フィーチャーバイク -W800-
公開日:2019.08.21 / 最終更新日:2020.04.14
半世紀の伝統が息づく
独自の世界観
1999年、かつて一世を風靡したカワサキの空冷バーチカルツインが、24年ぶりに復活を果たした。その名もW650は、1966年に登場した名車W1をモチーフにしながら、造形美と味わいにこだわり抜いたモデル。シリンダーが直立する並列2気筒のバーチカルツインは、右側にそびえ立つベベルギアタワーをはじめ、クランクケースやオイルパン形状に至るまで美しさを追求。OHVのW1と異なり、SOHCを採用するが、これもデザイン性を重視した結果だった。
当時はYZF-R1などのスーパースポーツがブームだったが、W650は見事に好セールスを記録し、現代に通じるネオクラシックブームを大いに盛り上げた。
しかし、排ガス規制の影響で2008年9月をもって生産終了に。これを惜しむ声が多く、2011年に「W800」として生まれ変わった。W650をベースに、エンジンは675→773ccにボアアップし、FIも新採用。空冷のまま環境規制をクリアすることに成功した。
走りは、ゆったりとした独自の世界観が楽しい。360度クランク並列2気筒ならではの心地よいサウンドと鼓動感を伴いながら、低回転から豊潤なトルクが湧き出す。650より低回転域がパワフルで、回転上昇がスムーズ。3000rpmも回せばシフトアップしたくなるほどだ。回した際の振動も抑制されており、高速道路の100km/hクルーズも難なくこなす。ハンドリングも自然。車体や足まわりが適度にしなやかで、しっとりとしたフィーリングだ。また、ライディングポジションは、上体がほぼ直立するが、ハンドルの位置はやや低め。適度にダンピングのある前後サスと相まって、峠道も爽快に流すことができる。――以上がW800のインプレとなる。
このW800は、またしても排ガス規制の強化により、2016年のファイナルエディションで生産終了となる。……が、2019年に新型の「W800ストリート/カフェ」として復活を遂げた。空冷バーチカルツインはほぼフルモデルチェンジで、最大トルクの発生回転数を2500→4800rpmとアップ。より軽快に回転が高まるようになった。また、フレームの剛性をアップしたほか、フロントが19→18インチとなり、ハンドリングは先代より幾分シャープに。スポーティさを若干増したものの、まったりした味わいは残されている。ビキニカウル付きで若干前傾気味のカフェと、アップハンドルのストリートという2タイプが選べるのもうれしい。
度重なる生産終了を経ながら復活を遂げてきたWシリーズ。それだけカワサキが大事にしているモデルであり、魅了されているライダーが多いことの証でもある。ネオクラシックの外観と走りを楽しみたい人にまさに最適の1台だ。
型式、年式ごとの特長
650-W1
Wシリーズの原点が、1966年に誕生した650-W1。メグロを傘下に収めたカワサキが、メグロKシリーズを規範に大改良を加えたモデルとなる。OHV2バルブの4ストローク空冷624ccバーチカルツインは、当時の国産車最大排気量で、カワサキの旗艦に君臨。独特なY字型クランクケースカバーを持ち、シングルキャブレターやモナカ構造のマフラーを採用する。
当時のジャンルではスポーツ車にあたり、クラス最強の47psをマーク。カタログではゼロヨン13.8秒、最高速度180km/hを謳っていた。メインターゲットである米国市場では販売不振だったものの、国内では大ヒット。「ダブワン」の愛称で親しまれた。
後にツインキャブ化した650W1Sや、左足シフト&右足ブレーキのW1SA、前輪Wディスクブレーキを採用した650RS-W3と進化。1974年まで生産され、シリーズ累計約3万台を記録した。
全長(mm) | 2,135 |
全幅(mm) | 865 |
全高(mm) | 1,090 |
シート高(mm) | — |
軸距(mm) | 1,420 |
車重(kg) | 218 |
エンジン | 空冷4スト並列2気筒 |
排気量(cc) | 624 |
最高出力 | 45ps/6500rpm |
最大トルク | 5.2kg-m/5500rpm |
燃料タンク容量(L) | 15 |
タイヤ | (前)3.25-18 (後)3.50-18 |
W800

エンジンのスペックは、650のボア72×ストローク83mmに対し、ボアのみ5mm拡大。675→773ccにアップするとともに、最大トルク発生回転数を5000→2500pmに抑え、5.5→6.3kg-mと増強している。さらにキャブレターに代わり、FIを獲得したことで空冷+キャブトンマフラーのまま排ガス規制のクリアに成功した。車体は、クラシカルなスチール製ダブルクレードルフレームを継続採用。リヤショックのカバーレス化、キックスターターの廃止などは行ったものの、外観はほぼ650と変わらない。リプレイスパーツが数多く、カスタムベースとしての人気も抜群だ。
全長(mm) | 2,180/td> |
全幅(mm) | 790 |
全高(mm) | 1,075 |
シート高(mm) | 790 |
軸距(mm) | 1,465 |
車重(kg) | 216 |
エンジン | 空冷4スト並列2気筒 |
排気量(cc) | 773 |
最高出力 | 48ps/6500rpm |
最大トルク | 6.3kg-m/2500rpm |
燃料タンク容量(L) | 14 |
タイヤ | (前)100/90-19 (後)130/80-18 |
※2011年型
W800(2019年)
平成28年排ガス規制により2016年モデルで生産終了したW800が、2019年3月に復活。基本的なスタイルを踏襲しながら、ほぼ全面新設計となり、空冷バーチカルツインエンジンは約90%が新作に。ベベルギヤ駆動のSOHC4バルブやボア×ストローク、圧縮比などは不変のまま、4ps増を果たし、最大トルク発生回転数をアップ。クラッチレバーの操作感を軽くするアシスト&スリッパーシステムを新たに導入した。
車体も、スチール製ダブルクレードルフレームの基本形状は同様ながら、キャスター角を27→26度、トレール量を108→94mmに変更し、スポーティさを向上。また、パイプの外径を変えずに肉厚を変更することで、剛性アップと端正なルックスを両立している。
足まわりに関しては、フロントのブレーキディスク径をφ300→320mmとし、リヤをドラム→ディスクブレーキに変更。Fフォークを大径化し、サス設定も硬めとしている。
外観ではLEDヘッドライトを新採用。さらに、アップハンドルの「ストリート」、ビキニカウルとスワローハンドルを与えた「カフェ」の2本立てとなった。
全長(mm) | 2,135 |
全幅(mm) | 925[825] |
全高(mm) | 1,120[1,135] |
シート高(mm) | 770[790] |
軸距(mm) | 1,465 |
車重(kg) | 221[223] |
エンジン | 空冷4スト並列2気筒 |
排気量(cc) | 773 |
最高出力 | 52ps/6500rpm |
最大トルク | 6.3kg-m/4800rpm |
燃料タンク容量(L) | 15 |
タイヤ | (前)100/90-18 (後)130/80-18 |
※2019年型ストリート [ ]内はカフェ
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■筆者プロフィール

沼尾宏明
1995年から2輪雑誌編集部に勤務し、後にフリーランスとして独立。
モットーは締め切り前納品で、旧車から最新の法改正、用品に至るまでジャンルを問わず幅広いバイク関連の知識を持つ。
1年半に及ぶユーラシア大陸横断という異色の経験もアリ。
1971年生まれ。