ヘルメットは外側のシェル、内装ともに意外とすぐに汚れるものです。特に、汗をかきやすく、走行中に小さな虫がたくさん飛び込んでくる夏場はヘルメットが最も汚れやすい季節です。こまめにメンテナンスしましょう!

1.キレイにカッコよく!シェルのクリーニング!

ヘルメットの最も外側にあたるシェル(帽体)は意外に汚れやすいものです。小さな虫がぶつかって付着したり、埃や砂が隙間や溝にたまったり、雨水の跡がまだらになったり、さらには自分自身の指紋や脂汚れなども”くすみ”の原因となります。少しでもそう感じたら、早めにクリーニングしましょう。

シェルの汚れを取るには、台所用洗剤などの中性洗剤をわずかに含ませた布で拭き取るのが最も簡単な方法です。その他、市販のヘルメットクリーナーを使えば、汚れ落としからワックスがけまでを一気に行えるので便利です。ただし、ヘルメットクリーナーには有機溶剤が含まれていることが多いので、マットカラーなど特殊な塗装のヘルメットに使用する場合は、まずマニュアルの注意事項を読んでください。下手をすると塗装がダメになるほか、シェルの材質に悪影響を与える恐れもあります

また、シェルの表面には、飛び石などによる小さな傷も目立つものですが、コンパウンドを使う場合も細心の注意で行わないと、塗装を傷める恐れがあります。

2. 視界に影響大!シールドのメンテナンスは慎重に!

シェル以上に汚れが目立ってしまうのがシールドです。ヘルメットを持ち歩く際についつい触ってしまうため指紋や皮脂がついてしまいがち。普段からなるべく素手で触らないように、どこかにぶつけてしまわないように注意が必要です。なお、シールドの汚れは視界不良となり転倒や事故にもつながりかねないので、安全運転の観点からもマメにクリーニングしましょう。

シールドの汚れ落としも中性洗剤を薄めたものを目の細かな布に含ませ、優しく拭き取るのが基本です。目の粗い布やティッシュペーパーで拭いてしまうと、それだけで無数のひっかき傷が残ることもあるので、布は肌触りの良いものを選びましょう。シールドは内側も汚れていくものなので、汚れの目立つ外側だけでなく、うっすらと汚れが付着する内側を拭くことも忘れないでください。シールドの透明度が落ちてきたなと思ったら、まずは内側をクリーニングしてみましょう。

シールドが完全に乾いたら、シールドの内側には曇り止めを、シールドの外側にはっ水剤を塗っておくと、雨天時の走行や低温時の快適性が高まります。なお、「PINLOCK®レンズ」を装着している場合には、そういったクリーナーは使用しないのが鉄則です。PINLOCK®レンズはシリコンシールによってレンズとシールドの間に空気の層を作り、シールドが曇らないようにするものですが、シールドよりも傷つきやすい材質でできています。レンズをクリーニングする際には、シールドから外し、薄めた中性洗剤で洗い、ぬるま湯でゆすいだ後、水分を拭き取り自然乾燥させてください。

また、ミラーシールドの場合は、コーティングがはがれやすいので、布も使わず、中性洗剤を薄めつつ優しく手で洗い流してください。シールド用のはっ水剤も使用できないことが多いので、その点も注意です。ミラーシールドは消耗品なので、使っていれば、どうしてもコーティングがはがれていきます。見た目も悪くなりますので、早めに買い換えましょう。

3. ベンチレーションや可動部にも汚れが!

走行風を取り入れる穴や排出する穴といったベンチレーション、さらにはそれらの可動部にも汚れはたまります。ベンチレーションの穴や隙間には、やわらかめの歯ブラシや綿棒を使います。汚れが落ちにくい場合は、中性洗剤を薄めたものを含ませてください。

シールドの取り付け・可動部やベンチレーションの可動部などの動きが悪くなったら、クリーニング後にシリコンオイルを少しだけ塗っておきます。写真のシリコンオイルは、アライヘルメット「アストラル-X」に同梱されているもので、少し粘り気があり塗りやすいのが特徴です。どの部分に塗布するべきかも同梱のマニュアルに書かれています。

なお、ベンチレーションなど可動パーツの多くはシェルの表面に装着されたプラスチック部品なので、シンナーやベンジン、ガソリンといった有機溶剤は絶対に使用しないでください。一見頑固そうなオイルや油分もたいていのものは薄めた中性洗剤で拭けば落ちます。

4.汗・皮脂で汚れやすい内装やライナーもキレイに!

走行中にかく汗や皮脂のため、内装はとても汚れやすいパーツです。特に雨で濡れたままの髪でヘルメットをかぶった後は要注意。そのまま放置しておくとカビが発生することもあります。普通に使っていても、チーク(ほほ)パッドからだんだんと黒ずんでいき不衛生となるため定期的にクリーニングしましょう。

なお、通勤や通学など毎日かぶっているヘルメットなら、使用後にファブリーズやリセッシュといった消臭・除菌スプレーを吹いておくのも効果的です。ただし、シールドなど内装以外のパーツにはかけないように注意してください。その上で、定期的に下記のメンテナンスをしておけば衛生的です。

ちなみに、ヘルメットの内装には、脱着式タイプと固定式タイプがあります。フルフェイスヘルメットやジェットヘルメットの多くは脱着式ですが、クラシックスタイルのヘルメットや125cc以下用ヘルメットには固定式が多いようです。

●脱着式タイプの場合
脱着式は取り外しや装着時に多少の慣れが必要ですが丸洗いできるのが利点です。手洗い(押し洗い)のほか洗濯ネットに入れれば洗濯機で洗うこともできます。ただし、乾燥器にかけてはいけません。高温の熱により変形する恐れがあるからです。洗濯のみとし、その後は陰干しで自然乾燥させましょう。通常、乾燥には数日かかりますが、ドライヤーなどを用いることはお勧めできません。

●固定式タイプの場合
クラシックスタイルのヘルメットに多いのが固定式内装です。中性洗剤を含ませた布でたたくように拭くというのが基本ですが、汚れがひどい場合は、柔らかめのブラシで泡立てながら軽くこすってください。その際、水ではなくぬるま湯を使うと効果的です。その後は、陰干しで自然乾燥させますが、モノによっては一週間くらいかかる場合もありますので、洗うタイミングには注意してください。

●ライナーのクリーニング
ライナー(発泡スチロール製の衝撃吸収材)の汚れは、中性洗剤を薄めたもので表面を軽く拭き取る程度にしてください。その際、指で強く押したりするとライナーがへこんでしまうので注意です。また、有機溶剤のようなものはライナーを溶かしてしまうため絶対に使用しないでください。

いかがでしたでしょうか。ヘルメット各部の基本的なクリーニング方法を紹介しました。きれいで清潔なヘルメットを心がけ、カッコよく走りたいものですね。

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筆者プロフィール

田中淳磨

二輪専門誌編集長、二輪大手販売店、官公庁系コンサルティング事務所等に勤務ののち二輪業界で活動するコンサルタント。二輪車の利用環境改善や市場創造、若年層向け施策が専門で寄稿誌も多数。