バイクの未来に切り込んでいくコンテンツを発信する『バイク未来総研』。
今回は、オートバイ誌編集長対談シリーズ第三弾、ヤングマシン松田編集長にお話を伺いました。
スクープへのこだわりや電動バイクのこと、バイクの価格のことなど、宮城 光所長よりインタビューしましたのでそちらの様子をどうぞ!


左:松田 大樹編集長 右:宮城 光所長
内外出版社 ヤングマシンHP:https://young-machine.com/

バイク未来総研とは

バイク業界のよりよい未来を考え、新しい価値を調査し、分析した内容を広く社会に発信することを目的に発足。国内外のレースで輝かしい成績を挙げ、現在も多方面で活躍する宮城光氏を所長に迎え、バイクライフの楽しさやバイク王が持つバイクに関する独自データ分析などの情報発信に加え、ライダーやバイク業界がこれから描く「未来」に切り込んだコンテンツを順次発信します。

雑誌編集長という大役

宮城所長(以下、宮城):ヤングマシンといえば創刊して50年ですごい歴史です。雑誌名の通り若々しい企画も多く、CGでバイクを描くといった取り組みも早かった印象です。
そのような貴誌ですから、さぞかし大役だったのではないですか。

松田編集長(以下、松田):編集長になって3年になるのですが、編集長をやる人間がいなくなり役目が周ってきただけです(笑)

宮城:そんなことはないと思います。総合的に適していると判断されている訳ですから。編集長を引き受ける時にはどのように思いましたか。

松田:正直、当初は荷が重いと感じていました。ですが重責がある分、企画が跳ねた時やWEBでアクセスが多い、いわゆるバズった時などはやりがいも同時に感じますね。
宮城:そうですよね。WEBなどは反応が数字でパッと出てわかりやすいですよね。

松田:仰る通り、WEBは全て数字で出されるのでわかりやすいですね。
宮城:WEBと紙媒体含め、松田編集長以下、何名体制なのでしょうか。

松田:営業を除くと私を含めて5名です。
宮城:しっかりマネジメントしている訳ですね。

松田:それはできていないと思うのですけど(笑)
宮城:出来ていなければ潰れちゃいますよ(笑)

松田:皆が「やらないなら俺がやってやる」といったようにお互いカバーして動いてもらっているので、それがヤングマシンの体質だと思っていますし、いつも助けられています。
宮城:いい関係性ですね。すばらしいと思います。

ヤングマシン松田編集長のバイク歴

宮城:話変わりましてバイク歴は、どのくらいになるのですか。
松田:16歳で原付免許を取りましてそこからずっと乗っていますね。

宮城:乗られてきたバイクは、スーパースポーツ系なのか、オフロード系なのか、小型排気量なのか、何系に乗られてきたのですか。
松田:そのあたりは特に決まっていなくて、92年に免許を取ったのですがちょうどレプリカブームとネイキッドブームの間の時だったんです。
周りはゼファーに乗っている人が半分、レプリカ半分でした。その頃からネイキッドというか古いバイクが好きでした。
当時は古いバイクをカスタムしてカッコ良くするというムーブメントがあり、第三京浜を走ったりしていましたね。

宮城:バイクは何に乗ったのですか。
松田:僕が初めて乗ったのは4フォア(CB400FOUR)ですね。

宮城:ええ!92年位に4フォア乗るというのは珍しいですね。92年位で4フォアは人気ありましたか。
松田:そうですね、人気はありました。僕が乗っていたのは高いものではなかったですが。その頃は中身の事などはわからずに、カッコいいと思って買ったのが4フォアでした。

宮城:それは何年位乗ったのですか。
松田:それがすぐ盗まれちゃったんですよ(笑)

宮城:あらら、そうでしたか。
松田:その後は限定解除してカワサキのZ750GPを個人売買で15万で買いました。
バイク歴で言うと4フォアはほとんど乗っていなくてZ750GPが実質的には初バイクという感じですね。

宮城:雑誌の個人売買というのは今考えると平和な時代ですよね。住所、氏名、電話番号が掲載されていて(笑)
松田:解禁時間を待って電話をしてました(笑)バイク雑誌をさかのぼると文通コーナーとかありましたよ。

宮城:ありましたね(笑)
松田:あれも住所、氏名、電話番号など掲載して彼氏・彼女募集という、今では考えられないコーナーでした(笑)ただ、バイク雑誌だけでなく若者雑誌にはそういうコーナーはあったかもしれないですね。
Z750GPのあとはホンダCB750F(1979)→ホンダVFR750F(1986)→スズキTS200R(1990)→ヤマハYZF-R1(1999)→カワサキZZ-R1100(1992)と乗り継ぎ、
現在はハーレー・スポーツスター883(2009)とホンダNSR250R(1992)、古いスーパーカブ90(1966)の3台を所有しています。
宮城:さすが結構乗り継いできていますね。バイクの経歴の次は、バイク雑誌の経歴について伺いたいと思います

バイク雑誌に入るきっかけ、ヤングマシンの特徴は?

宮城:そんな時代から、バイク業界に入りだしたのはお幾つからなのですか。
松田:大学の五年生の時ですね。今は休刊になってしまったのですが高校の時からバイカーズステーションという雑誌をよく読んでいまして、カスタム特集が好きだったこともあり、夏休みのアルバイトで行ったのが始まりです。

宮城:資料性があり特徴がある本で僕も好きでしたね。そこは何年くらい居たのですか。
松田:アルバイトの後、大学を卒業して正式に入社したのですが、世間知らずの甘ちゃんでしたので1年しかもちませんでした。

宮城:佐藤編集長率いるバイカーズステーション、強烈だったでしょう!バイトでやらされている時の熱量と自分が先頭に立っている時の熱量って全く違いますよ。
松田:その時はわからなかったですが、今でも佐藤編集長の教えが軸になっている部分があると思います。

宮城:ヤングマシンに入ることになった経緯はどのようなものだったのですか。
松田:バイカーズステーションのカメラマンさんの伝手で八重洲出版さんにアルバイトで入りました。それが2002年で、四輪の媒体を7,8年やっていたのですが、そこから二輪の媒体に異動して、2014年に内外出版社に転職して今に至っています。

宮城:いい経歴ですね。八重洲出版も伝統ある会社ですし。
松田:そうですね。八重洲出版でも色々な事を学ばせていただきました。

スクープのヤングマシン。その原動力は?

宮城:そうでしたか。現代のヤングマシンの話に移るのですが、今、ヤングマシンを購入している層で、どういう年齢層の人がどのような内容に反応するのでしょうか。
松田:紙の方ですとユーザー層を掴むのが難しいのですが、ウチに求められているものは、やはり「スクープ」だと思っています。

宮城:スクープは長くやってこられていますよね。
松田:おかげ様でヤングマシン=スクープと思っていただけるようにはなっていると思いますね。

宮城:バイクの情報を得るのに、相当なコネクションをお持ちなんでしょうね(笑)
松田:いえいえ、まだまだこれから人脈を作っていくというところではあります。

宮城:人と人との付き合いの中で、話の中でバイクの作り手の想いが出てきてそれを正確に記事にしているのでしょうから、ライダーにとっては必要な雑誌だと思いますよ。
松田:ありがとうございます。正確かどうかというと少し違うのかもしれませんが、「こんなすごいバイクが出るんだ」とワクワクしてもらう事には心血注いていますね。
例えば開発が進んでいたけど、諸事情により発売されることなく開発が終了してしまった…なんてスクープはワクワクしないじゃないですか。読者がワクワクするかどうかを基準に誌面作りをいつも考えています。

宮城:未来があって明るい話がいいですよね。
松田:当然ながらバイク業界を盛り上げたいという気持ちがありますので、読者がプラスの意味でワクワクするようなスクープというのを心がけています。

東京モーターサイクルショー2023について

宮城:話変わりまして、今年の東京モーターサイクルショーでは国産4メーカー見られてどのような印象でしたか。
松田:そうですね、決められた枠の中で、各社さん、とても工夫されているなという印象でした。

宮城:僕の印象では、たとえばカワサキの4気筒などはピストンの数を減らしていくという風潮の中、増やしてきたというのが楽しいと思いましたね。
松田:そうですね。400ccで80馬力と謳えるバイクはなかったじゃないですか。ヤングマシンはこうしたスペックとか数値的な内容が好きなので、Ninja ZX-4RRが出た時にはお祭りでしたね。

松田:あれは予想したスペックが70馬力オーバーくらいかなと思っていてスクープしていたのですが、予想を上回って80馬力だったんです。
宮城:近年の様子を見ていますと、ビモータの販売もそうですしカワサキは自分達がやりたい事をやっている、というのが伝わってきますよね。Z900RSなんかも売れに売れていますが、サイズ感、まとまり、デザインなどあらゆる角度から見て、いいバイクだなと思います。エリミネーターも面白いバイクでした。
松田:そうですね。同じクルーザージャンルではホンダさんのレブル250が大ヒットしている中、なぜカワサキさんは400ccを選択したのか?と大阪モーターサイクルショーで担当の方に伺ったら「バイクが速くて困ることはないでしょう?」といった回答で、とてもカワサキさんらしいなと思いました。

宮城:カワサキさんはやはりパワーの方に舵を切っているのでしょうか。
松田:そうですね。乗りやすく、かつ速い、というところの追求なのでしょうね。

宮城:一方でヤマハさんは小型車に力を入れていましたね。XSRの125ccのブルーの車体はカッコよかったです。
松田:125ccがあれだけズラッと並んでいてビックリしました。

宮城:125ccというのは大きいマーケットなのでしょうね。
松田:125ccにヤマハさんが力を入れてくると、より市場も盛り上がると思います。

宮城:WEBでの小型車、125ccの反応はいかがですか。
松田:125ccの特集の時はやはりウケがいいですよ。

宮城:何故なのでしょう?所有しやすいとかコスパとかですか?
松田:そういうところもあると思いますし、僕の印象なのですが、趣味のバイクというと昔は250cc、400ccとかがメインでしたが、それが下りてきて「125ccでも十分に楽しめるんだ」とわかってきている人が多くなっていると思いますね。

宮城:性能も上がっていますしね。
松田:結構ツーリングを楽しんでいる人も多いですよね。バイクの値段も上がっていますから、昔は250ccを買えた金額だと今は125ccしか買えない・・・という後ろ向きな事情も、ひょっとしたらあるのかもしれませんが。

宮城:ダウンサイジングする人がいる一方で、原付ではスピード感や二段階右折など条件が多くて満たされないライダーが125ccに上がって来ているということはありそうですか。
松田:そうですね。125ccに乗るための小型限定普通二輪免許は、AT限定でもOKなら、普通自動車免許を持っていれば最短2日で取れますし、バイクの値段も安い等、諸条件をクリアしやすいところに、ホンダさんのモンキー125やCT125ハンターカブなど、面白そうなバイクがたくさん出てきてウケているのかもしれませんね。

宮城:一方、スズキさんは800ccのバイクを出展していましたが・・・
松田:ネイキッドのGSX-8Sと、アドベンチャーのVストローム800DEですね。

宮城:スズキさんはミドルサイズが活発化している印象です。フルスケールのアドベンチャーバイクから手軽に楽しめるサイズに下りて来ているといったところでしょうか。
松田:そうですね。そうした流れもあるとは思います。1300ccのアドベンチャーなどは技術も要りますし、価格の事もありますのでヨーロッパの方ではミドルサイズが盛り上がってきているのでは、と思います。

宮城:僕は今流行りのアドベンチャーバイクは面白いところに来たと感じています。アップライトなポジションは長距離もこなしますし、中身は最新エンジンに最新の電子デバイス。外装はと言うと、ラリー・レイドマシンレプリカな訳です。
つまり、現代の「レーサーレプリカ」ですから、ネイキッドマシンからの乗り換えや、スーパースポーツからの乗り換えにも十分に言い訳ができるくらい充実した装備です。

松田:そうですよね。中身は最新鋭な訳ですからね。メカニズムに対して 憧れがある人も乗る訳ですね。
宮城:そうです、悪路でしたら容易に電子制御が楽しめるというのもあります。世界だと伸びるのではないかと思っていますし、日本でもツーリングバイクとして売り出していけば伸びるのではないかと思いますね。

外車について

宮城:最近の外車に対してはどのような印象をお持ちですか。
松田:そうですね。BMWさんは昨年初めて全世界での販売台数が20万台を突破し、売れていますよね。

宮城:あとはロイヤルエンフィールドも特徴的ですし売れています。
松田:BMWとは逆の価値観というか、乗るとほっとするバイクですよね。

宮城:日本でもGB350などもそうだと思うのですが、スピードやハイスペックとは違う価値観を持ったバイクに乗る人達も増えてきましたよね。
松田:そうですね。日本でも昨年はGB350が12,000台も売れている訳ですから、その証ですよね。裾野を広げているバイクだと思います。

宮城:馬力だけではなく買いやすい価格帯でバイクの楽しさがあればいいという人にウケますよね。
松田:そういうバイクを出してくれるのは、スーパーカブを筆頭に「安くていいものをたくさん売る」を社是に掲げるホンダさんならではだと思います。

電動バイクの今後について

宮城:電動バイクについてはいかがですか。
松田:2輪だとエンジンがモーターに置き換わるというよりは、バイクのジャンルの選択肢のひとつとして落ち着くのではないかと個人的には思いますね。音がしないとか環境にやさしいなど、電動の良いところってあるじゃないですか。

宮城:あとはガソリンの匂いがしないとかオイル漏れしないとかですね。
松田:そうですね。コミューターなどは、そうした電動ならではの長所がガチっとハマるジャンルだと思います。対してスーパースポーツやアドベンチャーなどはまだエンジンに匹敵する性能や航続距離を実現するのが難しいと思いますから、当面は全てのジャンルが電動に置き換わるというより、電動バイクというひとつのジャンルとして落ち着くのでは、と見ていますね。

宮城:なるほど。電動バイクに代わっていくのではなく、「電動バイクというジャンルもアリだよね」という感覚ですか。
松田:エンジンで言えば単気筒、ツイン、4気筒などという選択肢があり、その中で電動バイクという選択肢も出来るのかな、と僕は思っていますね。

宮城:4輪の世界でもまだまだガソリンエンジンがどうなるのかというのは揺れていて先行きが見えない所がありますからね。2輪も当面はジャンルのひとつとして落ち着くという考えも面白いですね。
松田:基本的に、ライダーって4輪以上にエンジン好きですよね。それぞれのエンジンの特性があって面白さを感じるところがあると思いますので、その点でも当面は残っていくのではと思うんですよ。

宮城:確かに2輪の方がこだわりはありますよね。その選択肢を広げるのもバイクを作るメーカーさん次第になってくるところはありますね。
松田:そうですね。僕らはバイクを作れないですけど、メーカーさんはバイクを作れる立場にいる訳じゃないですか。羨ましいです(笑)

宮城:羨ましいですね。ヨーロッパでは面白いバイクも作ってきてますし、僕は見た目も重要視する訳ですがヨーロッパだとビジュアルのコストダウンはしない等、取り組みがうまかったりします。僕がバイクを作れるなら、見た目はカッコよくコストは落とさず中身の重要でない部分のコストを落としていったりとかしたいですね。
松田:確かにビジュアル面で、常に目に入るところは気になりますよね。一方でサスペンションの良し悪しなどというのは、ある程度経験積んだ人でなければ分からないというところもありますね。

宮城:ただ、どこをコストカットしていくかも含めて値付けは難しいと思いますけどね。永遠の課題ですね。

ヤングマシンの強みとは?

宮城:最後に、あらためてヤングマシンの強みを教えてください。
松田:はい。先程の話の中でも出ましたが、ヤングマシン=スクープと思っていただけるようになりました。おかげ様で支持をいただいています。
誌面としてもライダーが直感的に知りたい、見たいと思う情報を先んじて載せていると思っています。出るか出ないかわからないようなバイクであっても、それがライダーが知りたい事で、ワクワクしてもらえそうなら取り上げる。そういう感覚を大切にしたいですね。

宮城:CGでバイクを描いていて僕も楽しみにしています。
松田:ありがとうございます。バイクメーカーさんだと様々な制約で作れないバイクが、CGとはいえ作れてしまうのも我々の強みですので、それを活かしてライダーの欲望や興味に忠実なCGを作ろう、日本一下衆なバイク雑誌になろうと編集部では盛り上がっています(笑)。ライフスタイル系のかっこいい方向に行ける訳でもないですし、バイク女子やツーリングという方向性は他誌さんが強いですし、今のスタイルを貫いて、バイク業界のにぎやかしのような存在であり続けたいですね。

宮城:これからもライダーが胸躍るスクープを期待しております。本日はありがとうございました。

筆者プロフィール

宮城光

1962年生まれ。2輪・4輪において輝かしい実績を持つレーサーとして名を馳せ、現在ではモータージャーナリストとしてMotoGPの解説など多方面で活躍中。2022年、バイク未来総研所長就任。