今月のフィーチャーバイク

パリダカ魂が息づく
真の冒険モデル

この車名を聞くだけで、冒険心をくすぐられるライダーも多いのではないだろうか? ――初代アフリカツイン=XRV650がデビューしたのは1988年。ブームだった「パリダカ」マシンのレプリカとして一大センセーションを巻き起こした。
1979年から開催された「パリ・ダカールラリー」は、世界一過酷と称されるラリー大会。当時はフランス・パリからセネガル・ダカールまで走破したことで命名され、南米大陸にステージを移した現在もその名が定着している。
80年代にはテレビ放送されるなど、パリダカブームが巻き起こった。そんな中、ホンダが86年にワークスマシンのNXR750を投入し、3連覇中だったBMWを撃破。1989年まで破竹の4連覇を飾った。そんな熱狂の最中、初代アフリカツインは、NXRの公道レプリカとして生まれたのだ。
巨体ゆえに国内では限定車扱いだったが、海外で好評を博し、旺盛なモデルチェンジを繰り返していく。1990年型ではV型2気筒ユニットの排気量を647→742ccにアップするとともにカウルを大型化。1993ではフルチェンジを受け、新設計フレームや大容量エアボックスなどを獲得した。しかし排ガス規制の影響もあり、国内では2000年、海外では2003年で生産終了となった。
復活を望む声が高まる中、2010年代になるとアドベンチャーモデルの人気が過熱化。加えて、1989年をもってパリダカへのワークス参戦を終了していたホンダが、24年ぶりに2013年からエントリーを再開した。こうして2014年秋の試作車公開を経て、2016年にCRF1000Lアフリカツインが正式にリリースされた。
ライバルより軽量コンパクトな車体に998cc並列ツイン、フロント21インチホイールを採用し、オフロードでの走破性もしっかり確保するのが特徴。さらにオートマとボタン変速が可能なDCT仕様をデュアルパーパス系で初めて投入したのもトピックだ。「アドベンチャー」とは名ばかりのマシンが多い中、真の冒険モデルとして世界的に高い評価を受け、ヒットを記録した。

インプレとしては、思いのほか扱いやすいのが特徴。270度位相クランクによるエンジンが適度な脈動感を伴いつつ、スムーズに吹け上がる。重心が低いため、安心感が高く、横方向へのロールも軽い。一見大柄ながら実に軽快なハンドリングで、ダートへのハードルを下げるのに一役買う。
DCTは、上り下りでも制御が緻密&的確で、アクセルワークやブレーキングに集中できるのがいい。そして何より楽チン。もちろん長距離ランでも大いに威力を発揮する。
途中に空白期間はあれど、初代の誕生から30年以上、歴代モデルにパリダカスピリッツは継承され続けている。例え近所への買い物でも、これほどロマンをかき立てるモデルはないだろう。

型式、年式ごとの特長

XRV650(1988~1989年型)

パリダカの舞台であるアフリカの大地と、2気筒のレーサーNXR750をイメージして「アフリカツイン」と命名。海外ではXRV650が車名で、ペットネームがアフリカツインとなり、国内では後者が車名として採用された。
エンジンは、オンロードモデルのブロス譲りとなる647cc挟角52度水冷VツインSOHC3バルブを搭載。NXR750の4バルブ45度Vツインとは異なるものの、バランサーを使わずに振動を軽減する位相クランクを同様に採用した。さらにNXRからフィードバックした大容量燃料タンク一体型のフェアリングや2眼ヘッドライト、大型アンダーガードを備え、外観はまさにパリダカレプリカに相応しい。
フレームは、専用となる軽量&高剛性なスチール角断面クレードル製。エアアシスト機構付きのサスやアルミスイングアームなど足まわりも豪華だった。
なお、ワークスマシンに加え、市販車のアフリカツインもパリダカで活躍。無改造のプロダクションクラスでは1989~1990年と2連覇を達成した。

全長(mm) 2,310
全幅(mm) 900
全高(mm) 1,320
シート高(mm) 880
軸距(mm) 1,550
車重(kg) 221
エンジン 水冷4ストV型2気筒
排気量(cc) 647
最高出力 52ps/7500rpm
最大トルク 5.7kg-m/6000rpm
燃料タンク容量(L) 24
タイヤ (前)90/90-21 (後)130/90-17

※1988年型XRV650

XRV750(1990~2000年型)

1990年型で排気量を+95ccアップ。ボアは2mm増の81mm、ストロークを6mm増の72mmとし、742ccに拡大した。同時にキャブレターの大口径化やオイルクーラーの新設などNXRのノウハウがさらに注入されている。ブレーキはWディスクとなり、ハイスクリーンも装備した。
92年型では多機能デジタルトリップメーターを配置。さらに93年型でフルチェンジを敢行。新設計のセミダブルクレードルフレームによって低重心化と2kgの軽量化を実現し、オールラウンドな運動性を獲得している。シートは肉厚を75→95mmとしながら、シート高を15mmダウンさせ、足着き性を向上。シート下部に小物入れも追加している。
さらに1996年型でエンジンの点火方式をフルトランジスタ→バッテリー点火とし、馬力を57→58psにアップ。カウルやシートの熟成を図った。
全長(mm) 2,320
全幅(mm) 905
全高(mm) 1,430
シート高(mm) 870
軸距(mm) 1,555
車重(kg) 234
エンジン 水冷4ストV型2気筒
排気量(cc) 742
最高出力 58ps/7500rpm
最大トルク 6.1kg-m/6000rpm
燃料タンク容量(L) 23
タイヤ (前)90/90-21 (後)140/80R17

※1996年型XRV750

CRF1000L(2016年型~)

国内には約15年ぶりに復活した新生アフリカツイン。従来のVツインではなく、270度位相クランクの並列2気筒を採用したのは、車体のコンパクト化とマスの集中化を図るのが狙い。走行モードやトラコンを標準で備え、不整地での走行性能を向上させるGスイッチ付きのDCT仕様を用意するなどハイテク化も進んだ。フレームは、先代やダカールレーサーのCRF450ラリー譲りとなる高張力鋼セミダブルクレードル。車体サイズも前作とほぼ変わらず、適度にしなやかな乗り味としている。足まわりは、前230mm&後220mmのストローク量を誇るサスを備え、フロントには倒立フォークも備えた。
2017年に排ガス規制に対応させ約3馬力アップし、2018年にはビッグマイナーチェンジ。電子制御スロットルを新採用し、モードセッティングが充実。リチウムイオンバッテリーなどにより車重は2kgの軽量化を果たした。パニアケースの装着を考慮した設計で、積載量アップのカスタムも容易だ。
また、派生モデルの「アドベンチャースポーツ」を追加した。よりタフな旅を想定し、燃料タンクは容量18.8→24.2Lへと大型化。前後サスのストローク量を延長し、ガード類やグリップヒーター、STDより80mm高いスクリーンなどを標準で備える。シート高を60mmローダウンしたタイプLDの設定もありがたい。
さらに、2020年モデルの北米と欧州向けモデルが発表。初のフルチェンジを受け、名称を「CRF1100Lアフリカツイン」に変更した。排気量は998→1084ccとなり、最高出力は2019年型比で7%(約7馬力)、最大トルクは6%向上。フレームも刷新し、全体で5kgの軽量化とスリム化を果たしている。
全長(mm) 2,335
全幅(mm) 930
全高(mm) 1,475
シート高(mm) 870/850
軸距(mm) 1,575
車重(kg) 232[242]
エンジン 水冷4スト並列2気筒
排気量(cc) 998
最高出力 92ps/7500rpm
最大トルク 9.7kg-m/6000rpm
燃料タンク容量(L) 18
タイヤ (前)90/90-21 (後)150/70R18

※2016年型CRF1000L []内はDCT仕様

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■筆者プロフィール

沼尾宏明
1995年から2輪雑誌編集部に勤務し、後にフリーランスとして独立。
モットーは締め切り前納品で、旧車から最新の法改正、用品に至るまでジャンルを問わず幅広いバイク関連の知識を持つ。
1年半に及ぶユーラシア大陸横断という異色の経験もアリ。
1971年生まれ。