です。

シート

走行中の腰の負担を軽減するためにクッション性の高いシートに交換するのも手です。
ゲル状の衝撃・振動吸収材をシートの上に乗せて固定したり、シート内部のスポンジに埋め込むこともできます。

カウルやスクリーン

高速道路を長距離走る時に疲労を軽減してくれるのがカウルやウインドスクリーンです。
こうしたパーツには防風効果があるので、装備されていると上半身や首などに走行風が当たらなくなり疲れにくくなります。
スクリーンは多くのバイクに後付けすることもできます。

電子制御技術


近年のバイクはフューエルインジェクション(電子制御式燃料噴射装置)は当然として、ABS(アンチロック・ブレーキシステム)、スリッパ―クラッチ、トラクションコントロール、電子スロットルなどを装備したり、それらを走行シーンやライダーの意図に合わせて統合的にコントロールできるライディングモードを備えるバイクも増えてきました。

高出力化している大型バイクでは、各種センサーによりタイヤの横滑りやロック、フロントの浮き上がりなどを検知・抑制して、バイクが転倒しないように制御しているものもあります。

もちろん、高機能なバイクになれば価格も上がりますし、自分にとって必要としない機能もあるでしょう。自身の用途や目的にあったバイクを選ぶことが大切です。

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購入前のレンタル、購入後のスクール受講もお勧め!

コロナ禍では工場や物流が影響を受け、新車の納期遅延が数多く発生しました。
今もまだ納期の遅いモデルもありますが、そうした影響もあり中古車価格もまだまだ高止まりしています。
決して安い買い物ではありませんから、購入後に後悔したくはありませんね。

まずはレンタルバイクを利用して感覚をつかむのも良いでしょう。
また、購入後はライディングスクールに参加するなどして、運転技術の向上や安全運転に必要なポイント・注意点を身に付けるのが安心です。

地域の警察署が免許試験場や自動車教習所で開催している安全運転講習は数百円で参加できますからぜひ一度受講してみてください。
ブランクの間に忘れていたものをいろいろと教えてくれるので、安心して公道を走れますよ。

※ライディングスクールの写真はYRA「大人のバイクレッスン」(オンロード/オフロード)の様子

筆者プロフィール

田中淳磨

二輪専門誌編集長、二輪大手販売店、官公庁系コンサルティング事務所等に勤務ののち二輪業界で活動するコンサルタント。二輪車の利用環境改善や市場創造、若年層向け施策が専門で寄稿誌も多数。