日本は台風の通り道にあたり、台風シーズンの到来を考えると愛車が心配だという方も多いと思います。
そこで今回は、バイクの台風対策として有効なやり方や注意点について複数紹介します。

特に強風によるバイクの転倒はライダーにとって大きな問題です。
万が一、バイクが転倒すれば車体は無事では済まず、傷や破損が発生します。
屋内保管ができないという方は、様々なケースを想定して複数の対策を施しておきましょう。

台風が来る前にした方が良い対策

車庫やガレージに保管できるなら大丈夫、なんの心配もないでしょう。
屋外保管となる場合はバイクが倒れないように様々な工夫が必要となります。

台風が近づいてくる前に可能な限りやっておきたい対策は以下になります。
保管状況によってはこれらの対策をなかなか実施できないということもありますが、自分自身で最低限できることをやっておきましょう。
やっても意味がないということは絶対にありません。

バイクを屋内で保管する

理想的なのは車庫やガレージといった場所で屋内保管をすることです。
屋根だけしかない、壁だけしかないといった場所でも、何もない野ざらし状態よりは雨風を弱めてくれます。

マンションやアパートなど集合住宅に住んでいて屋内駐車場がない場合は、馴染みのバイク販売店に相談して台風の間だけバイクを預かってもらったり、時間貸しの屋内駐車場を利用するのも良いでしょう。

バイクカバーをかけない

台風で最も警戒すべきは強い風によるバイクの転倒です。
バイクカバーをつけていると表面積が増えてしまい風を受け流すことができません。
ヨットの帆やパラシュートのように強い風でバイクが押され倒れてしまう可能性が高まります。

バイクの盗難は雨天時、特に大雨や長雨の時に増える傾向があることから、バイクカバーをかけておきたいという気持ちもわかりますが、愛車のロックはしっかりやった上で、バイクカバーを外しておくのが安心です。

防水処理を行う

台風の時は大量の雨が横殴りに降りかかってきます。マフラーエンドや鍵穴、タンクキャップなどに雨が侵入しないよう養生テープなどでマスキングしておきます。

こうしておくのは、電装品に水が侵入してしまうと、リーク(漏電)トラブルを起こす可能性があるからです。
電気の流れは目に見えませんが、リークが発生していると、エンジンがかからない、ウインカーやテールランプがつかない、ホーンが鳴らないといったトラブルが起こります。
乾燥して水分が抜ければ自然に直ることもありますが、台風の翌朝にエンジンがかからなくて通勤に使えないということも起こりえます。

特に、配線がむき出しになっている車両や年式の古いバイク、ビンテージ系の旧車などには入念に防水処理をしておきましょう。

サイドスタンドを使用する

台風で強い風が吹いている時にセンタースタンドを使っていると、バイクが風に押されてタイヤが浮き、接地面積が減ることでバイクが倒れやすくなります。
センタースタンドではなくサイドスタンドを使うことで、前輪・サイドスタンド・後輪の3点支持で車体を安定させましょう。

バイクを壁側に寄せて駐車する

台風による強風でバイクが転倒する場合はサイドスタンドの反対方向に倒れることがほとんどです。
もし壁に寄せて停めることができるなら、サイドスタンド側を壁側に寄せて停め、サイドスタンドの反対側(車両の右側)から風を受けるようにすることで転倒のリスクを軽減しましょう。

ハンドルを左に切る

ハンドルはしっかり左に切って、可能ならばハンドルロックもしておきます。
こうすることでサイドスタンド側に荷重がかかり強風でもバイクが倒れにくくなります。

ギアを一速に入れる

マニュアルトランスミッションのバイク(MT車)の場合は、ギアをニュートラルではなく1速に入れておくことでリヤタイヤがロックされ、強い風を受けた時の安定感が増します。
ギアをニュートラルにしたままだとリヤタイヤが動いてしまうので、強い風を受けた時にバイクが前後に動き、サイドスタンドが外れて転倒する恐れがあります。

フロントブレーキをロックする

スクーターなどオートマチックトランスミッションのバイク(AT車)は、パーキングブレーキを使ってリヤタイヤをロックしておきます。
パーキングブレーキのない原付一種スクーターなどは、ゴムバンドや結束バンドなどを使ってブレーキレバーを握った状態で固定してブレーキをロックしておきましょう

市販されている専用品「フロントレバーロック」(上写真はデイトナのフロントブレーキロック)などを使って固定することもできます。
転倒防止グッズとしてだけでなく日常のメンテナンスでも役立つパーツですし、価格も1,000円程度と安いためひとつ買っておくとよいでしょう。

片持ち式のメンテナンススタンドを使用する

メンテナンス時にタイヤを浮かせる工具である片持ち式のメンテナンススタンドを使うのも良いでしょう。サイドスタンドの反対側に掛けておくことでサイドスタンド側からの強風に強くなり4点支持(前輪・サイドスタンド・後輪・メンテナンススタンド)にすることができます。

ただし、メンテナンススタンドを掛ける際にはタイヤが浮かないように注意してください。
前後輪ともに浮かさない状態でアンダーフレームや右側ステップをピタッと支えるようにメンテナンススタンドの長さを調節してから使いましょう。

メンテナンススタンドはサイドスタンドしかないバイクの場合、チェーンの清掃・調整やタイヤ・ホイールの清掃時にも役に立つ便利なツールです。1本持っておくと強風時にも安心です。

重りを利用する

台風での強風対策としてサイドスタンドの反対側に重りを使用して固定するのも良いでしょう。

ロープで固定する

柱やフェンスとバイクをロープやタイダウンベルトなどで結んで固定するのも効果的です。
キャンプの時にテントのガイロープ(張り綱)を張るときのようにバイクの左右にロープを張ることができれば、かなりの強風に吹かれても倒れません。

バイクは予め倒さない

強風でバタンと勢いよく倒れる前にバイクをあらかじめ倒しておく(寝かせておく)というのはオススメできません。車体に傷が付くだけでなく、ガソリンやオイルなどが漏れてしまう原因にもなります。

サイドスタンドパッドを使用する

駐車場所の地面が砂利や土の場合、雨が降ることで地面が柔らかくなりサイドスタンドがめり込んでしまってバイクが倒れる恐れがあります。
あらかじめサイドスタンドパッド(スタンドマット)などを使ってスタンドが地面にめりこまないようにしておきましょう。

専用品がなくても、かまぼこ板などを使って工夫し、とにかくサイドスタンドがめりこまないようにしておきましょう。

台風が過ぎた後にすること


台風が過ぎた後の車体チェックは必須です。
強風下では何が飛んでくるかわかりません。また、車体も汚れてしまうのでなるべく早く洗車をしておきましょう。

台風が通り過ぎた後はバイクの各部をチェックしましょう。
「大丈夫だった!余裕じゃん」と思っても意外なところがダメージを受けていることもあります。

バイクのチェック

エンジンが始動できるか、強風で飛んできたものでパーツが破損したり傷ついている箇所はないかなどをチェックします。

なお、筆者はかつて、台風時の強風で棚の上に置いていた工具がバイクに飛んでいきテールランプが割れたということがありました。
屋根なし、壁ありのスペースだったので狭いスペースで強風が渦巻いていたのが原因でした。
これ以降、バイクより高い位置にモノは置かない(壁に掛けない)ようにしています。

バイクの洗車


台風の後は巻き上げられたゴミや海水などで車体が汚れています。
特に沿岸部にお住いの方は、車体が海水を浴びていることもあるので放置するとサビの原因にもなります。なるべく早く洗車しましょう。

バイクの台風対策は台風が遠くにある間に複数行うのが良いです。

台風の被害から愛車を守るためには、台風がまだ遠くにあって風が弱いうちに今回紹介した中の複数の対策を行いましょう。
どれも簡単な方法ですが、雨や風が強くなってからやろうとしても困難な場合がありますよ。

筆者プロフィール

田中淳磨

二輪専門誌編集長、二輪大手販売店、官公庁系コンサルティング事務所等に勤務ののち二輪業界で活動するコンサルタント。二輪車の利用環境改善や市場創造、若年層向け施策が専門で寄稿誌も多数。