今月のフィーチャーバイク

半世紀の伝統が息づく
独自の世界観

1999年、かつて一世を風靡したカワサキの空冷バーチカルツインが、24年ぶりに復活を果たした。その名もW650は、1966年に登場した名車W1をモチーフにしながら、造形美と味わいにこだわり抜いたモデル。シリンダーが直立する並列2気筒のバーチカルツインは、右側にそびえ立つベベルギアタワーをはじめ、クランクケースやオイルパン形状に至るまで美しさを追求。OHVのW1と異なり、SOHCを採用するが、これもデザイン性を重視した結果だった。
当時はYZF-R1などのスーパースポーツがブームだったが、W650は見事に好セールスを記録し、現代に通じるネオクラシックブームを大いに盛り上げた。
しかし、排ガス規制の影響で2008年9月をもって生産終了に。これを惜しむ声が多く、2011年に「W800」として生まれ変わった。W650をベースに、エンジンは675→773ccにボアアップし、FIも新採用。空冷のまま環境規制をクリアすることに成功した。

走りは、ゆったりとした独自の世界観が楽しい。360度クランク並列2気筒ならではの心地よいサウンドと鼓動感を伴いながら、低回転から豊潤なトルクが湧き出す。650より低回転域がパワフルで、回転上昇がスムーズ。3000rpmも回せばシフトアップしたくなるほどだ。回した際の振動も抑制されており、高速道路の100km/hクルーズも難なくこなす。ハンドリングも自然。車体や足まわりが適度にしなやかで、しっとりとしたフィーリングだ。また、ライディングポジションは、上体がほぼ直立するが、ハンドルの位置はやや低め。適度にダンピングのある前後サスと相まって、峠道も爽快に流すことができる。――以上がW800のインプレとなる。

このW800は、またしても排ガス規制の強化により、2016年のファイナルエディションで生産終了となる。……が、2019年に新型の「W800ストリート/カフェ」として復活を遂げた。空冷バーチカルツインはほぼフルモデルチェンジで、最大トルクの発生回転数を2500→4800rpmとアップ。より軽快に回転が高まるようになった。また、フレームの剛性をアップしたほか、フロントが19→18インチとなり、ハンドリングは先代より幾分シャープに。スポーティさを若干増したものの、まったりした味わいは残されている。ビキニカウル付きで若干前傾気味のカフェと、アップハンドルのストリートという2タイプが選べるのもうれしい。
度重なる生産終了を経ながら復活を遂げてきたWシリーズ。それだけカワサキが大事にしているモデルであり、魅了されているライダーが多いことの証でもある。ネオクラシックの外観と走りを楽しみたい人にまさに最適の1台だ。

型式、年式ごとの特長

650-W1

Wシリーズの原点が、1966年に誕生した650-W1。メグロを傘下に収めたカワサキが、メグロKシリーズを規範に大改良を加えたモデルとなる。OHV2バルブの4ストローク空冷624ccバーチカルツインは、当時の国産車最大排気量で、カワサキの旗艦に君臨。独特なY字型クランクケースカバーを持ち、シングルキャブレターやモナカ構造のマフラーを採用する。
当時のジャンルではスポーツ車にあたり、クラス最強の47psをマーク。カタログではゼロヨン13.8秒、最高速度180km/hを謳っていた。メインターゲットである米国市場では販売不振だったものの、国内では大ヒット。「ダブワン」の愛称で親しまれた。
後にツインキャブ化した650W1Sや、左足シフト&右足ブレーキのW1SA、前輪Wディスクブレーキを採用した650RS-W3と進化。1974年まで生産され、シリーズ累計約3万台を記録した。

全長(mm) 2,135
全幅(mm) 865
全高(mm) 1,090
シート高(mm)
軸距(mm) 1,420
車重(kg) 218
エンジン 空冷4スト並列2気筒
排気量(cc) 624
最高出力 45ps/6500rpm
最大トルク 5.2kg-m/5500rpm
燃料タンク容量(L) 15
タイヤ (前)3.25-18 (後)3.50-18

W800

W650の生産終了から2年後に発表された後継車がW800。「W」の伝統を継承したビンテージスタイルと360度クランク空冷バーチカルツインを搭載する。現代版Wの特徴となるのがエンジン右側のベベルギア。傘状の歯車を意味するが、これでカムを駆動させる機構は非常に珍しい。高コストながら、美観のために敢えて採用した経緯がある。
エンジンのスペックは、650のボア72×ストローク83mmに対し、ボアのみ5mm拡大。675→773ccにアップするとともに、最大トルク発生回転数を5000→2500pmに抑え、5.5→6.3kg-mと増強している。さらにキャブレターに代わり、FIを獲得したことで空冷+キャブトンマフラーのまま排ガス規制のクリアに成功した。車体は、クラシカルなスチール製ダブルクレードルフレームを継続採用。リヤショックのカバーレス化、キックスターターの廃止などは行ったものの、外観はほぼ650と変わらない。リプレイスパーツが数多く、カスタムベースとしての人気も抜群だ。
全長(mm) 2,180/td>
全幅(mm) 790
全高(mm) 1,075
シート高(mm) 790
軸距(mm) 1,465
車重(kg) 216
エンジン 空冷4スト並列2気筒
排気量(cc) 773
最高出力 48ps/6500rpm
最大トルク 6.3kg-m/2500rpm
燃料タンク容量(L) 14
タイヤ (前)100/90-19 (後)130/80-18

※2011年型

W800(2019年)

平成28年排ガス規制により2016年モデルで生産終了したW800が、2019年3月に復活。基本的なスタイルを踏襲しながら、ほぼ全面新設計となり、空冷バーチカルツインエンジンは約90%が新作に。ベベルギヤ駆動のSOHC4バルブやボア×ストローク、圧縮比などは不変のまま、4ps増を果たし、最大トルク発生回転数をアップ。クラッチレバーの操作感を軽くするアシスト&スリッパーシステムを新たに導入した。
車体も、スチール製ダブルクレードルフレームの基本形状は同様ながら、キャスター角を27→26度、トレール量を108→94mmに変更し、スポーティさを向上。また、パイプの外径を変えずに肉厚を変更することで、剛性アップと端正なルックスを両立している。
足まわりに関しては、フロントのブレーキディスク径をφ300→320mmとし、リヤをドラム→ディスクブレーキに変更。Fフォークを大径化し、サス設定も硬めとしている。
外観ではLEDヘッドライトを新採用。さらに、アップハンドルの「ストリート」、ビキニカウルとスワローハンドルを与えた「カフェ」の2本立てとなった。

全長(mm) 2,135
全幅(mm) 925[825]
全高(mm) 1,120[1,135]
シート高(mm) 770[790]
軸距(mm) 1,465
車重(kg) 221[223]
エンジン 空冷4スト並列2気筒
排気量(cc) 773
最高出力 52ps/6500rpm
最大トルク 6.3kg-m/4800rpm
燃料タンク容量(L) 15
タイヤ (前)100/90-18 (後)130/80-18

※2019年型ストリート [ ]内はカフェ

■ W800の在庫情報はこちら■
■乗り換えを検討中の方はこちら■

◆公式SNSにて更新情報をお届けします!

■筆者プロフィール

沼尾 宏明
1995年から2輪雑誌編集部に勤務し、後にフリーランスとして独立。
モットーは締め切り前納品で、旧車から最新の法改正、用品に至るまでジャンルを問わず幅広いバイク関連の知識を持つ。
1年半に及ぶユーラシア大陸横断という異色の経験もアリ。
1971年生まれ。