時代を超えて息づく「究極」の精神
タンクからテールへ流れるような美しいライン、そして世界初の直列4気筒DOHCヘッド、直4で当時最大の903cc――名車中の名車として語り継がれる1台こそ、Z1(900スーパー4)である。前回紹介した「Z900RS」の元ネタであり、現代まで続くカワサキのフラッグシップ系の元祖だ。
海外モデルとしてZ1が発売されたのは1972年秋。1969年にデビューしたホンダのCB750フォアが世界的に人気を博す中、Z1は驚きをもって迎えられ、CBを超える大ヒットを記録する。しかし、これはカワサキの狙い通りであった。
CBが発表された当時、実はカワサキも水面下で750cc直4DOHCの開発を進めていたが、CBを上回るべく、方針を転換。「ベスト・イン・ザ・ワールド」をスローガンに、当時最高の技術水準を上回る性能を目指した。最先端のDOHCを筆頭に、ニードルベアリング支持の組立式クランクシャフト、排気量アップを見越した設計などコストを度外視したメカが随所に見受けられる。開発リーダーの談話によると、こうした妥協なく究極の性能を目指す開発哲学は、あの零戦や戦艦大和と同様であるという。
性能は、ゼロヨン12秒、最高速200km/h超と世界最速。車重はCB750フォアより28kg増となるもハンドリングも軽快だ。
Z1を現代の目から見ると、車格はかなり大きめ。ただし車重はさほどでもなく、十分扱える。エンジンはまずサウンドが元気で、4本マフラーが奏でる、いかにも直4らしい排気音が心地いい。走りは、低速~中速のトルクが今でも実用レベルで力強く、ハンドリングも軽やか。絶対的なパワーはさすがに不足気味で、高速域からのブレーキもあまり効かないが、ストリートではまだまだ「現役」と言えよう。中古車の相場は高めながら、復刻パーツやカスタムパーツは旧車で随一の充実度。維持は十分可能だ。
――発売から半世紀に迫る月日に晒されながら、その魅力は今なおライダーを捉えて離さない。
型式、年式ごとの特長
Z1(900スーパー4) 1973~1976

1977年には排気量を1016ccにアップしたZ1000にフルモデルチェンジし、2本出しマフラーやフロントWディスクブレーキなどを採用した。
全長(mm) | 2,205 |
全幅(mm) | 800 |
全高(mm) | 1,150 |
シート高(mm) | — |
軸距(mm) | 1,490 |
車重(kg) | 230(乾燥) |
エンジン | 空冷4スト並列4気筒 |
排気量(cc) | 903 |
最高出力 | 82ps/8,500rpm |
最大トルク | 7.5kg-m/7,000rpm |
燃料タンク容量(L) | 18 |
タイヤ | (前)3.25-19 (後)4.00-18 |
※1973年型 北米仕様
Z2(750RS) 1973~1978

基本構成はZ1とほぼ共通だが、エンジンは全面的な見直しを敢行。ボア×ストロークはZ1の66×66mmから、64×58mmとし、746ccに。キャブレターも専用で、69psを発生した。1976年からZ750フォアに改名し、前輪ダブルディスクなどを獲得。次世代のZ750FXが登場した後も併売された。
全長(mm) | 2,200 |
全幅(mm) | 865 |
全高(mm) | 1,170 |
シート高(mm) | — |
軸距(mm) | 1,490 |
車重(kg) | 230(乾燥) |
エンジン | 空冷4スト並列4気筒 |
排気量(cc) | 746 |
最高出力 | 69ps/9,000rpm |
最大トルク | 5.9kg-m/7,500rpm |
燃料タンク容量(L) | 17 |
タイヤ | (前)3.25-19 (後)4.00-18 |
※1973年型