近年、ネオクラシックバイクがブームです。デザインの大きな魅力である「渋いバイク」はどこから想起されているのか? その源流であるクラシックバイク「SR400」のパーツ構成を交えつつ探ってみましょう。

1.純然たるクラシックバイクは、いまやSR400のみ


「クラシック」や「ネオクラシック」というカテゴリーに、これといった決まりはありません。しいて言えば、80年代以前のスタイルやデザインを残している、感じさせるということでしょうか。いま人気の「ネオクラシック」バイクは、いわゆるクラシックバイクの雰囲気を漂わせていることが、そのカテゴライズの条件となっています。

では、クラシックバイクの雰囲気を醸し出しているものは何でしょうか。今回は、ファイナルエディションが発売され、大人気となっているヤマハ「SR400」を題材とします。SR400は初登場の1978年以来ほとんど変わらぬスタイルを維持しており、各部のデザインも基本的な所は踏襲されてきました。まさに純然たる、最後のクラシックバイクと言えるでしょう。

2.「クラシック」を定義づける各部の洗練されたパーツデザイン


それでは、現在発売中の「SR400 Final Edition」を題材に「クラシック」バイクの定義となりうる各部のパーツを見てみます。

●ポイント1/クロムメッキパーツ

前後のフェンダー、タンクキャップ、ウインカー、リヤサスペンション、グラブバーなど各部にクロムメッキパーツが使われています。近年のバイクの外装パーツは、ABSやFRPといった樹脂パーツが多くなっていますが、鉄(スチール)製パーツにクロムをコーティングしたクロムメッキパーツはクラシックバイクの特徴でもあります。

スチールパーツが増えると、車体が重くなります。また、スチール製のクロムメッキパーツはサビやすいので、サビ対策など手間もかかります。それでも、車体の各部がキラキラしていることに機械・金属・モノとしての美しさが感じられます。

ネオクラシックバイクに限らず、近年のバイクでは樹脂パーツにメッキ加工をしたものも多く見られます。クロムメッキパーツはクラシック感をかもし出すのに重要なパーツとなっています。

●ポイント2/キックスターター


今ではセルモーターによるエンジン始動が主流ですが、SR400は昔ながらのキックススターターを採用しています。エンジンを始動するたびにキックペダルを踏み降ろすのはおっくうに感じますが、そこはヤマハも「キックスタートは大切な儀式とも言える」と、キックスターターにこだわりを見せています。このキックペダルを踏み降ろすという所作が、クラシックバイクであることを強烈に主張しています。

●ヤマハ公式 SR400キックスタート動画(https://youtu.be/ZWgVJ1qDYBU

昔は、キックスターターのみというバイクがほとんどでした。それが、キックスターター+セルモーターとなり、現在では、レース用マシンを除くほぼ全てのバイクがセルスターターのみとなっています。

この機構はSR400のもので、キックスタートのポイントとなる、エンジン右側に設置された「キックインジケーター」です。キックペダルやデコンプレバーを使い、丸い小さな窓の中が黒から白(銀)に変わった時(圧縮上死点からピストンがわずかに下がった状態)にキックペダルを踏み下ろすとエンジンがかかりやすいという機構です。慣れてしまえば、インジケーターを見なくても、キックペダルに伝わる感触だけでピストンの位置を把握して始動できるようになります。

●ポイント3/スポークホイール

ハブとリムをスポーク(細い棒状のパーツ)で結んでいるスポークホイールもクラシックバイクらしさのひとつです。スポークホイールは路面からの衝撃を吸収しやすく、道路が舗装されていなかった時代では主流のホイールでした。現在ではより軽量で頑丈なキャストホイールが主流であり、スポークホイールは、ネオクラシック・オフロード・アドベンチャーといったカテゴリーの車種にのみ採用されています。

●ポイント4/空冷エンジンのフィン

シリンダー部のフィン(ひれ)の美しさは空冷エンジンの特徴のひとつです。のぺっとした水冷エンジンではかもし出せない、クラフトマンシップが感じられるデザインは、クラシックらしさを演出してくれるパーツの筆頭格と言えます。ただし、近年は排出ガス規制の影響もあって空冷エンジンの採用が減少傾向にあります。ちなみに、水冷エンジンであっても、意匠としてシリンダー部にフィンを刻んだものもありますが、一部車種に限られます。

<ヤマハSR400 Final Edition・主なSPEC>
エンジン:399cc空冷4スト単気筒SOHC2バルブ
シート高:790mm
車両重量:175kg
税込価格:60万5,000円

3.いまオススメのネオクラシックバイク


ネオクラシックというカテゴリーは、10年くらい前に欧州市場で生まれました。先進国市場での大型バイクの購入層は軒並み高齢化しており、トルクやパワーといった価値観から、大人の乗り物として落ち着きのある「ジェントルな価値観」が求められる中でのムーブメントでした。

そのデザインモチーフとして、かつてラインナップしていた車両がピックアップされることも多く、車名をそのままに復活するケースや、シリーズとしてのナンバーを継承するケース、全く新たな系譜として発売されるケースなど様々に展開されています。

今ではバイクメーカー各社から、ネオクラシックと呼ぶべきバイクが登場しており、すっかり人気のカテゴリーとなっています。

それでは、オススメのネオクラシックバイクを紹介します。

●カワサキ「MEGURO K3」


カワサキのバイクブランドの前身とも言える「メグロ(目黒製作所)」ブランドが復活しました。目黒製作所は、1925年にその前身の鈴木鉄工所が設立され、第二次世界大戦後の浅間火山レースを席巻するなど、戦前・戦後の大型バイク市場の中心的存在でしたが、小型車ブームの中で経営が悪化、カワサキと提携するも経営破たんし吸収される形でブランドが消えていました。

その後のカワサキブランドの中では、メグロのKシリーズがWシリーズとして受け継がれていましたが、2021年2月、W800をベースとして外装やエンブレムなどを専用品とした「メグロK3」が登場しました。

なお、前身は「カワサキ500メグロK2(1965年)」(下写真)となります。

<カワサキ MEGURO K3・主なSPEC>
エンジン:773cc空冷4スト並列2気筒SOHC4バルブ
シート高:790mm
車両重量:227kg
税込価格:127万6,000円

●BMW「R18」


2020年に登場したBMWのR18(アール・エイティーン)は、伝統の水平2気筒エンジン「ボクサー・エンジン」」を搭載したプレミアムなネオクラシック・クルーザーです。設計段階から1936年登場の名車「R5」を参考にしており、ダブルループ鋼管フレームやニッケルメッキされたユニバーサル・シャフトドライブなど各部に至るまで、R5への崇高なオマージュが見て取れます。

技術的には最新のものを採用しており、BMW史上最大の排気量1,802ccを誇るボクサー・エンジンには3つのライディング・モードが搭載されるほか、タイヤの空転やウィリー等を防ぐオートマチック・スタビリティ・コントロール、リヤタイヤのロックを制御するエンジン・ドラッグ・トルク・コントロールなど安全装備も万全です。

下写真の左がR18、右がR5(1936年)です。


エンジン:1,802cc空油冷4スト水平対向ボクサー・エンジン
シート高:690mm
車両重量:345kg
税込価格:254万7,000円

●スズキ「KATANA(カタナ)」


1980年の西ドイツ・ケルンモーターショーで発表された「GSX1100S KATANA」は日本刀をモチーフとしたデザインで話題となり、翌年、欧州向けの輸出が開始されました。国内市場では欧州仕様の逆輸入から始まり、1994年から国内販売が開始、2000年にファイナルエディションが発売されてラインナップからは消えていましたが、2019年5月に「KATANA」が発売されました。

新しい「KATANA」は「GSX1100S KATANA」のエッセンスが随所に散りばめられており、タンクからフロントノーズに至るシャープなデザインは、まさに日本刀の鋭さです。ヘッドライトも前進モデルと同じく角型デザインとし、特徴的だったウイング部にはLEDポジションランプも装備されて先進的なフェイスとなっています。

下写真は「GSX1100S KATANAファイナルエディション」(2000年)です。

<スズキKATANA・主なSPEC>
エンジン:998cc水冷4スト直列4気筒DOHC4バルブ
シート高:825mm
車両重量:215kg
税込価格:154万円

いかがでしたか。クラシックバイクとは? そして、ネオクラシックバイクとその前身となるバイクの歴史。単なる懐古趣味ではなく、最新の技術と伝統的なデザイン・ブランドとの融合が大人のバイク乗りの心をくすぐるんですよね!

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■筆者プロフィール

田中淳磨
46歳・男性・北海道札幌市出身
二輪専門誌編集長、二輪大手販売店、官公庁系コンサルティング事務所等に勤務ののち二輪業界で活動するコンサルタント。二輪車の利用環境改善や市場創造、若年層向け施策が専門で寄稿誌も多数。