少しバイクに乗り慣れてくると、周りの誰かが突然「サスがさぁ…」なんて言い出します。サスペンションって何? 何のために調整するの? どうやるの? 今回は難しいことは抜きにして「基本のキ」をご紹介します。

1.サスペンションの種類と構造を知っておこう

サスペンションとは、簡単に言うと、道路からの衝撃を吸収してくれるパーツです。路面の凸部では縮み、凹部では伸びる。どちらの動きも路面にタイヤを接地させるためのものです。逆に、サスペンションがないと凸凹のたびに車体が跳ねてしまい、安定した走行ができません。地味ですが、とても重要なパーツです。

さて、サスペンションの形態や構造は様々ですが、衝撃を吸収するための基本的な構成は、スプリング(ばね)とショックアブソーバー(ダンパーオイルの入った注射器のようなもの)を組み合わせたものです。

フロントサスペンションで最も一般的なタイプは「テレスコピック(望遠鏡)フォーク」というものです。アウターチューブ(太い筒)にインナーチューブ(細い筒)を差し込んだような構造で多くのバイクが採用しています。リヤサスペンションでは、スイングアーム式が一般的で、ツインショック(左右に1本づつ)かモノショック(エンジン後部付近に1本)を採用しています。

1.主なフロントサスペンション

●正立(せいりつ)フォーク

一般的で低コスト。軽量でしなやかに動く特性を持ちます。ストローク量も取りやすく、原付スクーターから大型クルーザーまで、いろいろなカテゴリーのバイクに採用されています。

●倒立(とうりつ)フォーク

正立フォークをひっくり返したような形で比較的高コスト。本体の剛性や耐久性が高く、大きな衝撃も吸収します。スポーツ特性の高いバイクに採用されます。

2.主なリヤサスペンション

●ツインショック

左右独立型で比較的低コスト。古くからバイクに採用されてきたタイプで構造が簡単です。整備や調整がしやすいのも特徴。左右セットでスイングアームとシート下フレームに固定します。

●モノショック

シート下フレーム等とスイングアームのピボット部を支点として固定されます。サスペンションが1本で済むので軽量化でき、ツインショックのように左右の調整を合わせる必要もありません。

この他にも、BMWが採用するテレレバー(フロント部)、パラレバー(リヤ部)やHondaゴールドウイングが採用するダブルウィッシュボーン(下写真)、原付スクーターなどにみられるユニットスイング式などサスペンションには様々なタイプがあります。

2.サスペンションの調整って何? なぜ調整するの?


さて、サスペンションって何のために調整するんでしょうか? まず大前提として、必要性を感じなければいじらないでください。一般の道路をツーリングしている程度であれば、サスペンションは、快適性や基本的な運動性能をつかさどるパーツだと考えてください。

スーパースポーツバイクなどはサーキット走行を考慮しているため純正装備のサスペンションでも調整か所が多く、いじりやすい構造のものを採用していますが、これは「速度域が高い=サスが大きく動く=微妙なサスセッティングが走りに直結する⇒だからラップタイムを上げるためには調整が必要」という場面を想定しているからです。

上写真はヤマハXJR1300に純正採用されているOHLINS(オーリンズ)製リヤサスペンションを調整するための専用工具です。XJR1300は大型ネイキッドバイクですが、スポーツ性能の高さもウリであり、そのために各部の調整が可能な高級サスペンションを搭載しています。よって、サスペンションを調整するための専用工具が車載工具にセットされているんです(下写真)。

また、市販車両の中には、そもそも全く調整機構を持たないサスペンションが採用されている場合もあります。こうした車両でサーキットに行き、シビアなスポーツ走行をしたいと思ったら、サスペンションを社外品に交換しなければいけません。

では、サーキット走行やシビアなスポーツ走行以外では、どんな時に調整の必要性を感じるのでしょうか。

1.ライダーの体重が軽すぎる、重すぎる

国内バイクメーカーは出荷時のセッティング(初期設定)を体重65~75kg程度と想定しています。これより体重が軽いライダーの場合は、街乗り程度ではサスペンションの動きを感じにくく、逆にギャップなどを越えるときはいきなり大きな衝撃を受けたりします。また、体重が極端に重すぎる場合は、ギャップによってはサスペンションが底付き(ダンパーが縮み切ってしまうこと)してしまいます。

①体重が軽すぎる時
プリロード(イニシャル)を弱める方向に調整します。
②体重が重すぎる時
プリロードを強める方向に調整します。

●プリロード調整とストローク量とは?
プリロード調整(イニシャル調整)とは、スプリングへの初期荷重(縮み具合)を変更することでサスペンションのストローク量を調整することです。ストローク量とはショックアブソーバー(オイルダンパー)の可動範囲のことで、圧側ストローク(路面の凸などでサスが縮んだ時)と伸側ストローク(路面の凹などでサスが伸びた時)を足した量(長さ)となります。

<プリロードを強めると>
スプリングが縮みます。圧側ストロークが増えて伸側ストロークが減ります。すると乗り心地は悪くなり硬く感じます。荷物を積んだりタンデムしたりした時のリヤサスペンションが底付きする不安は軽減されます。
<プリロードを弱めると>
スプリングが伸びます。伸側ストロークが増えてタイヤの路面追従性がよくなり、乗り心地はやわらかく感じます。シートに座ると沈み込むようになるので足つきも良くなります(せいぜい1~2cm程度)。

下写真はOHLINS製リヤサスペンションの例です。フロントサスペンションのスプリングは外からは見えないため、アジャスターのラインやクリック数(無段階調整式はアジャスターを回した角度)などで調整します。

2. 重い荷物を積んだり、タンデムする時

数十kgのキャンプ道具を積んだりタンデム走行をするときは、フロントよりもリヤが極端に沈むことがあります。このままでは、ギャップを越えるときにリヤサスが底付きしたり、カーブが曲がりにくい(アンダー特性が出る=カーブの外側にふくらむ)なんてこともあるので、プリロードを強めます。

3. 普通に街中を走っていて、路面からの衝撃がひどい

大型バイクや海外メーカーのモデルなど、出荷時の想定速度域が速い、または想定体重が重いようなバイクはサスが固めにセッティングされています。街中の細かなギャップが気になって疲れてしまうといった場合は、プリロードを弱めて路面追従性を高めます。

4. バイクが曲がらない、接地感が弱い

峠道を走っているような時にアクセルを開けてもブレーキをかけてもサスの動きが感じられない。そんな時もプリロードを弱めてみてください。海外メーカーのバイクなど想定速度域の高いバイクは、総じてサスが固めにセッティングされています。

基本的な調整方法は、車両の取扱説明書(オーナーズマニュアル)やサスペンション(社外品)のマニュアルに書いてありますが、よくわからずにいじってしまうと、乗り味や操作性を極端に悪化させてしまい、安全性をそこなう恐れがあることを知っておきましょう。

3.プリロード調整を実際にやってみた


さて、ここでプリロード調整を実際にやってみました。純正で採用されているサスペンションにはプリロード調整すらできないものもありますが、ホンダ「CB400 SUPER BOL D’OR」は前後ともに可能で、オーナーズマニュアルにもとてもわかりやすく記載されています。必要な工具も車載工具に入っています(上写真)。

●フロントサスペンションのプリロード調整

●リヤサスペンションのプリロード調整

「あれ、こんなに簡単でいいの?」と思われますが、これでいいんです、最初のうちは。

サーキット走行など速い速度域で走るようになると、「一次旋回ではどうだ、二次旋回ではどうだ」「圧側がどうで伸側がどうだ」みたいな難しい話になってきます。こうしたレベルでは、もう初心者がどうこうできるものではないので、経験者やベテラン、ショップに調整をお願いしたほうが“納得”できます。なぜ“納得”かと言うと、サスペンションセッティングの終わりは結局、自分自身の感覚が決めるものだからです。

なお、そのレベルを目指したいという方には下記のページが参考になります。サスセッティングの考え方や手順がチャートになっていてとてもわかりやすいものです。

●HRC技術情報/サスペンションセッティングの働き
https://www.honda.co.jp/HRC/technical/setting/suspension_s01/

サスペンションの調整に万能はありません。サーキットのとある低速コーナーの進入時(一次旋回)にセッティングを合わせたら、その他のコーナーは満足できないかもしれません。でも、抜きどころがそのコーナーしかないと自分が判断したのならそこに合わせるのが正解です。

出荷時の調整状態は、圧側、伸側ともにゆとりを残した万能に近い状態(理想的な基準値)ということになります。それでも、様々な事情によりそのイニシャル(初期)状態を変更したほうがいいと感じたなら、まずはプリロード調整をしてみましょう。乗り心地が快適に感じられればOKです。そこからさらに、圧側や伸側といったダンパー調整の必要性を感じたら、詳しい方やショップに相談するのが最適解への近道となるでしょう。

◆公式SNSにて更新情報をお届け!

■筆者プロフィール

田中淳磨
46歳・男性・北海道札幌市出身
二輪専門誌編集長、二輪大手販売店、官公庁系コンサルティング事務所等に勤務ののち二輪業界で活動するコンサルタント。二輪車の利用環境改善や市場創造、若年層向け施策が専門で寄稿誌も多数。